病院で夜間に火災が起きたとき、消防はなにを求めるのでしょうか。
消防庁予防課長は、平成23年2月10日の消防予第50号で、前夜に徳島県鳴門市の病院で起きた火災を受けて通知を出しました。
通知は、死者1人、負傷者13人という被害を挙げ、病院における防火対策の徹底を求めています。
この記事では、通知の中身、火災の概要、関係する条文、明日から確かめることを解説します。
夜の病院で起きた火災と聞いて、夜間の体制が不安になりました。
消防庁は何を求めたのでしょうか。
火災の翌日に、消防予第50号が出されました。
まず、通知の中身から確かめましょう。
その火災は、消防用設備に問題があったのですか。
通知は、法令違反が報告されていないと述べています。
順に見ていきます。
- 消防庁予防課長は、平成23年2月10日の消防予第50号で、前夜の徳島県鳴門市の病院火災を受け、病院における防火対策の徹底を求めました。
- 火災は夜間に出火し、死者1人、負傷者13人の被害が出たと、通知は述べています。
- 通知の依頼は、立入検査等の機会に出火防止対策の徹底と避難誘導体制の確認に配慮し、必要に応じて平成元年のマニュアルを参考に指導することです。
- 病院は、消防法第8条第1項が名を挙げる防火対象物で、防火管理者と消防計画で消火、通報、避難の訓練などを行います。
- 通知に火災の原因は書かれておらず、依頼の相手は消防機関で、施設に新たな義務を課す文言はありません。
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目次
消防庁はなぜ病院の火災の翌日に通知を出したのか

まず、その冒頭の部分を引いて確かめます。
去る2月9日深夜に徳島県鳴門市の病院において火災が発生しました(別紙参照)。現在、この火災の原因については鳴門市消防本部により調査が行われているところであり、現時点では消防用設備の設置等についての法令違反は報告されておりませんが、本火災では、病院における人的な防火体制が手薄となる夜間において出火し、死者1名、負傷者13名という多数の人的被害が発生しています。
別紙によると、火災の覚知は2月9日の23時26分、鎮火は2月10日の0時56分です。
通知が出たのは、その翌日です。
通知は、被害を「死者1名、負傷者13名」と述べ、原因は調査中としています。
そのため、この記事も、出火の原因には触れません。
火災の翌日に、通知が出たのですね。
はい、通知は夜間に人的な防火体制が手薄になる点を挙げています。
次に、通知の依頼を見ましょう。
通知は誰になにを依頼しているのか

つきましては、貴職におかれましては、今後の立入検査等の機会において、病院における出火防止対策の徹底及び避難誘導体制の確認等に十分ご配慮いただくとともに、必要に応じ、「社会福祉施設及び病院における夜間の防火管理体制指導マニュアル」(平成元年3月31日付け消防予第36号)等を参考に指導を図られるようお願いします。また、各都道府県におかれましては、貴都道府県内の市町村に対し、この旨周知するようお願いします。
宛先は、各都道府県消防主管部長と、東京消防庁・政令指定都市消防長です。
立入検査の根拠は、消防法第4条にあります。
まず、その条文を引いて確かめます。
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(略)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。
通知は、その機会に配慮する二つの事項を挙げています。
骨組みを、表にまとめます。
| 項目 | 通知の内容 |
|---|---|
| 発出 | 平成23年2月10日、消防庁予防課長(消防予第50号) |
| 宛先 | 各都道府県消防主管部長、東京消防庁・政令指定都市消防長 |
| 依頼1 | 今後の立入検査等の機会に、病院における出火防止対策の徹底及び避難誘導体制の確認等に十分配慮する |
| 依頼2 | 必要に応じ、「社会福祉施設及び病院における夜間の防火管理体制指導マニュアル」(平成元年3月31日付け消防予第36号)等を参考に指導を図る |
| 依頼3 | 各都道府県は、管内の市町村に対し、この旨を周知する |
マニュアルの本文は、この通知には含まれていません。
病院に、新しい義務ができたのですか。
いいえ、通知が配慮を求めた相手は消防機関です。
次に、火災の概要を見ましょう。
火災のとき病院の消防用設備等と防火管理はどうなっていたのか

まず、その設備と防火管理の欄を引いて確かめます。
消防用設備等の設置状況 消火器具、自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備、避難器具、誘導灯
防火管理の状況 防火管理者:選任済み 消防計画:作成済み 直近の消防訓練:平成22年10月26日実施
別紙の要点を、表にまとめます。
| 項目 | 別紙の内容 |
|---|---|
| 火災の覚知 | 平成23年2月9日23時26分 |
| 鎮火 | 平成23年2月10日0時56分 |
| 場所と用途 | 徳島県鳴門市の病院(令別表第一(6)項イ) |
| 建物 | 耐火造、地上3階建て、延べ面積2,097.98平方メートル |
| 死傷者 | 死者1人、負傷者13人(重症2人、軽症11人) |
| 消防用設備等 | 消火器具、自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備、避難器具、誘導灯 |
| 防火管理 | 防火管理者は選任済み、消防計画は作成済み、直近の消防訓練は平成22年10月26日実施 |
| 火災の原因 | 詳細調査中 |
通知の時点で分かっていた範囲は、ここまでです。
通知は「(6)項イ」と書きますが、現行の令別表第一では、(6)項イは(1)から(4)に分かれています。
設備も防火管理者もあったのに、被害が出たのですか。
別紙には、設備と防火管理の状況が載っています。
原因は調査中とされ、通知に書かれていません。
通知はなぜ夜間の人的な防火体制を挙げたのか

まず、防火管理の根拠の消防法第8条第1項を引いて確かめます。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(略)、複合用途防火対象物(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
現行の令第1条の2第3項第1号ロは、令別表第一(6)項イなどで収容人員が30人以上のものを、防火管理者を定める対象としています。
次に、消防計画に定める事項を、施行規則の条文で引いて確かめます。
イ 自衛消防の組織に関すること。
チ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。
リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
同じ規則の第3条第10項は、令別表第一(6)項に掲げる防火対象物の防火管理者に、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施するよう定めています。
第8条、令第3条の2、規則第3条のどれにも、夜間という語は出てきません。
この記事は、夜の体制を、消防計画の中身として整えておく課題と読みます。
夜は職員が少ないので、条文に夜のことが書いてあるのかと思いました。
条文に夜間という語は出てきません。
夜の体制は、消防計画の中身として整えておきます。
明日から病院の防火管理者はなにを確認すればよいのか

次の5つは、通知を踏まえた実務上のおすすめです。
- 夜間に勤務する人数と、火災時に通報、初期消火、避難誘導をだれが受け持つかを、消防計画で確かめる
- 夜間を想定した避難訓練を、いつ実施したかを、記録で確かめる
- 消火器、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯が、夜間も使える状態かを点検の記録で確かめる
- 火気の使用や取扱いの監督を、夜勤の職員まで伝えているかを確かめる
- 立入検査で聞かれたときに、消防計画と訓練の記録をすぐ出せるようにしておく
明日から、まず何を見ればよいですか。
まず、夜間の消防計画と訓練の記録を見ましょう。
そのうえで、設備の点検記録を確かめます。
よくある質問
まとめ
夜間の体制を、消防計画と訓練の記録で確かめます!
夜間の防火管理は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第50号「病院における防火対策の徹底について」(平成23年2月10日 消防庁予防課長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第4条、第8条 e-Gov法令検索
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2、第3条の2、別表第一 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





