大きなビルの消防用水は、敷地に余裕がないと建物の地下深くの水槽に設けることがあります。
ただ、消防ポンプ自動車が吸い上げられるのは浅い部分の水までなので、深い水を使うには建物側のポンプで押し上げる仕組みが要ります。そのポンプを誰がどこで動かし、異常に気づくのかは、各消防本部の基準が補っています。
この記事では、大阪市消防局の運用基準が地盤面下4.5mを超える消防用水のポンプの起動・表示・連絡と総合操作盤をどう定めているかを、国の基準と市の運用に分けてたどります。消防用水の章が屋内消火栓・放送設備・総合操作盤の章を借りている連鎖を番号つきの手順で示し、堺市の審査基準とも比べます。
大阪市で計画中のビルは、消防用水を地下の深い水槽に置く予定です。
ポンプの管理はどうすればよいですか?
大阪市は防災センター等から起動・監視できることを求めています。
国の条文から順に見ていきましょう。
総合操作盤があるビルでは、そこにも表示が要るのですか?
はい、大阪市は総合操作盤の表示・警報・操作の項目を決めています。
堺市とも比べます。
- 国の消防法施行令第27条は、地下の消防用水の有効水量を地盤面から4.5m以内の部分に限っています。総合操作盤の基準(平成16年消防庁告示第7号)の別表にも、消防用水の欄は見当たりません
- 大阪市の運用基準は、4.5mを超える部分の消防用水に加圧送水装置と採水口を設けるものとし、ポンプはポンプ制御盤と防災センター等の両方から起動できるものとしています
- ポンプの起動表示と警報は屋内消火栓設備の規定を準用して防災センター等で音響と灯火で知らせ、採水口と防災センター等は放送設備の規定を準用した連絡装置で結びます
- 総合操作盤が必要な建物では、大阪市は総合操作盤の章で消防用水について表示5項目・警報2項目・操作2項目を求めています
- 堺市も4.5mを超える部分を政令第32条で消防用水に数えられるとしつつ、採水口の位置の遠隔起動装置を基本にしています。非常電源60分以上は2市で同じです。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準では地下深い消防用水と総合操作盤はどう決まっているのか

もう1つの国の基準が、総合操作盤です。消防法施行規則第12条第1項第8号は、次の建物の屋内消火栓設備に総合操作盤を防災センター等に設けるとしています。
(イ) 延べ面積が五万平方メートル以上の防火対象物
(ロ) 地階を除く階数が十五以上で、かつ、延べ面積が三万平方メートル以上の防火対象物
ロ 延べ面積が千平方メートル以上の地下街
ハ 次に掲げる防火対象物(イ又はロに該当するものを除く。)のうち、消防長又は消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するもの
- 地下の消防用水は、地盤面から4.5m以内の部分だけを有効水量に数える(令第27条第3項第1号)
- 延べ面積5万㎡以上などの大きな建物には、総合操作盤を防災センター等に設ける(規則第12条第1項第8号)
- 総合操作盤の表示・警報・操作の項目は告示第7号の別表第二・第三で決まり、屋内消火栓設備や連結送水管(加圧送水装置を設ける場合)の欄はあるが、消防用水の欄は見当たらない
消防用水が必要になる建物の規模は消防用水の設置義務の記事で、総合操作盤の別表の項目数の違いは総合操作盤の別表の記事で解説しています。
国の条文では、4.5mより深い水は数えないのが原則なのですね。
はい、そこで大阪市はポンプと採水口を条件に深い水も使えるようにしています。
その決まりを見ます。
大阪市は地盤面下4.5メートルを超える消防用水をどう扱っているのか

