スプリンクラー設備のある建物の外壁や玄関先には、消防隊がポンプ車から水を送り込む送水口が付いています。
国の政令と規則は双口形の送水口を付けることや高さ・標識を定めていますが、いくつ付けるかまでは書いていません。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、加圧送水装置の吐出量を1.8で割って送水口の数を決めるとしています。
鈴鹿市の数え方を国の規則から順にたどり、埼玉県央広域・大阪市・津市・四日市市・堺市と比べます。
鈴鹿市で倉庫を増築する計画があり、図面に送水口が3つ並んでいました。
うちの規模で、本当にそんなに要るのでしょうか。
鈴鹿市では、ポンプの吐出量から送水口の数を計算する決まりがあります。
ヘッドの数が多い倉庫ほど、送水口も増えやすくなります。
ほかの市で建てても、同じ数になるのですか。
割る数や数え方そのものが、消防本部によって違います。
まず国の規則がどこまで決めているかから見ていきます。
- 国の政令と規則は双口形の送水口を付けることや高さ・接続先・標識を定めているが、送水口の数は定めていない
- 鈴鹿市は、ヘッドの種類ごとに計算した加圧送水装置の吐出量(立方メートル毎分)を1.8で割り、端数を切り上げた数以上の送水口を求めている
- 送水口を並べるときは、平行型・縦型・頭部回転型は接続口の中心から18cm、Y型は接続口の外面から90cm以上離す(いずれも行政指導の▲)
- 割る数は埼玉県央広域が1.8(3個を超えたら3個以上)、大阪市が2.2、津市が1分あたり1,600リットルで、四日市市は階の警戒面積で数える
- 堺市は防火対象物ごとに1基以上とし、計算式は置いていない
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目次
国の基準はスプリンクラー設備の送水口について何を決めているのか

政令が付けることを求め、規則が形や位置を定めています。
スプリンクラー設備には、非常電源を附置し、かつ、消防ポンプ自動車が容易に接近することができる位置に双口形の送水口を附置すること。ただし、特定施設水道連結型スプリンクラー設備については、この限りでない。
送水口は、次に定めるところによること。
イ 専用とすること。
ハ 送水口の結合金具は、地盤面からの高さが〇・五メートル以上一メートル以下で、かつ、送水に支障のない位置に設けること。
ニ 送水口は、当該スプリンクラー設備の加圧送水装置から流水検知装置若しくは圧力検知装置又は一斉開放弁若しくは手動式開放弁までの配管に、専用の配管をもつて接続すること。
ホ 送水口にはその直近の見やすい箇所にスプリンクラー用送水口である旨及びその送水圧力範囲を表示した標識を設けること。(略)
政令は、ポンプ車が近づける位置に双口形の送水口を付けることを求めています。
規則は、専用であること、結合金具の規格、地盤面から0.5m以上1m以下の高さ、ポンプから流水検知装置等までの配管へ専用の配管でつなぐこと、標識を付けることを定めています。
金具の構造と耐圧は、ヘの「消防庁長官が定める基準」として平成13年消防庁告示第37号が決めています。
ただ、建物の規模に応じて送水口をいくつ付けるかは、政令にも規則にも書かれていません。
そこで各消防本部が審査基準で数え方を決めているので、まず自分の建物を管轄する消防本部の基準を手元に用意します。
国の決まりだけだと、送水口は1つでもよさそうに見えますね。
条文の上では数の定めがありません。
その空白を、鈴鹿市は計算式で埋めています。
鈴鹿市では送水口の数をどう計算するのか

数の決め方は、設置方法のエにあります。
送水口の数
それぞれのスプリンクラーヘッドごとに計算した加圧送水装置の吐出量(単位は、㎥/min とする。)を1.8で除して得た値(端数は、切り上げること。)の個数以上とする。▲
計算の元になる吐出量は、施行規則第14条第1項第11号ハ(イ)で、規則第13条の6の算定個数に1分あたり90リットル(ラック式倉庫は130リットル、小区画型ヘッドは60リットル)を掛けた量以上とされています。
たとえば地階を除く階数が10以下の一般的な建物で標準型ヘッドの算定個数が10個なら、900リットル=0.9立方メートル毎分で、1.8で割ると0.5なので切り上げて1個です。
等級Ⅰ〜Ⅲのラック式倉庫で感度種別が一種以外の標準型ヘッドなら、算定個数30個×130リットルで3.9立方メートル毎分となり、1.8で割ると2.16…なので切り上げて3個になります。
エには行政指導を示す▲が付いていて(原本の画像で確認)、1.8という数を選んだ理由は基準に書かれていません。
図面に並ぶ送水口の数が気になったら、設計者に吐出量の計算書を出してもらい、1.8で割った数と見比べます。
うちの倉庫に3つ並んでいたのは、ラック式倉庫の計算だったからかもしれませんね。
その可能性は高いです、計算書で確かめられます。
数が決まったら、次は並べ方にも決まりがあります。
送水口を2つ以上並べるときはどれだけ離すのか

