工場の試験機で、危険物が爆発する事故が起きたと聞いたことはありませんか。
消防庁は、平成21年5月26日の消防危第93号で、愛知県大府市の危険物取扱所で起きた爆発事故を、全国の消防機関に知らせました。
この事故では、硝酸ナトリウムを加熱する試験機で爆発が起き、作業員1名が亡くなりました。
この記事では、通知が示した事故の内容と、危険物の許可との関係を解説します。
硝酸ナトリウムの試験機は、なぜ爆発したのですか。
原因は、分かっているのでしょうか。
通知は、事故の内容を伝えていますが、原因の確定までは示していません。
まず、通知の中身から確かめましょう。
許可のない危険物を扱っていたとも聞きました。
はい、別紙は、許可の類別との食い違いにも触れています。
条文と合わせて、順に見ていきます。
- 消防庁は、平成21年5月26日の消防危第93号で、愛知県大府市の一般取扱所の爆発事故を知らせ、同種事故を防ぐ指導を求めました。
- 事故は、530度に加熱した硝酸ナトリウムにアルミ製品を浸す試験機で起き、作業員1名が死亡しました。
- 別紙は、原因として5つの可能性を挙げましたが、火災判定では、発火源、経過、着火物とも不明とされました。
- 取扱所の許可の類別は第4類で、第1類の硝酸ナトリウムは、無許可で取り扱われていたと別紙は述べています。
- 通知は情報提供と指導の依頼で、事業所は、扱う物質と許可の内容を見比べるきっかけにできます。
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目次
消防庁はなぜ愛知県の爆発事故を全国に知らせたのか

まず、その部分を引いて確かめます。
昨年5月7日、愛知県大府市の危険物一般取扱所において危険物第1類(硝酸ナトリウム)を取り扱う作業中に何らかの原因で爆発し、作業員1名が死亡する事故が発生しました。
通知は、事故の概要と、愛知県から消防庁への周知の依頼、大府市から愛知県への依頼を、別紙として付けています。
「昨年」とあるので、事故は平成20年、周知は平成21年です。
同じ通知は、再発防止のための依頼を、次のように述べています。
同種事故の再発を防止するため、貴職におかれましては危険物施設の関係者に対し、必要な指導を適時適切に行っていただくとともに、都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨情報の提供をお願いします。
事業所に、新しい義務を定めた文書ではありません。
義務の根拠は、消防法の許可や届出の規定にあります。
次に、事故の内容を確かめましょう。
全国の消防機関に、事故を知らせる通知なのですね。
はい、通知は、指導を依頼する形です。
次に、事故の中身を見ましょう。
硝酸ナトリウムの試験機ではどのように爆発が起きたのか

まず、表で確かめます。
| 項目 | 別紙が示す内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 平成20年5月7日(水)午前5時18分ごろ |
| 場所 | 愛知県大府市の工場(耐火建築物・地上1階建て)にある危険物一般取扱所 |
| 取扱所の許可 | 主に油圧作動油や切削油を取り扱う一般取扱所で、許可の類別は第4類 |
| 事故の内容 | 試験機でアルミダイカスト製ピストンの仕上げ状況を試験したあと、何らかの原因で硝酸ナトリウムの溶液槽から発火し、槽内で燃焼したあと爆発(爆燃)した |
| 死傷者 | 死者1名(24歳・男性、同日午前7時33分に死亡)、軽症1名(右肩打撲) |
| 消防の出動 | 消防車両5台。事業所からの第1次の出動依頼は救急出動の依頼で、消防は周辺の一般住宅からの通報で知った |
試験機は、530度に加熱して溶かした硝酸ナトリウムに、アルミ製品を約3分間浸す装置です。
製品の表面に近い部分に、空気やガスが含まれていないかを、調べるための試験です。
愛知県の依頼は、硝酸ナトリウムを熱溶媒として使っていたと述べています。
硝酸ナトリウムは、通知が「危険物第1類」と書く物質です。
530度もの高温の液体に、金属を浸す試験なのですね。
はい、その液体が、第1類の危険物でした。
次に、原因を見ましょう。
爆発の原因はどこまで分かっているのか

