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危険物の施設を貸すと手続きは何になるのか|市境の許可権者とローリーの貸与と運営委託と区分転換の五つの質疑を現行の条文と照らして解説

危険物施設の貸借と転換の手続き

危険物の施設や、施設に積んで走るタンクローリーを、他の会社に貸すことがあります。
運営を任せたり、給油取扱所を別の区分に作り替えたりすることもあります。
そのとき、消防への許可や届出は、どうなるのでしょうか。
消防の実務書には、この分かれ目を確かめた質疑応答が並んでいます。
この記事では、その中から5問を取り上げ、現行の条文に照らして読みます。貸す、預ける、作り替えるときの手続きを、順に確かめます。

施設を貸しただけなら、消防への手続きは何も要らないんじゃないですか。

いいえ。
何を貸すかとどこに置くかで、手続きが変わります。

そこが、よく分からないんです。

一つずつ確かめます。
現行の条文に当たれるところは、当たって読みます。

この記事の結論
  • 市の境界線をまたぐ給油取扱所は、施設の実態から見て一方の市の許可とし、市どうしの協定書は要らないと答えています
  • ローリーを他の市の業者に貸して、その市に常置させるなら、常置場所の変更に当たり、変更の許可を受けるのは貸した側だと答えています
  • 車検の切れたローリーの無償貸与は、貸した側が常置場所を変えたとは解せませんが、譲渡引渡の届出は必要だと答えています
  • 運営委託や賃貸借で所有権が移らないなら、消防法第11条第6項の引渡には当たらないと答えています
  • 施設の区分を替える転換は廃止のあとに設置の許可、危険物の種類や数量の変更は変更の許可だと答えています

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施設の貸借と転換の手続きの五題として、市境は実態で許可権者、貸与ローリーは変更許可、無償貸与でも届出が要る、運営委託は引渡でない、区分転換は廃止と設置、を並べた図解

貸したり転換したりするときの手続きは、どの条文で決まっているのか

消防法第11条第1項は、製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者に、施設ごとの許可を求めています。
許可をするのは、消防本部及び消防署を置く市町村の区域にある施設なら当該市町村長、それ以外の区域なら都道府県知事です。
位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様に許可が要ります。
同条第6項は、施設の譲渡又は引渡があったとき、譲り受けた者と引渡を受けた者が許可を受けた者の地位を承継すると定め、承継した者に遅滞なく市町村長等へ届け出ることを求めています。
施設の用途をやめたときは、第12条の6が遅滞なく届け出ることを求めています。
条文は、貸与や運営委託、区分の転換をどの手続きに当てはめるかまでは書いていません。以下の5問は、その分かれ目を確かめた質疑です。

市の境界線をまたぐ給油取扱所の許可は、どちらの市が出すのか

薄ベージュの小さな給油取扱所が、地面に引かれた薄い灰色の帯をまたいで建ち、左右に薄ベージュと青の小さな庁舎が並んでいるイメージ
二つの市の境界線をまたいで、給油取扱所を建てる計画がありました。
同じ敷地に、灯油だけを扱う一般取扱所も付いています。許可を出すのは、どちらの市長なのでしょうか。
問(要旨) 茨木市と吹田市の境界線をまたぐ位置に、危険物給油取扱所と灯油専用の一般取扱所を建てる計画がある。給油取扱所の許可権原者は、事務所の面積が大きいほうの市長、取扱数量が大きいほうの市長、敷地面積が大きいほうの市長、関係する2市の市長の連名、のいずれか。連名で許可した場合の手数料の徴収と配分はどうするか。灯油専用の一般取扱所は、一方の市域にだけ設置されているが、許可権原者は所在地を管轄する市の市長でよいか。
答(要旨) 設問の給油取扱所及び一般取扱所の許可権者は、施設の実態からみて、茨木市とすること。この場合は、協定書の作成は不要である。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和43年9月27日・消防予第213号)
境界をまたぐ施設は、実態から見て一方の市が許可すると答えています。
現行の消防法第11条第1項は、消防本部及び消防署を置く市町村の区域に設置される施設は当該市町村長、それ以外の区域なら都道府県知事、と区分しています。
条文は「区域に設置される」施設を対象にしており、境界をまたぐ場合の決め方までは書いていません。回答は、施設の実態を見て、茨木市を許可権者としました。質疑の図では、事務室が茨木市の側に描かれています。
二つの市が権限を分け合うわけではないので、市どうしの協定書は要らないとされています。