加圧送水装置は、次のいずれの方法によっても起動できるものとすること。なお、採水口の位置からの遠隔操作により起動することもできるものとして差し支えないものとする。
A ポンプ制御盤における直接操作
B 防災センター等からの遠隔操作
- 国の令第27条第3項第1号は、地下の消防用水の有効水量を地盤面から4.5m以内の部分に限る
- 大阪市の第2 水源◆の柱書ただし書は、3.(2)の消防用水にはこの4.5mの規定を適用しないとする
- 3.(2)は、地盤面下4.5mを超える部分(配管の摩擦損失と落差の合計が4.5mを超えるものも含む)に、加圧送水装置と採水口を設けるとする
- その加圧送水装置は、ポンプ制御盤の直接操作と防災センター等からの遠隔操作のどちらでも起動できるものとし、採水口の位置からの遠隔起動も差し支えないとする(イ (カ))
ポンプの吐出量や採水口の数は、四日市市の吸管投入口と採水口の記事で大阪市を含む5本部を比べています。大阪市の消防用水の水量の上限は大阪市の消防用水120立方メートルの記事で扱っています。
制御盤と防災センター等の両方から動かせないといけないのですね。
はい、いずれの方法によっても起動できるが条件です。
次は動いたことの知らせ方です。
大阪市でポンプの起動や警報は防災センター等にどう伝えるのか

屋内消火栓設備の基準(第4.6)を準用すること
(ク) 警報装置の表示
屋内消火栓設備の基準(第4.7)を準用すること
加圧送水装置のうち、ポンプを用いるものにあっては加圧送水装置の基準(平成9年消防庁告示第8号。以下「加圧送水装置の基準」という。)第6第1号(6)ニに規定する警報装置が作動した旨を音響及び灯火により防災センター等において容易に覚知できる装置を設ける。ただし、総合操作盤又は自動火災報知設備の受信機でこの表示を行い、及び警報を発することができる場合にあってはこの限りでない。
各採水口と防災センター等との間で直接通話することのできる連絡装置を次により設けること
(ア) 非常警報設備(放送設備)の基準(第2.1((4)及び(5)を除く。))を準用する。
(イ) 連絡装置には「連絡装置」と表示すること
カ 非常電源及び配線
非常電源及び配線は、規則第12条第1項第4号、第5号及び第9号の規定の例により設けるものとするほか、第6章「非常電源の基準」によること
- ポンプが起動したことは、屋内消火栓設備の第4.6◆を準用して、防災センター等で音響と灯火により分かるようにする
- ポンプの警報装置(加圧送水装置の基準 第6第1号(6)ニ)が作動したことも、第4.7◆を準用して防災センター等で音響と灯火により分かるようにする
- どちらも、総合操作盤や自動火災報知設備の受信機で表示と警報ができれば、別の装置はいらない(ただし書)
- 各採水口と防災センター等の間には、放送設備の通話装置の規定を準用した連絡装置を設け、「連絡装置」と表示する
- 非常電源と配線は第6章によるとし、別表6-1で60分以上とされている
起動の表示は、総合操作盤があればそちらで足りるのですね。
はい、総合操作盤や受信機で表示と警報ができれば別の装置はいりません。
次は総合操作盤です。
大阪市で総合操作盤には消防用水の何を表示するのか

ア 表示項目
(ア) 加圧送水装置の作動状態
(イ) 加圧送水装置の電源断の状態
(ウ) 呼水槽の減水状態
(エ) 水源水槽の減水状態
(オ) 総合操作盤の電源の状態
イ 警報項目
(ア) 加圧送水装置の電源断の状態
(イ) 減水状態(呼水槽又は水源水槽)
ウ 操作項目
(ア) 加圧送水装置の遠隔起動
(イ) 警報停止
- 消防用水の3.(2)キは、規則第12条第1項第8号イ・ロ・ハの建物に設ける消防用水について、総合操作盤を同号の例により設けるとする
- そのうえで、第7章「総合操作盤の基準」によるとする
- 第7章 第2 1(3)◆は、国の告示第7号の第5〜第7(表示・警報・操作の機能)として、消防用水の表示5項目・警報2項目・操作2項目を定める
| 項目 | 屋内消火栓設備(国の別表) | 連結送水管・加圧送水装置付き(国の別表) | 消防用水・加圧送水装置付き(大阪市) |
|---|---|---|---|
| 表示 | 作動状態・電源断・呼水槽の減水・水源水槽の減水・総合操作盤の電源・連動断 | 作動状態・電源断・中間水槽の減水・総合操作盤の電源 | 作動状態・電源断・呼水槽の減水・水源水槽の減水・総合操作盤の電源 |
| 警報 | 電源断・減水(呼水槽又は水源水槽) | 電源断・減水(中間水槽) | 電源断・減水(呼水槽又は水源水槽) |
| 操作 | 警報停止 | 加圧送水装置の遠隔起動・警報停止 | 加圧送水装置の遠隔起動・警報停止 |
大阪市は、第7章の「第4 特例基準」で、受信機や図面などで表示・警報・操作が容易にできる建物は総合操作盤が設置されているものとみなすとしており、その一覧にも消防用水の項目があります。こちらは大阪市の総合操作盤のみなし特例の記事で扱っています。
国の別表にない消防用水の項目を、大阪市が自分で足しているのですね。
はい、遠隔起動まで総合操作盤でできることが求められています。
最後に堺市と比べます。
堺市と比べると地下深い消防用水のポンプの扱いは何が違うのか

