渡り廊下で二つの建物をつなぐと、消防設備の数え方は一棟になるのか、別棟として分けられるのか。
四日市市消防本部の審査基準には、その条件が幅員・距離・構造の順にまとまっています。
国が令和6年に告示で定めた条件と見比べると、四日市市が足している数字が見つかります。
鈴鹿市・堺市・津市・埼玉県央広域の基準とも並べて、違いを表にします。
渡り廊下でつないだ二つの建物は、消防設備の数え方では一棟になるのですか。
別棟にできる条件があると聞きました。
条件はあります。
四日市市は国の告示に加えて、建物の間の距離の下限を示しています。
その下限は、法令で決まった義務なのでしょうか。
下線が引かれた行政指導で、関係者の協力を得て指導する決まりです。
義務かどうかも、基準の書き方から確かめましょう。
- 国の告示第七号は、距離が足りないときのただし書にも、建物どうしの距離の下限を書いていない
- 四日市市は、ただし書の場合でも建物の間を2m以上(スプリンクラー設備等を付けるなら1m以上)とし、下線を引いて行政指導と示している
- 鈴鹿市も2m(1m)、堺市は1m以上(非開放式は市独自の★)で、津市と埼玉県央広域は下限を書いていない
- 外壁と屋根の構造は、四日市市の文章が「耐火構造又は準耐火構造」、告示は「耐火構造又は防火構造」で、同じ頁の図は「防火構造」と書く
- 雨どい・排水管・電気配線での結合は、四日市市では構造的な接続に当たらないと書かれ、つながっていなければ別棟になる
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目次
国の告示は渡り廊下で別棟とみなす条件をどう決めているのか

例外として別棟にできる条件は、次の三段で読みます。
- 消防法施行令 第8条第2号:防火上有効な措置が講じられた壁等で区画されると、別の防火対象物とみなす
- 消防法施行規則 第5条の3第2項第2号:渡り廊下等の壁等に類するものは、消防庁長官が定める基準による
- 令和6年消防庁告示第7号 第三:渡り廊下を構成する壁等の基準(幅員・距離・使い方)
防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
二 床、壁その他の建築物の部分又は建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る。)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定めるものが講じられたもの(前号に掲げるものを除く。)
令第八条第二号の防火上有効な措置として総務省令で定める措置は、次の各号に掲げる壁等(床、壁その他の建築物の部分又は防火戸をいう。以下この項において同じ。)の区分に応じ、当該各号に定める基準に適合させるために必要な措置とする。
(略)
二 渡り廊下等の壁等に類するものとして消防庁長官が定める壁等 消防庁長官が定める基準
渡り廊下については、第三が幅員・距離・使い方を決めています。
一 渡り廊下の有効幅員は、(略)主要構造部の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いた場合にあっては三メートル未満とし、その他の場合にあっては六メートル未満とすること。
二 渡り廊下で隔てられた防火対象物の部分相互間の距離は、一階にあっては六メートルを超えるものとし、二階以上の階にあっては十メートルを超えるものとすること。ただし、次に掲げる基準に適合する場合は、この限りでない。
(略)
三 渡り廊下は、通行又は運搬の用途にのみ供され、可燃物の存置その他通行の支障がない状態を維持すること。
幅員は可燃材料を使った場合が3m未満、その他が6m未満です。
距離は1階が6m、2階以上が10mを超えることで、足りない場合は外壁・屋根・開口部・渡り廊下の条件を満たします。
このただし書の中に、建物どうしの距離の下限を示す数字は書かれていません。 国は、告示と同じ日の通知でも、昭和50年の通知を整理しています。
この通知の発出に伴い、「消防用設備等の設置単位について」(昭和50年3月5日付け消防安第26号。以下「26号通知」という。)(略)を廃止し、これらに関する質疑応答に係る運用は行わないこととすること。ただし、(略)廃止の際、26号通知(略)が適用されている防火対象物であって、26号通知(略)に適合しているものにあっては、なお従前の例によることとして差し支えない(略)。
