二酸化炭素消火設備の防護区画は、放出の前に中の人が逃げられるよう、避難口の数や扉の向きまで審査基準に書かれています。
国の消防法施行規則は「常時人がいない部分」以外への設置を禁じていますが、地階の防護区画の床面積の上限までは書いていません。
四日市市の審査基準は、地階の防護区画を400㎡以下とし、ドライエリアに面する場合だけを例外にしています。
四日市市の基準を軸に、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市・大阪市・堺市の書き方を比べます。
四日市市で地下に書庫がある建物を計画していて、書庫に二酸化炭素消火設備を付ける案が出ています。
地下の部屋には広さの決まりがあるのですか。
国の条文には広さの上限は書かれていません。
ただ、四日市市の審査基準には地階だけの決まりがあります。
ほかの市でも同じ決まりなのですか。
上限の数字と例外の条件が本部ごとに違います。
6つの本部の基準を順に比べます。
- 消防法施行令第16条と施行規則第19条は防護区画の区画と開口部を定めているが、地階の防護区画の床面積の上限や避難口までの歩行距離は書いていない
- 四日市市は、無人の場所や電気室・機械室などを除く防護区画について、地階なら400㎡以下とするよう求めている(下線=四日市市の行政指導)
- 400㎡を超えてよいのは、地下の階数が1で、外周の2面以上かつ周長の2分の1以上がドライエリア等に接し、避難口からの通路と地上への斜路・階段等がある場合だけ
- 鈴鹿市と埼玉県央広域も400㎡で、ドライエリア等の幅を2.5m以上と数字で決め、津市は原則500㎡としている
- 避難口までの歩行距離は、四日市市・大阪市・堺市が20m、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市が30mを線にしている
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目次
二酸化炭素消火設備の防護区画の広さや避難口は国の条文で決まっているのか

どちらも区画のしかたは決めていますが、広さには触れていません。
一 全域放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、不燃材料(略)で造つた壁、柱、床又は天井(略)により区画され、かつ、開口部に自動閉鎖装置(略)が設けられている部分に、当該部分の容積及び当該部分にある防護対象物の性質に応じ、(略)必要な個数を適当な位置に設けること。
消防法施行規則 第19条第5項第1号の2
一の二 常時人がいない部分以外の部分には、全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備を設けてはならない。
令第16条第1号は、不燃材料の壁・床・天井で区画し、開口部に自動閉鎖装置を付けた部分に噴射ヘッドを設けるとしていて、これが全域放出方式の防護区画です。
規則第19条第5項第1号の2は、全域放出方式と局所放出方式を、常時人がいない部分以外に設けることを禁じています。
規則第19条の本文を検索しても「床面積」「歩行距離」「地階」の語は無く、地階の防護区画の広さの上限や避難口までの距離は国の条文に書かれていません。
四日市市の審査基準は、二方向避難や扉の向きを定めた項目の欄外に、令和4年11月24日の消防予第573号(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドライン)を示しています。
明日やることは、二酸化炭素消火設備を付ける部屋が地階にあるか、どんな人が出入りするかを図面で確かめることです。
国の条文だけを見ていると、広さの決まりは無いように見えるのですね。
そうです。
広さの線は各本部の審査基準で確かめる必要があります。
四日市市は地階の防護区画をどこまでの広さにとどめるよう求めているのか

地階の広さを決めているのはクです。
ク 無人となる場所又は電気室、機械室等特定少数のものが出入りする場所以外の場所に設ける防護区画は、前アからキまでによるほか、地階の防護区画の床面積は400㎡以下とすること。ただし、防火対象物の地下の階数が1である場合で、防護区画に接して次に定めるドライエリア等がある場合にあってはこの限りではない。
(ア)当該防護区画の外周の2面以上及び周長の1/2以上が接していること。
(イ)ドライエリア等には、前(ア)の避難口を設けることとし、当該避難口から幅員1m以上の通路が確保されていること。
(ウ)ドライエリア等には、地上へ出るための斜路、階段等の施設が設けられていること。
対象は、無人となる場所や、電気室・機械室のように特定少数の人だけが出入りする場所を除いた防護区画です。
「前アからキまでによるほか」とあるので、二方向避難(ア)・扉(イ)・誘導灯(ウ)などを満たしたうえで、さらに広さを抑える形です。
400㎡の部分から後ろのただし書までには下線が引かれていて、四日市市の行政指導であることを示しています(凡例は総則1。画像で確かめました)。
クの欄外には通知名の注記がなく、ア・イ・ウの欄外には消防予第573号が示されています。
明日やることは、地階の防護区画の床面積と、その部屋に誰が出入りするかを設計者に確かめることです。
電気室のように限られた人しか入らない部屋なら、400㎡の線はかからないのですね。
文の上ではそう読めます。
どの部屋が当たるかは計画の段階で消防本部と詰めておきましょう。
ドライエリアがあれば400㎡を超えてよいのはどんな場合か

