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土地区画整理や市街地再開発で敷地が減った建築物はなぜ違反にならないのか|建築基準法施行令第137条の17が定める対象事業を解説

区画整理や再開発で敷地が減った建築物への緩和を示すアイキャッチ

建築確認を受けて適法に建てた建物でも、敷地の一部を区画整理や市街地再開発などの公共の事業に提供すると、それまで満たしていた基準を満たさなくなることがあります。
既存不適格として保護されるのは、あくまで法令の制定や改正のときに現に存在していた建物が原則で、事業による敷地面積の減少はこの場面に当てはまりません。
そこで建築基準法は、公共事業による敷地面積の減少に限って別の救済を用意しています。
この記事では、この救済の対象・要件・見落としやすい点までを条文に沿って解説します。

うちの敷地の一部が、市の区画整理事業に提供されることになりました。
それだけで容積率などの基準に違反してしまうんでしょうか。

事業による敷地の減少そのものを救済する規定があります。
建築基準法第86条の9という規定です。

知りませんでした。
どんな事業でも対象になるんでしょうか。

対象になる事業は限定されています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 土地区画整理や市街地再開発などで敷地が減っても、条件を満たせば違反建築物として扱われずに済みます(建築基準法第86条の9)。
  • 対象になるのは、法第86条の9第1項が定める事業による敷地面積の減少だけです。
  • 施行令第137条の17が定める4つの事業は、土地区画整理事業・第一種市街地再開発事業・住宅街区整備事業・防災街区整備事業です。
  • いずれの事業も、根拠法が定める個人施行による場合はこの救済の対象から除かれます。
  • 個人施行に当たる区画整理等で敷地が減った場合は、通常どおり現行の基準に適合させる必要があります。

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公共事業による敷地面積の減少で建築基準法の規定が適用されなくなる仕組みを示す図解

なぜ区画整理や再開発で敷地が減ると建物が違反になりかねないのか

敷地の境界線が事業により内側に縮む建物のイラスト
建築確認を受けて適法に建てた建物でも、敷地の一部を公共の事業に提供すると、それまで満たしていた基準を満たさなくなることがあります。
既存不適格として保護されるのは、あくまで法令の制定や改正のときに現に存在していた建物が原則だからです。
建築基準法第三条第二項 この法律…の規定の施行又は適用の際現に存する建築物…の敷地…がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物…に対しては、当該規定は、適用しない。
敷地が減っただけでは、通常の既存不適格の対象になりません。
第3条第2項は法令の制定・改正のときを基準にしており、区画整理や再開発による敷地面積の減少はこの場面に当てはまらないからです。
このままでは、法令が変わっていないのに敷地が減っただけで基準を満たさなくなった建物が救済されないことになります。
この穴を埋めるのが、建築基準法第86条の9という規定です。

法令が変わったわけでもないのに、敷地が減っただけで基準を満たさなくなるのは納得しづらいです。
普通の既存不適格とは扱いが違うんでしょうか。

そのとおりで、通常の既存不適格の規定だけでは救済できません。
次に対象になる範囲を見ていきましょう。

どんな敷地の減少が対象になるのか

公共事業の現場と敷地内に残る建物のイラスト
第86条の9が救済の対象にする敷地の減少には、範囲が決まっています。
まずこの対象を確認しておきましょう。
建築基準法第八十六条の九第一項(抜粋) 第三条第二項…の規定は、次に掲げる事業の施行の際現に存する建築物…又はその敷地…が、当該事業の施行によるこれらの建築物の敷地面積の減少により、この法律…の規定に適合しないこととなつた場合又はこれらの規定に適合しない部分を有するに至つた場合について準用する。 一 土地収用法…に関する事業…又は都市計画事業… 二 その他前号の事業に準ずる事業で政令で定めるもの
対象になるのは、法令で列挙された事業による敷地面積の減少だけです。
第1号は土地収用法に基づく事業や、土地を収用・使用できる都市計画事業です。
第2号は「その他前号に準ずる事業」で、具体的な事業名は施行令第137条の17が定めています。
ここに載っていない事業で敷地が減っても、この救済は使えません。

うちが関わりそうなのは市の再開発なので、都市計画事業にあたる気がします。
それだけで対象になりますか。

第1号の都市計画事業に当たれば対象になります。
ほかにも施行令が定める事業があるので次に見ていきましょう。

施行令第137条の17はどんな事業を対象にしているのか

4つの事業を表す建物ブロックが並ぶイラスト
第137条の17が定める事業は4つあります。
いずれも都市計画に基づく面的な整備事業です。
建築基準法施行令第百三十七条の十七 法第八十六条の九第一項第二号の政令で定める事業は、次に掲げるものとする。 一 土地区画整理事業(略) 二 都市再開発法による第一種市街地再開発事業(略) 三 住宅街区整備事業(略) 四 防災街区整備事業(略)
4つの事業に共通するのは、都市計画区域内で敷地の区画そのものを変える事業だという点です。
第1号は土地区画整理法による土地区画整理事業、第2号は都市再開発法による第一種市街地再開発事業です。
第3号は大都市地域の住宅街区整備事業、第4号は密集市街地の防災街区整備事業で、いずれも根拠法が異なります。
どの事業に該当するかは、事業の通知や施行者への確認で分かります。

