地下に広い駐車場がある店舗や、屋上を駐車場にした建物は、階数が少なくても消火活動が難しい建物です。
八尾市火災予防条例第50条は、百貨店や駐車場などの地階・無窓階と、屋上のヘリポート・駐車場に、国の基準にない連結送水管を上乗せしています。
この記事では、第50条の各号と、国の消防法施行令第29条から借りている基準を順にたどります。
あわせて、大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の条例と並べます。屋上駐車場を外す条件を「高さ7メートル未満」で決めているのは、6市のうち八尾市だけです。
八尾市で地下に1,200㎡の駐車場がある地上5階建ての店舗を計画しています。
屋上も駐車場ですが、連結送水管は要りますか?
国の基準だけなら、地上5階で延べ面積が6,000㎡未満の建物に連結送水管は要りません。
ただ八尾市は条例で地階と屋上を上乗せしています。
地下や屋上の使い方は、国では見ていないのですね。
はい、国は建物全体の階数と延べ面積で決めています。
国の条文から順に見ていきましょう。
- 国の消防法施行令第29条は建物の階数と延べ面積などで連結送水管を求め、地階や屋上の使い方で決める号はありません
- 八尾市条例第50条は、(2)(4)(10)(13)(16)項イの地階・無窓階で床面積1,000㎡以上の部分に連結送水管を求めています
- 屋上のヘリポート・駐車場も対象で、高さ7メートル未満で消防隊が容易に進入できるものだけを外しています
- 放水口は水平距離50メートル以下とし、配管と送水口は国の令第29条第2項第2号・第3号と規則第31条の例によります
- 大阪市・東大阪市・堺市は屋上の除外を階数2以下かつ200㎡未満で決め、豊中市と吹田市の条例には連結送水管の上乗せがありません
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目次
国の基準では連結送水管はどんな建物に必要なのか

一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が七以上のもの
二 前号に掲げるもののほか、地階を除く階数が五以上の別表第一に掲げる建築物で、延べ面積が六千平方メートル以上のもの
三 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
四 別表第一(十八)項に掲げる防火対象物
五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物で、道路の用に供される部分を有するもの
- 第1号と第2号は、地階を除く階数と延べ面積で、建物ごとに決めています。
- 第3号は地下街、第4号はアーケード、第5号は道路の用に供される部分がある防火対象物です。
- 地階や無窓階の広さ、屋上の使い方で決める号はありません。地上4階建ての百貨店に広い地階があっても、国の基準だけでは連結送水管は要りません。
地下が広くても、階数が少なければ国では要らないのですね。
はい、そこを市の条例が補っています。
八尾市の第50条を見ましょう。
八尾市の条例は地階と無窓階にどんな上乗せをしているのか

(1) 令別表第1(2)項、(4)項、(10)項、(13)項及び(16)項イ(略)に掲げる防火対象物の地階又は無窓階(1階及び2階を除く。)で、床面積が1,000平方メートル以上のもの
(1)の2 小規模特定用途複合防火対象物(令別表第1(10)項又は(13)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積が当該防火対象物の延面積の10分の9以上であるものに限る。)の地階又は無窓階(1階及び2階を除く。)で、床面積が1,000平方メートル以上のもの
- 対象の用途は、(2)項のキャバレー・遊技場など、(4)項の百貨店・店舗、(10)項の駅、(13)項の駐車場・格納庫と、(16)項イの複合用途です。
- 対象は建物全体ではなく地階又は無窓階の部分で、その階の床面積が1,000平方メートル以上のときです。1階と2階の無窓階は除きます。
- (略)としたかっこ書で、(16)項イのうち小規模特定用途複合防火対象物と、(1)(3)(5)項イ(6)(9)項イの用途が延面積の10分の9以上で残りが300㎡未満のものを第1号から外しています。
- 外した小規模特定用途複合防火対象物のうち、駅や駐車場の用途が10分の9以上のものだけを、第1号の2で対象に戻しています。
地下の駐車場が1,200㎡なら、八尾市では対象になりそうですね。
店舗のビルの地階なら、床面積1,000㎡以上の地階として対象になります。
屋上の扱いも見てみましょう。
八尾市で屋上のヘリポートや駐車場はどう扱うのか

- 回転翼航空機の発着場、つまり屋上のヘリポートと、屋上の自動車駐車場が対象です。床面積や階数の下限は書かれていません。
- かっこ書で、地盤面から屋上までの高さが7メートル未満で、かつ消防隊が容易に屋上に進入できるものを除いています。
- 2つの条件は「で」でつながっているので、両方を満たすときだけ外れると読めます。高さが7メートル以上なら、小さな屋上駐車場でも除外に当たりません。
屋上駐車場の泡消火設備などの上乗せは、堺市で屋上駐車場や吹抜けの駐車場に泡消火設備はいるのかの記事で比べています。
屋上駐車場でも、低くて消防隊が上がりやすければ外れるのですね。
はい、ただ高さ7メートル未満と進入のしやすさの両方が条件です。
次は放水口の決め方です。
八尾市の第50条は放水口と配管を国のどの基準から借りているのか