鈴鹿市の審査基準は、ドライエリア等の中身をさらに数字で決めています。
(ウ) 地階の防護区画の床面積は、400㎡以下とする。ただし、防火対象物の地下の階数が1である場合で、防護区画に接してドライエリア等※避難上有効な部分がある場合は、この限りでない。
※ 「ドライエリア等」とは、当該防護区画の外周が2面以上及び周長の2分の1以上がドライエリア、その他の外気に開放されており、かつ、次のa及びbを満たすものをいう。
a 開口部の面するドライエリア等の幅は、当該開口部がある壁から2.5m以上とするもの
b 地上に出るための傾斜路、階段等の施設を設けるもの
四日市市のただし書は、地下の階数が1であることに加え、(ア)外周の2面以上かつ周長の2分の1以上がドライエリア等に接する、(イ)避難口から幅員1m以上の通路がある、(ウ)地上へ出る斜路・階段等がある、の3つを求めています((ア)〜(ウ)は下線なし)。
鈴鹿市と埼玉県央広域は同じ400㎡で、ドライエリア等の幅を開口部のある壁から2.5m以上と決めています(どちらもエの見出しに▲=行政指導の印)。
津市は5-6 1⑸で地階の防護区画を原則500㎡以下とし、ドライエリア等に面する避難口は「9防護区画⑸及び⑹に準ずる」として、防護区画の歩行距離と扉の決まりを借りています。
大阪市と堺市の二酸化炭素消火設備の節には、地階の防護区画の面積の定めは見当たりませんでした。
明日やることは、地階の部屋に面したドライエリアの幅と、地上へ上がる階段があるかを図面で確かめることです。 四日市市の基準をたどる順番は次のとおりです。
- 規則第19条に地階の防護区画の面積の定めが無いことを確かめる
- (7)クで、無人となる場所や電気室・機械室等を除く防護区画に当たるかを判断する
- 当たれば、地階の防護区画は400㎡以下にする
- 超えるなら、建物の地下の階数が1かを確かめる
- (ア)外周の2面以上かつ周長の2分の1以上・(イ)避難口と幅員1m以上の通路・(ウ)地上への斜路や階段等がすべてそろうかを確かめる
| 消防本部 | 地階の防護区画の上限 | 例外になる条件 | 記号 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 400㎡以下(無人となる場所・電気室・機械室等を除く) | 地下の階数が1+外周2面以上かつ周長の2分の1以上が接する+避難口から幅員1m以上の通路+地上への斜路・階段等 | 本文は下線(行政指導)・(ア)〜(ウ)は下線なし |
| 鈴鹿市 | 400㎡以下(無人となる場所・電気室・機械室等は(イ)の30mだけ) | 地下の階数が1+外周2面以上かつ周長の2分の1以上が外気に開放+開口部の前の幅2.5m以上+傾斜路・階段等 | ▲ |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 400㎡以下 | 鈴鹿市とほぼ同じ文(幅2.5m以上・傾斜路・階段等) | ▲ |
| 津市 | 原則500㎡以下 | 地階の階数が1+外周2面以上かつ周長の2分の1以上がドライエリア等に隣接+避難口(9⑸⑹に準ずる)+斜路・階段等と幅員1m以上の通路 | 凡例なし |
| 大阪市 | 節内に見当たらない | - | - |
| 堺市 | 節内に見当たらない | - | - |
地下2階まである建物だと、ドライエリアがあっても例外は使えないということですね。
4つの本部とも地下の階数が1であることを条件にしています。
地下2階以上なら、区画の分け方から設計者と相談しましょう。
避難口の数と歩行距離は消防本部ごとにどう違うのか

