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劇場や病院は耐火構造にするとなぜ内装制限の基準が変わるのか|建築基準法施行令第128条の4が定める用途と構造の組み合わせを解説

劇場の客席と舞台を写した写真

防火管理者として建物の改修計画を見ているとき、「うちは準耐火構造にしたのに、なぜ内装制限がかかるままなのか」と疑問に思ったことはないでしょうか。
内装制限がかかる床面積のしきい値は、建物の用途だけでなく、耐火性能によっても変わります。
同じ劇場でも、構造の違いだけでしきい値が4倍近く変わることがあります。
この記事では建築基準法施行令第128条の4が定める、用途と構造の組み合わせによる基準面積の違いを解説します。

うちは去年の増築で劇場部分を準耐火構造にしたので、内装制限はもう気にしなくていいですよね。

実はその「準耐火」が一時間準耐火基準に適合していないと、しきい値は緩和されません。
まずは条文で確認しましょう。

え、準耐火構造にしただけでは足りないんですか。

はい、そこが実務でいちばん見落とされるところです。
一つずつ整理していきましょう。

この記事の結論
  • 内装制限の基準面積は、建物の用途だけでなく耐火性能によっても変わります。
  • 劇場等((一)項)は一時間準耐火基準に適合していれば客席400平方メートル以上、そうでなければ100平方メートル以上から対象になります。
  • 病院等((二)項)と百貨店等((四)項)も同じ考え方で、耐火性能が高いほどしきい値が大きくなります。
  • 準耐火建築物というだけでは緩和されず、一時間準耐火基準の大臣認定が別途必要です。
  • 該当する用途・構造・面積を照合し、迷ったら特定行政庁や指定確認検査機関に相談しましょう。

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建物の耐火性能によって内装制限のしきい値が3段階に変わる仕組みを示す図解

同じ劇場でも内装制限の基準面積はなぜ一つに決まらないのか

用途と構造の2つの物差しで内装制限のしきい値を示すイラスト
内装制限は用途と規模で対象を線引きする規制ですが、その規模のしきい値は一つに固定されているわけではありません。
まずはしきい値がどんな仕組みで枝分かれしているのかを整理します。
建築基準法施行令第百二十八条の四(制限を受けない特殊建築物等) 法第三十五条の二の規定により政令で定める特殊建築物は、次に掲げるもの以外のものとする。一 次の表に掲げる特殊建築物(略)
内装制限の基準面積は、建物の用途と構造の組み合わせで変わります。
建築基準法施行令第128条の4は、劇場や病院や百貨店など特殊建築物の用途を法別表第一(い)欄の(一)(二)(四)項で区分し、それぞれに床面積のしきい値を定めています。
見落とされがちなのが、同じ用途でも建物の構造によってしきい値そのものが3段階に分かれるという点です。
耐火構造で一時間準耐火基準に適合している建物ほど、しきい値は大きく、つまり内装制限がかかりにくくなります。
逆に一時間準耐火基準に適合していなければ、耐火性能の低い建物と同じ厳しいしきい値が適用されます。

