消防設備点検資格者や防火対象物点検資格者は、法律が定める欠格要件に当たると資格を失います。
これまでは「成年被後見人又は被保佐人となったとき」に該当すると、一律に資格を失う定めでした。
令和元年12月13日、消防庁はこの規定を見直す通知を発出しました(消防予第221号)。
後見開始の審判を受けただけでは資格を失わなくなった、という変更点を知らないと、自分や周囲の状況を不必要に心配することになります。
家族が後見人を立てる話が出ていて、もし自分が点検資格者だったら資格はどうなるのか心配になりました。
令和元年の見直しで、後見開始の審判を受けただけでは資格を失わなくなりました。
順番に見ていきましょう。
それなら、今後もし対象になったとしても、点検の仕事をすぐに辞めないといけないわけではないんですね。
実際に業務が行えるかどうかで個別に判断されます。
まずは経緯から確認しましょう。
- 令和元年12月13日の消防予第221号により、消防法施行規則が定める点検資格者の喪失要件が改正されました。
- 対象は防火対象物点検資格者・消防設備点検資格者・防災管理点検資格者の3資格です。
- 喪失要件は「成年被後見人又は被保佐人となつたとき」から「業務に必要な認知、判断及び意思疎通ができなくなったことが判明したとき」に改められました。
- 後見開始の審判を受けただけでは、資格を自動的に失うことはありません。
- この改正は成年後見制度の利用を妨げる欠格条項を見直す一括整備法(令和元年法律第37号)を受けたものです。
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目次
点検資格者の資格喪失要件はなぜ見直されたのか

その一つが、令和元年12月13日の消防予第221号によって見直されました。
成年後見制度利用促進委員会が平成29年にまとめた議論の整理では、各府省が持つ「成年被後見人等の権利に係る制限」を可及的速やかに見直すよう求められていました。
これを受けた一括整備法(令和元年法律第37号)が令和元年6月に成立・公布されたことで、消防庁も所管する資格の欠格要件を見直す必要が生じました。
消防法施行規則の一部を改正する省令(令和元年総務省令第63号)は令和元年12月13日に公布され、消防予第221号でその内容が通知されました。
次は、この見直しがどの資格者を対象にしているのかを見ていきます。
成年後見制度の見直しと消防の資格が、どうつながるのか最初はピンと来ませんでした。
各府省が持つ欠格条項を一斉に点検する取り組みの一つでした。
次は対象になる資格者を見ましょう。
どの点検資格者が対象になるのか

それぞれの根拠条文を確認しましょう。
防火対象物点検資格者は消防法第8条の2の2第1項(防火対象物点検・防火基準適合表示)、消防設備点検資格者は第17条の3の3(消防用設備等の点検・報告)、防災管理点検資格者は第36条第1項(防災管理点検・防火対象物点検の準用)を根拠とする、それぞれ別の資格です。
3つの資格はいずれも消防法施行規則の喪失要件の中に同じ文言(「成年被後見人又は被保佐人となつたとき。」)を持っていたため、消防予第221号は3資格まとめて同じ改め方を示しています。
自分がどの資格に当たるかは、保有している免状・修了証の名称で確認できます。
次は、実際にどう文言が変わったのかを見ていきます。
うちの点検資格者は消防設備点検資格者なんですが、この改正は関係ありますか。
防火対象物点検・消防用設備等点検・防災管理点検の3資格すべてが対象です。
次は変更の中身を見ましょう。
具体的に何が変わったのか

条文を並べて確認しましょう。
改正前は「成年被後見人又は被保佐人となつたとき」に該当すれば、後見・保佐が開始された事実だけで一律に資格を失っていました。
改正後は「精神の機能の障害により業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができなくなったことが判明したとき」に改められ、実際に業務遂行に支障が生じたと判明した場合に限って資格を失う仕組みになりました。
この文言は防火対象物点検資格者・消防設備点検資格者・防災管理点検資格者の3資格とも共通で、対象になる業務の名称だけが置き換わっています。
e-Govの現行条文でも、この文言のまま存続していることを確認済みです。
次は、この変更でとくに見落としやすい点を確認します。
「後見人になった」という事実だけでは、もう資格を失わないということですね。
判断の基準は実際に業務ができるかどうかに変わりました。
次は落とし穴を見ましょう。
見落としやすい落とし穴はどこか

順番に確認しましょう。
条文の文言は「〜となつたとき」ではなく「〜ができなくなったことが判明したとき」であり、審判を受けた事実そのものではなく、業務遂行の支障が判明した時点が基準になります。
2つ目は、条文を引用するときの項番号がずれることがある点です。
消防設備点検資格者の規定は、消防予第221号が出た令和元年時点では消防法施行規則第31条の6第7項第1号でしたが、その後の別の改正で項が1つ繰り下がり、現在は第31条の6第8項第1号になっています。
古い資料や通達の項番号をそのまま引用すると条文とずれることがあるため、確認するときは必ずe-Gov法令検索などで最新の条文番号に当たり直しましょう。
次は、明日から具体的に何を確認すればよいかをまとめます。
後見人になっただけで、すぐに点検の仕事ができなくなるわけではないんですね。
そのとおりです。
条文の項番号も変わっているので、確認するときは最新のものを見てくださいね。
明日から何を確認すればよいのか

落ち着いて条文と照らし合わせましょう。
防火対象物点検資格者・消防設備点検資格者・防災管理点検資格者のいずれかであれば、この改正がそのまま適用されます。
次に、後見・保佐が開始されたとしても自動的に資格を失うわけではないことを踏まえ、実際に業務を適正に行えるかどうかを基準に考えます。
点検を委託する側(防火対象物の関係者)は、委託先の資格者の有効性を条文で確かめるときに、現行の項番号(第4条の2の4第5項第1号・第31条の6第8項第1号・第51条の12第4項第1号)で確認しましょう。
この改正は令和元年12月14日から施行されているため、それ以降の点検・報告はすべてこの新しい要件で判断されます。
資格を失うかどうかは、後見人になった時点ではなく実際に業務ができるかどうかで見るんですね。
そのとおりです。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
後見開始の審判と資格の有無、これで整理できました!
条文の項番号は最新のものを確認してくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防法施行規則の一部を改正する省令の公布について(通知)」(令和元年12月13日 消防予第221号 消防庁予防課長)
- 消防法施行規則の一部を改正する省令(令和元年総務省令第63号)
- 成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号)
- 成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号)
- 消防法第8条の2の2第1項、第17条の3の3、第36条第1項
- 消防法施行規則第4条の2の4第5項第1号、第31条の6第8項第1号、第51条の12第4項第1号(現行)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





