駐車場の消火設備は、泡・粉末・不活性ガスなどの中から選ぶことになっていて、二酸化炭素消火設備もその候補の一つです。
ただし国の規則は、常時人がいない部分以外には不活性ガス消火設備を設けてはならないとしています。
四日市市の審査基準は、ここに自走式と床面積で線を引き、広い自走式の駐車場では二酸化炭素以外の消火設備にするよう求めています。
四日市市の基準を軸に、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市・堺市の書き方も並べて比べます。
四日市市で地下に自走式の駐車場がある建物を計画しています。
設備業者から二酸化炭素消火設備の案が出てきました。
地階なら500㎡が分かれ目になります。
まず国の条文から順にたどってみましょう。
ほかの市でも同じように面積で決まっているのですか。
自走式を名指しして面積を決めているのは四日市市だけでした。
ほかの本部は「人がいる部分」の決め方と代わりのガスで差が出ます。
- 消防法施行令第13条は駐車の用に供される部分に5種類の消火設備から選ばせ、消防法施行規則第19条第5項第1号の2は常時人がいない部分以外に不活性ガス消火設備を設けてはならないとしている
- 四日市市は、自走式の駐車場で床面積が地階・無窓階500㎡以上、その他の階1,000㎡以上なら、二酸化炭素消火設備以外の消火設備とするよう定めている
- 四日市市の自走式には一部に機械式駐車装置を有するものも含まれ、この規定には行政指導を示す下線が付いていない
- 鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市・四日市市は、部外者や不特定の者が出入りする部分など同じ3つの部分を二酸化炭素を置かない部分として挙げている
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は、そうした部分にやむを得ずガス系を置くならハロン1301を原則とし、評価を受けて令第32条を使う道も書いている
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目次
駐車場に二酸化炭素消火設備を付けることは国の条文で認められているのか

そのうえで、不活性ガス消火設備の置き場所を絞っている消防法施行規則第19条第5項を見ます。
次の表の上欄に掲げる防火対象物又はその部分には、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のうち、それぞれ当該下欄に掲げるもののいずれかを設置するものとする。
別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、次に掲げるもの 一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの 二 (略) → 水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備
消防法施行規則 第19条第5項(抜粋)
一 駐車の用に供される部分及び通信機器室であつて常時人がいない部分には、全域放出方式の不活性ガス消火設備を設けること。
一の二 常時人がいない部分以外の部分には、全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備を設けてはならない。
令第13条は、駐車の用に供される部分に5種類の消火設備のどれかを付けるとしていて、二酸化炭素を使う不活性ガス消火設備もその中に入っています。
そのうえで規則第19条第5項第1号の2が、常時人がいない部分以外の部分には全域放出方式も局所放出方式も設けてはならないと止めています。
ここまでの国の条文には、自走式か機械式か、床面積が何㎡かで二酸化炭素を外すという書き方はありません。
車が自分で走る自走路の部分を国の質疑がどう扱ったかは、記事末の関連記事で解説しています。
明日やることは、計画中の駐車場が令第13条の面積に当たるかを、階ごとの駐車部分の床面積で確かめることです。
国の条文だけだと、駐車場に人がいるかどうかで決まるのですね。
その判断を数字に置き換えているのが四日市市の基準です。
次はその書き方を見ます。
四日市市は自走式の駐車場のどこで二酸化炭素消火設備を外しているのか

