冷凍倉庫や食品工場の冷凍室・冷蔵室は、断熱材で囲まれた閉じた空間です。
国の消防法施行令第13条は、駐車場や電気設備の部屋などに水噴霧消火設備等を求めていますが、冷凍室や冷蔵室の行はありません。
ところが八尾市火災予防条例は、冷凍室・冷蔵室の床面積の合計が500平方メートル以上になると、ガス系の消火設備を設けるよう上乗せしています。
この記事では、八尾市の条例第46条をどう読むかを条文の順にたどり、大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市と比べます。
あわせて、ガス系の消火設備を付けなくてよい冷凍室についての各市の扱いも整理します。
八尾市で冷凍倉庫の増築を考えています。
冷凍室に消火設備が要ると聞いて驚きました。
国の基準には冷凍室の行はありませんが、八尾市は条例で上乗せしています。
床面積の合計が500平方メートルからです。
どんな消火設備を付けることになるのですか。
八尾市では不活性ガスかハロゲン化物の消火設備です。
条例の条文から順に読んでいきましょう。
- 国の消防法施行令第13条の表には、冷凍室や冷蔵室を対象にした行はありません
- 八尾市火災予防条例第46条は、冷凍室・冷蔵室の床面積の合計が500平方メートル以上なら、その部分に不活性ガス消火設備かハロゲン化物消火設備を求めています
- 設置の方法は、第3項で国の令第14条から第18条まで・規則第16条から第21条までの例によるとされています
- 東大阪市と堺市も同じ500平方メートルで、大阪市は不活性ガス消火設備だけを挙げ、豊中市と吹田市の条例には同じ上乗せが見当たりません
- 大阪市と堺市は、断熱材が不燃材料の冷凍室などでガス系の消火設備を設けなくてよい条件を公開していますが、八尾市は第51条の消防長の特例だけです
▼

目次
国の令第13条は冷凍室にガス系の消火設備を求めているのか

別表第一に掲げる防火対象物の通信機器室で、床面積が五百平方メートル以上のもの
国の基準には、冷凍室の行が無いのですね。
はい、ですから八尾市の扱いは条例で付け加えたものです。
次に、その条文を読みます。
八尾市の条例第46条は冷凍室に何を上乗せしているのか

[表の3行目・左欄]令別表第1各項に掲げる防火対象物で冷凍室又は冷蔵室の部分の床面積の合計が500平方メートル以上のもので冷凍室又は冷蔵室の用途に供する部分
[同・右欄]不活性ガス消火設備又はハロゲン化物消火設備
- 第42条は、令第2章第3節の消防用設備等の基準に関して、法第17条第2項の規定により付け加えるものはこの章で定めるとしています。第46条はこの章の中の条文です。
- 第46条第1項の表の3行目で、冷凍室・冷蔵室の床面積の合計が500平方メートル以上の防火対象物について、冷凍室・冷蔵室の用途に供する部分に消火設備を求めています。建物全体ではなく、冷凍室・冷蔵室の部分が対象です。
- 設ける消火設備は、右欄で不活性ガス消火設備又はハロゲン化物消火設備に限られます。水噴霧・泡・粉末は、この行では選べません。
- 第3項は、設置と維持の方法を国の令第14条から第18条まで及び規則第16条から第21条までの規定の例によるとしています。不活性ガス消火設備なら令第16条、ハロゲン化物消火設備なら令第17条の基準を借りることになります。
- 第51条は、消防長が火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないなどと認めるときは、この章の規定を適用しないとしています。
建物全体ではなく、冷凍室の部分に付けるのですね。
はい、条文は冷凍室又は冷蔵室の用途に供する部分と書いています。
次は、500平方メートルの数え方です。
500平方メートルはどう数え冷凍室と冷蔵室はどこからなのか

「冷凍室」とは、常時氷点下18℃以下に保たれるものをいう。
一の防火対象物に冷凍室又は冷蔵室の用途に供される部分が2カ所以上に分散して存する場合の床面積は、当該部分の床面積を合算すること。
- 冷凍室・冷蔵室を対象にした理由は、断熱材で囲まれた特殊な構造で消火が難しく、ガス系の消火設備でなければ有効な消火手段がないためとされています。
- 冷凍室は常時氷点下18℃以下、冷蔵(解説の表記は「冷蔵庫」)は常時10℃以下に保たれるものとされています。
- 1つの防火対象物の中で冷凍室・冷蔵室が2か所以上に分かれていても、床面積は合算します。
2か所の冷凍室が300平方メートルずつだと、合計で600平方メートルですね。
はい、条文が床面積の合計と書いているので、そう数える読み方が自然です。
温度の線引きは八尾市消防本部に確認しましょう。
大阪府内の6市で冷凍室の上乗せはどう違うのか

