加圧防排煙設備は、特別避難階段の付室などに外の空気を送り込み、扉を開けたときに付室側から廊下側へ風が流れるようにして煙を押し返す設備です。
その風の強さは、消防庁の告示が扉を40cm開けたときの風速で決めています。
ただ、扉が2つある付室や、くぐり戸付きの大きな防火戸、外気の取り入れ口の位置までは告示に書かれていません。
鈴鹿市の審査基準がそこをどう埋めているかを、埼玉県央広域・大阪市と比べます。
鈴鹿市で建て替えるビルに、加圧防排煙設備を入れる計画が出てきました。
設計の打合せで「遮煙開口部」という言葉が何度も出てきて、ついていけません。
付室と廊下をつなぐ扉のことで、告示はそこを通る風の速さで性能を決めています。
扉の数や形によって計算の仕方が変わるところが、鈴鹿市の基準に書いてあります。
よその市でも同じ決まりなのですか。
埼玉県央広域はほぼ同じ文ですが、大阪市はくぐり戸に大きさの条件を付けています。
告示から順にたどってみましょう。
- 給気機の性能は、平成21年消防庁告示第16号が遮煙開口部の開口幅を40cmとした場合の必要通過風速(2.7√h・3.3√h・3.8√h)で決めている
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は、遮煙開口部が2以上あるときはそれぞれで風速を満たし、同時に満たす性能までは要らないとしている
- 開口幅40cmは扉を開けたときの最も狭い距離で測り、くぐり戸の高さを開口高さにしてよい場合がある(大阪市は幅75cm以上・高さ180cm以上が条件)
- 給気機の外気取り入れ口は、鈴鹿市は行政指導として「最下階などの建物の下部で周りに開口部がない位置とする」と書き、埼玉県央広域は「望ましい」としている
- 圧力調整装置は、鈴鹿市と埼玉県央広域では扉のうち天井から80cmを超える距離にある部分に設け、壁に設けるなら0.04VH以上の開口面積が要る
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目次
加圧防排煙設備の給気機はどれだけの風を出せばよいのか

鈴鹿市の審査基準は、その告示を前提に細かい扱いを足しています。
給気機は、規則第三十条第五号の規定の例によるほか、次に定めるところによること。
(一)火災により発生した煙を取り込むおそれのない位置に設けること。
(二)給気機の給気性能は、一の遮煙開口部の開口幅を四十センチメートルとした場合における当該遮煙開口部の通過風速を、隣接室の区分に応じそれぞれ次に掲げる表の式によって計算した必要通過風速に維持しうる量の空気を供給する性能以上であること。(表は略)
告示の言葉では、付室などの加圧式消火活動拠点と、つながる廊下などの隣接室との間の開口部が「遮煙開口部」です。
必要な風速は、隣接室がどう区画されているかで次の3通りに分かれ、h は遮煙開口部の開口高さ(メートル)です。
表の右の欄は、扉の高さを2.0メートルとしたときの計算例で、告示に書かれている数字ではありません。
告示から鈴鹿市の基準までは、次の順につながっています。
| 隣接室の区分(告示 第三 八(二)の表) | 必要通過風速 | h=2.0mの計算例 |
|---|---|---|
| 火災の発生のおそれの少ない室で、準耐火構造の壁・床か特定防火設備の防火戸で区画され、開口部の幅の総和が壁の長さの4分の1以下のもの | 2.7√h | 約3.82メートル毎秒 |
| 火災の発生のおそれの少ない室で、不燃材料の壁・床か防火設備の防火戸で区画されたもの | 3.3√h | 約4.67メートル毎秒 |
| 火災の発生のおそれの少ない室のうち上の2つ以外のもの/その他の室 | 3.8√h | 約5.37メートル毎秒 |
- 消防法施行令 第29条の4:必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等
- 平成21年総務省令第88号 第2条:排煙設備に代えて加圧防排煙設備を用いることができる場合と、その技術上の基準を告示に任せる規定
- 平成21年消防庁告示第16号 第二:加圧式消火活動拠点・隣接室・遮煙開口部の定義
- 同告示 第三 八:給気機の位置(一)と給気性能(二)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第18の2 8⑴〜⑷:外気取り入れ口、遮煙開口部が2以上ある場合、開口高さ、開口幅40cmの測り方
廊下の壁の造り方で、必要な風の強さまで変わるのですね。
はい、隣接室の区画が弱いほど強い風が要ります。
設計図の隣接室の壁と扉の種類を、まず確かめておきましょう。
遮煙開口部が2つ以上あるとき風は同時に保たなければならないのか

