古いビルの用途を変えるとき、工事を一度に終えられず、何年かに分けて進めたい場合があります。
建築基準法の基準を満たしていない古い建物では、用途変更の工事の途中で、その基準にどこまで合わせるのかが気になります。
建築基準法には、工事を分けて行うときの緩和の仕組みが用意されています。
今回は建築基準法第87条の2が定める用途変更を伴う工事を二以上に分けるときの全体計画の認定について、対象と基準と効果を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。
古い建物の用途を変える工事を、何年かに分けて進めたいです。
その間、建築基準法の基準はどうなるのでしょうか。
建築基準法第87条の2に、工事を二以上に分ける場合の全体計画の認定という仕組みがあります。
ただし対象や基準が決まっているので、順番に見ていきましょう。
どんな建物が対象で、誰がどう認めるのでしょうか。
消防の決まりがどうなるのかも知りたいです。
条文を順に確認します。
防火管理の面で確かめたい点もお伝えします。
- 用途変更を伴う工事を二以上に分けて行うときは、特定行政庁が全体計画を認めると緩和を受けられる場合があります。
- 対象は、第27条等の規定の適用を受けない一の建築物です。
- 特定行政庁は、全体計画が三つの基準に適合するかを見て認めます。
- 認定を受けると、最後の工事に着手するまでは、第27条等の規定を準用しないことになります。
- 認定は建築基準法の緩和で、消防法は建築基準法の条文ではありません。
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目次
用途変更の工事を分けて行うときの緩和は建築基準法にどう書かれているのか

認めるのは特定行政庁で、全体計画を審査する形になっています。
条文には、対象となる建築物、審査する主体、認定の基準、読み替えの内容が順に書かれています。
主体は特定行政庁で、審査の対象は二以上の工事の全体計画です。
読み替えの内容は、条文の後半に書かれていて、この記事の後半で確認します。
まず、どんな建築物が対象になるのかを次の節で確認します。
工事を分けるときの決まりが、用途変更にもあるんですね。
どんな建物でも対象になるんでしょうか。
いいえ、対象は第27条等の規定の適用を受けない建築物に限られます。
次に、その建築物を見ましょう。
どんな建築物が緩和の対象になるのか

ただし、増築等を含む工事を分けて行う場合は別の条文が受け持ちます。
第27条等の規定とは、第87条第3項が定義している規定の総称で、第27条や第35条から第35条の3までなどが含まれます。
耐火建築物等にすべき特殊建築物の第27条や、避難施設を定める第35条は、防火管理の現場に近い規定です。
増築等を含む工事を分けて行う場合は、第86条の8第1項が受け持つので、この条文の対象から除かれています。
自分の建物がどちらの場合にあたるかは、特定行政庁や建築士に確かめる必要があります。
第27条等の規定の適用を受けない建物が対象なんですね。
認めてもらうには、どんな基準があるのでしょうか。
条文には、全体計画が適合すべき三つの基準が書かれています。
次に、その内容を見ましょう。
特定行政庁は全体計画のどんな基準を見るのか

三つの基準は、条文の第1号から第3号に分けて書かれています。
二 全体計画に係る全ての工事の完了後において、当該全体計画に係る建築物及び建築物の敷地が建築基準法令の規定に適合することとなること。
三 全体計画に係るいずれの工事の完了後においても、当該全体計画に係る建築物及び建築物の敷地について、交通上の支障、安全上、防火上及び避難上の危険性並びに衛生上及び市街地の環境の保全上の有害性が増大しないものであること。
第1号は、工事を分けることが建築物の利用状況その他の事情によりやむを得ないものであることを求めています。
第2号は、全ての工事の完了後に建築物と敷地が建築基準法令に適合することを求めています。
第3号は、どの工事の完了後でも、防火上及び避難上の危険性などが増大しないことを求めています。
分ければ足りるのではなく、最後は適合させる前提であることを押さえておく必要があります。
途中の段階でも、防火上や避難上の危険は増えないことが条件なんですね。
認定を受けると、何が変わるのでしょうか。
認定を受けると、条文の読み替えで適用の扱いが変わります。
次に、その中身を見ましょう。
認定を受けると建築基準法の適用はどう変わるのか

一つは第3条第2項の読み替え、もう一つは第87条第3項の読み替えです。
第3条第2項の読み替えにより、工事と工事の間の建築物も、工事中の建築物と同じ扱いに入ります。
第87条第3項の読み替えにより、第27条等の規定の準用は、最後の工事に着手するまでは行われません。
一方で、基準の第2号により、全ての工事の完了後には建築基準法令に適合させる必要があります。
緩和されるのは工事の進め方であって、最終的な基準そのものは変わりません。
最後の工事に着手するまでは、準用されないんですね。
認定を受けたあとの手続はあるのでしょうか。
認定後の手続は、第86条の8第2項から第6項までが準用されます。
次に、その内容と確認したい点を見ましょう。
認定を受けたあと防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

計画の変更や改善命令、認定の取消しも条文に定められています。
(同法第八十六条の八第三項 抜粋)(略)は、当該認定を受けた全体計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、特定行政庁の認定を受けなければならない。
第86条の8第4項は、特定行政庁が工事の状況について報告を求めることができると定めています。
第5項は、計画に従っていないときに、改善に必要な措置を命ずることができると定めています。
第6項は、その命令に違反したときに、認定を取り消すことができると定めています。
明日から次の点を確認してください。
- 建物が全体計画の認定を受けているかを、特定行政庁や建築士に確認する。
- 認定を受けた計画で、最後の工事の時期がいつになっているかを確認する。
- 工事の途中の段階で、避難経路や防火区画に変更が生じるかを確認する。
- 計画の内容が変わるときは、変更の認定が必要になるかを確認する。
- 消防計画や消防用設備等への反映は、所轄消防署へ相談する。
工事の内容や時期が変わるときは、それぞれの窓口へ同じ内容を伝えられるようにしておきましょう。
認定の内容や工事の時期は、誰が把握して記録すればよいでしょうか。
管理者としてどう備えればよいですか。
認定を受けた計画の内容と工事の時期を確認して、防火管理の記録に残しましょう。
工事の前には、特定行政庁と消防の両方の窓口に相談しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
用途変更を分けて行うときの全体計画の認定は、対象と基準が決まっているんですね。
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認定の内容が分かれば、防火管理の備えも立てやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第三条・第八十六条の八(e-Gov法令検索)
- 建築基準法第八十七条・第八十七条の二(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。認定の内容や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