平成21年2月12日付けの、消防大学校消防研究センター所長の報告書を参考にした整理です。
| 番号 | 推察された事故原因 |
|---|---|
| ① | 水が混入したことによる水蒸気爆発 |
| ② | 530度の硝酸ナトリウム溶液槽内に可燃物が混入して着火し、温度上昇によって爆発した |
| ③ | 試験機のヒーターの温度センサーの不良で600度以上になり、急激に反応して着火し、爆発した |
| ④ | シースヒーターの金属パイプの腐食から、溶液槽内でスパークし、硝酸ナトリウム溶液がアルミと反応して燃焼し、急激な温度上昇で槽内上部の空気が膨張して、試験機が爆発した |
| ⑤ | シースヒーターの金属パイプの腐食から、溶液槽内でスパークし、硝酸ナトリウム溶液がアルミと反応して燃焼したあと、爆発した |
当該事故は、主として危険物第一類の硝酸ナトリウムを熱溶媒として使用し、アルミニウム部品の品質を検査するブリスタ試験機で発生したもので、危険物の未把握及び危険性の認識欠如に端を発するものと考えられ(略)浸漬ヒーターの電気スパーク等で引き起こされる硝酸ナトリウムとアルミニウムの急激な反応が、爆発の前駆反応となる可能性があると推定されました。
大府市の火災判定理由書は、④と⑤の可能性が高いとしています。
ただし、人的要因が不足していることや、各種の実験でも確定的な結果が得られなかったことから、発火源、経過、着火物ともに不明としました。
この記事も、原因を断定しません。
原因が分からないまま、周知されたのですね。
はい、通知は、同種の事故を防ぐことを目的にしています。
次に、許可との関係を見ましょう。
第4類の許可しかない取扱所で第1類を扱うと何が問題になるのか

そこで、許可の仕組みを、条文で確かめます。
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。
製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、(略)許可を受けなければならない。
製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする。
一方、試験機の処理剤の硝酸ナトリウムは、消防法別表第一の第1類(酸化性固体)に当たる、危険物です。
別紙の「違反処理、再発防止策」の欄は、この点を、次のように述べています。
当該危険物は大府市長に無許可で取り扱われていたものである。このことは、消防法第11条第1項違反「製造所等の設置、位置、構造又は設備を変更する際に無許可で変更したもの」に該当するものであり(略)警告措置を行ったものであります。
扱う危険物の品名や数量だけを変えるときは、消防法第11条の4が、10日前までの届出を求めています。
位置、構造、設備を変えるときは、変更の許可が必要です。
この線引きは、別の記事で解説しています。
この記事は、事業所の個別の判断を評価するものではなく、別紙の整理を伝えるものです。
許可の内容と、実際の取扱いを、照らし合わせるのですね。
はい、許可の内容と実際の取扱いが合っているかが、出発点です。
次に、事故のあとの措置を見ましょう。
事故のあとにどんな措置が取られ自分の事業所では何を確かめるのか

まず、表で確かめます。
| 措置 | 別紙が示す内容 |
|---|---|
| 緊急使用停止命令 | 事故が起きた一般取扱所に、5月7日の午前10時17分に口頭で命じ、5月8日に命令書を交付した |
| 立入検査 | 6月30日に実施した |
| 警告書 | 消防法第11条第1項違反として交付した |
| 試験機メーカーの対応 | 5月14日付けで、取引先に、使用禁止と処理剤の販売停止を求める文書を送った。平成21年1月には、取引先への自主回収を検討した |
| 事業所の対応 | 爆発事故対策書を提出した |
現行の消防法では、緊急の必要による使用の一時停止の命令は、第12条の3が定めています。
市町村長等は、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときは、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者に対し、当該製造所、貯蔵所若しくは取扱所の使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。
自分の事業所で確かめる点を、次にまとめます。
- 試験や加工で使う熱媒や処理剤が、危険物に当たるかを、成分表や安全データシートで確かめる
- 危険物に当たるときは、許可書の品名と数量に、その物が含まれているかを確かめる
- 含まれないときや量を変えるときは、所轄の消防署に、届出か変更の許可かを相談する
- 通知が挙げた、水や可燃物の混入、温度センサーの不良、ヒーターの腐食を、加熱設備の点検の観点にする
- 設備メーカーからの、使用禁止や回収の連絡を、受け取る窓口を決めておく
この事故では、事業所からの第1次の依頼が救急出動で、消防は周辺の住宅からの通報で知ったと、別紙にあります。
迷ったときは、所轄の消防署に確認してください。
うちで使っている処理剤も、危険物か確かめたいです。
まず、成分表と許可書を見比べましょう。
迷ったときは、所轄の消防署に相談します。
よくある質問
まとめ
危険物の許可と実際の取扱いを、見比べておきます!
危険物施設の許可や届出の相談は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第93号「危険物施設における事故防止の徹底について」(平成21年5月26日 消防庁危険物保安室長)と別紙
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条、第11条、第11条の4、第12条の3、別表第一 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





