1階がお店や事務所で、上の階に家族で住んでいる3階建ての建物は、大阪市内でもよく見かけます。
国の基準では、3階以上の階で床面積が50平方メートル以上あると、その階にも消火器具を置くことになります。
ところが大阪市の「消防用設備等の設置に係る運用基準」は、その階が住宅だけなら消火器具を設置しないことができるという特例を置いています。
同じ特例基準には、電話局などの通信機器室で電気設備用の消火器を建物用とみなす規定も並んでいます。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、2つの特例が何を借りているのかを順にたどって、東大阪市・堺市の基準と比べます。
大阪市で、1階がお店で3階が自宅の小さなビルを持っています。
3階の自宅にも消火器を置かないといけませんか?
国の基準では、3階以上の階で床面積が50平方メートル以上なら、その階にも消火器具が必要です。
ただし大阪市の運用基準には、住宅だけの階は設置しないことができる特例があります。
国の基準と大阪市の特例で、答えが変わるのですね。
はい、国の基準と大阪市の特例を分けて読むと整理できます。
順にたどっていきましょう。
- 消防法施行令第10条第1項第5号は、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上の階に消火器具を求めています
- 大阪市の運用基準 第4 特例基準の4は、その階が住宅(個人の住居で、共同住宅等を除く)だけなら消火器具を設置しないことができるとしています
- 特例の4は、第5号で設置が必要になる階に限った書き方なので、店舗や事務所が混じる階や共同住宅の住戸には当たりません
- 特例の5は、電話局等の通信機器室で、電気設備用の消火器を建物用の消火器とみなすことができるとしています
- 東大阪市・堺市の公開されている基準には、住宅だけの階と通信機器室の同じ特例は見当たりません
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目次
国の基準では3階の住まいにも消火器がいるのか

第1号から第4号は建物の用途や延べ面積、少量危険物などで建物全体を対象にする規定で、第5号はそれ以外の建物の「階」に着目した規定です。
五 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(地下建築物にあつては、その各階をいう。以下同じ。)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの
一 第一項及び第五項に規定するもの(次号に掲げるものを除く。) 防火対象物の階ごとに、当該防火対象物の各部分
- 建物が消防法施行令の別表第一に掲げる防火対象物に当たるかを確かめる(住宅部分の割合などで扱いが変わるので、所轄の消防署で確かめる)
- 第10条第1項第1号から第4号で、建物全体が消火器具の対象になるかを確かめる
- 対象にならなければ第5号に進み、地階・無窓階・3階以上の階で、床面積が50平方メートル以上の階を拾い出す
- 拾い出した階には、規則第6条第1項の能力単位と第6項の歩行距離20メートル以下に従って消火器具を置く
国の条文だけだと、自宅だけの3階にも消火器が必要になるのですね。
はい、第5号は階の位置と床面積で決まります。
大阪市の特例は、ここに手を入れています。
大阪市は住宅だけの階の消火器をどう扱っているのか

- 国の基準(消防法施行令第10条第1項第5号)で、地階・無窓階・3階以上の階で50平方メートル以上の階が消火器具の対象になる
- 大阪市の特例の4は、その「第5号の規定により設置しなければならない階」を出発点にしている
- その階が住宅の用途に供される部分のみかを確かめる
- かっこ書きで、住宅は個人の住居で、共同住宅等を除くと確かめる
- 第4の柱書で、消防法施行令第32条又は大阪市火災予防条例第47条を適用する特例だと確かめ、消火器具を設置しないことができる
1階の店舗の消火器具は別の話なので、建物の用途や延べ面積に応じて国の基準どおりに確かめます。
大阪市では、住まいだけの階なら消火器を置かなくてもよいのですね。
はい、ただし「設置しないことができる」という特例です。
家族の安全のために、住宅用消火器を自分で備えておくのはよい心がけです。
大阪市の住宅だけの階の特例が使えないのはどんな場合か

| ケース | 特例の4の読み方 |
|---|---|
| 3階に住まいと小さな事務所が同じ階にある | 「住宅の用途に供される部分のみ」に当たらないので、特例の4は使えない |
| 3階がマンションやアパートの住戸 | かっこ書きで共同住宅等が除かれているので、特例の4の住宅に当たらない |
| 建物全体が第1号から第4号で消火器具の対象 | 特例の4は第5号で設置が必要になる階に限った書き方なので、この書き方には当たらない |
| 地階や無窓階が住宅だけ | 地階・無窓階も第5号の対象なので、住宅だけなら特例の4の書き方に当たると読める |
| 3階の住まいの床面積が50平方メートル未満 | そもそも第5号の対象にならないので、特例を使うまでもない |
同じ第4の6には、長屋の一部を店舗に使う場合に住戸ごとに判定する特例もあります。くわしくは大阪市の長屋を住戸ごとに判定する特例の記事で解説しています。
同じ3階でも、事務所が少し入るだけで特例から外れるのですね。
はい、条文は「部分のみ」と書いています。
改装で階の使い方を変えるときは、消火器の配置も見直しましょう。
大阪市で通信機器室の消火器は電気設備用で足りるのか

