消防署から使用禁止命令を受けた建物で、それでも営業を続けたために罪に問われた事件があります。
被告人は法廷で「火災発生の危険性まで認識していたわけではない」と主張しました。
しかし裁判所は、この言い分をあっさり退けています。
命令違反で罪に問われる境目がどこにあるのか、判決から確認します。
うちの建物にも使用禁止命令が出たら、と考えるとぞっとします。
納得できない命令でも、従わないと駄目なんでしょうか。
それが実際に争われた裁判例があります。
結論から言うと、納得できるかどうかは関係ありません。
火事になる危険性までは分かっていなかった、と言えば罪には問われませんか。
その言い分がどう扱われたかを、順番に見ていきましょう。
- 建物に使用禁止命令が出されたにもかかわらず、被告人は営業を継続し、命令違反に問われました
- 被告人は「火災発生の危険性を認識していなかった」と主張しましたが、裁判所はこれを退けました
- 裁判所は、被告人に命令の存在そのものを認識していたことをもって、命令違反罪の成立を認めました
- 火災発生の具体的な危険性まで認識している必要はないとされた点が、この判決の核心です
- 命令を受けたら、危険性の程度を自分で判断して先送りしないことが実務上の教訓です
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目次
使用禁止命令が出されたのはどんな建物だったのか

消防署長はこの建物に対して、現行の消防法第5条の2に相当する使用禁止命令を発しました。
- 建物には建築基準法・消防法上の技術基準に関する複数の違反があった
- 消防署長はこの建物に対して使用禁止命令(当時の消防法第5条。現行の第5条の2に相当)を発した
- 被告人は命令が出された後も営業を継続した
ところが被告人は、命令の後も営業をやめませんでした。
このため、命令違反の罪(現行の消防法第39条の2の2)に問われることになりました。
争いになったのは、命令に違反した事実そのものではなく、罪の成立に何が必要かという点でした。
命令が出ても、納得できなければ様子を見てから従おうと思ってしまいそうです。
その先に何が待っているかを、次の争点で見ていきましょう。
危険性を知らなかったという主張はなぜ出てきたのか

それは、火災発生の具体的な危険性についてまで認識していたわけではない、という点です。 命令違反の罪は故意犯であり、何を認識していれば罪が成立するのかが問題になります。
もし危険性そのものの認識まで必要だとすれば、知らなかったと主張することで罪の成立を争える可能性がありました。
被告人側はここに賭けたとみられます。
しかし裁判所は、この主張を退けました。
危険性を知らなかったと言えば、それだけで無罪になりそうな気がします。
その理屈が通らなかった理由を、次で見ていきます。
裁判所は何をもって命令違反と判断したのか

そこから、命令違反罪の成立を認めています。
命令の内容を知りながら営業を続けていた以上、火災の危険性をどこまで理解していたかは、罪の成立を左右しません。
言い換えれば、命令を受けたという事実そのものが、従うべき義務の起点になります。
危険性の程度についての個人的な評価は、この義務を免れる理由にはなりません。
命令を知っていたかどうかだけが問われるのですね。
危険性の理解は、そこでは問われませんでした。
危険性を認識していなかったという言い分はなぜ通らなかったのか

命令違反の罪が問うのは、命令に従わなかったことであって、火災の危険性の評価ではありません。 命令を受けた側が、その危険性を軽いと判断してよいことにはなりません。
危険性の有無や程度を判断する権限は、命令を出した消防署長の側にあります。
受け手の側が独自に危険性を評価し直し、それを理由に命令を無視できるとすれば、制度そのものが成り立ちません。
だからこそ、命令の認識さえあれば足りるという線引きがされています。
「大したことないだろう」と自分で決めるのは危険なんですね。
判断するのは受け手ではなく、命令を出した側です。
明日からなにを確認すればよいのか

使用禁止命令に限らず、行政からの命令全般に通じる考え方として整理しておきます。 まず、命令を受けたら内容と期限を書面で確認し、記録に残すことです。
命令の理由に納得できない場合でも、いったんは履行したうえで、必要であれば別途、審査請求などの手続で争います。
危険性が低いと感じても、その判断を自分だけで下さないようにします。
判断に迷うときは、命令を出した消防署に直接確認するのが最も確実です。
つまり、命令が出た時点で迷わず動くのが一番安全なんですね。
迷ったときほど、先送りせず確認しましょう。
よくある質問
まとめ
危険性は関係ないと聞いて、正直怖くなりました。
命令が出たら迷わず先に動くことが、なにより自分を守ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 昭和50年12月26日 甲府地方裁判所判決
- 消防法第5条の2(当時は第5条)
※判決文の引用中の人名は、いずれも役割を示す表記(被告人など)に置き換えています。本記事は確定した判決の内容を要約したものです。判決当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものです。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の事案についての法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。





