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災害緊急事態の布告で何が変わるのか|対処基本方針と国民への協力要請を解説

災害緊急事態の布告を解説する記事のアイキャッチ画像。演台とマイクが置かれた空の記者会見室

大規模な災害が起きたとき、国がどう動くのか、私たちに何が求められるのかと気になる方は多いと思います。
災害対策基本法は、災害緊急事態の布告という仕組みを定めています。
布告があると、政府は対処基本方針を定め、国民にも協力を求めることができます。
国の通知と条文で、その中身を確かめます。

大規模な災害のとき、国が何をするのかよくわかりません。

はい、災害緊急事態の布告という仕組みが法律に定められています。

私たちにも何か求められるのでしょうか。

協力の求めの規定があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 内閣総理大臣は、閣議にかけて災害緊急事態の布告を発することができるとされています(災害対策基本法第105条第1項)。
  • 布告があったときは、政府は対処基本方針を定め、内閣総理大臣が案を作成して閣議の決定を求め、決定後は直ちに告示します(第108条)。
  • 通知は、布告が全国を対象として発せられ得るため、緊急災害対策本部の所管区域と布告の区域を分離したと説明しています。
  • 内閣総理大臣は、国民に物資をみだりに購入しないことなどの協力を求めることができ、国民はこれに応ずるよう努めます(第108条の3)。
  • 布告があると、第86条の2から第86条の5までの特例措置を自動的に適用できると通知は説明しています。

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災害緊急事態の布告で動く仕組みを示す図解(対処基本方針を決定、災害の状況を公表、買いだめの自粛など協力を要請、特例措置が自動的に適用の4つ)

災害緊急事態の布告は、なぜ大規模災害への対処として整えられたのか

左に屋根が壊れた低い市役所、右に旗竿のある政府庁舎、背後に貨物船と貨物列車と送電鉄塔が並ぶイラスト

大規模な災害では、被害が被災地だけの問題で終わらないことがあります。
通知は、その場合に政府が一体となって動くための規定として説明しています。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)大規模広域災害が発生した場合、被災地における甚大な人的・物的被害にとどまらず、全国レベルの経済的混乱や、国民生活への支障が生ずるおそれがある。このような事態に、政府が一体となって、災害応急対策、国民生活や経済活動等国の経済の秩序の維持、その他当該災害に係る重要な課題に対応するためには、これらを貫く政府の大方針が不可欠であると考えられる。
(災害対策基本法第105条第1項)非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進し、国の経済の秩序を維持し、その他当該災害に係る重要な課題に対応するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる。

災害緊急事態は、政府が一体で対処するための仕組みです。
通知は、被害が被災地にとどまらず、全国レベルの経済的混乱や国民生活への支障につながるおそれを挙げています。
そうした事態には、政府が一体となって動くための「政府の大方針」が不可欠だと説明しています。
第105条第1項は、内閣総理大臣が閣議にかけて布告を発することができると定めています。
通知は、この大方針の規定に合わせて、布告の要件も改めたと述べています。

被災地だけでなく、全国に影響するおそれがあるのですね。

通知は政府の大方針が不可欠だと説明しています。

布告の区域と本部の所管区域、特例措置はどう扱われるのか

左に赤い印の付いた巻物が置かれた演壇、右に幅の広い政府の建物があるイラスト

布告が出たとき、その区域と、置かれる本部の区域は同じとは限りません。
通知は、その点を条文の見直しとして説明しています。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)(略)災害緊急事態の布告は、緊急災害対策本部が災害応急対策を特別に推進する被災地にとどまらず、全国を対象として発せられ得る。このため、災害緊急事態の布告があったときに設置する緊急災害対策本部について、その所管区域を災害緊急事態の布告に係る地域と一致させるとする規定を削除し、緊急災害対策本部の所管区域と災害緊急事態の布告の区域とを分離させたものである。
(災害対策基本法第107条第1項)内閣総理大臣は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、当該災害に係る緊急災害対策本部が既に設置されている場合を除き、第二十八条の二の規定により、緊急災害対策本部を設置するものとする。
(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)災害緊急事態の布告が発せられた災害にあっては、被災地における人的・物的被害が甚大であることが確実である。したがって、法第86条の2から第86条の5までの特例措置を可及的速やかに講ずることができるようにするため、災害緊急事態の布告があったときは、当該災害により現実に発生している個別具体的な状況を確認せずとも、被災地において甚大な被害が当然生じているものとみなして、これらの特例措置を自動的に適用できることとしたものである。