- 規則第6条第1項で、建物には「建築物その他の工作物」の消火に適応する消火器を能力単位に応じて置く
- 同条第2項で、耐火構造で内装を難燃材料にした建物は、算定の面積が2倍になる(この項の適用を受ける通信機器室が特例の対象)
- 同条第4項で、電気設備がある場所には電気設備に適応する消火器を床面積100平方メートル以下ごとに1個置く
- 同条第6項で、どちらも歩行距離20メートル以下になるように配置する
- 大阪市の特例の5で、電話局等の通信機器室では、電気設備用の消火器を第4項と第6項どおりに置けば、建物用の消火器を置いたものとみなすことができる
なお、大阪市の運用基準は第1の2(7)で、建物用と電気設備用などの消火器を兼用できる一般的なルールも置いています。
ア 能力単位は、それぞれの数値の合計数以上とすること
イ 種別は、それぞれに適応するものであること
二酸化炭素やハロゲン化物を放射する消火器は、消防法施行令第10条第2項第1号ただし書で、地階・無窓階など設置してはいけない場所があります。通信機器室に置く消火器の種類は、業者と確かめて選びましょう。
サーバー室なら、電気設備用の消火器にそろえてよい場合があるのですね。
はい、ただし特例の5は電話局等の通信機器室で、規則第6条第2項の適用を受けるものが対象です。
対象に当たるかは所轄の消防署で確かめましょう。
東大阪市と堺市では住宅だけの階や通信機器室の扱いは違うのか

東大阪市の「消火器具の設置に係る運用基準」は、特例基準を次の柱書で始めています。
また東大阪市は、規則第6条第3項から第5項の場所があれば、第1項と第2項で設置した消火器具とは別に消火器具を設置すると書いています。
イ 浄水場又は汚水処理場等の用途に供する建築物で、内部の設備が、水管、貯水池又は貯水槽のみであるものにあっては、設置しないことができる。
| 項目 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 地階・無窓階・3階以上で50平方メートル以上の階の消火器具 | 消防法施行令第10条第1項第5号(国の基準) | 同じ | 同じ |
| その階が住宅だけなら設置しないことができる | 第4 特例基準の4 | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている審査基準に記載は見当たらない |
| 通信機器室で電気設備用の消火器を建物用とみなす | 第4 特例基準の5 | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている審査基準に記載は見当たらない |
| 消火器具を設置しないことができる特例 | 住宅だけの階 | 記載は見当たらない | 浄水場・汚水処理場等(★) |
| 特例の根拠として柱書に挙がる規定 | 消防法施行令第32条又は条例第47条 | 消防法施行令第32条又は条例第52条 | 消防法施行令第32条又は条例第72条 |
消防法施行令第32条の判断は消防長や消防署長が行うので、住まいだけの階や通信機器室の消火器は、各市の所轄の消防署で確かめてください。
3つの市で、消火器を置かなくてよい場所の書き方がそれぞれ違うのですね。
はい、住宅だけの階の特例を明文で書いているのは3市の中で大阪市です。
ほかの市では、相談の段階で確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
3階の住まいは住宅だけの階の特例に当たるか、所轄の消防署で確かめます。
改装で事務所を入れるときは、消火器も見直します!
大阪市では、住宅だけの階は消火器具を設置しないことができるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第1節 消火器具 第1 消火器 2 付加設置 (7)、第4 特例基準(柱書・4・5) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「消火器具の設置に係る運用基準」4 消火器具の設置単位 (1)、5 特例基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第1 消火器具 Ⅱ 細目 1 設置場所等 (3) 特例適用基準 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/setubikijun.html
- 消防法施行令 第10条・第32条、消防法施行規則 第6条
※本記事は公表されている法令および大阪市・東大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の消火器具の設置は、所轄の消防署にご確認ください。