このとき給気機の大きさをどう決めるかを、鈴鹿市は次のように書いています。
遮煙開口部が2以上ある場合
各々の遮煙開口部で加圧防排煙設備告示第3第8号に規定する必要通過風速以上となるように設定する。ただし、給気機の給気性能は、同時に2以上の遮煙開口部の通過風速を維持し得る量の空気を供給する性能とする必要はない。
告示は「一の遮煙開口部」の開口幅を40cmとした場合で計算すると書いており、鈴鹿市はこれを、どの扉を開けても風速を満たし、2つ同時に開けた場合までは求めないと読んでいます。
扉ごとに隣接室の区画が違えば必要通過風速も違うので、扉ごとに計算します。
埼玉県央広域の審査基準 第18の2 11⑶もほぼ同じ文で、大阪市の運用基準 第8章第6節 第3 6(1)も「すべての開口部において算定」「同時に開放するものではない」としています(大阪市は◆=行政指導基準)。
大阪市はさらに、拠点が複数あって空気逃し口を兼用するときは、空気逃し口の必要開口面積を各拠点の和にするとしています(第3 7(1)◆)。
| 消防本部 | 遮煙開口部が2以上あるとき | 記号 |
|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 各々で必要通過風速以上、同時に2以上を維持する性能は不要(第18の2 8⑵) | なし |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 鈴鹿市とほぼ同文(第18の2 11⑶) | なし |
| 大阪市 | すべての開口部で算定、複数の開口部を同時に開放するものではない(第8章第6節 第3 6(1)) | ◆ |
| 津市・堺市 | 遮煙開口部が2以上ある場合の記載なし(津市は省令・告示・通知に従うとだけ書く) | - |
扉が2つでも、給気機を2倍にする必要はないということですね。
そうです、ただしどちらの扉を開けても風速を満たすことが前提です。
計算書が扉ごとに作られているか見ておきましょう。
開口幅40cmと開口高さは扉のどこで測るのか

40cmの測り方とあわせて、鈴鹿市は次のように書いています。
⑶ 随時閉鎖式の遮煙開口部の開口高さ(h)を求める場合
特定防火戸を近接して設ける場合を除き、くぐり戸の高さを遮煙開口部の開口高さとして差し支えない。
⑷ 遮煙開口部の開口幅40㎝は、扉を開けた場合の最も狭い距離をいう。
一般的には、扉面から垂直線を引き、縦枠若しくは壁の角まで、又はそで壁がある場合は、そで壁から扉角までの距離となる。(第18の2-14図参照)
扉の先端と枠の間ではなく、扉面から垂直に線を引いて、縦枠・壁の角・そで壁までの一番狭い距離を40cmにして風速を測る考え方です。
ふだんは開いていて火災時に閉まる大きな防火戸(随時閉鎖式)は、くぐり戸の高さを h にしてよく、h が小さくなれば式の値も小さくなります。
埼玉県央広域(11⑷⑸)も同じ文ですが、大阪市(第3 6(2)◆)は、くぐり戸などで分割して開閉できる場合に、その部分の幅が75cm以上・高さが180cm以上であることを条件にしています。
小さなくぐり戸を付ける計画なら、大阪市ではこの寸法を満たすかどうかで計算の前提が変わります。
| 消防本部 | くぐり戸の高さを開口高さにできる場合 | 開口幅40cmの測り方 |
|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 特定防火戸を近接して設ける場合を除く(8⑶・記号なし) | 扉を開けた場合の最も狭い距離(8⑷・記号なし) |
| 埼玉県央広域 | 鈴鹿市と同じ(11⑷・記号なし) | 鈴鹿市と同じ(11⑸・第18の2-19図) |
| 大阪市 | 分割して開閉できる部分が幅75cm以上・高さ180cm以上なら、その部分を開口高さとして算定できる(◆) | 扉を開けた場合の最も狭い部分の距離(◆・図8-6-6) |
つまり、くぐり戸の大きさしだいで給気機の能力も変わるのですね。
そうなんです、防火戸の建具表でくぐり戸の寸法を確かめておくと話が早いです。
他の市にも建物があるなら、条件の違いに気を付けてください。
給気機の外気の取り入れ口はどこに置くのか

鈴鹿市は、その位置を行政指導として具体的に書いています。
加圧防排煙設備告示第3第8号⑴に規定する給気機は、排煙機の排出口又は建築物から排出された煙を取り込むことがないように、外気取り入れ口は、外気に開放された最下階などの防火対象物下部で、周囲に開口部がない位置とする。▲
排煙機の排出口や建物から出てきた煙を吸い込まないように、取り入れ口を建物の下部の、窓などの開口部がない壁に置くという書き方です。
鈴鹿市の▲は行政指導の印で、文末は「位置とする」と言い切っています。
埼玉県央広域(11⑴なお書き)は同じ中身を「望ましい」として▲を付け、排煙機の排出口の側でも、煙が窓や給気風道の外気取り入れ口から流入しない位置に設けることとしています(7⑵イ)。
大阪市(第3 5◆)は給気口の項で「外気取入口は、火災により発生した煙を取り込むおそれのない位置とすること」と書き、最下階のような場所の例は挙げていません。
機械を屋上にまとめたいという話が出ていたので、気になります。
屋上で排煙機の近くに取り入れ口を置くと、煙を吸い込む心配が出ます。
配置図ができた段階で、鈴鹿市消防本部に早めに相談しておきましょう。
圧力調整装置は扉のどの高さに付けるのか

