指定数量の5分の1以上、指定数量未満の危険物は少量危険物と呼ばれ、市町村の火災予防条例で基準が決まっています。
屋内に置くときは、壁や床の造りに加えて、採光・照明・換気の設備や、可燃性の蒸気を外へ出す排出の設備が求められます。
津市消防本部は指導運用指針で、小さな専用棟や防災倉庫ならこれらの一部を設けなくてよい条件と、排出の設備の読み方を決めています。
津市の指針の第2と第6をたどり、国の条例(例)と指定数量以上の危険物施設の基準と比べます。
津市の事業所で、発電機用のガソリンを小さな防災倉庫に置いています。
窓も換気扇も無いのですが、このままで大丈夫でしょうか。
量が5分の1以上なら、条例は屋内の置き場に採光や排出の設備を求めています。
ただ津市の指針には、小さな専用棟ならそれを省ける条件があります。
条件を満たせば、全部いらなくなるのですか。
省けるのは採光と排出の設備などに限られ、それぞれに条件が付いています。
順番に見ていきましょう。
- 国の条例(例)第31条の3の2は、屋内の少量危険物の置き場に採光・照明・換気の設備と、蒸気が滞留するおそれがあれば屋外の高所への排出の設備を求めている
- 津市は床面積10平方メートル以下の専用棟で、扉を開けて採光でき、日没後に取り扱わないなら、採光の設備を設けないことができるとしている
- 不燃材料で造った専用棟の防災倉庫で、密栓した金属製容器のガソリン等を点検以外で取り扱わないなら、排出の設備を設けないことができる
- 津市は排出の設備が要る場合を引火点40度未満とし、排出は機械排気、高所は屋根上(難しければ地上2m以上)と読んでいる
- 床に傾斜やためますを付けると建物の強度や設備の設置に支障があるときは、出入口の囲いや吸着材の常備に代えられる
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目次
少量危険物を屋内に置く場所にはどんな設備が要るのか

津市の指針は、このうちの一部を条件つきで設けなくてよいとしています。
指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を屋内において貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。
一 壁、柱、床及び天井は、不燃材料で造られ、又は覆われたものであること。
二 窓及び出入口には、防火戸を設けること。
三 液状の危険物を貯蔵し、又は取り扱う床は、危険物が浸透しない構造とするとともに、適当な傾斜をつけ、かつ、ためますを設けること。
四 (略)
五 危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設けること。
六 可燃性の蒸気又は可燃性の微粉が滞留するおそれのある場合は、その蒸気又は微粉を屋外の高所に排出する設備を設けること。
条例(例)の第34条の3は、消防長(消防署長)が、品名や数量、貯蔵や取扱いの方法、周囲の状況から火災の危険が著しく少ないと認めるときは、この章の基準を適用しないとしています。
津市の指針は、その第1で、津市火災予防条例の第34条の3の特例を適用する際の指針だと目的を書き、第2でその特例事項を並べています。
つまり、第2の5・6・9は「条例の号を、この条件なら適用しないことができる」という形で、条例の第31条の3の2の号を指しています。
条文と指針は次の順につながっているので、上から読むと追いやすくなります。
- 火災予防条例 第31条の3の2:屋内の置き場の基準(第3号 傾斜・ためます/第5号 採光・照明・換気/第6号 排出)
- 火災予防条例 第34条の3:消防長(消防署長)が認めるときは基準を適用しない
- 津市の指針 第1:第34条の3の特例を適用する際の指針
- 津市の指針 第2の5・6・9:第5号の採光、第6号の排出、第3号の傾斜・ためますを設けないことができる条件
- 津市の指針 第6の1:第6号の「滞留するおそれのある場合」「排出」「高所」の読み方
省けるのは、条例の号のうち決まったものだけなのですね。
はい、壁や防火戸の号はそのまま残ります。
まずは採光の設備から見ます。
10平方メートル以下の専用棟なら採光の設備を省けるのか

条件は、建物の大きさと、扉を開けたときの明るさと、取り扱う時間帯です。
5 床面積が10平方メートル以下の小規模な独立した専用の建築物(以下「専用棟」という。)においては、当該建築物の出入口の扉を開けることにより危険物を貯蔵し、又は取り扱うのに必要な採光が確保できる場合(日没後における危険物の取扱いがないものに限る。)には、条例第31条の3の2第5号に規定する採光の設備を設けないことができるものとする。
1つ目は、床面積10平方メートル以下で、ほかの用途と分かれた独立した専用の建物であることです。
2つ目は、出入口の扉を開ければ、危険物を扱うのに必要な明るさが取れること、3つ目は、日没後に危険物を扱わないことです。
第5号は「採光、照明及び換気」の3つを求めていますが、第2の5が設けないことができるとしているのは採光の設備だけで、照明と換気には触れていません。
夕方や夜に給油や小分けをする運用があるなら、この条件から外れるので、作業の時間帯を先に決めておきます。
窓が無くても、昼間に扉を開けて作業するだけならよいということですね。
そうです、ただし外れるのは採光だけです。
次は、ガソリンを置く防災倉庫の排出の設備です。
ガソリン缶を置く防災倉庫は排出の設備なしでよいのか

