防火管理者や管理権原者として建物を管理していると、テナントの入れ替えや事業内容の変更にあわせて、用途そのものを変えたいという相談を受けることがあります。
建築基準法第87条第3項は、既存不適格建築物が用途を変更する場合に、原則として第27条・第28条・第35条・第48条など幅広い規定の準用を求めています。
ただし用途の変更が類似の用途相互間にとどまり、増築や大規模な修繕・模様替を伴わない場合には、この準用を免れる範囲が定められています。
この記事では、建築基準法施行令第137条の19が定める類似の用途の範囲と、そこに含まれない第48条の用途規制の扱いを整理します。
うちのテナントを劇場から映画館に変えたいのですが、用途を変えるだけでも建築基準法の基準を新たに満たさないといけないんでしょうか。
場合によります。
用途の変更が類似の用途相互間にとどまれば、基準の準用を免れることがあります。
どんな用途の組み合わせが対象になるのか知りたいです。
施行令第137条の19が対象になる組み合わせを定めています。
順番に確認していきましょう。
- 既存不適格建築物が用途を変更する場合、原則として第27条・第28条・第35条・第48条など幅広い規定の準用を受けます(法第87条第3項)。
- 準用を免れるのは、用途の変更が類似の用途相互間にとどまり、増築・改築や大規模の修繕・模様替を伴わない場合です。
- 施行令第137条の19第1項は、類似の用途の組み合わせを劇場等・病院等・ホテル等・博物館等の4つのグループに分けて定めています。
- ただし第48条第1項から第14項まで(用途地域)の規定については、第1項の組み合わせとは別に、施行令第137条の19第2項が定める範囲でのみ準用を免れます。
- 用途変更を計画するときは、第1項の類似の用途と第2項の別枠の両方を確認する必要があります。
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目次
なぜ用途変更のたびに広い範囲の規定の準用を問われるのか

既存不適格建築物が用途を変更する場合の準用のルールを定めているのが、法第87条第3項です。
対象になる規定は、第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)、第28条(居室の採光及び換気)、第35条(廊下・避難階段など)、第48条(用途地域)など多岐にわたります。
条文にある「用途の変更」とは、建物の構造はそのままに、使い方(用途)だけを変えることを指します。
ただし次の各号のいずれかに該当すれば、この準用を免れます。次章で対象になる要件を確認します。
用途を変えるだけなのに、新築と同じ基準まで求められるのは意外でした。
免れる方法はあるんでしょうか。
あります。
次の章で、免れるための要件を確認しましょう。
どんな用途変更なら第137条の19の緩和の対象になるのか

このうち第137条の19が関わるのは、類似の用途間の変更を扱う号です。
あわせて、増築・改築をしないこと、修繕や模様替をしないか、修繕や模様替をしても大規模でないことも条件になります。
増築や大規模の修繕・模様替を伴う用途変更は、この号ではなく別の号(増築等の号)で扱われ、この緩和の対象になりません。
「類似の用途」の具体的な組み合わせは、施行令第137条の19が定めています。次章で確認します。
増築とセットの用途変更は対象外なんですね。
肝心の「類似の用途」の中身を教えてください。
施行令第137条の19第1項が、具体的な組み合わせを号ごとに示しています。
次に見ていきましょう。
施行令第137条の19が定める類似の用途の組み合わせとは

前条(第137条の18)で確認申請が省略できる用途とされた一部の用途も、この号に取り込まれています。
一 劇場、映画館、演芸場、公会堂、集会場
二 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
三 ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎
四 博物館、美術館、図書館
第1号は劇場・映画館・演芸場・公会堂・集会場、第2号は病院・診療所(患者の収容施設があるものに限る)・児童福祉施設等というように、利用形態が近い用途どうしが同じ号に入っています。
これに加えて、前条(第137条の18)第8号から第11号まで(百貨店等・キャバレー等・待合や料理店・映画スタジオ等)に掲げる用途も、そのままこの号の対象に含まれます。
この組み合わせに当てはまれば準用は免れますが、第48条(用途地域)だけは別枠で判断される点に注意が必要です。次章で説明します。
うちはホテルから旅館への変更なので対象に入りそうです。
これで用途地域の基準も気にしなくてよいですか。
そこは注意が必要です。
次の章で、用途地域の基準が別枠になる理由を説明します。
第48条の用途規制だけはなぜ当然には緩和されないのか

第48条に関しては、第2項が別の範囲を定めています。
一 次のイからホまでのいずれかに掲げる用途である場合において、それぞれ当該イからホまでに掲げる用途相互間におけるものであること(略)。
二 法第四十八条第一項から第十四項までの規定に適合しない事由が原動機の出力、機械の台数又は容器等の容量による場合においては、用途変更後のそれらの出力、台数又は容量の合計は、基準時におけるそれらの出力、台数又は容量の合計の一・二倍を超えないこと。
三 用途変更後の同項の規定に適合しない用途に供する建築物の部分の床面積の合計は、基準時における床面積の合計の一・二倍を超えないこと。
第2項第1号は法別表第2の用途区分に基づく独自の組み合わせで、第1項の劇場等・病院等・ホテル等・博物館等の分け方とは一致しません。
さらに原動機の出力や床面積が基準時の1.2倍を超える場合は、この別枠にも当てはまらなくなります。
似た条文に施行令第137条の18がありますが、あちらは確認申請の要否(法第87条第1項)を扱う規定で、今回の第137条の19(用途変更に伴う準用全般・法第87条第3項)とは対象になる場面が異なります。
用途地域の基準だけ別枠なんですね。
取り違えないように、最後に確認手順を教えてください。
承知しました。
最後に用途変更を計画するときの確認手順をまとめます。
用途変更を計画するときはなにを確認すればよいか

判断に迷う部分は、早めに特定行政庁や専門家へ相談するのが安全です。
- 変更前後の用途が、施行令第137条の19第1項の劇場等・病院等・ホテル等・博物館等のいずれかの組み合わせに当てはまるかを確認する
- 増築・改築や大規模の修繕・模様替を伴わないか、伴う場合は修繕・模様替が大規模でないかを確認する
- 用途変更後の建物が第48条(用途地域)の規定に適合しない場合、施行令第137条の19第2項の別枠に当てはまるかを個別に確認する
- 原動機の出力や床面積の変化が基準時の1.2倍を超えていないかを確認する
- 用途変更に着工する前に特定行政庁または指定確認検査機関へ適用関係を相談する
着工後に対象範囲を誤っていたと分かると、テナント契約や営業計画の見直しにつながります。
用途地域の基準だけ別枠で確認するようにします。
次はよくある質問も見てみます。
はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。
よくある質問
まとめ
用途変更を計画するときは、類似の用途と第48条の別枠の両方を確認します!
用途変更や増築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第27条・第28条・第35条・第48条・第87条
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の18・第137条の19
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における該当性は、構造や規模、周辺の状況によって異なります。具体的な判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