3 第1項の規定により設ける連結送水管は、令第29条第2項第2号及び第3号並びに規則第31条の規定の例により設置し、及び維持しなければならない。
4 第1項第1号及び第1号の2並びに令第29条第1項各号(第3号及び第4号を除く。)の規定により設ける連結送水管には、その屋上に1以上の放水口を設けなければならない。
三 送水口は、双口形とし、消防ポンプ自動車が容易に接近することができる位置に設けること。
- 第2項は、放水口の位置を条例自身で決めています。地階・無窓階は各部分から、屋上は主たる用途の部分の各部分から、水平距離50メートル以下です。国の令第29条第2項第1号は借りていません。
- 第3項で、国の令第29条第2項第2号(主管の内径100ミリメートル以上)と第3号(送水口は双口形)を「例により」借ります。
- 同じ第3項で、細目は規則第31条の例によります。送水口・放水口のホース接続口の高さや配管の規格などです。11階以上の建物向けの令第29条第2項第4号は借りていません。
- 第4項は、条例の地階・無窓階の分に加え、国の令第29条第1項第1号・第2号・第5号で設ける連結送水管にも、屋上に1以上の放水口を求めています。第3号の地下街と第4号のアーケードは除いています。
屋上の放水口は、国の基準で付ける連結送水管にも要るのですね。
はい、第4項は国の第1号・第2号・第5号の分にも及びます。
最後に、ほかの市と比べましょう。
大阪市や東大阪市など5市の条例は八尾市と何が違うのか

| 項目 | 八尾市 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|
| 条文 | 第50条 | 第46条 | 第51条 | 第71条 |
| 地階・無窓階の用途 | (2)(4)(10)(13)(16)項イ | (2)(4)(10)(13)(16)項イ | (2)(4)(10)(13)(16)項イ(除外のかっこ書なし) | (10)(13)項のみ |
| 小規模特定用途複合防火対象物 | (10)(13)項が10分の9以上のものを対象 | 主たる用途が(10)(13)項のもので床面積の合計1,000㎡以上を対象 | 定めなし | 定めなし |
| 屋上の対象 | ヘリポート・駐車場 | ヘリポート・駐車場 | 駐車場のみ | ヘリポート・駐車場 |
| 屋上の除外 | 高さ7m未満で消防隊が容易に進入 | 階数2以下かつ200㎡未満 | 階数2以下かつ200㎡未満 | 階数2以下かつ200㎡未満 |
| 放水口 | 水平距離50m以下 | 水平距離50m以下 | 水平距離50m以下 | 水平距離50m以下 |
| 例による国の基準 | 令29条2項2号・3号、規則31条 | 令29条2項2号・3号、規則31条 | 令29条2項2号・3号、規則31条 | 令29条2項2号・3号、規則30条の4・31条 |
| 屋上の放水口 | 1以上 | 1以上 | 1以上 | 1以上 |
※表は各市の火災予防条例の条文を要旨でまとめたものです。豊中市と吹田市の火災予防条例には消防用設備等の付加基準の章がなく、連結送水管の条文はありません。
違いを順に読むと、次の4点になります。- 屋上の除外を高さと進入のしやすさで決めているのは八尾市だけです。大阪市・東大阪市・堺市は階数と面積で決めています。
- 東大阪市は屋上のヘリポートを挙げず、屋上は駐車場だけです。
- 堺市は地階・無窓階の用途を(10)項の駅と(13)項の駐車場に絞り、店舗や遊技場は挙げていません。規則第30条の4(フォグガン等を使う場合の主管の特例など)も例に加えています。
- 豊中市と吹田市は条例に上乗せがなく、国の令第29条の範囲で条例上の設置義務が決まります。
同じ大阪府内でも、屋上の外れ方がずいぶん違うのですね。
はい、八尾市は高さ7メートルが分かれ目です。
屋上に駐車場を置くなら早めに相談しましょう。
よくある質問
まとめ
まず地階と屋上の用途、屋上までの高さを図面で拾い出します。
迷うところは消防署に相談します!
屋上駐車場はスロープの位置を決める前に確かめておくのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 八尾市火災予防条例 第50条・第51条(八尾市例規集・2026年11月5日閲覧) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrMjF01/init?jctcd=8A85C0D651
- 大阪市火災予防条例 第46条(大阪市例規データベース) https://www1.g-reiki.net/reiki37e/reiki.html
- 東大阪市火災予防条例 第51条(東大阪市例規集・2026年11月5日閲覧) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrMjF01/init?jctcd=8A85C0D6B1
- 堺市消防局 火災予防条例(解説及び運用)第71条(PDF15ページ目)、消防用設備等の審査基準 連結送水管 3 特例適用基準 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 豊中市火災予防条例(豊中市例規集) https://www1.g-reiki.net/toyonaka/reiki_menu.html
- 吹田市火災予防条例(吹田市例規集) https://www2.city.suita.osaka.jp/reiki/d1w_reiki/H337901010407/H337901010407_j.html
- 消防法施行令 第29条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 消防法施行規則 第13条・第30条の4・第31条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※本記事は公表されている法令および八尾市・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。条例や運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。連結送水管が必要かどうかは、個々の建物ごとに所轄の消防署にご確認ください。






