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屋外貯蔵タンクの浮き屋根は仮補修のまま使い続けられるのか|継続使用の4要件と点検の中身を解説

屋外貯蔵タンクの浮き屋根の安全対策と仮補修による継続使用を示すアイキャッチ画像

屋外貯蔵タンクの浮き屋根は、腐食減肉や溶接欠陥によって漏えい事故を起こすことがあります。
従来は漏れが見つかった場合、原則として速やかにタンクを開放し、溶接等で恒久的な補修をすることとされていました。
令和2年3月27日、消防庁は検討会の報告書を踏まえ、事故防止対策と漏えい発生時の対応をまとめた通知を発出しました(消防危第84号)。
仮補修のまま使い続けられる場合とそうでない場合を知らないと、現場での対応を誤ります。

うちの屋外タンクも浮き屋根なんですが、少し腐食が見つかったらすぐ止めないといけないんでしょうか。

実は令和2年の通知で、要件を満たせば仮補修のまま使い続けられる場合があると示されていますよ。

仮補修で済むなら助かりますが、どんな条件なんでしょうか。

では対象のタンクと点検・補修の中身を、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和2年3月27日の消防危第84号により、屋外貯蔵タンクの浮き屋根の事故防止対策と漏えい発生時の対応がまとめられました。
  • 対象は特定屋外タンク貯蔵所の浮き屋根(シングルデッキ・ダブルデッキ)で、規則第62条の5が定める内部点検や溶接施工の際に適用されます。
  • 事故防止ガイドラインは、目視検査・加圧漏れ試験・超音波板厚測定などタンク開放時に実施する点検の内容を示しています。
  • 漏えいが見つかっても、4つの要件をすべて満たせば仮補修のまま継続使用できることが明確になりました。
  • 仮補修はあくまで応急措置であり、タンクを開放した際には溶接等による恒久補修が必要です。

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屋外貯蔵タンクの浮き屋根の事故防止対策と仮補修の流れを示す図解

屋外貯蔵タンクの浮き屋根はなぜ安全対策の通知が出たのか

浮き屋根の腐食減肉と溶接欠陥による漏えい事故を示すイラスト
浮き屋根には、長年の使用で避けられない劣化のリスクがあります。
消防庁は平成30年度から検討会を開き、事故の実態を分析してきました。
(令和2年3月27日 消防危第84号)消防庁では平成30年度から「危険物施設の長期使用に係る調査検討会」の下に、「屋外貯蔵タンクの浮き屋根の安全対策に関するワーキンググループ」を開催し、浮き屋根の事故防止対策や、事故が発生した際の適切な対応方法について検討を行ってきました。(略)浮き屋根の事故を防止するためには、効果的な点検を実施すること、適切な施工管理を実施すること等が有効である旨の提言がなされました。また、事故が発生した際には、従来原則として速やかにタンクを開放し、溶接等で恒久的な補修を実施することとされているところですが、漏えい初期の応急措置として適切な仮補修を実施するとともに、漏えいの拡大防止や浮力の維持等が確認されている浮き屋根については、継続的に使用することとしても差し支えない旨の提言がなされました。
通知の理由は、事故の分析結果と実務上の課題の両方です。
過去の事故を分析すると、主な漏えいの原因は腐食減肉と溶接欠陥でした。
それまでは漏れが見つかると速やかな開放と恒久補修が原則で、長期間タンクを止めざるを得ないという課題がありました。
そこで検討会の報告書を踏まえ、平時の事故防止対策と、漏えい発生時に仮補修のまま使い続けられる条件の両方が整理されました。
次は、この通知がどのタンクのどの部分に関係するのかを見ていきます。

