救護施設や障害者支援施設では、スプリンクラー設備の要否が延べ面積だけで決まらないことがあります。
同じ施設区分でも、入所者の状態によって基準がまったく違うからです。
その分かれ目になるのが、介助がなければ避難できない者という消防法施行規則の定義です。
この記事では、その判定に使われる六つの認定調査項目を条文だけで確かめます。
うちの施設は延べ面積が二百七十五平方メートル未満なので、スプリンクラーは要らないと思っていました。
面積だけでは判断できません。
入所者の状態によっては、面積を問わず設置が必要になります。
状態というのは、老人ホームで聞くような要介護度のことでしょうか。
いいえ。
老人ホームとは別の基準を使って、条文から確認していきましょう。
- 救護施設・障害児入所施設・障害者支援施設等は、入所者の状態によって延べ面積を問わずスプリンクラー設置が必要になることがあります
- その判定基準が介助がなければ避難できない者で、消防法施行規則第十二条の三が定義しています
- 判定は六つの認定調査項目のいずれかに該当するかどうかで行い、一つでも該当すれば対象になります
- 老人ホームで使われる要介護状態区分とは仕組みが異なる、別枠の基準です
- 該当者を主として入所させる施設かどうかは、施設の実態に基づいて確認する必要があります

目次
救護施設や障害者支援施設のスプリンクラーはなぜ面積を問わず必要になることがあるのか

ところが救護施設や障害者支援施設の一部には、面積を見ない号があります。
ただし括弧書きに、面積の条件が外れる場合が書かれています。
「介助がなければ避難できない者」を主として入所させる施設は、括弧書きの対象から外れる側になり、面積を問わず設置義務を負います。
この「介助がなければ避難できない者」がどう決まるのかを、次に確認します。
括弧の中に例外があるだけで、こんなに扱いが変わるとは思いませんでした。
この一文が実務上とても重い意味を持っています。
次はその判定方法を見ていきましょう。
介助がなければ避難できない者はどの認定調査項目で判定するのか

消防法施行規則が、判定に使う項目そのものを定めています。
移乗・移動・危険の認識・説明の理解・多動や行動停止・不安定な行動という、日常生活の場面ごとの項目に分かれています。
それぞれの項目に、支援がどこまで要るかという段階があらかじめ決まっています。
自施設の判断ではなく、市町村審査会が行った認定調査の結果を確認することが出発点になります。
移乗や移動だけでなく、危険の認識や行動面の項目まで入っているんですね。
身体面だけでなく認知や行動面も見ています。
次は、この六項目がどう組み合わさるかを見ていきましょう。
なぜ六つの項目のうち一つでも該当すれば対象になるのか

その書き方には、判定の仕組みを左右する重要な言葉があります。
移乗だけが該当しても、危険の認識だけが該当しても、その一項目だけで対象になります。
六つの項目は横並びの選択肢ではなく、一本でも該当すれば同じ結論に至る道だと考えると分かりやすくなります。
入所者一人ひとりについて、六項目のどれか一つでも該当するかを確認することが判定の実務です。
六つ全部を満たさないといけないと思っていたので、これは見落としそうでした。
一項目だけでも対象になる点が実務上の要です。
次は、老人ホームの基準と混同しやすい点を見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

どちらも「避難が困難な状態」を扱う点は共通していますが、根拠が違います。
これに対して救護施設や障害者支援施設等は、認定調査項目に基づく介助がなければ避難できない者という別の基準です。
名前が似ているため、老人ホームの資料をそのまま流用して判定してしまう誤りが起きやすくなります。
また「主として入所させるもの」かどうかは、該当者が一人いれば即座に決まるものではなく、施設全体の入所者構成を踏まえて確認する必要があります。
老人ホームの資料をそのまま使い回していたら、危なかったですね。
施設の種類ごとに根拠となる基準が違います。
最後に、明日からの確認手順をお伝えします。
明日からなにを確認すればよいのか

まず個々の入所者の状態を確認し、次に施設全体としての判断につなげるのが正しい順番です。
- 入所者ごとに障害支援区分の認定調査票を確認し、六つの項目のいずれかに該当する者がいるかを確認する
- 該当者を主として入所させる施設かどうかを、施設全体の入所者構成から確認する
- 老人ホーム等は別の基準(要介護状態区分)であることを踏まえ、資料を混同しない
- 判断に迷う場合は自己判断で済ませず、所轄消防署に相談する
まずは入所者の認定調査票から確認してみます。
それが一番確実な第一歩です。
不安な点があればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
面積だけを見ていたら判断を誤るところでした。
入所者の状態から確認する視点が持てて助かります!
認定調査票の確認が欠かせません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第十二条第一項第一号ハ(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- 消防法施行令別表第一(六)項ロ(救護施設・障害児入所施設・障害者支援施設等の用途区分)
- 消防法施行規則第十二条の三(介助がなければ避難できない者)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





