電気室やサーバー室、駐車場に付くガス系の消火設備は、ガスを出す前に音声の警報で室内の人に退避を知らせます。
ところが同じ建物に非常放送(放送設備)があると、火災の放送とガスの警報が同時に流れて聞き取れなくなるおそれがあります。
どちらの音を優先するのか、スピーカーはどこまでの範囲に届けばよいのでしょうか。
大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、ガス系消火設備の節と放送設備の節の両方に同じ趣旨の決まりを書いています。
この記事では、国の基準と大阪市の取扱いを分けて読み、基準どうしの準用のつながりをたどったうえで、堺市の基準と比べます。
大阪市で、電気室に二酸化炭素の消火設備を付ける計画があります。
建物の非常放送とぶつからないか心配です。
大阪市の運用基準では、音声の警報が流れている間は放送設備の鳴動を自動で止めるのが基本です。
まず国の基準から確かめましょう。
放送設備の工事をする側も知っておくべきことなのですね。
はい、消火設備の節と放送設備の節の両方に書かれています。
つながりを順にたどっていきましょう。
- 国の消防法施行規則第19条第5項第17号は、音響警報装置が起動と連動して鳴り、全域放出方式では音声による警報とすることなどを求めています
- 大阪市の二酸化炭素の基準は、防護区画の各部分から音響警報装置まで水平距離25メートル以下とし、暗騒音で聞こえにくいときは赤色の回転灯を付けるとしています
- 音声メッセージが流れている間は、放送設備又は共同住宅用自動火災報知設備の鳴動を自動的に停止するか、位置や音圧の調整で伝達に支障がないようにします
- 窒素などの基準は二酸化炭素の(1)と(3)を借り、ハロゲン化物と粉末は窒素などの基準を借ります。放送設備の節にも同じ趣旨の決まりがあります
- 堺市の審査基準も25メートルと回転灯を置いていますが、止める対象を「音声で警報を発する自動火災報知設備」と書くなど書き方が違います
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目次
国の基準ではガス系消火設備の音響警報装置に何を求めているのか

イ 手動又は自動による起動装置の操作又は作動と連動して自動的に警報を発するものであり、かつ、消火剤放射前に遮断されないものであること。
ロ 音響警報装置は、防護区画又は防護対象物にいるすべての者に消火剤が放射される旨を有効に報知できるように設けること。
ハ 全域放出方式の不活性ガス消火設備に設ける音響警報装置は、音声による警報装置とすること。
ハロゲン化物消火設備は第20条第4項第13号、粉末消火設備は第21条第4項第15号で、この17号を「例による」として借りています。ハロン1301の全域放出方式は、音声による警報装置としないことができるとされています(ハロン1301の音響警報の省略を解説した記事)。
国の条文が決めているのは、「すべての者に有効に報知できるように」までです。スピーカーを何メートルおきに置くか、ほかの放送とどう両立させるかは条文に書かれていません。警報音の音圧や14秒の区切りといった告示の中身は、音響警報装置の基準を解説した記事で読めます。
国の条文は「有効に報知」というところまでなのですね。
はい、配置やほかの放送との関係は各消防本部の基準で確かめます。
次の見出しで大阪市の二酸化炭素の基準を読みます。
大阪市で二酸化炭素消火設備の音響警報装置はどこまで届けばよいのか

(2) 防護区画又は隣接部分を経由しなければ避難することのできない部分が存する場合は、当該部分にも、防護区画の起動装置の作動と連動して警報を発することのできる音響警報装置を設けること◆
(3) 防護区画の各部分から音響警報装置までの水平距離が25メートル以下となるよう反響等を考慮して設けること。なお、暗騒音により、音響警報装置のみでは効果が期待できないと認められる場合には、赤色の回転灯を付置すること◆
| 防護区画の大きさ(仮) | 警報装置の位置 | いちばん遠い隅までの水平距離 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 40m×20m | 中央に1台 | 約22.4m | 25m以下 |
| 60m×20m | 中央に1台 | 約31.6m | 25mを超える |
| 60m×20m | 左右の半分の中央に1台ずつ | 約18.0m | 25m以下 |
発電機室のように機械の音が大きい部屋では、赤色の回転灯を付けて目でも知らせます。(2)は、たとえば防護区画の奥にある倉庫のように、防護区画を通らないと外へ出られない部屋にも警報装置を付けて連動させるという決まりです。隣接部分の扱いは防護区画に隣接する部分の保安措置を解説した記事で読めます。
25メートルは、部屋のいちばん遠い隅から測るのですね。
はい、防護区画の各部分から25メートル以下です。
奥の部屋がないかも図面で確かめましょう。
大阪市でガスの警報が流れている間は非常放送を止めるのか

また、「自動的に停止し、又は」とあるので、スピーカーの位置や音圧レベルの調整で聞き分けられるようにする方法も書かれています。どちらを選ぶかは、所轄の消防署と相談して決めることになります。
同じ趣旨の決まりは、放送設備の節にも置かれています。第2章 第6節(非常警報設備(放送設備))の増幅器等の設置方法です。
確かめる順番は次のとおりです。
- ガス系消火設備が全域放出方式で、音声で警報するものかを確かめる
- 防護区画(二酸化炭素なら隣接部分も)にかかる放送設備のスピーカーの回線を洗い出す
- 共同住宅なら、共同住宅用自動火災報知設備の音響装置も対象に入れる
- 音声メッセージの間、その範囲の鳴動を自動で止めるか、位置や音圧の調整で聞き分けられるかを決める
- 消火設備の業者と放送設備の業者で、連動の信号をどちらからどちらへ送るかを図面で合わせる
止めるのは建物全体ではなく、防護区画のまわりだけなのですね。
はい、防護区画と隣接部分の鳴動が対象です。
二つの業者の取り合いを早めに決めましょう。
大阪市で窒素やハロゲン化物や粉末の消火設備はどの基準を借りるのか