腐食や溶接の欠陥なんて、開けてみないとわからない気がします。

だからこそ開放時の点検方法が具体的に示されたんですよ。

対象になるのはどのタンクのどの部分か

シングルデッキとダブルデッキの浮き屋根を並べて示すイラスト
対象になるのは、屋外貯蔵タンクの中でも浮き屋根を持つタンクです。
内部点検や溶接施工のタイミングで、このガイドラインが使われます。
(消防危第84号)特定屋外タンク貯蔵所の浮き屋根について、危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第62条の5に定める内部点検や、溶接施工等を実施する際には、本ガイドラインにより運用することとされたい。
(危険物の規制に関する規則第62条の5)引火点を有する液体の危険物を貯蔵し、又は取り扱う屋外タンク貯蔵所(岩盤タンクに係る屋外タンク貯蔵所及び海上タンクに係る屋外タンク貯蔵所を除く。)で容量が千キロリットル以上一万キロリットル未満のものに係る定期点検は、(略)当該屋外貯蔵タンクの内部を点検(以下「内部点検」という。)した日(略)から十三年(略)を超えない日までの間に一回以上当該屋外貯蔵タンクの内部点検を行わなければならない。
対象は特定屋外タンク貯蔵所の浮き屋根で、シングルデッキ・ダブルデッキの両方です。
容量が千キロリットル以上一万キロリットル未満のタンクは、規則第62条の5にもとづく内部点検の周期が定められています。
このガイドラインは、その内部点検や溶接施工工事を実施するときに使う運用ルールという位置付けです。
本通知は消防組織法第37条の規定にもとづく助言として発出されています。
次は、開放時に具体的にどんな点検が求められるのかを見ていきます。

うちのタンクは容量が小さいので、対象外かもしれません。

容量の基準は規則第62条の5で決まっているので、一度確認しておくと安心です。

事故を防ぐためにどんな点検が求められるのか

加圧漏れ試験と超音波板厚測定を行う点検作業のイラスト
事故防止ガイドラインは、タンク開放時に実施する点検の中身を具体的に示しています。
柱になるのは目視・加圧漏れ試験・超音波板厚測定の三つです。
(消防危第84号 別添1)ア 目視検査 デッキ板の溶接線及び板の腐食等の状況について、デッキ板上から目視検査を実施する。(略)イ 加圧漏れ試験 全てのポンツーン室に対して、加圧漏れ試験を実施する。(略)試験圧力は、原則として353Pa(36mmAq)以上とする。(略)ウ 超音波板厚測定 ポンツーン底板に対して、超音波板厚測定を実施する。(略)(3)不具合箇所の対応 漏れの生じている箇所は、溶接補修を実施する。板の厚さが3.2mm未満となっている箇所は、溶接補修(肉盛り補修、当板補修、取替補修)を実施する。
点検は目視だけでなく、数値で確認する試験まで含みます。
まず目視検査でデッキ板やポンツーンの溶接線・腐食を確認し、次に全ポンツーン室で加圧漏れ試験を行います。
さらにポンツーン底板は超音波板厚測定で厚みを数値で確認し、3.2mm未満なら溶接補修が必要です。
このほか、仕切り板の健全性や過去の補修履歴を踏まえた浮力の確認も、開放のたびに行うことになっています。
これらの点検が、次に説明する継続使用の判断材料にもなります。

板厚まで数値で測るんですね。
想像より細かいです。

その記録が、漏えい時に使い続けられるかの判断材料にもなるんです。

漏れが見つかったら本当にすぐ使い続けられるのか

仮補修だけで使い続けてよい場合と緊急開放が必要な場合を対比したイラスト
漏えいが見つかっても、条件を満たせば仮補修のまま使い続けられます。
ただし、その条件は一つではありません。
(消防危第84号 別添2)4 仮補修後のタンク継続使用の要件 下記事項を全て満足している。①直近の開放検査において、「浮き屋根の漏えい事故防止に関するガイドライン」1「タンク開放時に実施する点検」に示す点検を実施している。②(略)ポンツーン内の仕切り板の健全性の確認を実施している。③(略)過去の補修履歴を踏まえた浮力の確認を実施している。④漏えい箇所がポンツーン室内の場合には、漏えい発覚時の室内への滞油量が喫水線を超えておらず、かつ、漏えいした室が破損し浮力を失った場合においても浮き屋根が沈下しないことを確認する。
見落としやすいのは、仮補修が最終手段ではないという点です。
継続使用が認められるのは、①開放検査の実施②仕切り板の健全性③過去の補修履歴を踏まえた浮力④浮力を失っても沈下しないことの4つをすべて満たした場合だけです。
一つでも欠ければ、緊急開放をして所轄消防本部と協議する必要があります。
また仮補修はあくまで応急措置であり、タンクを開放した際には溶接等で恒久補修を行うことが前提です。
「仮補修をしたから、もう開放しなくてよい」という理解は誤りです。