違うのは、歩行距離の数字と、その数字の使い方です。
エ 防護区画からの安全な避難を確保するため、次によること。▲(第5-8図参照)
ただし、無人となる場所又は電気室、機械室等で、特定少数の者が出入りする場所は、イによることで足りる。
(ア) 防護区画に設ける避難口は、2以上とし、かつ、2方向避難が確保できるように設けること。
ただし、常時無人で当該防護区画の各部分から近くの避難口までの歩行距離が30m以下となる場合は、この限りでない。
(略)
(イ) 当該防護区画の各部分から一の避難口までの歩行距離が30m以下となるようにすること。
四日市市((7)ア)・大阪市(6(7)◆)・堺市((9)ク◆)は、2以上の出入口で二方向避難ができるよう求め、避難口の位置が容易に確認できて出入口までの歩行距離が20m以下なら、この限りでないとしています。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、2以上の避難口と2方向避難に加えて、各部分から一の避難口までを30m以下とするよう求めています。
津市(9⑸)は、歩行距離が30m以下となるよう複数の出入口を設けて二方向避難を確保し、位置が容易に確認でき1の出入口まで30m以下なら、この限りでないとしています。
扉は、四日市市が内側から外側へ開く構造、大阪市が幅75cm以上・高さ1.8m以上・下端15cm以下の戸又はくぐり戸、津市が幅75cm・高さ120cm以上としています。
明日やることは、防護区画のいちばん奥から出入口までの歩行距離を図面で測ることです。
| 消防本部 | 避難口の数 | 歩行距離 | 扉 | 記号 |
|---|---|---|---|---|
| 四日市市 | 2以上・二方向避難((7)ア) | 位置が容易に確認でき出入口まで20m以下なら2以上でなくてよい | 内側から外側に開き、室内圧で容易に開かない自動閉鎖装置付き(イ) | 下線なし・欄外に消防予第573号 |
| 鈴鹿市 | 2以上・2方向避難(14⑴エ(ア)) | 各部分から一の避難口まで30m以下((イ)) | 避難の方向に開く(⑶イ) | ▲ |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 2以上・2方向避難(14⑴エ(ア)) | 30m以下((イ))。常時無人で30m以下なら2方向でなくてよい | 避難の方向に開く(⑵イ) | ▲ |
| 津市 | 複数の出入口・二方向避難(9⑸) | 30m以下。位置が容易に確認でき1の出入口まで30m以下ならこの限りでない | 外側に随時開く・幅75cm・高さ120cm以上(9⑹) | 凡例なし |
| 大阪市 | 2以上・二方向避難(第2 6(7)) | 20m以下ならこの限りでない | 幅75cm以上・高さ1.8m以上・下端15cm以下で内側から外側に開く((2)(3)) | ◆(大阪市の行政指導) |
| 堺市 | 2以上・二方向避難((9)ク) | 20m以下ならこの限りでない | 内側から外側に開き、室内圧で容易に開かない自動閉鎖装置付き((9)イ) | ◆(国の通知を参考にした指導) |
同じ二方向避難でも、20mと30mでは決まりの使い方が違うのですね。
省略の条件なのか上限なのかで読み方が変わります。
建物のある市の文を確かめましょう。
地階に二酸化炭素消火設備がある建物では何を確かめればよいのか

堺市は、地上の階段の入口にまで表示灯を求めています。
(オ) 防護区画又は防護区画に隣接する部分が地階にある場合、地上1階及び避難階から地階への階段の進入部分へも省令第19条第5項第19号の2ロに規定する放出表示灯を設置すること。★
規則第19条第5項第19号の2ロは、防護区画に隣接する部分の出入口等の見やすい箇所に、消火剤が放出された旨の表示灯を設けるよう求めています。
堺市はこれに加えて、防護区画や隣接する部分が地階にあるときは、地上1階と避難階から地階へ下りる階段の進入部分にも表示灯を付けるとしています(★=堺市独自の指導)。
地階の防護区画は、床面積・ドライエリア・避難口・表示灯を一度に確かめておくと、改修のときにも迷いません。
明日やることは、下の順番で今の図面と現地を確かめることです。
- 二酸化炭素消火設備の防護区画が地階にあるか、誰が出入りする部屋かを確かめる
- 地階の防護区画の床面積を確かめる(四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域は400㎡、津市は原則500㎡)
- 上限を超えるなら、地下の階数とドライエリア等の条件がそろっているかを見る
- 各部分から出入口までの歩行距離と、扉の開く向きを確かめる
- 迷ったら計画の段階で所轄の消防署へ図面を持って相談する
地下の部屋の広さはあとから変えにくいので、先に設計者へ聞いておきます。
それが確実です。
間仕切りを変える改修でも防護区画の面積が変わるので気をつけましょう。
よくある質問
まとめ
まずは地階の書庫の床面積と出入口までの距離を設計者に聞いてみます!
四日市市なら400㎡とドライエリアの条件を図面に書き込んでおくと、消防本部との協議も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第16条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第19条第5項(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第5 不活性ガス消火設備 2(7)(四日市市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第5 不活性ガス消火設備 14(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第5 不活性ガス消火設備 14(埼玉県央広域消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-6 不活性ガス消火設備 1・9(津市消防本部)
- 消防用設備等の設置に係る運用基準 第8節 不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するもの)第2 6(大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第7 不活性ガス消火設備 Ⅱ 1(9)(14)(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。地階の防護区画の面積の定めが「見当たらない」としたものは、各本部の二酸化炭素消火設備の節を検索した範囲の結果で、別の資料に定めがある可能性はあります。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





