建物の窓から地上まで一気に滑り降りる「救助袋」は、避難訓練で使われる代表的な避難器具です。
昭和52年、岐阜県多治見市内の高校で避難訓練中に救助袋の縫合部が開き、生徒2名が転落する事故が起きました。
消防庁はこの事故を受け、全国の消防主管部長に既設の救助袋の点検を徹底するよう通知を出しました。
この記事では、通知が示した縫合部の3つの着眼点を確認します。
救助袋なんて、うちの建物に付いているか確認したことがありませんでした。
実は避難訓練中の事故で見直された避難器具なんです。
多治見市の事故というのは、どんな事故だったんですか。
避難訓練中に縫合部が開いて生徒が転落した事故です。
- 昭和52年6月、岐阜県多治見市内の高校で避難訓練中に救助袋の縫合部が開き、生徒2名が転落し負傷する事故が発生しました。
- 消防庁は消防予第134号で、全国の消防主管部長に既設救助袋の点検徹底を指導するよう求めました。
- 点検は「消防用設備等の点検要領」の規定に加え、縫合部に関する3つの着眼点に留意して行うことが示されました。
- 着眼点は縫い糸の摩滅・縫い目のずれ・用布の縮みによるしわの3点です。
- 垂直式救助袋の意匠上のしわと劣化によるしわを混同しないことも、通知が注意を促しています。
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目次
救助袋の点検はなぜ多治見市の事故で見直されたのか

その訓練の最中に、なぜ事故は起きたのでしょうか。
昭和52年6月4日、岐阜県立の高校で4階から救助袋を使った降下訓練が行われていました。
降下中に袋本体の側面の縫合部が一部開き、2名の女生徒が転落して重軽傷を負っています。
当時の救助袋は昭和45年に設置されて以降、有資格者による法定点検が一度も行われていませんでした。
消防庁はこの事故を重く見て、全国の消防主管部長に既設の救助袋の点検を求める通知を発出しました。
有資格者の点検が一度もされていなかったなんて驚きです。
はい。
この事故がきっかけで、点検の徹底が全国に指導されました。
点検の対象になる救助袋はどこまでか

どこまでの範囲に点検が求められているのかを確認します。
消防法第17条にもとづく設置義務がある救助袋はもちろん、それ以外の任意設置の救助袋も対象に含まれます。
多治見市の事故で壊れた救助袋も、実は学校が独自の判断で設置した任意設置のものでした。
任意設置だから点検義務が軽くなるわけではありません。
次は、点検が実際に何を求めているのかを見ていきます。
うちの救助袋は法律の義務ではなく任意で付けたものなので、対象外だと思っていました。
任意で付けたものも対象です。
油断せず点検しましょう。
点検要領は縫合部のどこに着目せよと求めているのか

そこに、救助袋ならではの着眼点が上乗せされました。
①は縫い糸そのものがすり減っていないかという確認です。
②は縫い目が布の重ね合わせ部分からずれて外れていないかという確認です。
③は用布の縮みによる著しいしわが生じていないかという確認です。
この3点は、多治見市の事故で実際に壊れた箇所そのものにもとづいています。
①②③、どれも普段は目を留めない場所ですね。
縫合部だけは意識して見るようにしましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

通知が示す注意点を確認します。
垂直式救助袋には、もともとデザインとして規則正しいしわが入れられているものがあります。
これを劣化と誤認して見過ごすと、本当に危険な縮みやほつれを見逃しかねません。
補修が必要と分かったものは、軽微なものを除きメーカーや消防設備士に速やかに対応させることが求められます。
自己判断で使用を続けず、専門業者につなぐ判断が実務では重要です。
意匠のしわなのか劣化のしわなのか、正直見分けが付きません。
迷ったときは消防設備士に確認してもらいましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

避難訓練を控えている建物ほど、優先度が高くなります。
自分の建物に救助袋があるかを確認し、設置年と前回点検の記録を確かめます。
縫い糸の摩滅・縫い目のずれ・用布の縮みという3つの着眼点で縫合部を確認します。
異常が見つかったら自己判断で放置せず、メーカーや消防設備士に速やかに補修を依頼します。
訓練当日は消防機関とも連絡を取り、正しい使い方を職員間で共有してから実施します。
まずは自分の建物の救助袋を確認するところから始めます。
そうですね。
縫合部の3つの着眼点を忘れずに見てください。
よくある質問
まとめ
うちの救助袋も、まず縫合部の点検から始めてみます。
その積み重ねが命を守ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第134号「救助袋の点検について」(昭和52年7月14日、消防庁予防救急課長)
- 消防用設備等の点検要領(昭和50年11月13日、消防安第168号)第15
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条、第17条の3の3
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





