建物の床の下にある配管用のピットは、人がふだん入らない低い空間です。そこに感知器や消火器が要るかどうかは、設計でも点検でも迷いやすいところです。
吹田市消防本部は「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」で、電気配線があるピットには感知器を設置するよう指導し、高さ500mm未満又は湿度85%以上なら不要と答えています。
この記事では、吹田市の答えを入口に、国の条文と、消火器・屋内消火栓・共同住宅の節にあるピットの答えを順にたどります。
あわせて、大阪市・東大阪市・豊中市・堺市の運用基準にピットの項目があるかを並べます。5市の中でピットを一般的に扱っているのは吹田市だけです。
吹田市で建てる事務所ビルの1階の床下に、配管を通すピットがあります。
ここにも感知器は要りますか?
吹田市の質疑応答集では、ピットが床面積に入るかどうかと、電気配線があるかどうかで答えを分けています。
人が入らない場所なので、何も付けなくてよいと思っていました。
国の条文にはピットという言葉がないので、市の運用で決まります。
国の条文から順に見ていきましょう。
- 国の消防法施行規則第23条第4項第1号は、感知器を付けなくてよい場所にピットを挙げていません
- 吹田市は、床面積の発生があるピットは原則として感知器が必要、床面積がなくても電気配線があれば設置を指導すると答えています
- 吹田市は、ピットの高さが500mm未満又は湿度85%以上なら感知器は不要としています
- 吹田市は消火器と屋内消火栓でも、上下の階から歩行距離で包含できればピットに置かなくてよいとしています
- 大阪市と東大阪市は免震ピットだけを書き、豊中市と堺市の自動火災報知設備の基準にはピットの項目がありません
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目次
国の基準はピットの感知器や消火器をどう決めているのか

ハ 天井裏で天井と上階の床との間の距離が〇・五メートル未満の場所
一 第一項及び第五項に規定するもの(次号に掲げるものを除く。) 防火対象物の階ごとに、当該防火対象物の各部分
- 感知器は、除外の場所以外の部分に付けるのが原則です。第1号のイからホに「ピット」という語は出てきません。
- 高さで外しているのは、ハの天井裏で0.5メートル未満の場所です。床下のピットについて同じ数字を定めた条文はありません。
- 消火器と屋内消火栓は「階ごとに」各部分を覆う決め方です。階に数えないピットをどの階で覆うかは、条文に書かれていません。
国の条文には、ピットのことは書いていないのですね。
はい、ピットの扱いは市が補っています。
吹田市の感知器の答えから見ましょう。
吹田市は配管だけのピットの感知器をどう答えているのか

床面積の発生はないが電気配線があるピットは、感知器の設置すること。(指導)
ただし、高さが500mm未満又は湿度85%以上となる場合は設置不要。
- 床面積の発生があるピットは、原則として感知器が必要です。床面積に入る以上、ほかの部屋と同じに扱う考え方です。
- 床面積の発生がなくても電気配線があるピットは、感知器を設置するよう求めています。この段には「(指導)」と付いています。
- ただし書きで、高さが500mm未満、又は湿度が85%以上となる場合は設置不要としています。
ただし書きは「(指導)」の段のすぐ後に置かれています。床面積の発生があるピットにまでかかるかは、文面からは決められません。高さ500mmは国の天井裏の0.5メートルと同じ数字ですが、吹田市は根拠の条文を書いていません。
電気配線が通っているかどうかで変わるのですね。
はい、配線の有無を図面で確かめるのが先です。
次は消火器の答えです。
吹田市はピットの消火器をどう扱っているのか

- 前段は塔屋の機械室などについて、上階又は下階の直近の消火器から歩行距離20mで覆えるかを問うています。
- 覆える場合に限り、その部分に消火器を置かなくてよいとしています。
- 後段の「同様の扱い」で、この考え方を地下ピットにも当てはめています。ピットなら上の階の消火器から測ることになります。
各階の消火器の数え方は、豊中市でメゾネット型マンションの消火器は各階に要るのかの記事でも比べています。
ピットの奥まで20mで届くかを測ればよいのですね。
はい、点検口からの歩行距離で確かめます。
屋内消火栓は読み替えで決めています。
吹田市はピットの屋内消火栓をどう読み替えているのか