二つの市に、許可をもらいに行かなくていいんですね。

はい。
実態から見て一方の市が許可します。

ローリーを他の市の業者に貸すと、常置場所の変更になるのか

薄ベージュの車庫の中に、紺色のタンクローリーが一台入っていて、右隣に橙色の屋根の小さな事務所が並んでいるイメージ
ある会社が、許可を受けたタンクローリーを、他の市にいる業者に貸します。
期間は約1か月で、その間は相手の市に置き、その市の周りで走らせます。
問(要旨) 移動タンク貯蔵所(ローリー)は、Aが甲市(消防本部及び署設置)に常置させることで、甲市長の許可(完成検査済)を得ている。このたび、乙市(消防本部及び署設置)に在住のBにローリーを貸与(期間は約1か月)し、乙市内に常置させて乙市一円とその近郷に運行させる。貸与期間でも、危険物の規制に関する政令第15条第1号の常置とみなすなら、どの方法で処理するか。方法は、AからBへの一時的な貸与であり、所有はAにあるから、常置場所の変更とみなしてAに変更申請書を提出させる、または、政令改正で常置場所の規定を削除する考えがある時期でもあるので、届出だけで処理する。
答(要旨) 設問の場合は、「移動タンク貯蔵所を常置する場所」の変更に該当するので、消防法第11条第1項後段の規定により変更の許可を受けなければならない。この場合、変更の許可を受けるべき者はAである。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和45年9月11日・消防予第179号)
相手の市に常置させるなら、変更の許可が必要と答えています。
現行の危険物の規制に関する政令第15条第1項第1号は、移動タンク貯蔵所を、屋外の防火上安全な場所、又は不燃材料等の建築物の1階に常置することを求めています。問にある「常置場所の規定を削除する」という考えは、現行の条文には反映されていません。
回答は、貸しても所有がAにあることを理由に届出で済ませることは認めませんでした。許可を受ける側はAです。貸した側が、変更の許可の申請をすることになります。
行政庁をまたぐ常置場所の変更の手続きは、別の記事で整理しています。

貸しただけでも、貸した側が申請するんですね。

はい。
相手の市に常置させるなら、変更の許可です。

車検切れのローリーを無償で貸すと、届出は要るのか

薄ベージュの給油取扱所の裏手にある空き地に、紺色のタンクローリーが一台だけ止まり、低い柵で囲まれているイメージ
車検の期間が切れたローリーを、知人に無償で貸しました。
借りた側は、約1か月、自分の給油取扱所の裏の空き地にガソリンを積んだまま置いていました。
問(要旨) 甲は、所有する車検期間の満了した移動タンク貯蔵所(許可品名及び数量ガソリン10キロリットル)を乙に無償貸与した。乙は約1箇月間、常置場所以外の場所(乙が経営する給油取扱所の裏の空地)にガソリン10キロリットルを積載して貯蔵していたところを、警察に摘発された。消防法第11条第1項の変更許可(常置場所の変更)、同条第6項の譲渡引渡の届出は、いずれもなされていない。甲は、常置場所を変更したものとして法第11条第1項に違反するものと解してよいか。甲と乙の貸与関係は、管理権限が移転しているものとみなし、法第11条第6項による譲渡引渡の届出が必要とされるか。
答(要旨) 1 甲が常置場所を変更したものとは解しえない。2 お見込みのとおり(管理権限が移転しているものとみなし、譲渡引渡の届出が必要)。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和54年9月22日・消防危第111号)
貸しただけで常置場所を変えたことにはなりませんが、引渡の届出は要ると答えています。
前の問との違いは、ローリーの置き場所です。前の問では、貸与先の市に常置させるので、常置場所の変更になりました。この問では、甲が元の常置場所を変えたわけではないので、甲の変更許可の違反とは解されていません。
ただし、貸与で管理の権限が乙に移ったとみなされるなら、消防法第11条第6項の引渡に当たり、乙は許可を受けた者の地位を承継して、遅滞なく市町村長等に届け出る必要があります。
回答は、乙が空き地に積載して置いていた点の適否には触れていません。

無償で貸しても、届出が要るなんて知りませんでした。

はい。
管理権限が移るかどうかが、分かれ目です。

運営を委託したり、給油所を賃貸したりすると、引渡になるのか

薄ベージュの油槽所に丸いタンクが二基あり、右に橙色の屋根の小さな紺色の事務所が並び、平らな通路で結ばれているイメージ
石油会社が、油槽所の運営を他の会社に任せることがあります。
給油所の設備一切を貸して、販売の仕事に使わせることもあります。どちらも所有権は動きません。
問(要旨) 事例Ⅰ 油槽所の運営管理を委託する運営委託契約書に基づいて契約を締結した場合(施設の所有権は移転していない)。事例Ⅱ 給油所の設備一切を賃借し、石油製品等の販売とこれに付帯する業務のために使用する賃貸借契約書に基づいて契約を締結した場合(設備に係る所有権は移転していない)。いずれも、消防法第11条第6項の規定による引渡に該当すると思われるがどうか。引渡がなされたあとに施設を変更する場合は、引渡を受けた者が設置者として変更許可を受けるべきと思われるがどうか。
答(要旨) 1 事例Ⅰ及び事例Ⅱのいずれも、消防法第11条第6項に規定する引渡に該当しない。なお、引渡としての設置者の地位の承継は、当該危険物施設を変更する権限の移動の有無がその主要な判断要素と考えられるものである。2 お見込みのとおり。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和58年11月17日・消防危第119号)
運営委託も賃貸借も、所有権が動かないなら引渡には当たらないと答えています。
回答が示した物差しは、施設を変更する権限が移ったかどうかです。運営を任せても、設備を借りて使わせても、変更の権限まで相手に渡していなければ、第11条第6項の地位の承継は起きません。
前の問の無償貸与は、貸与で管理権限が移ったとみなされたので届出が必要でした。二つの回答は別の時期の別の事案で、理由の書き方も違います。同じ「貸す」でも、権限がどこまで移るかで見ます。
引渡があったあとは、引渡を受けた者が設置者として変更の許可を受けます。譲渡や引渡の一般的な扱いは、別の記事で整理しています。

