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木造3階建て共同住宅はなぜ特例基準を使えないのか|消防法施行令第32条の緩和が及ばない理由を解説

木造3階建て共同住宅はなぜ特例を使えないのか

耐火構造の共同住宅では、消防法施行令第32条にもとづく通知により、屋内消火栓設備や避難器具など複数の消防用設備等をまとめて緩和できる「特例基準」が広く使われています。
ところが、平成の建築基準法改正で建てられるようになった木造3階建て共同住宅は、この特例基準を使うことができません。
理由は、特例基準そのものが「主要構造部が耐火構造であること」を条件にしており、木造3階建て共同住宅は耐火構造ではなく準耐火構造として扱われるためです。
この記事では、木造3階建て共同住宅に適用される消防用設備等の基準と、耐火構造の共同住宅との違いを条文にもとづいて解説します。

うちのアパートは木造3階建てなんですが、鉄筋のマンションと同じ特例が使えると聞きました。
本当でしょうか。

いいえ、木造3階建て共同住宅にはその特例は使えません。

同じ共同住宅なのに、なぜ扱いが違うんですか。

建物の構造で条件が分かれます。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 木造3階建て共同住宅は、消防法施行令別表第一(5)項ロの共同住宅として消防用設備等の規制を受けます
  • 屋内消火栓設備などの設置基準は、耐火構造ではなく準耐火構造の建物として適用されます
  • 耐火構造の共同住宅で広く使われている特例基準(消防予第220号)は、主要構造部が耐火構造であることが条件です
  • 木造3階建て共同住宅は準耐火構造扱いのため、この特例基準の対象から外れます
  • 特例が使えない分、消火器・自動火災報知設備・屋内消火栓設備などを個別の基準どおりに設置する必要があります

耐火構造の共同住宅は特例基準ありだが木造3階建て共同住宅は準耐火構造扱いで消火器自動火災報知設備屋内消火栓を個別に設置する必要がある仕組みを示す図解

木造3階建て共同住宅とはどのような建物を指すのか

木の板張りの壁を持つ3階建て共同住宅の建物から証明書のアイコンへ矢印がつながるイラスト
木造アパートといえば2階建てのイメージが強いですが、条件を満たせば3階建ても建てられます。
まずは消防法上どの区分に入るのかを確認します。
寄宿舎、下宿又は共同住宅(消防法施行令別表第一(5)項ロ)
構造が木造でも鉄筋コンクリート造でも、共同住宅であれば同じ(5)項ロに区分されます。
木造3階建て共同住宅は、平成に入ってからの建築基準法の改正で、一定の技術基準を満たす木造建築物として建てられるようになりました。
延焼を防ぐ性能を計算で確かめる「耐火性能検証法」などにより、木造でも準耐火構造として3階建てのアパートを建てることが認められています。
ただし、この基準で建てられた木造3階建て共同住宅は、鉄筋コンクリート造などの耐火構造そのものではありません。
この「耐火構造ではない」という点が、後で見る消防用設備等の基準に関わってきます。

木造でも3階建てのアパートが建てられるようになっていたんですね。

はい、ただし耐火構造とは別の扱いになる点が重要です。

どんな木造3階建て共同住宅がこの基準の対象になるのか

木造3階建て共同住宅が破線で囲まれた面積の枠の中に収まりメジャーと地図のピンが添えられたイラスト
木造でどんな建物でも3階建てにできるわけではなく、いくつかの条件が設けられています。
建築基準法令で定められた技術基準を確認します。
地階を除く階数が3以下であること。延べ面積が1,500平方メートル以下(防火地域及び準防火地域以外の区域にあっては3,000平方メートル以下)であること。3階の部分を下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途に供するものであること。建築物を建築することができる地域を防火地域以外の区域とすること。(建築基準法施行令等にもとづく技術基準)
階数・面積・立地の3つがそろって初めて対象になります。
地階を除く階数が3以下で、延べ面積が原則1,500平方メートル以下(防火地域・準防火地域以外なら3,000平方メートル以下)であることが求められます。
建てられる場所も防火地域以外に限られ、防火地域そのものには建てられません。
これらの条件を満たしたうえで、壁や柱、床、はりや階段の構造が国土交通大臣の定める技術的基準に適合していることが必要です。
つまり普通の木造アパートを届出だけで3階建てにできるわけではなく、構造計算にもとづく技術基準をクリアした建物だけが対象になります。
  • 地階を除く階数が3以下であること
  • 延べ面積が原則1,500平方メートル以下(防火・準防火地域以外は3,000平方メートル以下)であること
  • 建築可能な地域が防火地域以外に限られること

防火地域に建っている木造3階建てアパートもこの基準の対象になりますか。

防火地域内は対象外です。
別の建築基準で計画されているはずです。

消防用設備等の設置基準はどのように適用されるのか

耐火構造の建物と木造3階建て共同住宅が屋内消火栓の設置範囲を示す点線の半円を見比べるイラスト
対象になる建物だとわかったところで、実際の消防用設備等の基準を見ていきます。
屋内消火栓設備を例に確認します。
前項の規定の適用については、(中略)特定主要構造部を耐火構造とし、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした防火対象物にあつては当該数値の三倍の数値とし、特定主要構造部を耐火構造としたその他の防火対象物又は建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当し、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした防火対象物にあつては当該数値の二倍の数値とする。(消防法施行令第11条第2項)
耐火構造なら3倍、それ以外の難燃仕上げの建物なら2倍に緩和されます。
屋内消火栓設備などは、延べ面積や階の床面積の基準に達すると設置義務が生じますが、建物の構造によってその基準面積が緩和されます。
鉄筋コンクリート造などの耐火構造で内装を難燃材料にした建物は、基準面積が3倍に広がります。
一方、木造3階建て共同住宅は建築基準法上の耐火構造そのものではないため、内装を難燃材料にしても2倍までの緩和にとどまります。
同じ延べ面積の建物でも、木造3階建て共同住宅の方が屋内消火栓設備などの設置義務が生じやすいということです。

