店舗の上の階に住居が入っていたり、廊下が喫煙室代わりに使われていたり、建物の実態は図面どおりにいかないものです。
消防実務六法には、自動火災報知設備の設置義務がどこまで及ぶかをめぐって当時の消防庁が答えた質疑応答が数多く収録されています。
この記事では、そのなかから五つを選び、現行の消防法施行令・施行規則と照らし合わせて読み直します。
複合用途の住居部分から配線の耐熱電線まで、順に確かめていきましょう。
1階が店舗で2階が飲食店、上の階が住居という建物があるんですが、住居部分にも火災報知設備は要るんでしょうか。
実は昭和の質疑応答に、その建物そのものの例が出ているんですよ。
結論から言うと必要になります。
廊下を喫煙室代わりに使っている場合や、無窓階の扱いも気になります。
では。
今日は五つの質疑応答を、現行の条文に当てはめて順番に見ていきましょう。
- 飲食店や物品店舗の上にある住居部分も、建物全体の延べ面積が300平方メートル以上の複合用途建物であれば住居部分を含めて設置義務が及びます
- 廊下を喫煙室として使っていても、煙感知器の設置を省略することはできません
- 特定防火対象物が存しない階でも、無窓階であれば煙感知器の設置が必要です
- 防火管理者のいない部分に感知器だけを任意設置することはできず、副受信機を設ける対応が指導されています
- 耐熱電線など同等以上の耐熱措置を講じていれば、金属管工事や耐火構造の壁への埋設まで合わせなくても差し支えありません
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目次
店舗や飲食店の上にある住居部分にも自動火災報知設備は必要なのか

(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の消防法施行令第9条は、複合用途防火対象物の各用途部分を原則としてそれぞれ一の防火対象物とみなす一方、括弧書きで第21条第1項第3号をこのみなし規定の対象から除いており、この号にあたる建物は用途ごとに分けず全体を一つの防火対象物として扱います。
同号イは、別表第一(16)項イ(特定用途を含む複合用途防火対象物)に掲げる建物で延べ面積が300平方メートル以上のものを自動火災報知設備の設置対象としており、この建物は物品店舗・飲食店・住居を合わせた延べ面積が550平方メートルで300平方メートルを超えるため、住居部分を含めた建物全体に設置義務が及びます。
テナントビルや雑居ビルの点検では、住居部分だけを除外して考えず、建物全体の延べ面積と用途の組み合わせをあわせて確認する必要があります。
住居だから関係ないと思っていました、建物全体で見るんですね。
はい。
延べ面積300平方メートル以上の複合用途建物は、全体を一つとして判断します。
廊下を喫煙室として使う場合、煙感知器の設置は避けられるのか

(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第4項第1号ニは、じんあい・微粉・水蒸気が多量に滞留する場所、腐食性ガスが発生するおそれのある場所、厨房等で正常時に煙が滞留する場所、著しく高温となる場所、排気ガスが多量に滞留する場所、煙が多量に流入するおそれのある場所、結露が発生する場所、その他これらに類する場所という8項目を限定列挙していて、喫煙によるたばこの煙はこの列挙事由に該当しません。
この考え方は当時から変わっておらず、廊下を喫煙室代わりに使っていても、原則どおり煙感知器の設置は必要です。誤報が心配な場合は、感知器を省略するのではなく換気を改善して対応します。
喫煙コーナーを兼ねた廊下や休憩スペースを設ける際は、煙感知器を外す方向ではなく、誤報対策としての換気計画を確認する必要があります。
たばこの煙でも、見逃してもらえる場所には入らないんですね。
はい。
誤報が気になるときは、感知器を外すのではなく換気で対応します。
特定防火対象物のない無窓階でも煙感知器は必要なのか

(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第5項第6号は「前各号に掲げる場所以外の地階、無窓階及び11階以上の部分」のうち、別表第一(1)項から(4)項まで・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(15)項・(16)項イ・(16の2)項及び(16の3)項に掲げる防火対象物又はその部分に煙感知器等の設置を義務付けています。
この号は「その部分」という書き方で建物全体が対象類型に該当すれば足りるため、無窓階そのものに特定防火対象物の用途が入っていなくても、煙感知器の設置義務は免れません。
無窓階や地階を抱える複合用途建物では、その階に何が入っているかだけでなく、建物全体がどの類型に当たるかをあわせて確認する必要があります。
その階だけ見て判断したらだめなんですね。
はい。
建物全体の類型で決まるので、その階の用途だけでは判断できません。
防火管理者のいない工場に感知器だけを任意で設けてよいのか

(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第24条は受信機の設置場所や性能を細かく定めており、火災信号を受け取って警報を発する受信機がなければ、感知器を取り付けただけでは設備として機能しません。工場側に自主的に設けるなら、店舗の受信機と連動する副受信機を設ける必要があります。
将来の増築についても、現行の令第34条の2は、増築・改築部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上になるか、基準時の延べ面積の2分の1以上になって初めて新基準が遡及適用されると定めており、500平方メートルを超える増築というだけでは足りません。当時の「消防法第17条の2第2項第2号」は、現行では第17条の2の5第2項第2号に置かれています。
別棟に設備を広げたい場合は、感知器だけを足すのではなく副受信機を含めた設備一式として整備し、増築が実際に遡及適用の基準に届くかどうかもあわせて確認する必要があります。
感知器さえ付ければいいと思っていました、受信機とセットなんですね。
はい。
別棟に広げるなら、副受信機を含めた一式で整備します。
自動火災報知設備の配線を耐熱電線に代えて金属管工事を省いてよいのか

(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第24条は「受信機から地区音響装置までの配線は、第12条第1項第5号の規定に準じて設けること」と定め、同号はイで「600ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線」、ロで「金属管工事、可とう電線管工事、金属ダクト工事又は不燃性のダクトに布設するケーブル工事」のいずれかによることを求めています。
この配線はロの工法要件こそ満たしていませんが、すでにイと同等以上の耐熱性を持つ電線で耐熱措置が講じられているため、特例基準である令第32条を適用し、工法まで合わせなくても差し支えないとされました。
既存の配線を見直す際は、金属管工事かどうかだけで判断せず、使用している電線自体が同等以上の耐熱性を備えているかどうかを確認する必要があります。
金属管工事じゃないと全部アウトなのかと思っていました。
はい。
電線自体に耐熱性があれば、工法まで合わせなくてよい場合があります。
よくある質問
まとめ
うちの建物も複合用途なので、設置範囲が合っているか見直してみます。
設置範囲の判断は複合用途になるほど複雑になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の2の5
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第9条・第21条・第32条・第34条の2
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条・第23条・第24条
- 複合用途建物の住居部分への自動火災報知設備の設置に関する質疑(昭和48年10月23日 消防予第140号・消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 廊下を喫煙室とする場合の煙感知器の設置に関する質疑(同上)
- 特定防火対象物が存しない無窓階の煙感知器に関する質疑(同上)
- 防火管理者のいない部分への感知器の任意設置に関する質疑(同上)
- 自動火災報知設備の配線の耐熱措置に関する質疑(同上)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