鈴鹿市は、器具の形ごとに離す距離を決めています。
送水口を2以上又は他の消防用設備等の送水口と並列して設置する場合
使用する器具に応じて、次に掲げる距離以上の距離を保つこと。▲(第3-36図参照)
(ア)同一器具に水平方向に2つの接続口を設けた器具(この項において「平行型送水口」という。)を用いる場合は、ホース接続口中心から18㎝
(イ)・(ウ)(略:縦型送水口・頭部回転型送水口も、ホース接続口中心から18㎝)
(エ)同一器具に120°となるように2つの接続口を設けた器具(この項において「Y型送水口」という。)を用いる場合は、ホース接続口外面から90㎝
接続口が横に並ぶ平行型、縦に並ぶ縦型、直角に向く頭部回転型は、隣の送水口とホース接続口の中心から18cm以上離します。
接続口が120°に開くY型は、測る起点がホース接続口の「外面」になり、距離も90cmと大きくなります。
この並べ方は、スプリンクラーの送水口どうしだけでなく、連結送水管など他の消防用設備等の送水口と並べるときにも当てはまります。
あわせて、送水口につなぐ配管は原則100A以上、複数の送水口をつなぐ配管は150A以上(▲)とされ、止水弁・逆止弁・排水弁は送水口の直近の点検しやすい位置に置きます(▲)。
外構の改修で送水口のまわりに植栽や柵を足すときは、この間隔と接続作業の空間が残るかを現地で測ります。
つまり連結送水管の送水口の隣に置くときも、同じ間隔を空けるのですね。
はい、並列に置く場合はすべて対象です。
ここからは、数の決め方をほかの消防本部と比べます。
送水口の数の決め方は消防本部ごとにどう違うのか

計算式で数える本部でも、割る数が違います。
送水口の数は、それぞれのヘッドごとに第3-9表に基づき計算した加圧送水装置の吐出量(単位は、㎥/min とする。)を1.8で除して得た値(端数は、切り上げること。)の個数以上(3を超えた場合は3個以上)を設置すること。▲
規則第14条第1項第11号ハ(イ)の規定又は第3.2.(1)で求めた必要な加圧送水装置の吐出量(立方メートル毎分)を2.2で除して得た値(端数は切り上げ)の個数以上の数(双口形で1とする。)を設けること
| 消防本部 | 数え方 | 例:ラック式倉庫(等級Ⅰ〜Ⅲ・3.9㎥/min) | 例:同じ倉庫を乾式にした場合(5.85㎥/min) |
|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 吐出量÷1.8・切り上げ▲ | 3個以上 | 4個以上 |
| 埼玉県央広域 | 吐出量÷1.8・切り上げ(3を超えたら3個以上)▲ | 3個以上 | 3個以上 |
| 大阪市 | 吐出量÷2.2・切り上げ(双口形で1)◆ | 2個以上 | 3個以上 |
| 津市 | 定格吐出量÷1分あたり1,600リットル・切り上げ | 3個以上 | 4個以上 |
| 四日市市 | 階の警戒面積が3,000㎡を超えるごとに1個以上(3個を超えるときは3個)・下線 | 吐出量では決まらない | 吐出量では決まらない |
| 堺市 | 防火対象物ごとに1基以上◆ | 計算式なし | 計算式なし |
表の例は、算定個数30個×130リットル=3.9立方メートル毎分のラック式倉庫と、乾式にして規則第13条の6の個数が1.5倍の45個になった5.85立方メートル毎分の場合を、各本部の式に当てはめた試算です。
3.9なら鈴鹿市と津市は3個、割る数が2.2の大阪市は2個で足ります。
5.85になると鈴鹿市は4個ですが、埼玉県央広域は「3を超えた場合は3個以上」という上限の書き方があるので3個以上です。
四日市市は吐出量を使わず、階の警戒面積3,000㎡ごとに数え、3個を上限にしています(行政指導を示す下線を原本の画像で確認)。
他市の物件の図面を流用するときは、この表のどの数え方で引かれた数かを先に確かめます。
同じ倉庫でも、大阪市なら2個、鈴鹿市なら3個になるのですか。
式どおりに当てはめると、そうなります。
実際の数は吐出量の計算書を持って管轄の消防本部と詰めます。
配管の太さや標識の決まりは消防本部でどう違うのか

