工場や倉庫が同じ敷地に何棟も建っていると、屋外消火栓設備のポンプや水槽を棟ごとに用意するのは大きな負担です。
国の条文は屋外消火栓設備を建物ごとに考える仕組みですが、別の棟と1台のポンプを共用してよいのか、そのときポンプの能力をどれだけ見込むのかは、各消防本部の基準が補っています。
この記事では、堺市消防局の審査基準が屋外消火栓設備のポンプと水源の共用をどう定めているかを、国の基準と市の運用に分けてたどります。屋外消火栓の節が屋内消火栓の節を借りている連鎖を番号つきの手順で示し、大阪市の運用基準とも比べます。
堺市の同じ敷地に工場が2棟あります。
屋外消火栓のポンプを1台で済ませられますか?
堺市は条件つきで兼用できるとしています。
国の条文から順に見ていきましょう。
ポンプの大きさは1棟分で足りるのですか?
原則は最大の棟の1.5倍です。
大阪市では書き方が違うので比べます。
- 国の基準(消防法施行令第19条)は屋外消火栓設備を建築物ごとに考え、耐火・準耐火以外の建物が近接していれば一の建築物とみなすとしています。ポンプは専用が原則で、他の消火設備と兼用するなら性能に支障がないことが条件です
- 堺市の屋外消火栓設備の節は、ポンプの設置方法と水源を屋内消火栓設備の節から準用しています
- 準用先の屋内消火栓設備の節は、同一敷地内で管理権原が同一の別の棟に限り、政令第32条又は条例第72条を適用してポンプと水源を兼用できるとしています
- 兼用するときは棟ごとに分岐して止水弁を設け、吐出量と水量は最大の棟の1.5倍です。耐火・準耐火以外の建物同士が隣接していない場合などは最大の棟の数値で足ります
- 大阪市は屋外消火栓設備の「設置単位」で、同一敷地内の棟は最大の棟の数値で水源・ポンプ・電源を兼用できるとしており、屋内消火栓の50パーセント増しとは扱いが違います。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
国の基準では屋外消火栓設備は建物ごとに必要になるのか

2 同一敷地内にある二以上の別表第一(一)項から(十五)項まで、(十七)項及び(十八)項に掲げる建築物(耐火建築物及び準耐火建築物を除く。)で、当該建築物相互の一階の外壁間の中心線からの水平距離が、一階にあつては三メートル以下、二階にあつては五メートル以下である部分を有するものは、前項の規定の適用については、一の建築物とみなす。
- 屋外消火栓設備は建築物ごとに、1階(2階建て以上は1階と2階の合計)の床面積で要否を決める(令第19条第1項)
- 耐火建築物・準耐火建築物以外の建物どうしが、1階は3m以下・2階は5m以下で近接していれば、一の建築物とみなして床面積を合わせる(令第19条第2項)
- ポンプは専用が原則で、他の消火設備と兼用するなら、それぞれの性能に支障がないことが条件(規則第12条第1項第7号ハ(ニ))
設置が必要になる建物の規模は屋外消火栓設備の設置基準の記事で、水平距離40mの測り方は屋外消火栓の質疑応答の記事で解説しています。
国の条文は建物ごとが基本で、共用の決まりは書かれていないのですね。
はい、そこで堺市は屋内消火栓の節を借りて共用の条件を決めています。
その連鎖をたどります。
堺市は屋外消火栓設備のポンプを別の棟と共用できるとしているのか

a 棟に至る配管は、棟ごとに分岐し、止水弁を設けること。(第2-3図参照)
- 国の規則第22条第10号が、屋外消火栓設備のポンプに規則第12条第1項第7号ハ(ニ)(専用が原則・支障がなければ兼用可)の例によるとする
- 堺市の屋外消火栓設備の節1(3)が、ポンプの設置方法を屋内消火栓設備の節のⅡ.1.(1).ウなどから準用する
- 準用先の1(1)ウ(イ)★が、同一敷地内で管理権原が同一の別の棟に限り、政令第32条又は条例第72条を適用してポンプを兼用できるとする
- 兼用するときは、棟に至る配管を棟ごとに分岐し、止水弁を設ける(a)
堺市の審査基準の第2-3図は、A棟・B棟・C棟の3棟へ、ポンプ室から棟ごとに分かれた配管に止水弁を付けて送る例を示しています。1つの棟の配管を工事や修理で止めても、ほかの棟への送水が続けられる形です。
管理権原が同じ棟どうしでないと、共用はできないのですね。
はい、同一敷地・管理権原が同一が入口の条件です。
次はポンプの能力です。
堺市でポンプと水源を共用するときは何倍の能力が必要なのか

なお、次のいずれかに該当する防火対象物にあっては、当該防火対象物のうち規定吐出量が最大となる量以上の量とすることができる。
(a) 耐火建築物又は準耐火建築物以外の建築物同士が隣接していないもの
(b) 防火対象物相互の外壁間の中心線からの距離が1階にあっては3m、2階以上にあっては5m を超える距離を有するもの
各防火対象物の内、数量が最大となるものに1.5を乗じて得た量とすること。なお、次のいずれかに該当する防火対象物にあっては、当該防火対象物のうち数量が最大となる量以上の量とすることができる。
- 原則は、兼用する棟のうち最大の棟の吐出量・水量の1.5倍にする
- 耐火建築物・準耐火建築物以外の建物どうしが隣接していない場合は、最大の棟の数値で足りる
- 棟どうしの外壁間の中心線からの距離が1階は3m、2階以上は5mを超える場合も、最大の棟の数値で足りる
| 場合 | ポンプの吐出量 | 水源の水量 |
|---|---|---|
| 原則(1.5倍) | 1,200リットル毎分以上 | 21立方メートル以上 |
| (a)(b)に当たる場合 | 800リットル毎分以上 | 14立方メートル以上 |
堺市は、特定駐車場用泡消火設備でも別の棟とのポンプの共用を定めています。こちらは堺市の特定駐車場用泡消火設備の記事で扱っています。
離れて建っている棟なら、最大の棟の数値で足りるのですね。
はい、隣接していないか、3m・5mを超えて離れているかを確かめます。
次は消火栓の置き方です。
堺市で共用するとき屋外消火栓は棟ごとにどう置くのか