貸したり任せたりしても、届出が要らないこともあるんですね。

はい。
変更する権限が移るかどうかで決まります。

給油取扱所を別の区分に作り替えるとき、変更の許可で足りるのか

薄ベージュの給油取扱所に紺色の屋根の張り出しがあり、右に同じ広さの薄ベージュの倉庫が低い橙色の屋根で並んでいるイメージ
給油取扱所を、別の区分の施設に作り替えたいという相談です。
建物や設備は、そのままで、使い方だけ変えることもあります。
問(要旨) 既設の危険物製造所等の区分又は形態等の変更に伴う手続について、製造所並びに政令第2条及び第3条に規定する区分を変更する場合は「廃止一新設」の事務手続とし、区分を変更せず、政令基準及び運用基準における細区分を変更する場合は「変更」の事務手続とする。位置、構造、設備に変更がなく、単に区分又は細区分を変更する場合も同様の事務手続とする。以上のように解してよいか。
答(要旨) (1)製造所、貯蔵所又は取扱所において他の施設区分への転換を行う場合、及び貯蔵所又は取扱所が属する政令第2条及び第3条の施設区分(同令第3条第2号イ及びロを含む)の変更となる転換を行う場合は、消防法第12条の6に定める用途廃止に係る手続を経て、同法第11条第1項前段に定める設置に係る許可処分を必要とする。(2)変更工事を行う場合のほか、貯蔵し又は取り扱う危険物の種類数量の変更、業務形態の変更等を行うことにより、消防法第10条第4項の技術上の基準が異なることとなる場合は、同法第11条後段の変更に係る許可を必要とする。なお、同一施設区分の中で製造所等の用途が基本的に変更される場合は、(1)による手続を必要とする。
(消防庁の危険物規制に関する質疑応答)(昭和52年12月19日・消防危第182号)
区分が替わる転換は、廃止のあとに設置の許可、中身の変更は変更の許可と答えています。
危険物の規制に関する政令第2条は貯蔵所の区分、第3条は取扱所の区分を定めています。屋外の給油取扱所を屋内の給油取扱所に替えるような、区分の変更を伴う転換は、用途廃止の届出を経て、新しく設置の許可を受けます。届出は、消防法第12条の6の規定です。
一方、危険物の種類や数量を替えたり、業務の形態を替えたりして、適用される技術上の基準が異なるなら、変更の許可で足ります。位置、構造、設備が同じでも、手続きは必要になることがあります。
同じ区分の中で用途が基本的に変わる場合は、区分を替える転換と同じ扱いです。

見た目が同じでも、手続きは変わるんですね。

はい。
区分が替わるかどうかを見ます。

よくある質問

Q危険物施設の許可は、誰が出しますか?
A消防法第11条第1項により、消防本部及び消防署を置く市町村の区域にある施設は当該市町村長、それ以外の区域にある施設は都道府県知事です。
Q施設を譲り渡したり引き渡したりしたら、何か届け出ますか?
A消防法第11条第6項により、譲り受けた者や引渡を受けた者は許可を受けた者の地位を承継し、遅滞なく市町村長等に届け出ます。
Q施設の用途をやめたときは、どうしますか?
A消防法第12条の6により、所有者、管理者又は占有者が、遅滞なく市町村長等に届け出ます。
Qこの質疑応答は、今もそのまま使えますか?
A回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかいは当時のものです。今の運用は、所轄の消防本部に確認したうえで、事案に当てはめます。

まとめ

✔消防法第11条は設置と変更に許可、譲渡引渡に届出を求めるが、貸与や転換の扱いは質疑応答の運用で補われる
✔市の境界線をまたぐ施設は、実態から見て一方の市が許可し、協定書は要らない
✔ローリーを貸して相手の市に常置させるなら、常置場所の変更として、貸した側が変更の許可を受ける
✔無償貸与で管理権限が移るなら、貸した側の変更許可は要らなくても譲渡引渡の届出が要る
✔運営委託や賃貸借で変更する権限が移らなければ、第11条第6項の引渡には当たらない
✔区分が替わる転換は廃止のあとに設置の許可、危険物の種類や数量の変更は変更の許可
✔質疑応答は、今の条文の意味を理解するために読む。個別の適用は所轄の消防本部に確認する

貸すときにも、手続きの分かれ目があるんですね。
うちの施設は、どちらになるのか確かめてみます!

貸す前に、権限がどこまで移るかを確認するのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第11条・第12条の6
  • 危険物の規制に関する政令第2条・第3条・第15条
  • 消防庁の危険物規制に関する質疑応答(予防行政の通知)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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