その(17)が「設置の制限」で、駐車場の部分について次のように書いています。
(17)設置の制限
駐車場の部分に設置する場合で、当該部分が次のア及びイに該当する場合にあっては、本設備以外の消火設備とすること。
ア 駐車場の部分の車両の移動が自走式であるもの。(一部に機械式駐車装置を有するものを含む。)
イ 駐車場等の部分の床面積が地階又は無窓階にあっては500㎡以上、その他の階にあっては、1,000㎡以上のもの。
「本設備」は二酸化炭素消火設備のことで、自走式であることと床面積の両方に当たると、ほかの消火設備にするよう求めています。
四日市市は行政指導の部分に下線を引く凡例ですが、この(17)には下線も欄外の通知名も付いていません(画像で確かめました)。
読み解くと、次の順で当てはめることになります。
- 令第13条で、駐車の用に供される部分に5種類の消火設備のどれかが要るかを確かめる
- 四日市の(17)アで、車両の移動が自走式かを見る(一部に機械式駐車装置があっても自走式に含める)
- (17)イで、駐車場の部分が地階か無窓階なら500㎡以上か、その他の階なら1,000㎡以上かを見る
- アとイの両方に当たれば、二酸化炭素消火設備以外の消火設備にする
なお、床面積を階ごとに見るのか合計で見るのかは(17)の文からは読み切れず、面積が下回る自走式駐車場の扱いも(17)には書かれていません。
明日やることは、駐車場の階ごとの床面積と、その階が無窓階に当たるかを、設計者の資料で確かめることです。
地上の階なら1,000㎡までは線に届かないということですか。
(17)の線には届きませんが、別に設置禁止場所の決まりがあります。
次でその中身を見ます。
二酸化炭素消火設備を置かない部分は本部ごとにどう書かれているのか

同じ3つの部分は、鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市の基準にも出てきます。
1 設置禁止場所
次に掲げる場所には、二酸化炭素消火設備を設置しないこと。
(1)当該部分の用途、利用状況等から判断して、部外者、不特定の者等が出入りするおそれのある部分
(2)当該部分の用途、利用状況等から判断して、関係者、部内者など定常的に人のいる可能性のある部分
(3)防災センター、中央管理室など、総合操作盤、中央監視盤等を設置し、常時人による監視、制御等を行う必要がある部分
四日市市の1には下線がなく、欄外に令和4年11月24日 消防予第573号(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドライン)と注記されています(画像で確かめました)。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、同じ3つを規則の「常時人がいない部分以外の部分」に当たる部分として定義する形で書いています。
堺市は「原則として」全域放出方式を設置しないとし、見出しに◆(行政指導)が付いています。
津市は3つを挙げず、令や条例で義務がない場合でも常時人がいない部分以外には設置しないと書いています。
明日やることは、自走式の駐車場に一般の利用者が出入りするかを、建物の使い方から書き出しておくことです。
| 二酸化炭素を置かない部分の書き方 | 自走式の駐車場を名指しした決まり | 印 | |
|---|---|---|---|
| 国の規則 | 常時人がいない部分以外の部分には全域放出方式・局所放出方式を設けてはならない | なし | - |
| 四日市市 | 1(1)〜(3)の部分には設置しない | 2(17)自走式で地階・無窓階500㎡以上、その他の階1,000㎡以上は本設備以外 | いずれも下線なし |
| 鈴鹿市 | 3⑴ア〜ウを常時人がいない部分以外の部分と定義 | 見当たらない | 無印 |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 3⑴〜⑶を常時人がいない部分以外の部分に当たるとする | 見当たらない | 記号なし |
| 堺市 | (1)ア〜ウには原則として全域放出方式を設置しない | 見当たらない | ◆① |
| 津市 | 令又は条例に基づかない場合でも常時人がいない部分以外には設置しない | 見当たらない | 記号なし |
一般のお客さんが車で出入りする駐車場は、1つ目の部分に当たりそうですね。
当たるかどうかは利用状況から判断されます。
使い方を説明できる資料をそろえて相談しましょう。
二酸化炭素を置けない部分にはどのガス系消火設備なら置けるのか