すでに26号通知が適用されて適合している防火対象物は、従前の例によって差し支えないとされています。
これから図面を出す物件は、告示の条件を物差しにするのが基本になります。
渡り廊下の条件は、告示でかなり細かく決まっているのですね。
幅員と距離と構造の順に確かめれば迷いません。
まず渡り廊下の幅員と建物の間の距離を図面で測りましょう。
四日市市の基準は国の告示と同じ数字から始まるのか

渡り廊下の項の頭は次のとおりです。
建築物と建築物が渡り廊下(その他これらに類するものを含む。以下同じ。)、地下連絡路(略)又は洞道(略)により接続されている場合は、原則として1棟であること。ただし、次のいずれかに該当する場合は、消防用設備等の設置については、別棟として取り扱うことができるものであること。
(1) 建築物と建築物が地階以外の階において渡り廊下で接続されている場合で、次のアからウまでに適合している場合
ア 渡り廊下は、通行又は運搬の用途のみに供され、かつ、可燃性物品等の存置、その他通行上の支障がない状態のものであること。
イ 渡り廊下の有効幅員は、接続される一方又は双方の建築物の主要構造部が木造である場合は3m未満、木造以外の場合は6m未満であること。
ウ 接続される建築物の相互間の距離は、1階にあっては6m、2階以上の階にあっては10mを超えるものであること。ただし、(略)
幅員は3m未満か6m未満、距離は1階が6m、2階以上が10mです。
文言には小さな差があり、告示は「主要構造部の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いた場合」、四日市市は「主要構造部が木造である場合」と書いています。
告示のほうが、可燃材料の使い方を広く拾う書き方です。 出典の書き方にも違いがあります。
四日市市の第5は、冒頭の「1 消防用設備等の設置単位」の欄外に、昭和50年3月5日の消防安第26号と書いています。
この基準の総則は、令和6年4月1日から適用するとしています。
国が廃止した26号通知が、四日市市の基準の欄外に出典として残っています。 同じ三重の鈴鹿市と津市、大阪府の堺市は、基準の本文で告示第七号を出典にして書き直しています。
埼玉県央広域の基準は令和5年4月1日適用の版で、昭和50年の26号通知などを出典にしています。
数字が同じでも、どの通知を元にしているかで、後ろの条件の書き方が変わります。
数字は同じでも、元にしている通知が違うのですね。
はい、告示と一字一句同じとは限りません。
次の項から、四日市市だけの数字を探します。
距離が足りないときでも別棟にできる下限は何メートルか

ただし、(略)適合する場合で、いずれの階であっても2m(双方の建築物の接続部に閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備、又はドレンチャー設備を延焼防止上有効に設置したものにあっては1m)以上のものにあっては、この限りでない。(太字の部分は原文で下線)
スプリンクラー設備かドレンチャー設備を接続部に付けた場合は、下限が1mに下がります。
告示第三のただし書には、この2mと1mにあたる数字が書かれていません。
この部分には、下線が引かれています。
本基準の行政指導となる部分の適用にあたっては、関係者に主旨等の説明を十分行い、協力を得たうえで指導するものとする。なお、本市の行政指導であることが明白な部分には、アンダーライン表示をした。
総則は、行政指導の部分は主旨等を十分説明し、協力を得たうえで指導すると書いています。
国の告示にない数字なので、義務とは分けて読む必要があります。
同じ数字を、鈴鹿市の基準も書いています。
防火上有効な措置が講じられた壁等の基準告示第3第2号ただし書きの基準に適合する場合であっても、いずれの階についても、渡り廊下の両端に設ける開口部から開口部までの距離又は建築物相互間の距離は、2m(双方の建築物の接続部に閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備又はドレンチャー設備を延焼防止上有効に設置したものにあっては、1m)以上離すこと。
四日市市は建築物相互間の距離、鈴鹿市は両端の開口部から開口部までの距離または建築物相互間の距離と、測る場所の書き方が少し違います。
堺市の基準は、数字が1mです。
