危険物の規制に関する政令は、給油取扱所のうち建築物内に設置するものを「屋内給油取扱所」と位置づけ、屋外の給油取扱所とは別の基準を定めています。
この基準には、どんな建物になら設置できるかという入口の条件から、専用タンクの構造まで含まれています。
特に専用タンクは、屋外の給油取扱所とは違って地下タンク貯蔵所とほぼ同じ基準が適用される、見落としやすいポイントがあります。
この記事では規則第25条の7が定める設備までさかのぼって、屋内給油取扱所ならではの基準を整理します。
テナントビルの一階に給油取扱所を作りたいという相談を受けたんですが、上の階に人が住んでいても大丈夫でしょうか。
屋内給油取扱所には専用の基準があります。
まずは建物の条件から確認していきましょう。
建物の用途によっては設置できないこともあるんですか。
はい、政令で決まった用途とは同居できません。
順番に見ていきましょう。
- 屋内給油取扱所は、消防法施行令別表第一(六)項に掲げる用途(病院や老人ホームなど)を含む建築物には設置できません。
- 建物には、火災を屋内給油取扱所以外の部分へ自動的に、かつ、有効に報知できる自動火災報知設備等の設置が義務付けられます。
- 専用タンクは、地下タンク貯蔵所の位置・構造・設備の基準にほぼそのまま準じます。
- 標識・屋外注入口・電気設備の基準だけは地下タンク貯蔵所と異なり、屋内給油取扱所独自の基準になります。
- 専用タンクと廃油タンク等には、通気管又は安全装置を設ける必要があります。
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目次
屋内給油取扱所は病院や老人ホームと同じ建物に設置できるのか

この屋内給油取扱所には、設置できる建物そのものに条件があります。
(六)項は病院・診療所・老人ホームなど、避難に配慮が必要な人が出入りする用途をまとめた区分です。
建物の壁・柱・床・はりを耐火構造にするだけでは足りず、これらの用途と同じ建築物に給油取扱所を組み込むこと自体が認められません。
テナントビルの一部を給油取扱所にする計画では、他のフロアの用途を必ず確認する必要があります。
次の項目では、この建築物に義務付けられるもう一つの条件を見ていきます。
耐火構造にしておけば、上の階が何であっても大丈夫だと思っていました。
(六)項の用途とは同居できません。
次はもう一つの設置条件を見ましょう。
屋内給油取扱所に義務付けられる総務省令で定める設備とは何か

これは、屋内給油取扱所ならではの火災の伝わり方に対応する設備です。
屋外の給油取扱所であれば火災はまず外気に広がりますが、建築物と一体の屋内給油取扱所では、同じ建物の他の部分に燃え広がる経路が最初から存在します。
条文が求めているのは「設置」だけでなく「自動的に、かつ、有効に」報知できることであり、人の通報を前提にした運用では足りません。
一般的には自動火災報知設備が使われますが、条文は「その他の設備」も認めており、同等の性能を持つ設備であれば選択の余地があります。
設備を選ぶときは、給油取扱所の部分から建物の他の部分まで確実に報知が届くかを、机上の配線図だけでなく現地でも確認しておくことが大切です。
普通の自動火災報知設備を置いておけば、それで足りるんでしょうか。
他の部分へ確実に届くかがポイントです。
次は専用タンクの基準を見ましょう。
専用タンクはなぜ地下タンク貯蔵所とほぼ同じ基準になるのか

条文は、別の施設の基準をそのまま借りてくるという構成をとっています。
専用タンクは建物の床下に埋設されるため、地面に埋めるタンクとしての性質は地下タンク貯蔵所と変わらないためです。
タンクの厚さや水圧試験の基準、過剰注入防止装置、マンホールなど、地下タンク貯蔵所で求められる技術基準の多くがそのまま当てはまります。
「屋内給油取扱所だから専用の緩い基準になる」という思い込みは誤りで、むしろ地下埋設タンクとしての基準がベースになります。
専用タンクの図面を確認するときは、給油取扱所側の基準だけでなく、地下タンク貯蔵所側の基準もあわせて見る必要があります。
屋内にあるのに、地下タンクと同じ基準になるとは思いませんでした。
埋設タンクである点が共通しています。
次は準用されない部分を見ましょう。
標識と屋外注入口と電気設備だけ別基準になるのはなぜか

除外されているのは、屋内給油取扱所には当てはまらない項目です。
地下タンク貯蔵所の標識・掲示板は屋外の単独施設を前提にしていますが、屋内給油取扱所には給油取扱所自体の標識があるため重ねて設ける必要がありません。
注入口についても、地下タンク貯蔵所は屋外に設けることを前提にしていますが、屋内給油取扱所の専用タンクは建物内で完結する構造もあり得るため、屋外設置の部分だけが除外されています。
電気設備は、政令第17条第1項第二十一号が定める給油取扱所の電気設備の基準に一本化されます。
なお通気管又は安全装置(規則第13条第1項第八号)は、この準用からは除かれていますが、政令第17条第2項第三号が別途あらためて義務付けています。
専用タンクの構造は「地下タンク貯蔵所に準じる部分」と「屋内給油取扱所独自の部分」が入り混じっているため、図面をどちらの基準と突き合わせているかを常に意識する必要があります。
通気管や安全装置はどこかで別に定められているんですか。
はい、政令第17条第2項第三号が別途定めています。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

新設のときも、既存の建物を点検するときも同じ視点で使えます。
- 建物の他のフロアが消防法施行令別表第一(六)項の用途(病院・老人ホームなど)に該当しないかを確認する
- 火災を他の部分へ自動的に、かつ、有効に報知できる設備が設置され、実際に機能するかを確認する
- 専用タンクの厚さや水圧試験の記録が地下タンク貯蔵所の基準を満たしているかを確認する
- 標識・注入口・電気設備が、地下タンク貯蔵所ではなく屋内給油取扱所独自の基準で整備されているかを確認する
- 専用タンク・廃油タンク等に通気管又は安全装置が設けられているかを確認する
テナントビルへの導入や増改築のときは、他フロアの用途変更によって基準への適合が崩れることもあります。
図面と現地の両方を、定期的に突き合わせておくことをおすすめします。
上のフロアの用途と、専用タンクの図面をあらためて確認してみます。
用途と図面の両方を確認してみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
用途とタンクの確認を、この機会にしてみます。
早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令別表第一(防火対象物の用途区分)
- 危険物の規制に関する政令第17条第2項(屋内給油取扱所の基準)
- 危険物の規制に関する規則第13条第1項(地下タンク貯蔵所の地下貯蔵タンクの位置、構造及び設備)
- 危険物の規制に関する規則第25条の7(屋内給油取扱所の建築物)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





