地震や豪雨などの災害が起きると、ふだんとは違う建物が避難所や仮設の窓口として使われる場面があります。
こうした一時的な用途変更にあわせて、建築基準法には特別な緩和の規定が用意されています。
ただし緩和されるのはあくまで建築基準法令の規定であり、対象になる建物や使える期間には細かい条件があります。
本記事では建築基準法第八十七条の三が定める用途変更の緩和の中身と、この緩和が消防法令には及ばない理由を条文にもとづいて解説します。
取引先の体育館が、災害のときに避難所として使われることになったそうです。
建築基準法の基準はそのままなんでしょうか。
建築基準法第八十七条の三には、用途を変えて使う場合の緩和の規定があります。
条文で順番に確認しましょう。
でも消防用の設備はどうなるんですか。
そこがいちばん気になります。
消防法令はこの緩和の対象に含まれていません。
順番に見ていきましょう。
- 建築基準法第八十七条の三は、災害時に建物の用途を変えて使うとき、建築基準法令の規定の全部または一部の適用を除外する仕組みです。
- 対象は国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために使う住宅や病院など(災害救助用建築物)と、学校や集会場など公益上必要な用途に転用される公益的建築物の二類型です。
- 公益的建築物で免除される規定には、避難および消火の技術的基準を定めた第三十五条なども含まれます。
- 用途変更後三月を超えて使い続けるには特定行政庁の許可が必要で、許可期間は原則二年以内、延長しても更に一年までです。
- この緩和が及ぶのは建築基準法令の規定だけで、消防用設備等の設置義務や防火管理者の選任義務は変わりません。
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目次
災害で建物の用途を変えて使うとはどういうことか

まずはこの緩和がどんな場面を想定しているのかを確認しましょう。
対象は二つの類型に分かれ、一つは国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために使う住宅や病院などの災害救助用建築物、もう一つは学校や集会場など公益上必要な用途に転用される公益的建築物です。
災害救助用建築物は建築基準法令の規定そのものが適用除外になりますが、公益的建築物のほうは第十二条や第三十五条など条文で指定された規定に限って適用が除外されます。
このように、同じ「用途変更」でも緩和の範囲は建物の種類によって大きく異なります。
次は、実際にどんな建物がこの緩和を受けられるのかを見ていきましょう。
同じ用途変更でも、緩和の範囲が建物によって違うんですね。
災害救助用建築物と公益的建築物で範囲が変わります。
次は対象になる条件を見ましょう。
どんな建物がこの制限緩和を受けられるのか

とくに見落としやすいのが防火地域の扱いです。
対象になる区域は非常災害区域等に限られ、区域外の建物には緩和は及びません。
さらに見落としやすいのが、非常災害区域等のうちでも防火地域内にある建築物は緩和の対象から外れるという点です。
防火地域は市街地の延焼を防ぐために特に厳しい基準が設けられている区域なので、災害時であっても基準を緩めない扱いになっています。
自分の建物がどの区域にあるかは、特定行政庁や都市計画の窓口で確認できます。
うちの建物は防火地域にあるんですが、それでも緩和は受けられないんですか。
防火地域内の建物は一月以内の着手でも対象外です。
次は緩和される中身を見ましょう。
建築基準法のなにが緩みなにが変わらないのか

そして、この緩和が及ばない法令があることも重要です。
除外される規定には、特殊建築物等の避難および消火に関する技術的基準を定めた第三十五条も含まれており、公益的建築物では避難経路や排煙設備の基準まで緩む場合があります。
一方で、この条文が緩めているのはあくまで建築基準法令の規定です。
消防法や消防法施行令にもとづく消防用設備等の設置義務、防火管理者の選任義務、消防計画の作成義務はこの緩和の対象に含まれていません。
建築基準法の基準が緩んでも、消火器や自動火災報知設備の設置・維持、防火管理者による消防計画の運用は変わらず必要です。
建築基準法がゆるんでも、消防用設備の義務はそのままなんですね。
消防法令はこの条文の対象外です。
次は使える期間の話です。
いつまでも使い続けられるわけではないのはなぜか

期限を過ぎる前に必要な手続きを押さえておきましょう。
許可の期間は二年以内が原則で、被災者の需要にこたえる建物が不足しているなど特別な事情があれば、更に一年を超えない範囲で延長できます。
延長の許可や、後述する興行場等としての長期使用の許可を出すときは、原則として建築審査会の同意が必要です。
ただし病院や学校など公益性が特に高い用途については、延長の際の同意が不要になる場合もあります。
期限を管理せずに使い続けると、許可のない違反状態になってしまうため注意が必要です。
許可を取り忘れたまま使い続けたら、違反になってしまうんですね。
期限の管理は特定行政庁への確認が確実です。
次は興行場等として使う場合です。
興行場や工事中の代替施設として使うにはどうすればよいか

実務の窓口はどちらも特定行政庁です。
許可の期間は一年以内が原則ですが、工事のあいだ従前の建物に代えて使う代替建築物については、工事の施工上必要な期間として定められます。
国際的な会議や競技会など一年を超えて使う特別の事情がある特別興行場等については、必要と認める期間を個別に定めることもできます。
これらの場合も、公益的建築物と同じく消防法令にもとづく設備や防火管理の義務は緩和の対象外です。
用途を一時的に変える計画があるときは、着手前に特定行政庁と所轄消防署の両方へ相談しておくと手続きが滞りません。
工事中に仮設の店舗を出すときも、この条文が関係するんですね。
代替建築物としての許可が使えます。
着手前に特定行政庁と消防署へご相談ください。
よくある質問
まとめ
建築基準法が緩んでも消防の備えは変わらないとわかって安心しました。
期限の管理もあわせて気をつけます。
災害時の防火管理のご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第八十七条の三(建築物の用途を変更して一時的に他の用途の建築物として使用する場合の制限の緩和)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は自治体ごとに異なる場合があります。個別の建物の用途変更や許可手続きについては、特定行政庁および所轄消防署にご確認ください。