津市の指針の第2の6は、防災倉庫に置く場合に限って、この設備を設けなくてよい条件を決めています。
6 密栓された金属製容器によりガソリン等を貯蔵する専用棟の防災倉庫等(壁、柱、床及び天井が不燃材料で造られているものに限る。)においては、点検維持のための取扱い以外の取扱いがない場合には、条例第31条の3の2第6号に規定する可燃性蒸気を排出するための設備を設けないことができるものとする。
建物は第2の5と同じ専用棟(床面積10平方メートル以下の独立した専用の建物)で、壁・柱・床・天井が不燃材料で造られていることが前提です。
中身は密栓した金属製の容器に入れたガソリン等で、容器を開けて小分けしたり、発電機に給油したりする取扱いがないことが求められます。
消防法の別表第一の備考で、ガソリンは引火点21度未満の第一石油類とされ、危険物の規制に関する政令の別表第三で指定数量は200リットルなので、事業所なら40リットル以上(5分の1以上)で少量危険物になります。
倉庫の中で給油や詰め替えをする運用なら、この特例ではなく排出の設備を設ける側になるので、どこで給油するかを決めてから倉庫の設備を選びます。
つまり、倉庫の中では缶を開けないことが前提なのですね。
そのとおりで、認められているのは点検維持のための取扱いだけです。
次は、排出の設備が要るときの中身を見ます。
排出の設備が要るのはどんなときでどこへ出すのか

津市の指針の第6の1は、この3つの言葉の読み方を決めています。
1 条例第31条の3の2第6号に規定する「可燃性の蒸気又は可燃性の微粉が滞留するおそれのある場合」とは、引火点が40度未満の物を貯蔵又は取り扱っている場合とする。
「排出」とは、機械排気によるものとする。
「高所」とは、屋根上を意味し、それによりがたい場合は、地上2m以上とすること。
津市は、排出の設備が要る場合を引火点40度未満の物を置くときと読み、排出はファンなどの機械排気、出口は屋根上(難しければ地上2m以上)としています。
指定数量以上の屋内貯蔵所では、危険物の規制に関する政令の第10条第1項第12号が、引火点70度未満の危険物の貯蔵倉庫に、滞留した蒸気を屋根上に出す設備を求めています。
製造所の第9条第1項第11号は条例と同じく「滞留するおそれのある建築物」「屋外の高所」という書き方で、引火点の線は置いていません。
灯油や軽油は第二石油類(引火点21度以上70度未満)と幅があるので、置く製品の引火点を安全データシート(SDS)で確かめ、40度未満かどうかを書き出しておきます。
| 項目 | 火災予防条例(例)第31条の3の2 | 津市の指針 | 屋内貯蔵所(危政令第10条) | 製造所(危政令第9条) |
|---|---|---|---|---|
| 排出の設備が要る場合 | 可燃性の蒸気・微粉が滞留するおそれのある場合(第6号) | 引火点40度未満の物を置く場合(第6の1) | 引火点70度未満の危険物の貯蔵倉庫(第1項第12号) | 滞留するおそれのある建築物(第1項第11号) |
| 出す先 | 屋外の高所 | 屋根上(よりがたい場合は地上2m以上) | 屋根上 | 屋外の高所 |
| 排出の方法 | 定めなし | 機械排気 | 定めなし | 定めなし |
| 設けないことができる場合 | 消防長(消防署長)が認めるとき(第34条の3) | 専用棟の防災倉庫で密栓した金属製容器・点検維持のみ(第2の6) | - | - |
| 採光・照明・換気 | 必要(第5号) | 専用棟で昼間だけなら採光の設備を省ける(第2の5) | 必要(第1項第12号) | 必要(第1項第10号) |
壁に換気扇を付けて、低い位置から外へ出すだけでは足りないのですか。
津市の読み方では、出口は屋根上か地上2m以上です。
最後に、床の傾斜とためますを見ます。
床に傾斜やためますを付けられないときはどうするのか

既存の建物の床では、傾斜を付けたりためますを掘ったりできないことがあり、津市の指針の第2の9がその場合の代わりを決めています。
9 条例第31条の3の2第3号後段に規定する、傾斜及びためますの設置について、危険物を貯蔵し、又は取り扱う床が当該建築物の強度上又は設備等の設置上支障となる場合は、危険物が流出する危険性があるすべての出入口付近に流出防止用の槽若しくは囲いを設ける等外部へ流出しないような措置を講じるか、若しくは必要量の危険物吸着材を常備する等の漏れ対策を講じることにより、適用しないことができるものとする。
第2の9が指しているのは第3号の後段(傾斜とためます)で、前段の「危険物が浸透しない構造」はそのまま残ります。
代わりの措置は、流れ出るおそれのあるすべての出入口の付近に槽や囲いを設けて外へ出さないようにするか、必要な量の吸着材を常備するかのどちらかです。
指針には、出入口の手前に排水溝とためますを置いた設置例の図も載っていて、外へ流さないことが目的だと分かります。
指定数量以上の製造所では、危険物の規制に関する政令の第9条第1項第9号が床の傾斜と貯留設備を求めており、少量危険物でもこの考え方が出発点になっています。
出入口が2か所ある部屋なら、両方に囲いが要るということですね。
指針はすべての出入口と書いているので、そう読むのが確実です。
吸着材にするなら、置く量に見合う分を決めておいてください。
よくある質問
まとめ
倉庫の中で給油しない運用にして、津市消防本部に相談してみます!
倉庫の床面積と壁の材料も図面に書いておくと、話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 津市消防本部「少量危険物及び指定可燃物の規制に関する指導運用指針」第1・第2 5・6・9・第6 1 https://www.info.city.tsu.mie.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/295/syouryoukikennbutuoyobisiteikanennbutu.pdf
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第31条の3の2・第34条の3・第46条 https://www.fdma.go.jp/laws/laws/items/20230531_joureirei.pdf
- 消防法 別表第一 備考(e-Gov法令検索)
- 危険物の規制に関する政令 第9条・第10条・別表第三(e-Gov法令検索)
※本記事は津市消防本部が公表している指導運用指針と、火災予防条例(例)・消防法・危険物の規制に関する政令に基づく一般的な解説です。指針の文章は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





