事務所や工場の軒下、倉庫や納屋の隅に、何年も置いたままの消火器はありませんか。
平成21年9月15日と16日に、大阪市東成区と福岡県行橋市で、腐食が進んだ消火器を操作して破裂し、けがをしたと見られる事故が続けて起きました。
消防庁予防課長は翌17日、消防予第394号で、全国の消防に老朽化消火器の周知の徹底を求めています。
この記事では、通知の背景、別紙の事故一覧、求めた2つの事項、読むときの注意点、明日の確認手順を解説します。
軒下に置きっぱなしの消火器が、急に心配になってきました。
国は、こういうときに何を求めているのですか。
消防庁は事故を受けて、周知の徹底を求める通知を出しました。
まず、通知の中身を順に確かめましょう。
火事を消すための消火器が破裂するなんて、本当にあるのですか。
通知の別紙に、過去10年の事故の一覧が載っています。
その中身も、順に見ていきます。
- 消防庁予防課長は平成21年9月17日の消防予第394号で、住民や事業者への老朽化消火器の周知を一層徹底するよう消防機関に求めました。
- 通知は、9月15日に大阪市東成区、16日に福岡県行橋市で、腐食が進んだ消火器を操作して破裂し受傷したと見られる事故が相次いだと述べています。
- 求めた事項は2つで、腐食が進んだ消火器は絶対に使用しないことと、廃棄処理を自ら行わず回収事業者に依頼することです。
- 別紙には過去10年の事故が10件載り、死者は2件、負傷者は8件で、破損箇所が容器の底部だった事故が9件でした。
- 通知は消防組織法第37条に基づく助言で、新しい義務を定めたものではありません。設置場所は、現行の規則第9条第2号が変質するおそれが少ない箇所と定めています。
▼
目次
消防庁はなぜ老朽化消火器の周知を徹底するよう求めたのか

まず、通知の書き出しで経緯を確かめます。
老朽化消火器の破裂による人身事故防止については、平成13年度に全国で3件の死傷者を伴う事故が発生したことを受け、同年以降、全国火災予防運動において老朽化消火器の適正な回収を推進する(略)。しかしながら、去る9月15日及び16日に大阪市東成区及び福岡県行橋市において、腐食が進んだ消火器を操作したことにより、消火器が破裂し受傷したと見られる事故が相次いで発生しました(別紙参照)。
宛先は、各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・指定都市消防長で、差出人は消防庁予防課長です。
通知は、平成13年度の3件の事故を受けて、同年以降、全国火災予防運動で老朽化消火器の適正な回収を進めてきたと述べています。
あわせて、平成13年3月9日付けの消防予第77号「消火器の廃棄に際しての事故防止について」等を踏まえた指導もお願いしてきたと書いています。
それでも事故が続いたため、あらためて周知を求めました。
| 項目 | 通知の内容 |
|---|---|
| 通知 | 消防予第394号(平成21年9月17日、消防庁予防課長) |
| 宛先 | 各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・指定都市消防長 |
| きっかけの事故 | 9月15日に大阪市東成区、16日に福岡県行橋市で、腐食が進んだ消火器を操作して破裂し受傷したと見られる事故 |
| 過去の取組 | 平成13年度以降、全国火災予防運動で老朽化消火器の適正な回収を推進 |
| 通知の性格 | 消防組織法第37条に基づく助言 |
事故が続けて起きたので、あらためて通知が出たのですね。
はい。
過去の取組があっても事故が続いたことが、出発点です。
過去10年の事故は、どんな場面で起きていたのか

件数と場面を、別紙の表から数えて整理します。
(注)(社)日本消火器工業会の調査及び関係消防本部からの報告による。
死者が出たのは、平成13年3月の名古屋市と4月の帯広市の2件です。
状況欄をもとに分けると、廃棄のための操作が4件、解体や分解中が2件、子供が遊んでいたときが2件で、火を消そうとした操作と移動の際が1件ずつです。
破損箇所は、9件が容器の底部で、1件が口金でした。
製造からの年数が書かれた7件は、いずれも12年以上たっていて、最短が12年、最長が27年です。
| 発生年月 | 場所 | 被害 | 製造からの年数 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 平成11年12月 | 東京都北区 | 負傷者1名 | 12年 | 解体作業中 |
| 平成13年3月 | 名古屋市 | 死者1名 | 22年 | 廃棄のための放射操作 |
| 平成13年4月 | 北海道帯広市 | 死者1名 | 24年 | 野焼きの火を消火しようとして操作 |
| 平成13年11月 | 福島県いわき市 | 負傷者1名 | 26年 | 子供が遊んでいたところ破裂 |
| 平成16年7月 | 千葉県八千代市 | 負傷者1名 | 記載なし | 分解中に口金が割れ、ガスが噴出 |
| 平成18年4月 | 佐賀県佐賀市 | 負傷者1名 | 記載なし | 設置していた消火器を移動した際、底部の腐食部分が破裂 |
| 平成18年9月 | 京都府京都市 | 負傷者1名 | 17年 | 下水へ流すため安全栓を抜きレバーを握ったところ破裂 |
| 平成20年4月 | 北海道函館市 | 負傷者1名 | 27年 | 廃棄するためレバーを握ったところ破裂 |
| 平成21年9月 | 大阪府大阪市 | 負傷者1名 | 20年 | 子供が遊んでいたところ、屋外駐車場に置かれていた消火器が破裂 |
| 平成21年9月 | 福岡県行橋市 | 負傷者1名 | 記載なし | 納屋の軒下に置かれていた消火器を自ら廃棄しようと操作したところ破裂 |
廃棄しようとして操作した場面が、目立ちますね。
はい。
廃棄のための操作が、通知のもう一つの柱につながります。
通知は住民や事業者に何を周知するよう求めたのか

