不活性ガス消火設備の貯蔵容器には、消火剤を放出する容器弁が付いています。
その安全性の点検は、決められた条件を満たせば、全数ではなく抜き取りで行えます。
そして何本を、どの容器弁から抜くのかは、点検要領の別添に決まりがあります。
この記事では、抜取りの本数と合否の見方を、告示と点検要領から整理します。
容器弁の点検は、何本でも好きなものを選んで抜き取ってよいのですか。
いいえ、点検要領に抽出の決まりが定められています。
順番に見ていきましょう。
耐圧と気密の点検は、抽出した容器弁の全部にやるのですか。
抽出数に応じた点検数が、表になっています。
その中身も、あわせて整理します。
- 容器弁の安全性点検は、告示の年数内なら抜取り方式で耐圧と気密の点検を行えます。
- 抽出は、容器弁の型式ごとに決め、製造年の古いものから抜きます。
- 外観・構造・表示は抽出数の全数、耐圧と気密は表で決まる数、安全装置等の作動は2個を点検します。
- 合否は不良数が0で合格とし、その結果が及ぶのは抽出した容器弁だけです。
- 耐圧・気密・安全装置作動で不良が出たと、抽出した全数について不良項目を確認します。
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目次
容器弁の安全性点検はなぜ抜き取りで行えるのか

告示の点検基準には、次の定めがあります。
容器弁 安全性:容器弁の外形の点検において容器弁に異常が認められたものにあっては当該点検後速やかに、その他のもののうち、二酸化炭素を消火剤として用いるものにあっては設置後又は容器弁の安全性の点検の実施後25年を経過するまでの間に、二酸化炭素以外のものを消火剤として用いるものにあっては設置後又は容器弁の安全性の点検の実施後30年を経過するまでの間に次の事項について実施すること。この場合において、〔中略〕年数の間に実施する場合(容器弁の外形の点検において容器弁に異常が認められたものについて当該点検後速やかに実施する場合を除く。)にあっては、抜取り方式により耐圧性能及び気密性能に係る点検を行うことができる。
年数は、二酸化炭素が設置後または前回の安全性点検の実施後25年、二酸化炭素以外が30年です。
外形の点検で異常が見つかった容器弁は、年数を待たず、速やかに点検を行います。この場合は、抜取り方式を使えません。
年数そのものの考え方は、不活性ガス消火設備の容器弁はいつ点検すればよいか|経年による段階的点検の考え方も解説で解説しています。
安全装置の安全性点検では、耐圧と気密に加えて安全装置の作動も抜取りの対象になります。
だから抽出の前に、外形の点検の結果を、確かめておきましょう。
外形に異常がなければ、いつでも抜取りで済ませてよいのですか。
告示は、25年か30年という年数の間に行う場合と書いています。
年数の考え方が、抜取りの前提になります。
抜き取る容器弁はどれをどう選ぶのか

点検要領には、次の文があります。
2 点検項目〔第2段落〕 点検のために抽出する容器弁等の数は、不活性ガス消火設備等の点検基準に規定する年数内に全数の点検が完了するように、一の防火対象物若しくはその部分に存する不活性ガス消火設備等の容器弁等の型式ごとに決定し、製造年の古いものから抽出する。
単位は、一の防火対象物またはその部分にある容器弁の型式ごとです。
数の決め方は、告示の年数内に全数の点検が終わるように、と書かれています。
具体的な本数の求め方や、年ごとの割り振りの式までは、点検要領には書かれていません。
だから点検の前に、設置している容器弁の型式と製造年を、一覧にしておきましょう。
型式が違う容器弁は、まとめて数えてよいのですか。
点検要領は、型式ごとに決定すると書いています。
型式の違うものは、別々に数えます。
抽出した容器弁は何を何個点検するのか