同じ面積のアパートでも、構造によって設置義務の出やすさが違うんですね。

はい、構造区分の違いがそのまま基準の差になります。

耐火構造の共同住宅で使える緩和がなぜ及ばないのか

コンクリート造の共同住宅にチェックマーク木造3階建て共同住宅に禁止マークが付くイラスト
屋内消火栓設備だけでなく、共同住宅にはもう一つ大きな緩和の仕組みがあります。
それが冒頭で触れた「特例基準」です。
この基準を適用することのできる共同住宅等の建築構造上の要件は、次のとおりである。主要構造部が耐火構造であること。共用部分の壁及び天井の仕上げが不燃材料又は準不燃材料であること。(共同住宅等に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について 平成7年10月5日消防予第220号)
特例基準は、主要構造部が耐火構造であることを最初の条件にしています。
この通知にもとづく特例基準は、住戸間を耐火構造の壁で区画し、二方向避難や開放廊下などの条件を満たした共同住宅について、共同住宅用スプリンクラー設備や共同住宅用自動火災報知設備などへのまとめた置き換えを認めるものです。
ところが、木造3階建て共同住宅は主要構造部が耐火構造ではなく準耐火構造として扱われるため、この特例基準の対象そのものに入りません
耐火構造の共同住宅で当たり前に使われている緩和の仕組みが、木造3階建て共同住宅には最初から適用されないということです。
その結果、消火器・自動火災報知設備・屋内消火栓設備などは、それぞれの基準どおりに個別で設置を検討する必要があります。

内装を難燃材料にすれば、この特例基準も使えるようになりませんか。

いいえ、内装の仕上げでは変わりません。
主要構造部そのものが条件です。

明日から何を確認しておけばよいのか

チェックリストと電話を経て木の板張りの3階建て共同住宅に至る様子を示すイラスト
ここまでの内容を踏まえて、実際に確認すべき手順を整理します。
所有・管理する共同住宅がどちらの区分になるのかを、まず正しく把握することが出発点です。
  • 所有・管理する共同住宅の主要構造部が耐火構造か準耐火構造かを設計図書や確認済証で確認する
  • 木造3階建てに該当する場合は、耐火構造の共同住宅向けの特例基準がそのまま使えると思い込まない
  • 屋内消火栓設備などの設置義務の有無を、延べ面積と構造区分の両方から確認し直す
  • 増改築や用途変更を予定している場合は、着工前に所轄の消防署へ相談する
思い込みで確認を省くと、必要な設備が抜け落ちる恐れがあります。
特に耐火構造のマンション向けの資料をそのまま参考にすると、特例基準ありきで設備を減らしてしまう誤りにつながります。
自分の建物がどちらの構造区分に当たるかは設計者や施工者の記録で確認できますが、判断に迷う場合は所轄の消防署に確認するのが確実です。
木造3階建て共同住宅は今後も増えていく建物形式なので、管理を引き継いだ際にも構造区分の確認を忘れないようにしましょう。

管理を引き継いだアパートが木造3階建てかどうかも、まず確認したほうがよさそうですね。

はい、構造区分の確認が最初の一歩になります。

よくある質問

Q木造3階建て共同住宅かどうかは誰が判断するのですか?
A建築確認の際の設計図書や検査済証で構造区分が確定します。所有者の見た目の判断だけで決まるものではありません。
Q木造でも耐火構造として建てれば特例基準は使えますか?
A主要構造部が実際に耐火構造の認定を受けていれば、木造でも特例基準の対象になり得ます。今回の準耐火構造の技術基準とは別の話です。
Q屋内消火栓設備の緩和が2倍にとどまると、必ず設置義務が生じますか?
A延べ面積や床面積が基準に達しなければ設置義務は生じません。建物ごとの面積で個別に確認が必要です。
Q既に建っている木造3階建て共同住宅にも今回の話は当てはまりますか?
Aはい、既存の建物でも構造区分は変わらないため同じ考え方が当てはまります。管理を引き継いだ際は確認しておきましょう。

まとめ

木造3階建て共同住宅は消防法施行令別表第一(5)項ロの共同住宅として規制を受ける
対象になるのは階数3以下・延べ面積要件・防火地域以外に建つ建物に限られる
屋内消火栓設備等の基準面積は耐火構造なら3倍、それ以外の難燃仕上げなら2倍に緩和される
木造3階建て共同住宅は準耐火構造扱いのため2倍までの緩和にとどまる
耐火構造の共同住宅で使われる特例基準(消防予第220号)は主要構造部が耐火構造であることが条件
木造3階建て共同住宅はこの特例基準の対象外で個別の設置基準が適用される
構造区分の判断に迷ったら所轄の消防署に確認するのが確実

うちの建物の構造区分、これできちんと確認してみます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令別表第一(5)項ロ
  • 消防法施行令第11条第2項(屋内消火栓設備に関する基準)
  • 建築基準法第27条、建築基準法施行令第107条・第107条の2・第108条の3・第110条・第110条の2・第110条の4・第110条の5(木造3階建て共同住宅等の技術基準)
  • 共同住宅等に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について(平成7年10月5日消防予第220号、平成8年6月28日消防予第130号改正)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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