区画整理も再開発も同じ枠組みで救済されるんですね。
うちの地区はどれに当たるか確認してみます。

根拠法が違うので、まず通知や施行者への確認が近道です。
次に見落としやすい注意点を説明します。

この救済を受けられないのはどんな場合か

分かれ道の先で組合施行と個人施行の建物が分かれるイラスト
4つの事業には、それぞれ共通する除外規定があります。
ここを見落とすと、救済されると思っていた敷地が対象外になります。
建築基準法施行令第百三十七条の十七(抜粋) 一 土地区画整理事業(同法第三条第一項の規定により施行するものを除く。) 二 第一種市街地再開発事業(同法第二条の二第一項の規定により施行するものを除く。) 三 住宅街区整備事業(同法第二十九条第一項の規定により施行するものを除く。) 四 防災街区整備事業(同法第百十九条第一項の規定により施行するものを除く。)
4つの号すべてに同じ形の除外があります。
除かれているのは、根拠法ごとに定められた個人施行(土地の所有者や借地権者が自ら施行するもの)による事業です。
組合施行や公共施行による事業なら救済の対象になりますが、自分自身が申し出て施行する区画整理等は対象外になります。
これは、敷地面積の減少を自ら選んだ結果であれば、規定に合わせる責任も自分にあるという考え方によるものです。

実はうちの区画整理は、近所の地主さんたちと個人で申し出て始めたものなんです。
その場合はどうなりますか。

個人施行にあたる場合は、この救済の対象から除かれます。
最後に確認の手順をまとめます。

敷地が減る事業に直面したときは何を確認すればよいのか

設計図とチェックリストとメジャーのイラスト
自分の敷地が対象になる事業に関わりそうなときは、次の点を順番に確認してください。
早い段階で分かれば、その後の計画も立てやすくなります。
  • 自分の建物・敷地が、事業の施行によって敷地面積の減少を伴うかを確認する
  • 事業が法第86条の9第1項第1号の土地収用法上の事業・都市計画事業か、施行令第137条の17の4事業のいずれかに当たるかを確認する
  • その事業が個人施行ではなく、組合施行・公共施行によるものかを事業の施行者に確認する
  • 敷地面積の減少により、容積率・建蔽率・接道などどの基準に影響が出るかを洗い出す
  • 判断に迷う場合は、特定行政庁または建築士に事前に相談する
事業の施行者と早めに情報を共有しておくことが大切です。
施行の段階が進んでからでは、必要な確認が後手に回ります。

手順が分かれば、事業の施行者にどこを確認すればいいか整理できそうです。
ありがとうございます。

早めに確認しておけば、後からの手戻りも防げます。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q敷地が減っても何もしなければ違反になりますか?
A何もしなければ、区画整理や再開発などで敷地面積が減少したことにより基準に適合しなくなった部分について、通常は救済の対象になりません。建築基準法第86条の9の要件を満たすことで、この救済の対象になります。
Q施行令第137条の17に載っていない事業で敷地が減った場合はどうなりますか?
A法第86条の9第1項第1号の土地収用法上の事業・都市計画事業に該当しない限り、この救済は受けられず、通常どおり現行の基準に適合させる必要があります。
Q個人施行かどうかはどうやって確認しますか?
A土地区画整理事業であれば土地区画整理法第3条第1項、市街地再開発事業であれば都市再開発法第2条の2第1項など、根拠法ごとの個人施行規定に基づいて施行されているかを、事業の施行者に確認する必要があります。
Qこの救済を受けたあとで増築をする場合はどうなりますか?
A第86条の9が救済するのは敷地面積の減少による既存不適格化だけです。その後に増築等をする場合は第86条の7など別の緩和規定の要件を改めて確認する必要があります。

まとめ

✔土地区画整理や市街地再開発などで敷地が減っても、条件を満たせば違反建築物として扱われずに済みます(第86条の9)。
✔対象になるのは、法第86条の9第1項第1号の土地収用法上の事業・都市計画事業、または第2号を受けた施行令第137条の17が定める事業です。
✔施行令第137条の17の4事業は、土地区画整理事業・第一種市街地再開発事業・住宅街区整備事業・防災街区整備事業です。
✔いずれの事業も、根拠法ごとに定められた個人施行による場合は対象から除かれます。
✔組合施行や公共施行による事業であれば、この救済の対象になります。
✔個人施行に当たる区画整理等で敷地が減った場合は、通常どおり現行の基準に適合させる必要があります。
✔敷地が減る事業に関わる可能性があるときは、早めに事業の施行者や特定行政庁に確認することが大切です。

区画整理の話が出たら、今日の内容を確認しながら進めます!

敷地の減少に関わる計画でお困りの際は、いつでもご相談ください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第86条の9
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の17
  • 土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)第3条
  • 都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)第2条の2

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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