倉庫で火災が起きたとき、消防隊が真っ先に困るのは、建物の中の様子が分からないことです。
平成29年2月に埼玉県三芳町で起きた大規模な倉庫火災は、鎮火まで約12日間かかりました。
消防庁は、この火災を受けて、消防本部が倉庫ごとの警防計画をあらかじめ作るよう通知しました。
通知の内容と、倉庫の管理者が知っておきたい点を整理します。
うちの倉庫にも、消防が確認に来ることがありますか。
通知は、警防計画を作るときに事業所と連携して実態を確認するよう求めています。
具体的には、何を確認されるのでしょうか。
進入経路や消防水利、危険物や毒劇物の所在などです。
順番に見ていきましょう。
- 平成29年9月29日の消防庁通知は、三芳町倉庫火災を踏まえ、大規模倉庫火災でより効率的に消火活動を行うための方策を示しました。
- 各消防本部は、進入経路や消防水利、収容物の情報などを載せた警防計画を、あらかじめ倉庫ごとに作るよう求められています。
- 警防計画は、事業所と連携して実態を確認したうえで作り、危険物や毒劇物の所在も記載します。
- 通知は、外壁の破壊や水利の補充に関する協定を、あらかじめ結んでおくことも求めています。
- 倉庫の管理者は、消防から確認や訓練の連携を求められたときに備え、情報を整理しておきましょう。
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目次
三芳町の倉庫火災は消防にとってなにが難しい火災だったのか

平成29年2月に埼玉県三芳町で起きた倉庫火災を受け、消防庁は検討会の提言をもとに通知をまとめました。
通知は、火災の経過と、そこから引き出した基本的な考え方を次のように述べています。
火災は、死者も外部延焼もなかったのに、約12日間続きました。
通知は、大規模な倉庫の内部で延焼が拡大した結果、鎮火まで長い時間を要したと述べています。
通報の遅れや初期消火の遅れなどによって、同じ規模の火災が再び起こり得るという前提に立つべきだとしています。
倉庫火災は、大量の可燃物による延焼の急速な拡大と、開口部が少ないことによる内部進入の難しさが特徴と示されています。
12日もかかった火災なのに、死者は出なかったのですね。
通知は、死者や外部延焼はなかったと述べたうえで、類似の火災が再発する前提で対策を求めています。
次に、通知の宛先と求める内容を見ましょう。
この通知はだれになにに取り組むよう求めているのか

通知の宛先は、都道府県消防防災主管部長と、東京消防庁・各指定都市消防長です。
文面には、消防組織法第37条に基づく助言として出すものと書かれています。
通知が求めている取組は、消防本部と都道府県に分けて示されています。
各消防本部には、倉庫火災の消火活動要領の策定、大規模倉庫ごとの警防計画の策定、住民等への適切な情報提供の3つが示されています。
都道府県または消防本部には、指揮隊の能力向上と、外壁の破壊や水利の確保等に関する協定の締結が示されています。
通知は消防組織法第37条の助言で、実施は今年度中、実施状況の調査は平成30年4月中を目途とされていました。
うちは民間の倉庫ですが、通知は関係ありますか。
通知は消防本部などに宛てたものですが、警防計画づくりでは事業所との連携が求められています。
次に、警防計画の中身を確認しましょう。
大規模倉庫ごとの警防計画にはなにを載せるのか

通知は、倉庫ごとの警防計画を、あらかじめ作っておくよう消防本部に求めています。
載せる情報と、計画の対象になる倉庫の目安は次のとおりです。
警防計画は、消防活動に必要な情報を倉庫ごとにまとめる計画です。
載せる情報は、活動方針、車両の部署位置、進入経路、防災センターや消防水利の位置、消防用設備等の状況、収容物の情報などです。
危険物や毒劇物は、所在、量及び特性について、実態に即した情報を集めて記載します。
対象の大規模倉庫は、検討会報告書で延べ面積50,000平方メートル以上の倉庫とされています。
ただし通知は、この規模にかかわらず、倉庫規模や収容人員、内部構造、収容物等を総合的に判断して策定することが望ましいとしています。
大規模倉庫の目安は、どう決まっているのですか。
検討会報告書は延べ面積50,000平方メートル以上を大規模倉庫としています。
ただし規模にかかわらず策定が望ましいとされています。
警防計画づくりで倉庫の事業所はなにに協力することになるのか

通知の文面は、消防本部に宛てたものです。
一方で、警防計画は事業所の情報がなければ作れないため、事業所との連携を前提にした記述が並んでいます。
通知は事業所に義務を課す書き方ではなく、連携を前提にしています。
警防計画は、事業所と連携して大規模倉庫の実態を確認したうえで作ると書かれています。
進入経路や消防水利、防災センターは、努めて写真等とともに計画に図示することとされています。
計画ができたあとは、事業者と連携した訓練を行い、結果に応じて計画を見直すよう求められています。
事業所の消火、通報及び避難の訓練は、消防法第8条により、権原を有する者が定めた防火管理者に行わせる業務です。
消防との連携訓練は、いつ行うのですか。
通知は、警防計画に基づく事業者と連携した訓練を求めています。
日程などは、所轄消防署にご確認ください。
外壁を壊す事業者や生コンの団体となぜ事前に協定を結んでおくのか

通知は、三芳町の火災で役に立った民間事業者の協力を、あらかじめ協定にしておくよう求めています。
外壁の破壊と、水利の確保の2つです。
通知は、外壁の破壊と水利の補充について、事前に協定を結ぶよう求めています。
三芳町の火災では、民間事業者の大型重機で外壁を破壊し、2階に開口部を設けたことで、外部から継続的に注水できる体制を整えられたと述べています。
このため、都道府県等の広域的な単位で解体工事事業者等との協定を、あらかじめ結ぶよう求めています。
水利については、全国生コンクリート工業組合連合会等と給水活動の協定を、あらかじめ結んでおくこととされています。
費用負担の明確化と、協定に基づく訓練の実施も示されています。
なお、水利確保の協定は、平成29年8月18日付の消防消第194号通知も踏まえて取り組むこととされています。
倉庫の管理者として、まず何を用意すればよいですか。
警防計画の確認に協力できるよう、進入経路や水利、収容物の情報を整理しておくと役立ちます。
迷うときは、所轄消防署にご確認ください。
よくある質問
まとめ
警防計画への協力に備え、倉庫の情報を整理します!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大規模倉庫火災におけるより効率的な消火活動を実施するための今後の方策について(平成29年9月29日 消防消第224号)
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