布告の区域と本部の所管区域は、分けて考えます。
通知は、布告が被災地にとどまらず全国を対象として発せられ得ると説明しています。
このため、本部の所管区域を布告に係る地域と一致させる規定を削除し、所管区域と布告の区域を分離したと述べています。
第107条は、布告があったとき、本部が既に設置されている場合を除き、第28条の2により緊急災害対策本部を設置するものとしています。
布告があると、第86条の2から第86条の5までの特例措置(避難所等、臨時の医療施設、埋葬及び火葬、廃棄物処理)を、被害の状況を個別に確認せずに適用できます。
あわせて、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(特定非常災害法)の満了日の延長・免責・破産手続開始決定の特例・相続の承認又は放棄の期間の特例も、政令指定なしに適用される扱いです(第108条の5)。

布告が出たら、特例措置も自動で使えるのでしょうか。

通知は、被害を個別に確認せずに自動的に適用できると説明しています。

対処基本方針には、何が盛り込まれるのか

左の机に厚い方針書類のフォルダ、中央に送電鉄塔、右に銀行の建物が並ぶイラスト

布告があると、政府は対処の大方針を定めます。
条文は、その方針に定める事項を五つ挙げています。

(災害対策基本法第108条第2項)対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。一 災害緊急事態への対処に関する全般的な方針 二 災害応急対策に関する重要事項 三 国の経済の秩序の維持に関する重要事項 四 前二号に掲げる事項のほか、当該災害に係る重要な課題への対応に関する重要事項 五 前三号に掲げる事項に係る事務を的確に遂行するための政府の体制に関する重要事項
(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)法第108条第2項第4号の「当該災害に係る重要な課題への対応」とは、その内容をあらかじめ具体的・定型的に想定することが困難な重要課題への対応のことである。(略)あえて例示すれば、電力エネルギーの臨時の需給調整や、我が国の金融市場に対する国際的な信任保持のための対応等が該当し得ると考えられる。
(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)また、同項第5号の「政府の体制に関する重要事項」とは、対処基本方針に記載する災害応急対策に関する重要事項及び国の経済の秩序の維持に関する重要事項等に係る事務を的確に遂行するための政府の体制の基本に係る事項のことであり、例えば、優先すべき業務や集中的な人的・物的資源の配分等が該当し得るものである。

対処基本方針は、災害緊急事態への政府の大方針です。
第108条第2項は、全般的な方針、災害応急対策、国の経済の秩序の維持、重要な課題への対応、政府の体制の五つの事項を挙げています。
通知は「重要な課題への対応」の例として、電力エネルギーの臨時の需給調整や金融市場の信任保持を挙げています。
「政府の体制」の例は、優先すべき業務や人的・物的資源の集中的な配分等とされています。
内閣総理大臣が案を作成して閣議の決定を求め、決定があれば直ちに告示します(第3項・第4項)。

対処基本方針には、経済の秩序の維持も含まれるのですね。

第108条第2項は国の経済の秩序の維持も事項に挙げています。

布告が出ると、国民や地方公共団体に直接義務が課されるのか

左に空の買い物かごが並ぶスーパーの建物、右の台にテレビとラジオが置かれたイラスト

布告が出ても、国民にすぐに義務が生じるわけではありません。
通知と条文が、どこまでを求めているかを見ます。

(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)対処基本方針に基づく内閣総理大臣の指揮監督は、内閣法(昭和22年法律第5号)第6条に規定する内閣総理大臣の指揮監督権を、本法にも確認的に記載したものである。したがって、その対象はあくまでも政府内部に限られ、地方公共団体や国民に直接及ぶものではない。
(災害対策基本法第108条の3)内閣総理大臣は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、国民に対し、必要な範囲において、国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資をみだりに購入しないことその他の必要な協力を求めることができる。 2 国民は、前項の規定により協力を求められたときは、これに応ずるよう努めなければならない。
(災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について 平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)本規定による内閣総理大臣からの協力要請に対して、国民には、自助努力の責務(法第7条)に照らし、過度な負担とならない範囲で、要請に応ずる努力義務を課したものである。