(ピット部分については、上記の「ペントハウス等」を「ピット」、「直下階」を「直上階」として読替えて運用すること。)
- 答3の本文は、ペントハウスに消火栓箱を置かなくてよい条件として、直下階の消火栓から有効に注水できることと、問1の歩行距離で包含できることの2つを挙げています。
- かっこ書で、ピットでは「ペントハウス等」を「ピット」に、「直下階」を「直上階」に読み替えます。つまりピットの真上の階の消火栓から注水でき、包含できればよいことになります。
- 「問1の歩行距離」は答1にあり、1号消火栓と広範囲2号消火栓は30m、2号消火栓は20mです。
共同住宅については、第20節 答4が「地下の配管専用ピットは、共用部分になるか」に対し、原則として地中(地盤面)として扱うと答えています。
ペントハウスの答えを、上下を逆にして使うのですね。
はい、直下階を直上階に読み替えるのがポイントです。
ほかの市の基準も見てみましょう。
大阪市や東大阪市など4市の基準は吹田市と何が違うのか

| 市 | 一般のピットの感知器 | 免震ピット・共同住宅のピット |
|---|---|---|
| 吹田市 | 床面積があれば原則必要・電気配線があれば設置を指導(高さ500mm未満・湿度85%以上は不要) | 配管専用ピットは原則として地中扱い(第20節 答4) |
| 大阪市 | 項目なし | 免震ピットは電気配線・オイル配管等の部分で足りる/共同住宅の配管ピットは省略可(免震兼用で配線等の付近は設置) |
| 東大阪市 | 項目なし | 免震ピットは電気配線・オイル配管等の部分で足りる |
| 豊中市 | 項目なし | 項目なし |
| 堺市 | 項目なし | 特定共同住宅等の共用部分に配管ピット等を含む(Ⅰ 4) |
※表は各市の運用基準・質疑応答集を要旨でまとめたものです。「項目なし」は自動火災報知設備の基準にピットを名指しした項目が見当たらないという意味です。八尾市は消防用設備等の審査基準が公開されていないため、表に入れていません。
違いを順に読むと、次の4点になります。- 大阪市と東大阪市は、床面積に算入されない免震ピットについて、感知器を電気配線・オイル配管等の部分に置けば足りるとしています。
- 吹田市は免震に限らず、電気配線のあるピット全般に設置を指導し、高さと湿度で外す数字を示しています。
- 吹田市・大阪市・東大阪市は、いずれも電気配線があるかどうかを感知器を付ける目安にしている点が共通です。
- 豊中市と堺市はピットの感知器を書いていないため、所轄の消防署の判断を確かめる必要があります。
吹田市だけが、ふつうのピットの数字まで書いているのですね。
はい、市によって書いている範囲が違います。
迷うときは図面の段階で相談しましょう。
よくある質問
まとめ
まずピットの高さと床面積、電気配線の有無を図面で拾い出します。
迷うところは消防署に相談します!
ピットの扱いは配線ルートを決める前に確かめておくのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第1節 消火器 問3・答3、第2節 屋内消火栓設備 答1・答3、第5節 自動火災報知設備 問11・答11、第20節 特定共同住宅等 答4・答16 https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」自動火災報知設備 第4 2(10)、特定共同住宅等 第6 1 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 自動火災報知設備の基準 Ⅱ 細目 2⑵カ https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」第2部 第2章 第1節 自動火災報知設備 https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 堺市消防局 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅰ 用語の定義等 4・自動火災報知設備 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行規則 第6条・第23条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
- 消防法施行令 第11条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※本記事は公表されている法令および吹田市・大阪市・東大阪市・豊中市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。ピットに感知器や消火器を付けなくてよいかどうかは、個々の建物ごとに所轄の消防署にご確認ください。