四日市市の(17)は「本設備以外の消火設備」とだけ書き、何にするかまでは決めていません。
⑵ ⑴の部分に、やむを得ずガス系の消火設備を設置する場合は、次のア又はイによらなければならない。
ア 原則として、ハロゲン化物消火設備(ハロン1301)を設置すること。
イ (一財)日本消防設備安全センターが運営する「ガス系消火設備等評価委員会」の評価制度により、政令第32条の規定を適用して、次の(ア)又は(イ)に規定する設備を設けること。
(ア) 不活性ガス消火設備のうち窒素IG-55又はIG-541
(イ) ハロゲン化物消火設備のうちHFC-23又はHFC-227ea
津市予防事務審査検査基準 5-6 不活性ガス消火設備 1⑵
⑵ 全域放出方式及び局所放出方式の不活性ガス消火設備は、令又は条例に基づき設置する場合以外であっても、常時人がいない部分以外の部分には設置しないこと。
鈴鹿市は、人がいる部分にやむを得ずガス系を置くならハロン1301を原則とし、評価委員会の評価を受けて令第32条を使えば窒素などの新しいガスも置けるとしています(無印を画像で確かめました)。
埼玉県央広域も3のなお書きで、ハロン1301を設置するとし、評価制度を使って令第32条を適用する場合を除くと書いています。
国の規則第20条第4項第2号の2の表も、駐車の用に供される部分の常時人のいない部分以外ではハロン1301を使うとしていて、鈴鹿市・埼玉県央広域の原則と向きがそろっています。
津市は、令や条例で義務のない任意の設置でも、人がいる部分には不活性ガス消火設備を置かないとしている点が任意設置まで踏み込んだ書き方です。
明日やることは、ガス系を検討しているなら、使うガスの種類を設備業者の提案書で確かめることです。
| 人がいる部分にやむを得ずガス系を置くとき | 任意で置く場合 | |
|---|---|---|
| 四日市市 | (17)は「本設備以外の消火設備」とだけ書く | 書かれていない |
| 鈴鹿市 | 原則ハロン1301/評価制度+令第32条で窒素・IG-55・IG-541・HFC-23・HFC-227ea | 書かれていない |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | ハロン1301(評価制度で令第32条を適用する場合を除く) | 書かれていない |
| 津市 | 不活性ガス消火設備は置かない | 令・条例に基づかない設置も同じく置かない |
| 堺市 | (1)には書かれていない | 書かれていない |
つまり人がいる部分では、二酸化炭素の代わりに別のガスを選ぶ形なのですね。
ガス系に限らず、泡や粉末も選択肢です。
ハロンには使用抑制の決まりもあるので早めに相談しましょう。
広い自走式の駐車場ではどの消火設備が候補に残るのか

津市の基準は、国の規則の消火剤の決まりを表にして載せています。
⑽ 全域放出方式の防護区画ごとの消火剤は次によること。
常時人がいない部分以外の部分 → 二酸化炭素× 窒素× IG-55× IG-541×
常時人がいない部分のうち防護区画の面積が1,000㎡以上又は体積が3,000㎥以上のもの → 二酸化炭素○ 窒素× IG-55× IG-541×
常時人がいない部分のうちその他のもので駐車の用に供される部分 → 二酸化炭素○ 窒素○ IG-55○ IG-541○
(○:設置できる。×:設置できない。)
この表は国の規則第19条第5項第2号の2の表を用途ごとに書き分けた形で、防護区画が1,000㎡以上の広い区画では、不活性ガスのうち二酸化炭素しか使えません。
四日市市で広い自走式駐車場を計画するときは、条文と基準を次の順に重ねて考えることになります。
- 令第13条で、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の5種類が候補になる
- 四日市の(17)に当たれば、不活性ガスのうち二酸化炭素が外れる
- 防護区画が1,000㎡以上か3,000㎥以上なら、規則第19条第5項第2号の2の表で窒素・IG-55・IG-541も使えない
- 人がいる部分に当たれば、規則第19条第5項第1号の2で不活性ガス消火設備そのものを設けられない
- 残った候補から、所轄の消防本部と協議して決める
ハロゲン化物消火設備を検討するときは、ハロン1301の使用抑制の扱いも関わります。
明日やることは、駐車場の床面積と防護区画の分け方を図面で確かめ、事前相談の資料にまとめることです。
面積を確かめる前に設備を決めてしまうと、やり直しになりかねないのですね。
設計の早い段階で消防同意の窓口に相談しておくと安心です。
面積と方式を書いた図面を持っていきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは地下の駐車場の床面積を設計者に確かめます!
四日市市なら自走式かどうかと500㎡・1,000㎡が分かれ目です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第13条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第19条・第20条(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第5 不活性ガス消火設備(四日市市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第5 不活性ガス消火設備(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第5 不活性ガス消火設備(埼玉県央広域消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-6 不活性ガス消火設備(津市消防本部)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 不活性ガス消火設備(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準と消防法施行令・施行規則に基づく一般的な解説です。大阪市の運用基準の二酸化炭素の節には同じ3つの部分の書き出しが見当たらず、東大阪市は手元の運用基準に不活性ガス消火設備の節が見当たらなかったため比べていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