国民に及ぶのは、義務ではなく協力の求めです。
通知は、内閣総理大臣の指揮監督の対象は政府内部に限られ、地方公共団体や国民に直接及ばないと説明しています。
一方、第108条の3は、物資をみだりに購入しないことなど必要な協力を求めることができると定めています。
求められた国民は、これに応ずるよう努めなければならないとされ、通知は過度な負担とならない範囲の努力義務だと説明しています。
第108条の2は、災害の状況や措置の概要等を新聞、放送、インターネットなどで公表しなければならないと内閣総理大臣に義務付けています。
通知によれば、東日本大震災では買いだめ等の動きが一部で見られたものの、大規模な混乱までには至らなかったとされています。

協力を求められたら、必ず従わなければならないのでしょうか。

第2項は応ずるよう努めなければならないと定めています。

明日から何を確認しておけばよいのか

左にチェックリストの板、中央の机にバインダーと数字のない予定表、右に旗竿のある小さな市役所があるイラスト

災害緊急事態の布告は、平常時に目にする規定ではありません。
だからこそ、出たときに何を確認するかを、先に整理しておくと落ち着いて動けます。

布告が出たら、区域と協力の中身を先に確かめます。
布告には、その区域、布告を必要とする事態の概要、効力を発する日時が明示されます(第105条第2項)。
対処基本方針は布告のあとに定められて告示されるので、告示の内容を確認します。
国民への協力の求めは努力義務なので、家庭や事業所で生活必需物資の備蓄などを平常時から整えておきます(第7条第3項)。
物資や役務の供給を業とする事業者は、災害時も事業を続け、国等の施策に協力するよう努めるとされています(同条第2項)。
条文は改正で動くため、現在の法令で引き直して確認し、個別の判断は所轄の自治体や消防署に確認します。

布告の区域と、告示の内容をまず確認します。

備蓄などの平常時の備えが、いざというときの助けになります。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q災害緊急事態の布告は、だれが発するのですか?
A第105条第1項は、内閣総理大臣が閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について発することができると定めています。布告には区域、事態の概要、効力を発する日時を明示します。
Q対処基本方針は、国民や地方公共団体に義務を課すものですか?
A通知は、内閣総理大臣の指揮監督の対象は政府内部に限られ、地方公共団体や国民に直接及ぶものではないと説明しています。
Q物資をみだりに購入しないという協力の求めに応じなければ、罰則がありますか?
A第108条の3の第2項は、国民は応ずるよう努めなければならないと定めています。災害対策基本法の罰則の章に、第108条の3を挙げる規定は見当たりません。
Q布告の前に、特例措置を定める政令がすでにあったときはどうなりますか?
A第108条の4第2項は、布告の前に第86条の2第1項などで当該災害を指定する政令が定められたときは、その政令に係る部分には自動適用の規定を適用しないと定めています。第108条の5第2項にも、特定非常災害法の政令指定について同じ趣旨の規定があります。

まとめ

✔災害緊急事態の布告は、内閣総理大臣が閣議にかけて発することができます(第105条第1項)。
✔通知は、大規模広域災害では政府が一体となって対処するための大方針が不可欠だと説明しています。
✔布告は全国を対象に発せられ得るため、本部の所管区域と布告の区域は分離されました。
✔対処基本方針には、全般的な方針や国の経済の秩序の維持など五つの事項が定められます(第108条第2項)。
✔内閣総理大臣の指揮監督は政府内部に限られ、国民や地方公共団体に直接及びません。
✔国民には、物資をみだりに購入しないなどの協力の求めに応ずる努力義務があります(第108条の3)。
✔布告が出たら、区域と告示の内容を確認し、平常時から備蓄などを整えておきます。

布告の区域と告示、まず確認してみます!

それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について(平成25年6月21日 府政防第559号・消防災第246号・社援総発0621第1号)
  • 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第7条、第105条、第107条、第108条、第108条の2から第108条の5まで
  • 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成8年法律第85号)第3条から第6条まで

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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