マンションの開放廊下や、建物のひさしの下は、外の空気が通り抜ける場所です。
国の消防法施行規則は、こうした場所のうち熱や煙の感知器では火災を有効に感知できないものを、感知器を設ける部分から外しています。
ところが吹田市消防本部の質疑応答集は、外気が流通する場所でも、原則として炎感知器が必要と答えています。
この記事では、吹田市がそう読む理由を国の規則の文言からたどり、令第32条で免除できる例と、熱感知器で代えられる場合を整理します。
あわせて、大阪市・東大阪市・堺市・豊中市の基準と並べます。
吹田市でマンションの改修を計画しています。
開放廊下とひさしの下の室外機置場に感知器が要るのか、設計者と意見が分かれています。
外の空気が通る場所は、熱や煙の感知器が外れることがあります。
ただ吹田市は炎感知器は原則必要と答えています。
外れるのに、炎感知器は要るのですか。
はい、国の規則のかっこ書の範囲がポイントです。
条文から順に読んでいきましょう。
- 国の規則第23条第4項第1号は、イのかっこ書でホを除く号の中の「感知器」から炎感知器を除いており、ロの外気流通場所の除外は炎感知器には及びません
- 吹田市の質疑応答集は、外気が流通する箇所(5m以内)でも炎感知器の設置が必要と答えています
- 可燃物が少ないなどの場合は令第32条で免除でき、例は開放廊下・開放階段・バルコニー、車寄せの上屋・ひさしの下、荷さばき場等の上屋の下の3つです
- 防水型の特種又は1種の熱感知器で有効に感知できれば炎感知器は不要で、室外機置場(GHPを除く)と駐輪場はすべて外気流通場所なら感知器も不要です
- 大阪市・東大阪市・堺市・豊中市の基準には、外気流通場所の炎感知器を取り上げた項目が見当たりません
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目次
国の規則は外気が通る場所の感知器をどう決めているのか

イ 感知器(炎感知器(火災により生ずる炎を利用して自動的に火災の発生を感知するものをいう。以下同じ。)を除く。以下この号(ホを除く。)において同じ。)の取付け面(略)の高さが二十メートル以上である場所
ロ 上屋その他外部の気流が流通する場所で、感知器によつては当該場所における火災の発生を有効に感知することができないもの
- イは「感知器」の後ろに、炎感知器を除く。以下この号(ホを除く。)において同じと書いています。
- このため、第1号の中でホ以外に出てくる「感知器」は、炎感知器を除いた感知器(熱感知器や煙感知器など)を指します。
- ロの「感知器によつては〜有効に感知することができないもの」も、熱感知器や煙感知器では有効に感知できない場所という意味になります。
- つまりロで外れるのは熱感知器や煙感知器で、炎感知器はロでは外れません。炎感知器の設けなくてよい場所は、別にホが決めています。
ロで外れるのは、熱や煙の感知器だけなのですね。
はい、イのかっこ書がロにもかかるからです。
吹田市はこの読み方を質疑応答集に書いています。
吹田市の質疑応答集は外気流通場所に何を求めているのか

ただし、上屋その他外部の気流が流通する場所(以下「外気流通場所」という。)又は天井等の高さが20m以上ある場所で、当該場所が用途上可燃物品の存置が少ない等により、火災の発生が著しく少ない場合又は火災が発生した場合、延焼拡大のおそれが著しく少ない場合は令32条を適用し、感知器の設置を免除して差し支えない。
例(1)開放廊下、開放階段及びバルコニー
(2)車寄せの上屋及び建物のひさし等の下部
(3)荷さばき場、荷物取扱場、トラックヤード等の上屋の下部のうち、使用時間外等無人時において当該部分に可燃物がない等良好な防火管理が期待できるもの(この場合、特例適用願出書の提出が必要。)
- 原則として、外気流通場所には炎感知器の設置が必要です。前の見出しで見たとおり、国の規則のロで外れるのは熱感知器や煙感知器だからです。
- ただし、可燃物品の存置が少ないなどで火災の発生や延焼拡大のおそれが著しく少ない場合は、令第32条を適用して感知器の設置を免除できます。
- 免除の例は3つで、(1)開放廊下・開放階段・バルコニー、(2)車寄せの上屋・建物のひさし等の下部、(3)荷さばき場・荷物取扱場・トラックヤード等の上屋の下部です。
- (3)だけは、無人時に可燃物がないなど良好な防火管理が期待できるものに限られ、特例適用願出書の提出が必要とされています。
免除の例に、開放廊下も入っているのですね。
はい、ただし令第32条の免除なので、可燃物が少ないことが前提です。
次は、熱感知器で代える方法です。
ひさしの下に用途がある場合は熱感知器で代えられるのか