告示は扉を開く力が100ニュートンを超えない措置を求め、鈴鹿市はその装置の位置を書いています。
圧力調整装置
加圧防排煙設備基準告示第2第3号に規定する遮煙開口部に設ける戸の部分のうち隣接室又は一般室の天井から80㎝を超える距離にある部分に設けること。ただし、遮煙開口部に近接する部分(当該遮煙開口部を設ける壁の部分のうち天井から80㎝を超える距離にある部分に限る。)に次の式で求める必要開口面積以上の開口面積を有する圧力調整ダンパーその他これらに類するものを設ける場合はこの限りでない。
Admp=0.04VH
Admp:必要開口面積 V:遮煙開口部を通過する排出風速(m/s) H:遮煙開口部の開口高さ(m)
扉に付けるならその扉のうち、壁に付けるなら遮煙開口部の近くの壁のうち、隣接室の天井から80cmを超えて離れた部分が置き場所です。
壁に圧力調整ダンパーを付ける場合は、仮に風速 V=3.82メートル毎秒・開口高さ H=2.0メートルとすると、0.04×3.82×2.0で約0.31平方メートル以上の開口が要る計算です。
この⑹は鈴鹿市の基準では「加圧式消火活動拠点(告示第3第5号⑴関係)」の項にあり、埼玉県央広域も⑼に同じ文を置いて、その次の⑽で扉を開く力100ニュートンの措置を求めています(記号はいずれもなし)。
大阪市(第3 4(5)◆)は高さや面積の式ではなく、圧力調整装置を設けるなら火災時予測上昇温度を算定し、遮炎・遮煙・作動の性能を建設省告示の例で考えるとしていて、確認する点が違います。
| 消防本部 | 圧力調整装置について書いていること |
|---|---|
| 鈴鹿市 | 戸のうち天井から80cmを超える距離にある部分。壁に設けるなら0.04VH以上の圧力調整ダンパー等(7⑹・記号なし) |
| 埼玉県央広域 | 鈴鹿市と同じ位置と式。戸には「ガラリその他の圧力調整装置」(8⑼・記号なし・第18の2-17図) |
| 大阪市 | 100ニュートンの措置として設けるなら、火災時予測上昇温度を算定(消防隊が直接触れるおそれのない場合を除く)。性能は遮炎=平成12年建設省告示第1369号、遮煙=昭和48年建設省告示第2564号・第2565号、作動=同第2563号などが考えられる(◆) |
| 津市・堺市・四日市市 | 加圧防排煙設備の圧力調整装置についての記載なし |
扉の上の方にガラリを付けると、鈴鹿市の基準には合わないということですね。
天井から80cmの範囲に入っていれば、位置を見直すことになります。
扉の姿図と天井高さを並べて、ガラリの位置を確かめてみてください。
よくある質問
まとめ
次の打合せでは、扉ごとの計算書と取り入れ口の位置を確かめてみます!
完成後も扉の前に物を置かないなど、日ごろの管理で性能を保つことが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第29条の4(e-Gov法令検索)
- 排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成21年総務省令第88号)第2条(e-Gov法令検索)
- 加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成21年消防庁告示第16号・平成28年消防庁告示第13号改正)第二・第三 五・八(総務省消防庁)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第1章 総則(凡例)、第4章 第18の2 加圧防排煙設備 7⑹・8⑴〜⑷(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第18の2 加圧防排煙設備 7⑵・8⑼⑽・11⑴〜⑸(埼玉県央広域消防本部)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 第8章 第6節 加圧防排煙設備 第3 4(5)・5・6・7(大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第20 排煙設備(堺市消防局)
- 津市予防事務審査検査基準 5-19 排煙設備 7(津市消防本部)
※本記事は鈴鹿市消防本部などが公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・総務省令・消防庁告示に基づく一般的な解説です。鈴鹿市と埼玉県央広域の▲は行政指導、大阪市の◆は行政指導基準を表し、記号は原本の画像で確かめました。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、計算例は説明のために置いた仮の数値です。「記載なし」としたものは各本部の加圧防排煙設備・排煙設備の節を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