直接外気に開放されているもの以外の渡り廊下については、7号告示第3第2号(3)イからハによるほか、次のaからfまでに適合すること。
a 建築物相互間の距離は1m以上であること。★
★は、堺市消防局が市として独自に定めた指導を表します。
開放式の渡り廊下の定義((オ)b)にも、建築物相互間の距離が1m以上という条件が入っています。
津市の1-3と埼玉県央広域の第3章 第3には、この下限にあたる数字は見当たりません。
つまり距離が足りなくても、2mあれば別棟にできるということですか。
いいえ、2mは入口の条件で、ほかの条件も満たす必要があります。
先に図面で、建物の間を測りましょう。
ただし書で別棟にするとき外壁と渡り廊下は何を満たすのか

まず告示が外壁と屋根に求めている構造です。
渡り廊下が設けられている防火対象物の外壁及び屋根(渡り廊下が接続されている部分からそれぞれ三メートル以内の距離にある部分に限る。以下(二)において同じ。)が、次のいずれかに該当していること。
イ 耐火構造又は防火構造で造られていること。
ロ(略)
接続される建築物の外壁及び屋根(渡り廊下の接続部分からそれぞれ3m以内の距離にある部分に限る。)については、次のa又はbによること。
a 耐火構造又は準耐火構造で造られていること。
b a以外のものについては、耐火構造若しくは準耐火構造の塀その他これらに類するもの、又は閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備又はドレンチャー設備で延焼防止上有効に防護されていること。
同じ頁の図の吹き出しは「防火構造」で、津市と埼玉県央広域の文章は告示と同じ「耐火構造又は防火構造」です。
四日市市の総則は、準耐火構造と防火構造を別の用語として定義しています。
どちらの読みで協議するかは、図面を出す前に消防本部へ確かめたほうが安心です。 もう一つの違いは、開放式の渡り廊下の接続部です。
まず告示です。
渡り廊下は、直接外気に開放されているもの又は次に掲げる基準に適合するものであること。
イ(略)構造耐力上主要な部分を鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とし、その他の部分を準不燃材料で造ったものであること。
ロ 渡り廊下が接続されている部分に設けられた出入口の面積は、四平方メートル以下とすること。この場合において、当該出入口には防火戸(略)が設けられていること。
ハ(略)
四日市市は、開放式にも接続部の防火設備を求めています。
渡り廊下については、次のa又はbによること。
a 吹き抜け等開放式であり、建築物との接続部には防火設備(略)が設けられていること。
津市も、開放式で出入口に防火戸を設けると書き、堺市は同じ項目に★を付けて市独自の指導にしています。
鈴鹿市と埼玉県央広域には、開放式の接続部の防火設備にあたる記載は見当たりません。
準耐火構造と防火構造は、どちらで考えればよいのでしょうか。
文章と図で書き方が分かれているので、消防本部へ確認するのが確実です。
設計の初期に聞いておきましょう。
構造的につながっていない建物はどう扱うのか

国の通知はまず、棟の意味を書いています。
棟とは、原則として、独立した一の建築物又は二以上の独立した一の建築物が渡り廊下等で相互に接続されて一体となったものをいうこと。なお、「相互に接続」とは構造的に接続されているものであること。
(2) 前(1)によるほか、建築物と建築物の離隔距離によらず、構造的な接続(雨どい、排水管、電気配線等の建築設備を介した結合は「構造的な接続」とはみなさない)がない場合
(3) その他
ア 消防用設備等の設置については、渡り廊下等の部分を含めて設置すること。
イ 建基法第44条第1項ただし書きの規定に基づき設けられたアーケードにより、複数の建築物が接続される場合は、それぞれ別の建築物として取扱うこと。(イは原文で下線)
ウ 建築物の接続が上記内容の方法により難いもので、火災危険又は社会通念上から、同一又は別棟と取扱うことに不合理が生じるものについては、防火対象物ごとに検討し、総合的に判断することとする。
雨どい・排水管・電気配線のような建築設備での結合は、構造的な接続には数えません。
アーケードで複数の建築物が接続される場合は、それぞれ別の建築物とされ、この部分に下線があります。