また、室外機(GHP除く)置場、自転車または排気量50cc未満の単車を止める駐輪場が、すべて外気流通場所に該当する場合は、感知器を設けないことができるものとする。
- 1つ目は代替です。誤作動の可能性が低い場所に、特種又は1種の熱感知器(防水型に限る)を外気流通場所を有効に感知できるように設ければ、炎感知器を設けないことができます。
- 2つ目は不要の扱いです。室外機(GHPを除く)置場と、自転車・排気量50cc未満の単車の駐輪場は、すべてが外気流通場所に当たれば感知器を設けないことができます。
- GHP(ガスヒートポンプ)の室外機置場は、2つ目から除かれています。
- 問22は駐車場も挙げていますが、答22の2つ目に駐車場の名前はありません。ひさしの下の駐車場は、1つ目の熱感知器での代替を検討することになります。
| 項目 | 吹田市 答22 | 大阪市 第12 特例基準 3(1)ア |
|---|---|---|
| 場面 | 外気流通場所 | 炎感知器の設置が必要となる地階・無窓階・11階以上の部分で、駐車の用に供されているもの |
| 代わりの感知器 | 誤作動の可能性が低い場所の特種又は1種の熱感知器(防水型に限る) | 規則第23条第6項第1号に定める高感度の熱感知器 |
| もとになる規定 | 答21の令第32条の流れの中で書かれている(根拠条文の記載なし) | 規則第23条第5項第6号によらないことができる(令第32条又は条例第47条を適用) |
室外機置場でも、GHPだと扱いが違うのですね。
はい、答22の2つ目はGHPを除いています。
次に、ほかの市の基準と並べましょう。
大阪市や東大阪市など4市の基準は吹田市と何が違うのか

| 市 | 外気が通る場所の書き方 | 炎感知器の扱い |
|---|---|---|
| 吹田市 | 質疑応答集 第5節 問21・答21・答22(外気が流通する箇所=5m以内) | 原則必要。令第32条で免除できる例が3つ、防水型の熱感知器で代替可、室外機置場・駐輪場は不要 |
| 大阪市 | 第12 特例基準 2(15)(5メートル未満+不燃材料の仕上げ・可燃物の存置なし・通行・運搬の用途のみ) | (15)は「感知器」とだけ書き、炎感知器を分けていない |
| 東大阪市 | Ⅱ 細目 2 感知器 (2) 設置方法 ア(規則第23条第4項第1号ロの定義=5メートル未満+断面形状の(ア)〜(エ)) | この項目に炎感知器の記載はない |
| 堺市 | 第12 Ⅱ 1(6)ク(警戒区域。定義はスプリンクラー設備の節の例による)、特例(7)(多段式の自走式自動車車庫の外周部の開口部から5m未満) | 外気が通る場所に絞って炎感知器を扱った項目は見当たらない |
| 豊中市 | 自動火災報知設備の基準に、外気が通る場所の距離の定義は見当たらない | 炎感知器の型の項目に、荷さばき場等の上屋の下部が出てくる |
ほかの市は、5メートルの外し方が中心なのですね。
はい、炎感知器まで問答で書いているのは吹田市です。
最後に確かめる順番をまとめます。
吹田市で開放廊下やひさしのある建物は何を確かめればよいか

- 平面図で、開放廊下・開放階段・バルコニー・車寄せ・ひさしの下・荷さばき場の上屋など、外気が通る場所に印を付ける。
- 開いている側から5m以内かどうかを図面で測る。
- その場所の用途を書き出す(通路だけか、室外機置場か、駐輪場か、駐車場か、荷物を置くか)。
- 室外機置場(GHPを除く)や駐輪場で、すべてが外気流通場所なら、答22の2つ目に当たるかを確かめる。
- それ以外の用途は、防水型の特種又は1種の熱感知器で有効に感知できるか、令第32条で免除できる例に当たるかを確かめる。
- 荷さばき場等の上屋の下部で免除を受けるなら、無人時の可燃物の管理を決め、特例適用願出書の準備をする。
- 図面を持って、吹田市消防本部の予防担当に相談する。
まず図面に、外気が通る場所と用途を書き込んでみます。
はい、用途まで書くと答22のどちらに当たるかが見えやすくなります。
相談のときに役立ちます。
よくある質問
まとめ
開放廊下と室外機置場、駐車場を図面で分けて、答21と答22のどれに当たるかを整理します。
そのうえで消防署に相談します!
用途ごとに分けておけば、免除か代替か不要かの話が早くまとまります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第5節 自動火災報知設備 問21・答21、問22・答22(PDF6ページ目) https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第1節 自動火災報知設備 第12 特例基準 2(15)・3(1)ア https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局「自動火災報知設備の設置に係る運用基準」Ⅱ 細目 2 感知器 (2) 設置方法 ア https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第12 自動火災報知設備 Ⅱ 1(6)ク・特例(7) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」自動火災報知設備 炎感知器(イ)(運用基準1 PDF344ページ目) https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 消防庁予防課長通知「自動火災報知設備の炎感知器の設置に係る技術上の基準の運用について」(平成3年6月24日 消防予第128号) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/030624yo128.pdf
- 消防法施行規則 第23条第4項第1号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
- 消防法施行令 第32条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※本記事は公表されている法令および吹田市・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している自動火災報知設備の基準を全文検索した範囲でのものです。運用基準や質疑応答集は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。感知器を設けなくてよいかどうかの個別の判断は、所轄の消防署にご確認ください。