うちの建物、内装制限がかかるかどうかいつも自信が持てません。

用途と構造の2つを確認すれば、しきい値はすぐ絞り込めます。
次の章から具体的な数字を見ていきましょう。

劇場や集会場は客席の面積がどこから対象になるのか

客席のある劇場と面積の大小2つを比べるイラスト
劇場や公民館の集会室を管理していると、どこから内装制限がかかるのか迷う場面があります。
まずは法別表第一(い)欄(一)項の用途から見ていきます。
建築基準法施行令第百二十八条の四第一項第一号(抜粋) 法別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途について。法第二条第九号の三イに該当する建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)であつて一時間準耐火基準に適合するもの=客席の床面積の合計が四百平方メートル以上のもの。法第二条第九号の三イ又はロのいずれかに該当する建築物であつて一時間準耐火基準に適合しないもの=客席の床面積の合計が百平方メートル以上のもの。その他の建築物=客席の床面積の合計が百平方メートル以上のもの。
劇場や集会場は、耐火性能次第で対象になる客席面積の基準が最大4倍変わります。
耐火構造で一時間準耐火基準に適合していれば客席の床面積400平方メートル以上から対象になります。
一時間準耐火基準に適合していなければ、耐火性能を問わず客席の床面積100平方メートル以上から対象になり、しきい値は4分の1まで下がります。
客席以外のロビーや通路の面積は、このしきい値の算定には含まれません。
小規模な公民館の集会室でも、客席部分が100平方メートルを超えれば対象になりうる点に注意が必要です。

うちの劇場、客席は150平方メートルくらいです。

耐火構造で一時間準耐火基準に適合していなければ、すでに対象です。
構造の認定状況を確認してみましょう。

病院や百貨店は構造によって基準がどう変わるのか

病院の建物と百貨店の建物を並べて階数を比べるイラスト
病院や百貨店は劇場と同じ考え方ですが、階数も基準に加わるぶん複雑に見えます。
数字を用途ごとに整理すると、実は同じ構図の繰り返しだと分かります。
建築基準法施行令第百二十八条の四第一項第一号(抜粋) 法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途について。一時間準耐火基準に適合するもの=三階以上の部分の床面積の合計が三百平方メートル以上のもの。適合しないもの=二階の部分(病院又は診療所については、その部分に患者の収容施設がある場合に限る。)の床面積の合計が三百平方メートル以上のもの。その他の建築物=当該用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの。同欄(四)項に掲げる用途について。一時間準耐火基準に適合するもの=三階以上の部分の床面積の合計が千平方メートル以上のもの。適合しないもの=二階の部分の床面積の合計が五百平方メートル以上のもの。その他の建築物=当該用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの。
病院や百貨店も、耐火性能に応じて対象になる階と面積の組み合わせが変わります。
病院やホテル等((二)項)は、耐火構造で一時間準耐火基準に適合していれば3階以上の部分が床面積300平方メートル以上から対象です。
適合していなければ、2階の部分(病院・診療所は患者の収容施設がある場合に限る)が300平方メートル以上、その他の建築物は200平方メートル以上から対象になります。
百貨店等((四)項)も同じ考え方で、耐火構造なら3階以上で1,000平方メートル以上、そうでなければ2階で500平方メートル以上、その他は200平方メートル以上が基準です。
用途によって絶対値は違っても、耐火性能が高いほどしきい値が緩む構図はどの用途でも共通しています。

病院と百貨店で数字が全然違うのはなぜですか。

用途ごとに火災の広がりやすさが違うためと考えられます。
ただ緩む構図そのものは共通しています。

実務で見落としやすいのはどこか

設計図書と認定書を確認する様子を示すイラスト
「準耐火構造にした」という説明だけで安心してしまうと、実は基準が緩和されていないことがあります。
条文をたどると、緩和には別の条件が必要だと分かります。
建築基準法施行令第百十二条第二項 前項の「一時間準耐火基準」とは、主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏の構造が、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであることとする。
準耐火構造にしただけでは、しきい値は緩和されません。
建築基準法第二条第九号の三は、準耐火建築物を主要構造部を準耐火構造としたもの(イ)と、これと同等の準耐火性能を政令で定める技術的基準で満たすもの(ロ)に分けています。
イ・ロのいずれかに該当するだけでは一時間準耐火基準を満たしたことにはならず、劇場等なら客席100平方メートル以上という厳しい側のしきい値のままです。
一時間準耐火基準は国土交通大臣が定めた構造方法か個別の大臣認定を取っていなければ適合したことになりません。
増築や用途変更の設計段階で「準耐火にしたから緩和される」と思い込むと、確認申請の内装計画をやり直すことになります。

