高度利用地区や都市再生特別地区、特定用途誘導地区では、都市計画で容積率や建築面積について通常とは違う数値が定められることがあります。
多くの容積率規制が「これ以上は建てられない」という上限であるのに対し、これらの地区では「これ以上の規模で建てなさい」という下限が定められることもあります。
都市計画の決定や変更の際に現に存在していた建物が、この下限規制に適合しなくなることがあります。
この記事では、こうした既存不適格の建物が増築・改築するときの緩和の対象・要件・見落としやすい点までを条文に沿って解説します。
うちの建物は高度利用地区にあるのですが、都市計画で容積率の下限が決まっていると聞きました。
今のままだと増築できないんでしょうか。
下限に届いていない建物でも、条件を満たせば増築や改築ができる緩和規定があります。
建築基準法第86条の7とその政令です。
詳しく知りたいです。
どんな条件を満たせばよいのでしょうか。
対象になる地区や要件は限定されています。
順番に見ていきましょう。
- 高度利用地区・都市再生特別地区・特定用途誘導地区では、容積率や建築面積の最低限度が都市計画で定められることがあります(建築基準法第59条・第60条の2・第60条の3)。
- この緩和の対象は容積率と建築面積の規制だけで、建蔽率と高さに関する規制は対象外です。
- 容積率の最低限度又は建築面積に係る場合は、施行令第137条の9が定める4つの要件を満たせば増築・改築ができます。
- 容積率の最高限度に係る場合は、第137条の9自身の要件ではなく前条=第137条の8の要件が適用されます。
- 最高限度と建築面積の両方に係る場合は、2つの要件をどちらも満たす必要があります。
▼

目次
なぜ高度利用地区等では容積率の最低限度が問題になるのか

しかし高度利用地区や都市再生特別地区、特定用途誘導地区では、それとは別に下限が定められることがあります。
特定用途誘導地区では条文上も「最低限度」という言葉が明記されており、定められた場合は建築物の容積率と建築面積の両方がこの数値以上でなければなりません。
高度利用地区や都市再生特別地区でも、容積率の最高限度に加えて建築面積の最低限度が都市計画で定められることがあります。
都市計画の決定や変更の際に現に存在していた建物が、この最低限度規制に適合しなくなることがあります。
そこで既存不適格の建物を救済する緩和規定が必要になります。
うちの建物は下限に届いていないかもしれません。
これは違反になってしまうんでしょうか。
都市計画の決定や変更のときに現に存在していた建物であれば、まず既存不適格として保護されます。
次に増築や改築の際の緩和の対象を見ていきましょう。
建築基準法第86条の7の緩和はどの規制を対象にしているのか

建蔽率と高さに関する規制は、この条文の対象から外れています。
第137条の9が挙げる3つの条文は、高度利用地区(法第59条第1項)・都市再生特別地区(法第60条の2第1項)・特定用途誘導地区(法第60条の3第1項)です。
このうち高度利用地区と都市再生特別地区では建蔽率に係る部分が、都市再生特別地区ではさらに高さに係る部分が、この条文の対象から除かれています。
建蔽率や高さについて既存不適格になっている場合は、この条文とは別の緩和規定を確認する必要があります。
まずは自分の建物がどの規制に適合しなくなっているのかを整理しましょう。
うちは容積率と建築面積が届いていないだけで、建蔽率と高さは問題ありません。
それなら対象になりそうですね。
容積率と建築面積の不適合であれば、この条文の対象になります。
次に具体的な要件を見ていきましょう。
容積率や建築面積の最低限度に届かない場合どんな要件を満たせばよいのか

条文どおりに確認していきましょう。
第1号は増築後の建築面積・延べ面積が基準時の1.5倍を超えないこと、第2号と第3号は増築後の建築面積・容積率が都市計画で定められた最低限度の3分の2を超えないことです。
第4号は改築部分の床面積が基準時の延べ面積の2分の1を超えないことを求めています。
つまり最低限度に届いていない建物でも、この範囲内であれば増築・改築ができます。
つまり最低限度ぴったりまで届かせる必要はなく、この範囲内で増築すればいいんですね。
安心しました。
そのとおりです。
次によくある見落としを説明します。
容積率の最高限度に係る場合はなぜ同じ要件を使えないのか

容積率の「最高限度」に係る場合は、この条文自身の要件を使いません。
第137条の8はエレベーターの昇降路や自動車車庫など、床面積に算入されない部分に関する要件です。
最低限度・建築面積の不適合と最高限度の不適合とでは、適用される要件がまったく別になります。
なお最高限度と建築面積の両方に係る場合は、第137条の9の4要件と第137条の8の要件の両方を満たす必要があります。
うちは最高限度を超えそうなので心配していたのですが、その場合は別の条文を見ればいいんですね。
混同するところでした。
最高限度と最低限度で要件が分かれる点は見落としやすいところです。
最後に確認の手順をまとめます。
増改築を計画するときは何を確認すればよいのか

早い段階で整理しておくと、その後の計画も立てやすくなります。
- 自分の建物が高度利用地区・都市再生特別地区・特定用途誘導地区のいずれかにあるかを確認する
- 都市計画で容積率や建築面積について「最高限度」と「最低限度」のどちらが定められているかを確認する
- 建蔽率・高さについてはこの条文の対象外なので、別の緩和規定を確認する
- 最低限度・建築面積に係る場合は第137条の9の4要件を、最高限度に係る場合は第137条の8の要件を確認する
- 判断に迷う場合は、特定行政庁または建築士に事前に相談する
適用する条文を取り違えると、必要な要件の確認漏れにつながります。
手順が分かれば、最初にどの都市計画の内容を確認すればいいか整理できそうです。
ありがとうございます。
都市計画の内容を確認したうえで、必要な要件を一つずつ確かめてください。
次によくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
高度利用地区の増築計画が出たら、今日の内容を確認しながら進めます!
容積率の最低限度に関わる計画でお困りの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第59条・第60条の2・第60条の3・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の8・第137条の9
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