| 市 | 条文 | 冷凍室・冷蔵室の規模 | 設ける消火設備 |
|---|---|---|---|
| 八尾市 | 火災予防条例 第46条 | 床面積の合計500平方メートル以上 | 不活性ガス消火設備又はハロゲン化物消火設備 |
| 大阪市 | 火災予防条例 第41条 | 床面積の合計500平方メートル以上 | 不活性ガス消火設備(ハロゲン化物の記載なし) |
| 東大阪市 | 火災予防条例 第47条 | 床面積の合計500平方メートル以上 | 不活性ガス消火設備又はハロゲン化物消火設備 |
| 堺市 | 火災予防条例 第67条 | 床面積の合計500平方メートル以上 | 不活性ガス消火設備又はハロゲン化物消火設備 |
| 豊中市 | 火災予防条例に水噴霧消火設備等の付加基準の条文が見当たらない | - | - |
| 吹田市 | 火災予防条例に水噴霧消火設備等の付加基準の条文が見当たらない | - | - |
[右欄]不活性ガス消火設備
| 行 | 八尾市 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|---|
| 吹抜けを共有する2以上の階の駐車部分 | 合計200平方メートル以上 | 合計200平方メートル以上 | 合計200平方メートル以上 | 合計200平方メートル以上 |
| 屋上の駐車部分 | 行なし | 200平方メートル以上 | 行なし | 200平方メートル以上 |
| 電気設備などの出力 | 全出力1,000キロワット以上の燃料電池発電設備・変電設備・急速充電設備・内燃機関を原動力とする発電設備 | 八尾市と同じ4種 | 全出力1,000キロワット以上の変電設備又は発電設備 | 油入機器を使用する特別高圧変電設備・無人変電設備・全出力1,000キロワット以上の発電設備 |
| その他 | - | - | 地盤面から31メートルを超える階の通信機器室・電子計算機室等、発電機・変圧器等の電気設備の場所 | (13)項イで延べ面積700平方メートル以上(全車両が同時に屋外に出られる構造を除く) |
大阪市だけ、ハロゲン化物が入っていないのですね。
はい、八尾市の表と並べると右欄の違いがはっきりします。
最後に、付けなくてよい場合を見ます。
ガス系の消火設備を付けなくてよい冷凍室はあるのか

耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備である防火戸で、床面積100㎡以下に区画されているもの
| 条件の種類 | 大阪市(第8節 第7 特例基準 2) | 堺市(第7 8 特例適用基準 (5)) |
|---|---|---|
| 断熱材が不燃材料 | 石綿・ロックウール・グラスウール等+冷凍区画ごとの区画+断熱材押えが難燃材料か、押え貫・押え柱の間隔20センチメートル以上 | ロックウール等を冷凍区画ごとに使用+断熱材料押えが難燃材料か、押え貫・押え柱の間隔20センチメートル以上 |
| 断熱材を覆う | コンクリート又はモルタル(塗厚さ2センチメートル以上)等で覆い、着火のおそれのない構造 | コンクリート等で覆い、着火のおそれのない構造 |
| 区画 | 耐火構造の壁・床又は特定防火設備で100平方メートル以下に区画 | 耐火構造の床・壁又は特定防火設備で100平方メートル以下に区画 |
| 大阪市だけにある条件 | 氷の製造・加工・貯蔵のみ(耐火構造等)、防炎処理の断熱材+開放型ヘッド、難燃3級の断熱材を不燃材料で覆う、零度以上で保管するもので屋内消火栓設備等により有効に消火できるもの | - |
| 根拠 | 令第32条又は条例第47条 | 条例第72条(ア〜ウの複合構造も可) |
断熱材の種類と区画の広さを、設計図で確かめておきます。
はい、その資料があれば八尾市消防本部との相談が早く進みます。
計画の早い段階で相談しましょう。
よくある質問
まとめ
冷凍室と冷蔵室の床面積を足して、500平方メートルを超えるかを先に確かめます。
そのうえで八尾市消防本部に相談します!
合計と温度、断熱材の種類をまとめておけば、相談の話が早くまとまります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 八尾市火災予防条例 第42条・第46条・第51条(八尾市例規集・2026年11月5日閲覧) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrMjF01/init?jctcd=8A85C0D651
- 大阪市火災予防条例 第41条(大阪市例規データベース) https://www1.g-reiki.net/reiki37e/reiki.html
- 東大阪市火災予防条例 第47条(東大阪市例規集・2026年11月5日閲覧) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrMjF01/init?jctcd=8A85C0D6B1
- 堺市消防局 火災予防条例(解説及び運用)第67条(PDF10・12ページ目)、消防用設備等の審査基準 第7 不活性ガス消火設備 8 特例適用基準 (5)(PDF28ページ目) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8節 不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するもの)第7 特例基準 2・3 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 豊中市火災予防条例(豊中市例規集) https://www1.g-reiki.net/toyonaka/reiki_honbun/k205RG00000714.html
- 吹田市火災予防条例(吹田市例規集) https://www2.city.suita.osaka.jp/reiki/d1w_reiki/H337901010407/H337901010407_j.html
- 消防法施行令 第13条・第14条〜第18条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※本記事は公表されている法令および八尾市・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している条例と基準を全文検索した範囲でのものです。八尾市は消防用設備等の審査基準を公開していないため、条例の条文だけで読んでいます。運用基準や条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。消火設備が必要かどうかの個別の判断は、所轄の消防署にご確認ください。