(第2 屋内消火栓設備 第2-3図参照)
ウ 政令第19 条第2 項の規定により一の建築物とみなされる場合、同条第3 項第1 号に規定する「建築物の各部分」とは、「一の建築物とみなされるそれぞれの建築物の各部分」であること。
- ポンプを共用しても、屋外消火栓は棟ごとに設置し、配管は棟ごとに分岐して止水弁を付ける(イ)。ポンプの共用の項目(a)と同じ配管の決まりを、消火栓の置き方の側でも重ねて書いている
- 令第19条第2項で一の建築物とみなされる建物では、ホース接続口までの水平距離40mを、それぞれの建物の各部分から測る(ウ)
なお、令第19条第2項で一の建築物とみなされるのは、耐火建築物・準耐火建築物以外の建物です。その場合は1つの建物として設置を考えるので、別の棟とのポンプ共用の項目とは場面が分かれます。屋外消火栓で1階と2階の屋内消火栓を代える場合の配置は、四日市市の屋外消火栓の代替の記事で6本部を比べています。
1つの建物とみなされても、40mは建物ごとに測るのですね。
はい、それぞれの建築物の各部分から測ります。
最後に大阪市と比べます。
大阪市と比べると屋外消火栓設備の共用は何が違うのか

1 水源の水量、加圧送水装置の吐出量及び電源の容量は、兼用する棟のうち最大となるものの数値であること
2 主配管から各棟へ分岐する箇所には、棟ごとに止水弁が設けられていること
3 維持管理が一体のものとして行えること
(1) 兼用する棟が、耐火建築物(建基法第2条第9号の2に規定する耐火建築物をいう。以下同じ。)又は準耐火建築物(建基法第2条第9号の3に規定する準耐火建築物をいう。以下同じ。)であること
(2) 兼用する棟が、その外壁間の中心線から1階にあっては3メートル、2階以上の階にあっては5メートルを超える位置にあること
- 屋外消火栓設備は棟ごとに設置が原則で、その「棟」は令第19条第2項で1の建築物とみなされるものをいう
- 同一敷地内の棟に限り、水源・加圧送水装置等・電源を兼用できる
- 兼用するときの数値は兼用する棟のうち最大の棟の数値で、50パーセント増しの規定はない。屋内消火栓設備の第9とはここが違う
| 項目 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|
| 書いている場所 | 屋外消火栓の節が屋内消火栓の節を準用 | 屋外消火栓の節の第8 設置単位に直接 |
| 兼用できる棟 | 同一敷地内で管理権原が同一 | 同一敷地内(管理権原の記載なし) |
| 根拠の書き方 | 政令第32条又は条例第72条を適用(★) | 特例の条文の記載なし(◆) |
| 兼用できるもの | ポンプ・水源(電源の兼用は見当たらない) | 水源・加圧送水装置等・電源 |
| 必要な能力 | 最大の棟の1.5倍(隣接していない場合などは最大の棟の数値) | 最大の棟の数値 |
| 配管 | 棟ごとに分岐し止水弁 | 同じ |
| そのほか | 屋外消火栓は棟ごとに設置 | 維持管理が一体のものとして行えること |
- 各棟が屋外消火栓設備の設置対象になるか、近接する棟が一の建築物とみなされるかを確かめる
- 共用したい棟が同一敷地内で管理権原が同一かを確かめる
- 棟どうしが隣接していないか、外壁間の中心線から1階3m・2階以上5mを超えて離れているかで、1.5倍か最大の棟の数値かを決める
- ポンプ室から棟ごとに分岐して止水弁を付け、屋外消火栓を棟ごとに配置して40mに収まるかを確かめる
- 政令第32条又は条例第72条の適用が前提なので、計画の早い段階で消防局と協議する
大阪市は1.5倍の上乗せがなく、堺市は特例の扱いなのですね。
はい、同じ共用でも上乗せと手続が市ごとに違います。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず2棟の管理権原と棟どうしの距離を確かめます。
そのうえで消防局に協議します!
堺市は最大の棟の1.5倍が原則なのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例/第10 屋外消火栓設備 Ⅱ 細目 1(3)、2、7(2)イ・ウ/第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 1(1)ウ(イ)、2(2)イ/堺市火災予防条例 第72条(基準の特例) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第1章 第11節 屋外消火栓設備 第8 設置単位/第1章 第1節 屋内消火栓設備 第9 設置単位 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 消防法施行令 第19条、第32条、消防法施行規則 第12条第1項第7号、第22条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。計算例は国の基準の数値に当てはめた考え方の例で、実際の設計値は設備の構成や摩擦損失で変わります。堺市で別の棟とポンプを共用するときの具体的な手続は、この記事では断定していません。





