建築基準法第28条の2は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散や発散によって衛生上の支障が生じないよう、建築物に技術的な基準を課しています。
古くからある建物の中には、この基準ができる前の建材をそのまま使い続けているために、今の基準に適合しなくなった「既存不適格建築物」も少なくありません。
こうした建物が増築や改築をしようとすると、原則としては建物全体を石綿に関する現行基準に適合させる必要が生じます。
けれども一定の要件を満たせば、建築基準法施行令第137条の4の2により、この負担が一部緩和されます。
うちの建物、古い建材に石綿が使われていて、今の基準には合っていないと言われました。
増築するなら、建材も全部やり直さないといけませんか。
いいえ、要件を満たせば建材を全部やり直さなくても増築できます。
建築基準法施行令第137条の4の2という緩和の規定があるんです。
緩和があるんですね、少し安心しました。
どんな増築なら対象になるんでしょうか。
対象になるのは、石綿の基準に適合していない建物の増築や改築です。
この記事で、対象と要件を順番に確認していきましょう。
- 石綿の基準に適合しない既存不適格建築物も、要件を満たせば増築や改築ができます(建築基準法第86条の7第1項)。
- 対象となるのは、法第3条第2項により現行の第28条の2第一号・第二号の規定の適用を受けない建築物です。
- 要件は、増築・改築する部分の床面積の割合と、増築・改築しない部分に求められる措置の2点です(施行令第137条の4の2)。
- 増築・改築に係る部分の床面積の合計は、基準時における延べ面積の2分の1を超えないことが必要です。
- 増築・改築しない部分にも、石綿建材を被覆または固着する措置が求められます。「触れない部分は何もしなくてよい」わけではありません。
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目次
なぜ石綿を含む建物にも増築の緩和があるのか

建物を建てるとき、この基準に適合する建材を使うことがすべての建築物に義務づけられています。
古くからある建物の中には、建てた当時は適法でも、この規定ができる前の建材をそのまま使っているものが少なくありません。
これが建築基準法第3条第2項が定める「既存不適格建築物」で、そのまま使い続けること自体は認められています。
問題になるのは増築や改築をするときで、原則としては工事にあわせて建物全体を現行の第28条の2の基準に適合させなければなりません。
この負担を一定の範囲で軽くするのが、建築基準法第86条の7と施行令第137条の4の2の緩和規定です。
基準ができる前の建材を使った建物は、みんな既存不適格になるんですか。
自分の建物がそうなのか、どうやって分かりますか。
設計図書や過去の調査記録があれば、使用建材と基準を照らし合わせて分かります。
記録が無い場合は、専門の調査機関に確認するのが確実です。
どんな増築なら緩和の対象になるのか

どんな増改築でも使える制度ではなく、対象になる部分が政令で決められています。
建築基準法第86条の7第1項は、第3条第2項により第28条の2など複数の規定の適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合に、その規定を適用しないと定めています。
このうち石綿関係の増築・改築の範囲を具体的に定めているのが、次の章で見る施行令第137条の4の2です。
第28条の2第三号(換気設備等)や大規模の修繕・模様替は、それぞれ別の条項で範囲が決まるため、この記事では増築・改築の石綿関係に絞って説明します。
増築だけじゃなくて改築でも対象になるんですね。
具体的にはどんな要件を満たせばいいんでしょうか。
要件は床面積の割合と、増築する部分・しない部分それぞれの措置です。
次の章で順番に見ていきましょう。
増築する部分としない部分でそれぞれ何が求められるのか

要件は面積の割合と、増築する部分・しない部分それぞれの措置の3つです。
1つ目は、増築・改築に係る部分の床面積の合計が、基準時における延べ面積の2分の1を超えないことです。
2つ目は、増築・改築する部分そのものが、石綿の添加禁止・使用禁止の基準に適合することです。
3つ目は、増築・改築しない部分についても、石綿建材を被覆するか固着させる措置を国土交通大臣が定める基準にあわせて講じることです。
この3つをすべて満たす部分だけが、現行の第28条の2の適用を受けずに増築・改築できます。
増築する部分だけでなく、しない部分にも措置がいるんですね。
具体的にはどんな見落としが起きやすいんでしょうか。
次の章で、実務で見落としやすい点を説明します。
他の137条の2系の規定との違いも含めて見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

「増築するのは別の場所だから」と考えて済ませてしまいがちな点に注意が必要です。
「増築するのは別の場所だから、既存の石綿建材はそのままでよい」と考えると誤りです。
施行令第137条の4の2第三号は、増築・改築に係る部分以外の部分について、被覆または固着の措置を明示的に求めています。
この措置を欠いたまま増築・改築後の建物を使用すると、緩和の要件そのものを満たさなくなるおそれがあります。
措置の具体的な仕様は国土交通大臣が定める基準によるため、施工前に確認しておく必要があります。
触らない部分だから安心、というわけではないんですね。
計画するときは、具体的にどう確認すればいいですか。
はい、増築しない部分こそ先に確認しておく必要があります。
最後に実務での確認手順をまとめます。
増築を計画するときは何を確認すればよいか

判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
- 自分の建物が法第3条第2項の適用を受ける既存不適格に当たるか、石綿建材の使用状況をあわせて確認する
- 基準時の延べ面積を確認し、増改築部分の床面積の合計が2分の1に収まるかを試算する
- 増築・改築する部分の建材が第28条の2第一号・第二号の基準に適合するものかを確認する
- 増築・改築しない部分の石綿建材について、被覆または固着の措置が既にとられているかを確認する
- 措置が未実施であれば、国土交通大臣が定める基準に沿った施工を計画に組み込む
着工後に基準を満たさないと分かると、計画の手戻りが発生します。
石綿建材の状況を先に調べておけば、計画の手戻りを避けられそうです。
次はよくある質問も見てみます。
はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。
よくある質問
まとめ
増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!
建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第28条の2・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の4の2
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