イ 遠隔起動装置又は連絡装置の直近には、省令第12 条第1 項第3 号ロの規定に準じた赤色の灯火を設けること。
ウ 採水口の直近には、ポンプの始動を明示する赤色の起動表示灯を設けること。ただし、前イにより設けた赤色の灯火を点滅させることにより、ポンプの始動を表示できる場合は表示灯を設けないことができること。
非常電源、配線等は、第2 屋内消火栓設備Ⅱ.5を準用するほか、非常電源の容量は、ポンプを有効に60分以上作動できる容量とすること。
ア 消防隊が活動時に使用する消火ポンプ(連結送水管のブースターポンプ、消防用水の採水用ポンプ等)の起動制御
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 4.5mを超える部分の扱い | 「4.5メートル以内の部分」の規定を適用しない(◆) | 政令第32条を適用して消防用水にできる(★) |
| ポンプの起動 | 制御盤と防災センター等のどちらでも起動・採水口からの遠隔起動も可 | 採水口の位置に遠隔起動装置・防災センター等から起動でき相互通話の連絡装置があれば不要 |
| 採水口まわりの表示 | 起動方法を明示した標識 | 赤色の灯火と赤色の起動表示灯(点滅で兼用可) |
| 連絡装置 | 各採水口と防災センター等で常に設ける(放送設備の規定を準用) | 遠隔起動装置を省くときに設ける(相互に通話) |
| 防災センター等での表示・警報 | 屋内消火栓の第4.6・4.7を準用(総合操作盤等で代替可) | 屋内消火栓のⅡ.9を準用(総合操作盤のある建物を除く) |
| 総合操作盤の項目 | 第7章で表示5・警報2・操作2を定める | 別表に消防用水の欄は見当たらない(防災センターで採水用ポンプの起動制御) |
| 非常電源 | 60分以上 | 同じ |
- 水槽のうち地盤面から4.5mを超える部分の水を数えるか、配管の摩擦損失と落差の合計が4.5mを超えるかを確かめる
- 加圧送水装置を制御盤と防災センター等の両方から起動できるようにする
- 起動と警報を防災センター等で音響と灯火で分かるようにする(総合操作盤や受信機で表示・警報できればそれで足りる)
- 各採水口と防災センター等の間に連絡装置を設け、「連絡装置」と表示する
- 規則第12条第1項第8号の建物なら、総合操作盤に消防用水の表示・警報・操作の項目を入れ、計画の早い段階で消防局と協議する
堺市は採水口に起動装置、大阪市は通話の連絡装置が基本なのですね。
はい、同じ深い水槽でも採水口まわりの装置が市ごとに違います。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず水槽の深さと総合操作盤の要否を確かめます。
そのうえで消防局に協議します!
大阪市は防災センター等からの起動と監視が要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第4章 消防用水 第2 水源(柱書、3(2)イ・オ・カ・キ)/第1章 第1節 屋内消火栓設備 第4 6 起動表示・7 警報装置の表示/非常警報設備(放送設備)の基準 第2 1/第6章 非常電源の基準 別表6-1/第7章 総合操作盤 第2 1(3) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例/第19 消防用水 Ⅱ 細目 3(柱書・(6)・(7)・(10))/第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 9/第26 総合操作盤 Ⅱ 細目 2(3)ア・別表 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令 第27条、第32条、消防法施行規則 第12条第1項第8号(e-Gov法令検索)
- 総合操作盤の基準を定める件(平成16年消防庁告示第7号)第五〜第七・別表第二・別表第三(総務省消防庁)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。大阪市が総合操作盤の消防用水の項目をこの組み合わせにした理由と、堺市の総合操作盤で消防用水をどう扱うかの具体的な運用は、この記事では断定していません。