うちは準耐火建築物のイに該当してるので、もう大丈夫ですよね。

一時間準耐火基準の大臣認定まで取っているか、図面で確認してください。
そこまで揃って初めて緩和されます。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと建物の図面を確認する様子のイラスト
最後に、日頃の点検や改修計画で確認しておきたい手順を整理します。
用途・構造・面積の3つをセットで確認するのがポイントです。 まずは自分の建物の用途と構造区分を照合しましょう。
用途は法別表第一(い)欄の(一)(二)(四)項のどれに当たるか、構造は特定主要構造部が耐火構造か、準耐火構造のイ・ロのどちらかを図面と確認申請書類で確かめます。
そのうえで一時間準耐火基準への適合を示す大臣認定書や構造方法の記載があるかを合わせて確認してください。
客席や病室、売場等、該当用途に供する部分の床面積を実測し、当てはまる欄のしきい値と照合します。
判断に迷ったら、確認申請時の図書一式を特定行政庁や指定確認検査機関に持ち込んで事前相談するのが確実です。
  • 自分の建物の用途が法別表第一(い)欄(一)(二)(四)項のどれに当たるか確認する
  • 特定主要構造部が耐火構造か、準耐火構造のイかロかを設計図書で確認する
  • 一時間準耐火基準に適合する大臣認定書または構造方法の記載があるか確認する
  • 該当用途に供する部分の床面積を実測し、あてはまる欄のしきい値と照合する
  • 判断に迷ったら確認申請時の図書一式を特定行政庁や指定確認検査機関に持ち込み事前相談する

まず用途と構造区分を確認するところから始めればいいんですね。

それができれば、該当する床面積の欄はすぐに絞り込めます。
迷ったら専門家にも相談しましょう。

よくある質問

Q準耐火建築物にすれば必ずしきい値は緩和されますか?
Aいいえ。準耐火建築物のイ・ロに該当するだけでは緩和されません。一時間準耐火基準への適合を示す大臣認定や構造方法が別途必要です。
Q学校や体育館((三)項)にもこの号の基準は適用されますか?
Aいいえ。この号の表は法別表第一(い)欄(一)(二)(四)項の用途だけを対象としており、(三)項の学校や体育館はこの表に含まれていません。
Q客席以外のロビーや通路も面積に含めて判定しますか?
Aいいえ。(一)項の基準は客席の床面積の合計で判定するため、ロビーや通路の面積はしきい値の算定に含まれません。
Q用途が複数混在する建築物はどう判定しますか?
A用途ごとに該当する欄のしきい値を当てはめます。病院部分と店舗部分が同じ建物にあれば、それぞれ(二)項・(四)項の基準で個別に確認します。

まとめ

✔内装制限の基準面積は、建物の用途と耐火性能の組み合わせで3段階に分かれます。
✔劇場等は一時間準耐火基準に適合していれば客席400平方メートル以上、そうでなければ100平方メートル以上から対象です。
✔病院等は3階以上で300平方メートル以上、その他は200平方メートル以上から対象になります。
✔百貨店等は耐火構造なら1,000平方メートル以上、その他は200平方メートル以上が基準です。
✔耐火性能が高い建物ほど、内装制限がかかる床面積のしきい値は緩やかになります。
✔準耐火建築物のイ・ロに該当するだけでは緩和されず、一時間準耐火基準の大臣認定が別途必要です。
✔迷ったら特定行政庁や指定確認検査機関への事前相談が確実です。

内装制限、思っていたより奥が深いんですね。
今度の改修では認定書もあわせて確認します。

ご不明な点があれば、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第二条第九号の三(準耐火建築物の定義)
  • 建築基準法第三十五条の二(特殊建築物等の内装)
  • 建築基準法施行令第百二十八条の四(制限を受けない特殊建築物等)
  • 建築基準法施行令第百十二条第二項(一時間準耐火基準の定義)
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の判定や大臣認定の適合は建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁や建築士にご確認ください。

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