延べ面積が大きい建物を管理している防火管理者の方のなかには、防火壁について気にしたことがないという方も多いのではないでしょうか。
実は建築基準法第26条は、延べ面積1,000平方メートルを超える建物に防火壁又は防火床での区画を求めていますが、一定の条件を満たす「特定部分」を持つ建物は、この防火壁の設置義務そのものから外れます。
令和6年に新しく国土交通省告示第220号が制定され、この特定部分の基準がより具体的になりました。
今日は特定部分がなぜ防火壁を要しないのか、その条件と見落としやすい落とし穴を条文に沿って整理します。
うちの建物は延べ面積が1,000平方メートルを超えているので防火壁が必要だと思っていたのですが、実は無くてもいい建物があるんですか。
はい、防火壁でしっかり区画された「特定部分」であれば、防火壁の設置義務から外れることがあります。
ただし条件を満たす必要があります。
条件というのは、その部分の壁や構造が何かを満たせばいい、ということですか。
そのとおりです。
区画の作り方と構造の性能の両方が条件になります。まずは全体像から見ていきましょう。
- 法第26条は延べ面積1,000平方メートル超の建物に防火壁又は防火床での区画を求めるが、特定部分を持つ建物は同条第2項によりこの義務から外れる
- 特定部分とは、防火壁又は防火床で有効に区画され、外壁開口部に防火設備を備えた部分をいう
- 特定部分は耐火構造相当(第一号)か準耐火構造相当(第二号)のどちらかに該当する必要がある
- 第二号の基準は令和6年国土交通省告示第220号により施行令第109条の3第一号又は第二号と定められている
- 防火壁が不要になっても、施行令第112条の面積区画・竪穴区画は別途適用される
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目次
特定部分はなぜ防火壁の設置を要しないのか

ただし、耐火建築物又は準耐火建築物などに当たる場合はこの義務そのものが適用されません。
耐火建築物等は第1項の防火壁規制そのものが適用されないため、特定部分もその扱いを受け、防火壁の設置義務から外れることになります。
次の章で、この「特定部分」に当たるための具体的な条件を確認します。
別の建築物とみなす、という言い方が独特で、まだ少しイメージがつかめません。
一つの建物の中に、区画だけで独立した別棟があるとイメージすると分かりやすいです。
次は独立と認められる条件を見てみましょう。
どんな特定部分がこの適用除外の対象になるのか

まず区画の作り方から確認します。
区画そのものは防火壁又は防火床で有効に行われていなければならず、単に間仕切り壁があるだけでは足りません。
加えて、延焼のおそれのある部分の外壁開口部には、法第2条第九号の二ロが定める防火設備を備えている必要があります。
この2つの条件を満たしたうえで、次の章で見る第一号・第二号のいずれかに該当する必要があります。
区画の壁と、窓の防火設備の両方をチェックしないといけないんですね。
はい、どちらか一方だけでは特定部分として認められません。
次は主要構造部そのものの性能の条件を見てみましょう。
準耐火構造相当の特定部分は具体的に何を満たせばよいのか

このうち、多くの中小規模の建物で実務上使われやすい第二号の中身を見ていきます。
「これと同等の準耐火性能を有するものとして国土交通大臣が定める基準」は、令和6年国土交通省告示第220号で具体化されました。
同告示は、この基準を施行令第109条の3第一号又は第二号のいずれかに掲げるものと定めています。
これは、外壁を耐火構造にして屋根の性能を確保する組み合わせや、柱とはりを不燃材料にする組み合わせなど、準耐火構造と同等の性能を別の仕様で示す道で、他の条文(施行令第136条の2第二号イ等)でも使われている基準です。
第一号(耐火構造相当)のほうはどういう基準になっているんですか。
第一号は告示第219号という別の告示で、耐火性能検証法に準じた確認方法が定められています。
次はこの2つの告示の違いから生じる見落としを見てみましょう。
防火壁が不要でも見落としてはいけないのは何か

第一号(耐火構造相当)の告示第219号は、耐火性能検証法に準じた確認方法に加えて、施行令第112条の面積区画や竪穴区画などの規定を特定部分に準用することまで自ら定めています。
一方、第二号(準耐火構造相当)の告示第220号は施行令第109条の3を指すだけで、区画に関する規定を含んでいません。
しかし、施行令第109条の2の2第3項に規定する特定部分については、第112条第23項により第1項(面積区画)と第11項(竪穴区画)が別途適用されるため、防火壁が不要になっても区画そのものが免除されるわけではありません。
告示だけを見ていたら、面積区画のことをうっかり見落としてしまいそうです。
そのとおりで、告示の根拠となる施行令第112条第23項まで確認する必要があります。
最後に確認の手順を整理します。
明日から何を確認すればよいのか

- 建物の延べ面積が1,000平方メートルを超えているかを確認する
- 防火壁又は防火床で有効に区画された部分(特定部分)があるかを確認する
- 特定部分の外壁開口部に防火設備が設置されているかを確認する
- 設計図書で主要構造部が準耐火構造か、施行令第109条の3第一号・第二号のどちらに適合しているかを確認する
- 施行令第112条の面積区画・竪穴区画が別途適用されているかを確認する
防火壁が無いからといって安心せず、区画や設備までセットで確認すればいいんですね。
はい、セットでの確認が欠かせません。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
防火壁が不要でも面積区画は別で見ないといけないと分かって、うちの建物の確認事項がすっきりしました!
区画のご相談はお早めにどうぞ。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第26条(防火壁等)
- 建築基準法施行令第112条(防火区画)第23項
- 建築基準法施行令第109条の3(主要構造部を準耐火構造とした建築物と同等の耐火性能を有する建築物の技術的基準)
- 「主要構造部が準耐火構造であるものと同等の準耐火性能を有する特定部分の基準を定める件」(令和6年国土交通省告示第220号)
- 「建築基準法第二条第九号の二イ(2)と同等の性能を有する特定部分の基準を定める件」(令和6年国土交通省告示第219号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または特定行政庁にご確認ください。