(1) 防護区画を経由しなければ避難することのできない部分が存する場合は、当該部分にも、防護区画の起動装置の作動と連動して警報を発することのできる音響警報装置を設けること
(2) 音響警報装置から音声メッセージが発せられている間は、当該防護区画については、放送設備又は共同住宅用自動火災報知設備の鳴動を自動的に停止し、又は設置位置、音圧レベルの調整等により、音声メッセージ等の内容の伝達に支障をきたさないよう措置すること
ハロゲン化物と粉末の消火設備は、自分では書かずに窒素などの第2 10を借ります。
| 消火剤 | 大阪市の項目 | 借りる先 | 止める範囲 |
|---|---|---|---|
| 二酸化炭素 | 第8節 第2 10 | (土台) | 防護区画と隣接部分 |
| 窒素・IG-55・IG-541 | 第8節の2 第2 10 | 二酸化炭素の10(1)(3) | 防護区画 |
| ハロン1301 | 第9節 第3 11 | 窒素などの第2 10 | 防護区画 |
| HFC-23など | 第9節の2 第2 10 | 窒素などの第2 10 | 防護区画 |
| 粉末 | 第10節 第2 12 | 窒素などの第2 10 | 防護区画 |
なお、放送設備の節の第3 1(2)セが名前を挙げているのは不活性ガス消火設備とハロゲン化物消火設備で、粉末消火設備の名前はありません。粉末の設備は第1章の準用の側で確かめます。ハロン1301で音声によらない警報装置を選んだときの扱いは、基準に書かれていないため所轄の消防署で確かめてください。
粉末の設備は、二つ先の基準まで読まないと分からないのですね。
はい、粉末→窒素など→二酸化炭素の順にたどります。
止める範囲が防護区画だけになる点も確かめましょう。
堺市や東大阪市では音響警報装置の基準は違うのか

なお、騒音の大きな防護区画等で警報装置だけでは効果が期待できない場合には、赤色回転灯の視覚による警報装置を併設すること。◆①
ウ 他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるように、音響警報装置から音声メッセージが発せられている間は、当該防護区画及び防護区画に隣接する部分については、自動火災報知設備(音声により警報を発するものに限る。)又は放送設備の鳴動を自動的に停止し、又は設置位置若しくは音圧レベルの調整により、音声メッセージの内容の伝達に支障を来たさないよう措置すること。★
堺市の窒素など(Ⅱ 2(12))とハロゲン化物(第8 Ⅱ 2(11))は、(13)のアとウを除いて借り、「当該防護区画については」と範囲を絞った同じ趣旨の文を置いています。範囲が防護区画だけになる点は大阪市と同じです。
公開されている基準で確かめた結果を並べると、次のとおりです。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 水平距離 | 音響警報装置まで25m以下(◆) | スピーカーまで25m以下(★) |
| 回転灯 | 暗騒音で効果が期待できないと認められる場合に付置(◆) | 騒音の大きな防護区画等で併設(◆) |
| 鳴動を止める設備 | 放送設備又は共同住宅用自動火災報知設備 | 音声で警報を発する自動火災報知設備又は放送設備 |
| 止める範囲(二酸化炭素) | 防護区画と隣接部分 | 防護区画と隣接部分 |
| 止める範囲(窒素など) | 防護区画 | 防護区画 |
| 経由しないと避難できない部分 | 連動の警報装置を設ける | (13)には同じ項目は見当たらない |
| 防護区画と隣接部分の警報 | 記載は見当たらない | 同一の内容とすることができる(◆) |
| 放送設備の基準側 | 第2章 第6節 第3 1(2)セにも記載 | 公開の基準では見当たらない |
大阪市のガス系消火設備の排出の基準は大阪市の排出措置の記事で堺市と比べています。
25メートルは同じでも、止める設備の書き方が違うのですね。
はい、大阪市は共同住宅用、堺市は音声で警報する自動火災報知設備を挙げています。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず防護区画にかかる放送のスピーカーを洗い出します。
消火設備と放送設備の業者で連動を合わせます!
大阪市では、25メートル以内の配置と、音声の間の鳴動停止が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第8節 不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するもの) 第2 10 音響警報装置・12(10)ウ、第8節の2 不活性ガス消火設備(窒素・IG-55・IG-541を放射するもの) 第2 10、第9節 ハロゲン化物消火設備(ハロン1301を放射するもの) 第3 11、第9節の2 ハロゲン化物消火設備(HFC-23・HFC-227ea・FK-5-1-12を放射するもの) 第2 10、第10節 粉末消火設備 第2 12、第2章 第6節 非常警報設備(放送設備) 第3 1(2)セ https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第7 不活性ガス消火設備 Ⅱ 1(13)・2(12)・3(11)、第8 ハロゲン化物消火設備 Ⅱ 2(11) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行規則 第19条第5項第17号・第19号の2・第20条第4項第13号・第21条第4項第15号
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。記事中の距離の計算例は説明のための仮の数字です。個々の設備の警報と放送の取り合いは、所轄の消防署にご確認ください。





