防火管理者として建物の内装工事に立ち会うとき、「なぜこの壁は自由に仕上げ材料を選べないのか」と疑問に思ったことはないでしょうか。
内装制限は延べ面積や階数のしきい値で対象が決まるのが原則ですが、自動車車庫と地階の一部の用途はこの原則の外にあります。
床面積がどれだけ小さくても、対象から外れないケースがあるのです。
この記事では建築基準法施行令第百二十八条の四が定める、面積を問わず内装制限の対象になる建物の条件を解説します。
先日、駐車場付きの小さなテナントビルを見に行ったら、車庫の内装まで細かく指定されていて驚きました。
自動車車庫は、面積を問わず内装制限の対象になります。
小規模でも油断できない用途なんです。
うちのビルにも地下に飲食店が入っているのですが、あれも同じような扱いなんでしょうか。
地階の劇場や病院や飲食店等も、面積を問わず対象です。
一つずつ条文で確認していきましょう。
- 内装制限は原則、床面積や階数のしきい値を超えた特殊建築物だけが対象になります。
- 自動車車庫や自動車修理工場は、面積を問わず必ず対象になります。
- 地階に設ける劇場・病院・飲食店等の居室も、面積を問わず必ず対象になります(学校等は除きます)。
- 車庫と地階は仕上げの基準も一段階厳しい準不燃材料が求められます。
- 一つの建物でも、耐火構造の床・壁で区画されていれば別の建築物とみなされることがあります。
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目次
内装制限の対象はそもそもどうやって線引きされるのか

まずはこの規制がどんな建物に、どんな条件で適用されるのかを整理します。
劇場や病院等の特殊建築物は床面積が一定を超えた場合に、階数が3以上の建物や延べ面積が千平方メートルを超える建物も同様に対象になります。
これらは建築基準法施行令第百二十八条の四が定める具体的なしきい値に基づいて判定されます。
つまり多くの建物では、面積や階数が小さいうちは内装制限を受けません。
ところが、この「面積で線を引く」という原則には例外があります。
うちのビル、延べ面積も階数も基準に届いていないので安心していいんですよね。
用途によっては、面積を問わず対象になる建物があります。
次の章で詳しく説明しますね。
自動車車庫はなぜ面積を問わず必ず対象になるのか

自動車車庫は、内装制限の中でもかなり特別な扱いを受ける用途です。
第一号が定める床面積のしきい値表は、劇場や病院等の用途にだけ適用され、車庫には及びません。
車庫はこの表とは別に、無条件で対象に含まれる扱いです。
燃料を積んだ車両が出入りし、油類による火災の危険が常にあることが背景にあると考えられます。
小規模な個人向け車庫でも、特殊建築物に該当すれば規模を理由に除外されません。
うちのテナントビル、地下に月極駐車場があるんですが、あれも対象なんでしょうか。
特殊建築物としての車庫に該当すれば対象です。
規模にかかわらず確認しておくと安心ですよ。
地階の劇場や病院や飲食店はなぜ面積を問わず必ず対象になるのか

なぜ地階だけ特別なのか、条文で確認します。
対象になるのは別表第一(い)欄(一)項の劇場や映画館、(二)項の病院やホテル、(四)項の百貨店や飲食店等です。
地階は煙が滞留しやすく、地上へ避難する経路も限られるという特有の危険があります。
一方で、同じ番号帯にある(三)項の学校や体育館は、この一律規定の対象には含まれていません。
地階だからといって一律に厳しくなるわけではなく、用途によって扱いが分かれる点に注意が必要です。
じゃあ地階にある学校の体育館は、面積が小さければ対象外のままということですか。
はい、学校等は一律規定の対象外です。
通常どおり面積や階数のしきい値で判定されます。
実務で見落としやすいのはどこか

実は、仕上げの基準そのものにも違いがあります。
第一号の劇場等が難燃材料(三階以上の居室の天井は準不燃材料)で足りるのに対し、車庫と地階は準不燃材料での仕上げが求められます。
さらに地階の場合、規制の範囲は居室そのものだけでなく、地上に通ずる廊下や階段にも及びます。
テナントの入れ替えで店舗を改装するとき、この仕上げ材料の違いを見落とすと是正が必要になります。
増改築や用途変更のたびに、対象になる部分が変わっていないか確認することが欠かせません。
内装業者さんに任せていたので、材料のランクまでは意識していませんでした。
発注時に準不燃材料であることを伝えておくと確実です。
図面や仕上げ表に用途区分を明記しておくのもおすすめです。
明日からなにを確認すればよいのか

区画の取り方によって、建物の扱いが変わることもあります。
たとえば車庫部分と事務所部分が開口部のない耐火構造の床・壁で区画されていれば、それぞれ別に判定できる場合があります。
逆に区画が失われる改修をすると、車庫部分の規制が建物全体に及ぶおそれもあります。
点検や改修計画では、用途・面積・地階の有無・区画の状態を合わせて確認しましょう。
迷ったときは、特定行政庁や建築士に相談することをおすすめします。
- 車庫・地階を含む用途構成になっていないか確認する
- 地階の用途が(一)(二)(四)項のいずれかに当たるか確認する
- 学校等((三)項)は一律規定の対象外であることを踏まえて判定する
- 内装材料が準不燃材料の基準を満たしているか確認する
- 区画の状態が変わる改修は事前に特定行政庁や建築士に相談する
確認することが増えましたが、まずは用途と地階の有無から見ればいいんですね。
そのとおりです。
迷ったら区画の状態も含めて専門家に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
車庫と地階がなぜ特別扱いなのか、条文からよく分かりました。
次のテナント募集では地階の用途もきちんと確認します。
ご不明な点があれば、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第三十五条の二(特殊建築物等の内装)
- 建築基準法施行令第百二十八条の四(制限を受けない特殊建築物等)
- 建築基準法施行令第百二十八条の五(特殊建築物等の内装)
- 建築基準法施行令第百二十八条の六(別の建築物とみなすことができる部分)
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の判定や仕上げ材料の適合は建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁や建築士にご確認ください。