通知の「記」以下の文章で確かめます。
1 消火器が風雨にさらされる場所や湿潤な場所等に設置されていないかを確認するとともに、消火器の状態を点検し、腐食が進んでいるものは、絶対に使用しないこと。
2 不用になった消火器については、放射、解体等の廃棄処理を自ら行うことなく、回収を行っている事業者に廃棄処理を依頼すること。特に、腐食が進んでいる加圧式の消火器は、容器破裂の危険性が大きいので、速やかに廃棄処理を依頼することが望ましいこと。
各地域における廃消火器リサイクルの回収窓口及びその連絡先の一覧表を作成し、配布・広報する等、消火器の回収先の周知も併せて行うようお願いします。
一つ目は、消火器が風雨にさらされる場所や湿潤な場所等に置かれていないかを確認し、状態を点検して、腐食が進んだものは絶対に使用しないことです。
二つ目は、不用になった消火器の放射や解体等を自ら行わず、回収を行っている事業者に依頼することです。
腐食が進んでいる加圧式は容器破裂の危険性が大きいとして、速やかな廃棄処理の依頼が望ましいとされています。
あわせて、地域の回収窓口と連絡先の一覧表を作り、配布・広報することも求めています。
| 項目 | 通知の言葉 |
|---|---|
| 設置場所の確認 | 消火器が風雨にさらされる場所や湿潤な場所等に設置されていないかを確認する |
| 状態の点検 | 消火器の状態を点検し、腐食が進んでいるものは、絶対に使用しない |
| 廃棄の依頼 | 放射、解体等の廃棄処理を自ら行うことなく、回収を行っている事業者に廃棄処理を依頼する |
| 加圧式の廃棄 | 腐食が進んでいる加圧式の消火器は、速やかに廃棄処理を依頼することが望ましい |
| 回収先の周知 | 廃消火器リサイクルの回収窓口及びその連絡先の一覧表を作成し、配布・広報する等 |
腐食した消火器は使わず、廃棄は業者に任せるのが原則なのですね。
そのとおりです。
自分で放射や解体をしないことが大切です。
通知を読むときに見落としやすいのはどこか

通知の性格、原因の書き方、年数の目安、設置場所の規定です。
消火器具は、水その他消火剤が凍結し、変質し、又は噴出するおそれが少ない箇所に設けること。ただし、保護のための有効な措置を講じたときは、この限りでない。
通知の末尾には、消防組織法第37条に基づく助言として発出すると書かれています。
二つ目は、通知が事故を「腐食が進んだ消火器を操作したことにより、消火器が破裂し受傷したと見られる」と書き、原因を断定していない点です。
三つ目は、通知本文には、製造から何年で廃棄するかという年数の目安が書かれていない点です。別紙の経過年数は12年から27年の7件を載せているだけです。
四つ目は、設置場所です。規則第9条第2号は、消火剤が変質し、又は噴出するおそれが少ない箇所への設置を定めています。
通知は、この条文を引いていません。「風雨にさらされる場所や湿潤な場所」の確認と結びつけるのは、この記事の整理です。
| 見落としやすい点 | 通知や条文の書き方 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 通知の性格 | 消防組織法第37条に基づく助言 | 新しい義務ではなく、既存の基準と点検を確かめる機会と読む |
| 事故の原因 | 「腐食が進んだ消火器を操作したことにより、消火器が破裂し受傷したと見られる」 | 断定ではなく「見られる」と書かれていると押さえる |
| 年数の目安 | 通知本文に年数の基準はない。別紙は製造からの年数が12年から27年の7件を載せる | 通知だけで廃棄の年を決めず、外観と製造年の表示を確かめる |
| 設置場所 | 規則第9条第2号は、消火剤が変質し、又は噴出するおそれが少ない箇所に設けると定める | 風雨や湿気にさらされていないか、置き場所を見直す |
年数の目安は、通知に書かれていないのですね。
はい。
外観と製造年の表示を、自分の目で確かめてください。
明日からなにを確認すればよいのか

そこで、通知と条文から、確認したい点を五つに整理します。
(略)消火器の状態を点検し、腐食が進んでいるものは、絶対に使用しないこと。(略)放射、解体等の廃棄処理を自ら行うことなく、回収を行っている事業者に廃棄処理を依頼すること。
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
個別の適否は、所轄の消防署で確かめてください。
- 屋外、軒下、物置、納屋など、風雨や湿気にさらされる場所に消火器を置いていないか、見て回る
- 容器の底部や周りに、さびや腐食が無いか、外観を確かめる
- 腐食が進んでいるものは、絶対に使用せず、交換や廃棄の手配を進める
- 不用になった消火器は、放射や解体を自分でせず、回収を行っている事業者へ依頼する
- 回収窓口が分からないときは、所轄の消防署に、地域の回収先を尋ねる
まず、うちの消火器の置き場所を見に行きます。
それが入り口です。
容器の底部まで、見てください。
よくある質問
まとめ
消火器の置き場所と外観から、確かめます!
消火器の点検と交換は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第394号「老朽化消火器の適切な取扱いに係る周知の徹底について」(平成21年9月17日 消防庁予防課長)別紙「過去10年間における老朽化消火器の破裂による人身事故の状況」
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第9条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