鈴鹿市の標識の決まりから見ます。
省令第14条第1項第6号ホに規定する標識は、次による。
(ア)大きさ 短辺10㎝以上、長辺30㎝以上
(イ)色 地を赤色、文字を白色とする。
(ウ)送水圧力範囲を表示した標識 b 送水圧力範囲の送水圧力の数値は、各スプリンクラーヘッドからの所定の基準値の範囲にするため又はブースターポンプの一次側圧力を許容押込圧力内にするため、送水口から定格流量で送水したときの配管の摩擦損失、背圧等により水力計算で求めた値とする。
| 項目 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 大阪市 | 津市 | 四日市市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 送水口につなぐ配管 | 原則100A以上・複数なら150A以上▲ | 100A以上▲・複数なら150A以上 | この節に記載なし | この節に記載なし | 100A以上・複数なら150A以上 | 主管と同等以上かつ100A以上◆ |
| 2以上を並べる | 18cm/Y型90cm▲ | 18cm/Y型90cm▲ | 記載なし | 立上り管が2系統以上なら相離れた場所に2以上 | 対角の位置等相離れた位置(下線) | 記載なし |
| 標識 | 短辺10cm・長辺30cm以上、赤地に白文字 | 送水口である旨と送水圧力範囲の標識● | 送水圧力範囲の上限1.5MPa | 「送水口(スプリンクラー専用)」と適正送水圧力値 | 238号通知による | 短辺10cm・長辺30cm以上、赤地に白文字◆ |
鈴鹿市と堺市は標識を短辺10cm以上・長辺30cm以上の赤地に白文字とし、送水圧力範囲は水力計算で出した値とします。
大阪市は送水圧力範囲の最低値と最高値の出し方を書き、上限を1.5MPaとしています。
津市は「送水口(スプリンクラー専用)」と適正送水圧力値を表示し、高層用・低層用に分けたときは受け持つ階も書くとしています。
表の記号は、鈴鹿市と埼玉県央広域の▲・四日市市の下線・大阪市の◆が各本部の行政指導の印、埼玉県央広域の●は法令の基準に行政指導を加えたもの、堺市の◆は消防庁の通知等を参考にした指導の印で、津市の基準には記号がありません。
点検の立会いでは、送水口の数・間隔・標識の数値が、管轄の基準と竣工図のどちらにも合っているかを現地で見比べます。
標識の送水圧力の数字も、水力計算から出てくるのですね。
そうなんです、配管を変える改修では標識の数値も見直しの対象になります。
増築の打合せでは、送水口の数と標識の両方を議題に入れておくと安心です。
よくある質問
まとめ
設計者に吐出量の計算書をもらって、鈴鹿市消防本部の式で数え直してみます!
送水口の数と並べる間隔が図面で分かれば、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第12条第2項第7号(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第13条の6第1項・第2項、第14条第1項第6号・第11号(e-Gov法令検索)
- スプリンクラー設備等の送水口の基準(平成13年消防庁告示第37号)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3 スプリンクラー設備 12 送水口 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第3 スプリンクラー設備 13 送水口 https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第5 送水口 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-3 スプリンクラー設備 4 配管(3)〜(8)・13 表示(5) https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/index.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」スプリンクラー設備 5 送水口 https://yokkaichisyoubou.jp/sys/wp-content/uploads/2024/04/0041.pdf
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第4 スプリンクラー設備 Ⅱ(9)送水口 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は鈴鹿市消防本部・埼玉県央広域消防本部・大阪市消防局・津市消防本部・四日市市消防本部・堺市消防局が公表している基準と、消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。各基準の文章と記号は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。表の送水口の数は各基準の式に当てはめた試算です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