仮補修すれば、それでもう安心だと思っていました。

次の開放時に恒久補修が必要という前提は、忘れないでください。

明日からなにを確認すればよいのか

消防本部と協議しながら計画書を作成する様子を示すイラスト
最後に、次のタンク開放や漏えいへの備えとして確認できることを整理します。
根拠になるのは、通知が示すフォローアップの考え方です。
(消防危第84号 別添2)3 フォローアップ ①仮補修が適切に維持されているかを確認するため、定期的な点検を実施する。(略)④具体的な内容を消防本部と協議の上、計画書を作成し、消防本部に提出する。その際、盛り込む事項としては、仮補修箇所に対する点検要領、点検頻度、仮補修材の交換頻度、漏えいが再発した際の対処方法、次回開放予定日(恒久補修)等とする。
明日からできることは三つあります。
まず、直近の開放検査の記録と補修履歴を整理し、継続使用の4要件をいつでも確認できるようにしておくことです。
次に、漏えいが起きた場合に備えて所轄消防本部との協議の窓口と、計画書に盛り込む項目を事前に把握しておきます。
最後に、仮補修材の交換頻度や次回開放予定日をあらかじめ決めておき、恒久補修を先送りにしない体制を整えておきます。
判断に迷う点があれば、自己判断せず所轄消防署に確認することが大切です。

次の開放点検の記録から、整理しておきます。

記録と計画書があれば、いざというときも落ち着いて対応できますよ。

よくある質問

Q浮き屋根の安全対策はいつ通知されましたか?
A令和2年3月27日付けの消防危第84号により、事故防止対策と漏えい発生時の対応がまとめて示されました。
Q漏れが見つかったら必ずタンクを緊急開放するのですか?
Aいいえ。4つの要件をすべて満たす場合は、仮補修のまま継続使用できるとされています。
Q仮補修をすれば恒久補修はしなくてよいのですか?
Aいいえ。仮補修は応急措置であり、次にタンクを開放した際には溶接等による恒久補修が必要です。
Q開放検査ではどんな点検をするのですか?
A目視検査・加圧漏れ試験・超音波板厚測定を中心に、仕切り板の健全性や浮力の確認も行います。

まとめ

✔令和2年3月27日の消防危第84号により、浮き屋根の事故防止対策と漏えい発生時の対応がまとめられました。
✔対象は特定屋外タンク貯蔵所の浮き屋根で、規則第62条の5の内部点検や溶接施工の際に適用されます。
✔開放時の点検は目視検査・加圧漏れ試験・超音波板厚測定が柱になります。
✔板厚が3.2mm未満となっている箇所は、溶接補修が必要です。
✔漏えい時は4つの要件をすべて満たせば仮補修のまま継続使用できます。
✔仮補修は応急措置であり、次の開放時には溶接等による恒久補修が必要です。
✔漏えい発生時は消防本部と協議のうえ計画書を作成し提出することが求められます。

開放検査の記録と計画書、次の点検までに整理しておきます!

継続使用の4要件を押さえておけば、いざというときも安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「屋外貯蔵タンクの浮き屋根の安全対策について」(令和2年3月27日 消防危第84号 消防庁危険物保安室長)
  • 別添1「浮き屋根の漏えい事故防止に関するガイドライン」
  • 別添2「浮き屋根の漏えい発生時の仮補修に関するガイドライン」
  • 危険物の規制に関する規則第62条の5
  • 消防組織法第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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