事業所やホテルなど多数の人が出入りする施設では、従業員が応急手当を教わる講習が開かれることがあります。
その指導にあたるのが、消防長が認定する応急手当普及員という資格です。
この資格の根拠となる実施要綱は、令和4年3月31日の消防庁次長通知(消防救第105号)で内容が見直されました。
普及員には応急手当指導員と違う独自の資格要件と3年の有効期限があり、知らずに講習を任せると資格切れのまま指導させてしまうことがあります。
当社でも応急手当の講習をしていますが、教えているのがどんな資格の人なのか実はよく知りません。
主に事業所の中で普通救命講習を教えるのが応急手当普及員です。
順番に見ていきましょう。
普通救命講習を教える資格なら、消防署の職員と同じということですか。
消防職員ではなく、消防長が認定した従業員や地域の方が担う資格です。
まずは制度の成り立ちから確認しましょう。
- 応急手当普及員は、平成5年3月30日消防救第41号の実施要綱に基づき、主として事業所や防災組織で普通救命講習を教える資格です。
- 資格を得るには応急手当普及員講習Ⅰ、または救急救命士等に該当し講習Ⅱを修了する必要があります。
- 住民全般を教える応急手当指導員とは別の資格で、普及員は主として自分の事業所や防災組織の構成員に対して指導する点が異なります。
- 資格の有効期限は認定日から3年で、失効前に再講習を受講すればさらに3年間延長されます。
- 令和4年3月31日の消防救第105号による改正でオンライン講習の活用が広がり、受講機会が増えました。
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目次
なぜ実施要綱で応急手当普及員が定められているのか

その具体的な仕組みを定めているのが実施要綱です。
令和4年3月31日の消防救第105号は、この要綱を最新の医学的知見に合わせて改正する通知でした。
根拠は消防組織法第37条が定める消防庁長官の助言で、法律そのものではなく行政指導という形で全国の消防本部に示されています。
改正の理由は、日本蘇生協議会が示したJRC蘇生ガイドライン2020の内容を踏まえ、講習の質を保ちながら受講機会を広げる必要が出てきたためです。
次は、この要綱にもとづく資格の一つである応急手当普及員になる方法を見ていきます。
実施要綱は法律ではなく通知なんですね。
効力があるものなんでしょうか。
消防組織法第37条に基づく助言として、全国共通の基準になっています。
次は普及員になる方法を見ましょう。
応急手当普及員になるにはどうすればよいのか

決められた講習を修了して、消防長の認定を受ける必要があります。
救急救命士の資格を持つ人や、消防機関に在職中に応急手当指導員や救急隊員の資格を持っていた人は、より短い講習Ⅱで足ります。
過去2年以内に消防機関で普及啓発業務に従事していたと認められる場合は、講習Ⅱ自体が免除されることもあります。
現に教員職にある人向けの講習は、質を確保したうえで時間短縮も認められています。
次は、実際に普及員が何を担当するのかを見ていきます。
救急救命士の資格があれば、それだけで普及員になれるんですか。
資格だけでなく別表9の講習Ⅱの修了が必要です。
次は普及員の実際の仕事を見ましょう。
応急手当普及員は実際に何をするのか

実施要綱が定める活動の場は限られています。
デパートやホテル、駅舎など多数の人が出入りする事業所は、実施要綱が指導者の養成に配慮すべき対象として例示されています。
普及員が指導した普通救命講習の修了者には、消防長への申請により修了証を交付できます。
消防長は普及員を認定すると、名簿に登録したうえで認定証を交付します。
次は、似た資格である応急手当指導員との違いを確認します。
ということは、普及員は自分の会社の外の人には教えられないんですね。
主として事業所や防災組織の構成員が対象です。
次は指導員との違いを見ましょう。
応急手当指導員とはどこが違うのか

役割と資格要件の違いを整理します。
応急手当指導員は、消防機関が住民の要請に応じて指導者を派遣する場合も含め、より広い範囲の普通救命講習・上級救命講習を教えられます。
応急手当普及員の資格を持つ人が講習Ⅲを修了すれば、指導員へステップアップすることもできます。
どちらの資格も認定日から3年で失効し、失効前に再講習を受ければさらに延長されます。
次は、事業所として明日から確認すべきことをまとめます。
普及員から指導員にステップアップする人もいるんですね。
講習Ⅲを修了すれば指導員になれます。
次は明日からの確認事項をまとめます。
事業所は明日から何を確認すればよいのか

落ち着いて資格証と実施要綱を照らし合わせましょう。
認定日から3年を過ぎていないか、過ぎている場合は再講習を受けているかを確かめましょう。
新たに普及員を養成したい場合は、所轄の消防本部に応急手当普及員講習Ⅰの日程を問い合わせます。
令和4年の改正により、座学部分はオンライン講習でも受講でき、対面の実技講習と組み合わせて修了証を受け取れるようになりました。
講習内容や指導方法に迷ったときは消防長から助言を受けられる制度になっているので、遠慮せず相談しましょう。
令和4年の改正でオンラインが使えるようになったのは助かります。
座学はオンラインでも受講できます。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
応急手当普及員と指導員の違いがよく分かりました!
資格の有効期限は3年ごとに確認してくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱の一部改正について」(令和4年3月31日 消防救第105号 消防庁次長)
- 応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱(平成5年3月30日 消防救第41号 消防庁次長)
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