点検要領の表は、次のとおりです。
| 点検項目(表1) | 点検数 |
|---|---|
| (1)外観点検 | 抽出数の全数 |
| (2)構造、形状、寸法点検 | 抽出数の全数 |
| (3)耐圧性能点検 | 抽出数に応じて表2による |
| (4)気密性能点検 | 抽出数に応じて表2による |
| (5)安全装置等作動点検 | 抽出数のうちの2個 |
| (6)表示点検 | 抽出数の全数 |
| 抽出数(表2) | 耐圧・気密性能点検数 |
|---|---|
| 2〜8 | 2 |
| 9〜15 | 3 |
| 16〜25 | 5 |
| 26〜50 | 8 |
| 51〜90 | 13 |
| 91〜150 | 20 |
例えば、抽出数が16本から25本なら、点検数は5になります。
外観・構造・表示は抽出数の全数で、安全装置等の作動点検は抽出数のうちの2個です。
容器弁そのものの安全性は5項目、容器弁に設けられた安全装置は作動を加えた6項目と、点検要領の第6に書かれています。
容器弁の基準そのものは、不活性ガス消火設備の容器弁はなぜ5つの試験に合格しなければならないのか|耐圧試験の圧力差と表示7項目を解説で解説しています。
だから点検の前に、抽出数から、耐圧と気密の点検数を表で引いておきましょう。
抽出数が1個や2個のときも、この表で決まるのですか。
表2の抽出数は、2〜8から始まっています。
それより少ない場合の書き方は、表には見当たりません。
不良が出たら合否と点検の範囲はどうなるのか

点検要領には、次の文があります。
抽出した容器弁等の合否の判定は、不良数が0のときは合格とする。合否の判定結果が及ぶ範囲は、抽出された容器弁等のみとする。
耐圧性能点検、気密性能点検又は安全装置等作動点検において不良を見出した場合は、抽出した容器弁等全数について不良項目の確認を行う。
合格の結果が及ぶのは、抽出された容器弁だけで、抽出しなかった容器弁は含まれません。
耐圧・気密・安全装置作動で不良が出たら、抽出した全数について、その不良項目を確認します。確認するのは、不良が出た項目です。
点検の結果は、点検要領の別添様式に記入します。
不良が出たあとの整備や、不良の数と全数への広げ方の細かい手順までは、書かれていません。
だから点検の前に、不良が出たときに全数を確認する段取りを、依頼先と決めておきましょう。
抽出した分が合格なら、残りの容器弁も合格になりますか。
点検要領は、判定の結果が抽出されたものだけに及ぶと書いています。
残りは、あとの年で抽出して点検します。
耐圧と気密の点検は何分どう保持するのか

点検要領の文は、次のとおりです。
6 耐圧性能点検 弁箱〔中略〕は、弁、安全封板、開放封板等を取り外し、開口部に閉止ナット等を用いて密閉した状態で水を満たし、空気が残らないようにした上、耐圧性能点検圧力値〔中略〕以上の水圧力を徐々に加えた後、加圧源を切り離して2分間保持する。〔中略〕判定基準 目視による漏れ、変形等の異常がないこと。
7 気密性能点検 容器弁等を閉止した状態で窒素ガス又は空気で徐々に加圧し、技術基準第3-3(気密試験)の圧力以上にした後加圧源を切り離し、水槽に沈めるか漏れ検査液を塗布して5分間保持する。〔中略〕本点検における圧力計の指針降下は認めない。
耐圧では、漏れがなく圧力計の指針が降下するときも、降下範囲は0.2メガパスカルまでです。ただし、型式認定で承認された値を下回ってはいけません。
気密では、圧力計の指針降下は認められないとされています。
やり直しは、どちらも1回限りだけとされ、気密では組み立てた容器弁の増し締めが認められません。
点検の場所は、原則としてJISの常温・常湿とし、その温度と湿度を点検の開始時と終了時に記録します。
だから点検の前に、圧力計の規格と、記録の様式を、そろえておきましょう。
耐圧の点検で、指針が少し下がったら、すぐ不良になりますか。
漏れがなければ、下がってよいのは0.2メガパスカルまでです。
ただし、承認された値を下回れば、認められません。
よくある質問
まとめ
まず、容器弁の型式と製造年の一覧を作るところから始めます!
抜取りは、決まりを守ってで進める点検です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の3の3(消防用設備等の定期点検及び報告)
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)、同告示の一部を改正する件(平成25年消防庁告示第19号)
- 消防用設備等の点検要領の一部改正について(平成26年3月31日消防予第138号) 別添2 不活性ガス消火設備等の容器弁等の点検要領
- 不活性ガス消火設備等の容器弁、安全装置及び破壊板の基準(昭和51年消防庁告示第9号)
※本記事は公表されている法令・告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検の実際の進め方は設備の状況と所轄消防署の指導によります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