ウでは、エキスパンションジョイントでも一棟で規制すべき場合など、防火対象物ごとの総合判断が残されています。 堺市は、庇や屋根の取り合いを具体的に書いています。
相互の建築物のひさし又は屋根が、一方の建築物にかぶさっている場合又は接しているのみの場合は、構造的に接続していないものとして別棟とする。◆②
◆は、堺市消防局が消防庁の通知等を参考にした指導を表します。
四日市市の(2)は雨どい・排水管・電気配線、堺市は庇や屋根と、例示のものが違います。
ここまでの違いを、表にまとめます。
| 本部(箇所) | 根拠の書き方 | 建物の間の下限 | 外壁・屋根の構造 | 開放式の接続部の防火設備 |
|---|---|---|---|---|
| 国(告示第七号 第三) | 令和6年告示(26号通知は廃止) | 書かれていない | 耐火構造又は防火構造 | 「直接外気に開放されているもの」で足り、防火戸の定めは見当たらない |
| 四日市市(第1章 第5 2(1)) | 欄外は昭和50年消防安第26号。令和6年4月1日適用 | 2m(設備があれば1m)。下線 | 文章は耐火構造又は準耐火構造。図は防火構造 | 設ける((オ)a) |
| 鈴鹿市(第3章 第4) | 告示第七号を引いて解釈を示す | 2m(設備があれば1m)(7) | 告示を引き、例は図で示す | 見当たらない |
| 津市(1-3 第2 1) | 告示第七号 | 書かれていない | 耐火構造又は防火構造 | 設ける(⑶ウ(ア)) |
| 埼玉県央広域(第3章 第3) | 26号通知など。令和5年4月1日適用 | 書かれていない | 耐火構造又は防火構造 | 見当たらない |
| 堺市(第6 2(1)) | 告示第七号 | 1m以上(非開放式は★) | 告示を引く | 設ける((オ)a★) |
渡り廊下で建物をつなぐ計画があるなら、次の順に図面と突き合わせましょう。
- 幅員と距離:幅員が3m未満か6m未満か、建物の間が6m(10m)を超えるかを測る
- 下限:足りないときは、建物の間が2m以上(設備があれば1m以上)かを確かめる
- 外壁と屋根:渡り廊下から3m以内の構造を、準耐火か防火か消防本部に確かめる
- 接続部:開放式でも防火設備を付け、開口部は4㎡以内に収める
- つながり方:庇・雨どい・配管でのつながりと、構造的な接続の有無を整理する
雨どいでつながっているだけなら、別棟になるのでしょうか。
四日市市の基準は、建築設備を介した結合は構造的な接続に当たらないと書いています。
屋根の取り合いなどは別に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
渡り廊下の計画では、建物の間の距離と接続部を図面で確かめます!
迷う点は、早めに消防署へ相談しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第8条、消防法施行規則 第5条の3(e-Gov法令検索)
- 防火上有効な措置が講じられた壁等の基準(令和6年消防庁告示第7号)、消防法施行令の一部を改正する政令等の運用について(令和6年3月29日 消防予第155号)(総務省消防庁)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」総則・第1章 第5 2(四日市市消防本部)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第4、津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-3、埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第3、堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3・第6
※本記事は各消防本部が公表している基準等と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」「書かれていない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。大阪市・東大阪市の基準は、渡り廊下による別棟の項が手元の資料になく、比較に含めていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





