敷地の中に建物が複数あり、渡り廊下でつながっているオフィスビルは珍しくありません。
このとき屋外消火栓や消防用水は、建物ごとに別々に数えてよいのか、それとも全部まとめて1棟として数えるのか迷う担当者は多いはずです。
実は消防庁の行政実例が、渡り廊下でつながった建物の考え方を具体的な建物配置図つきで示しています。
結論から言うと原則は1棟ですが、水平距離と渡り廊下自体の構造しだいで扱いが変わります。
うちの敷地、渡り廊下でつながった建物が3棟あるんですが、屋外消火栓ってどう数えればいいんでしょうか。
実は消防庁の行政実例が、まさにその配置を例に考え方を示しているんです。
渡り廊下があるだけで別棟にはできないって聞いたことがあります。
でも例外もあるんですよね。
この記事で、原則と例外の両方を順番に確認していきましょう。
- 渡り廊下でつながった建築物は、原則として1棟として消防用設備等の基準を適用します。
- 屋外消火栓(令第19条)も消防用水(令第27条第2項)も、同じ考え方で床面積を合算します。
- 建築物相互の水平距離が1階3m以下・2階5m以下の部分がなければ、別棟として取り扱うことができます。
- 渡り廊下自体が耐火構造にも準耐火構造にも該当しない場合は、建物全体を「その他の建築物」として扱います。
- 渡り廊下が不燃材料で造られていれば、消防法施行令第32条の特例で緩和できる場合があります。
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目次
渡り廊下でつながった建物はなぜ原則1棟として扱われるのか

敷地に複数の建物があっても、渡り廊下で行き来できるなら、実質的には一体の建物として使われています。
消防庁の行政実例は、この物理的なつながりをそのまま設置単位の判断に反映させています。
渡り廊下でつながっているだけで、建物は原則として1棟にまとめて数えます。
根拠は昭和50年の消防庁通知が示す「設置単位の基準」で、渡り廊下・地下連絡路等でつながる建物は原則1棟という考え方が先にあります。
そのため屋外消火栓設備(令第19条)の床面積は、建物同士の距離に関係なく合算するのが出発点になります。
敷地内に建物を分けて建てても、渡り廊下でつなげば設置基準まで分かれるわけではないという点が、まず押さえておきたいポイントです。
渡り廊下でつなげば別々の建物として扱えると思っていました。
実は逆で、つながっている以上は原則としてまとめて数えるんです。
屋外消火栓や消防用水の床面積はどうやって合算するのか

原則1棟という考え方の土台には、政令そのものが定める距離のルールがあります。
屋外消火栓と消防用水は、それぞれ条文に同じ発想の規定を持っています。
建物同士が近すぎると、政令の規定によって1つの建物とみなされます。
基準になるのは、それぞれの建物の1階の外壁間の中心線から測った水平距離です。
その距離が1階で3m以下、2階で5m以下となる部分が1か所でもあれば、政令上は1つの建築物として扱われます。
これは延焼のしやすさを基準にした規定なので、渡り廊下の有無だけでなく建物同士の物理的な近さそのものが問われる点に注意してください。
渡り廊下でつながってなくても、近ければ合算されることがあるんですね。
はい。
水平距離3m・5mというラインは、延焼のおそれを基準にした独立した規定なんです。
別棟として扱ってよいのはどんなときか

原則1棟とはいえ、行政実例は別棟として扱ってよい条件もあわせて示しています。
条件は屋外消火栓だけでなく、消防用水にも共通しています。
別棟として扱うには、2つの条件を同時に満たす必要があります。
1つ目は、渡り廊下等でつながっていても「設置単位の基準」に適合し別棟扱いとなるものであること。
2つ目は、建物相互の水平距離に1階3m以下・2階5m以下となる部分が1か所も無いことです。
そして消防用水(令第27条第2項)についても、屋外消火栓とまったく同じ扱いでよいと確認されています。
片方の条件だけでは足りず、両方がそろって初めて別棟として計算できる点を見落とさないようにしましょう。
消防用水も屋外消火栓と同じ考え方でいいんですね。
はい。
ただし条件を2つとも満たすかどうかは、図面で必ず確認してください。
渡り廊下の構造で消防用水の扱いが変わるのはなぜか

建物A・B・Cがどれも耐火建築物であっても、それだけでは安心できません。
消防用水の計算では、間をつなぐ渡り廊下そのものの構造まで見られます。
渡り廊下自体が耐火構造でなければ、建物全体が「その他の建築物」として計算されます。
これはA・B・Cがすべて耐火建築物であっても変わりません。渡り廊下は独立した防火対象物ではなく、いずれかの建物に属する部分として扱われるためです。
「その他の建築物」は耐火建築物より緩い床面積の基準で消防用水の設置義務が生じるため、渡り廊下の構造しだいで必要な水量まで変わってきます。
ただし渡り廊下が不燃材料で造られている場合は、消防法施行令第32条の特例を適用し、渡り廊下も1つの棟として扱うのと同様の設置で足りるとされています。
建物が全部耐火構造なら、渡り廊下の構造までは気にしなくてよいと思っていました。
そこが盲点なんです。
渡り廊下自体の構造も、必ずあわせて確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

ここまでの内容を、実際の敷地でどう確認すればよいか整理します。
図面と現地の両方を見ながら、順番にチェックしていきましょう。
確認は、つながり方・距離・渡り廊下の構造という3段階で進めます。
まず配置図で、敷地内の建物が渡り廊下や地下連絡路でつながっているかを確認します。
次に、つながっている建物同士の1階の外壁間の水平距離を図面から測り、1階3m以下・2階5m以下となる部分の有無を確認します。
最後に、渡り廊下そのものが耐火構造・準耐火構造・不燃材料のいずれに当たるかを確認し、その結果を屋外消火栓と消防用水の両方の計算に反映させます。
自分で判断がつかない配置であれば、配置図を持って所轄消防に相談するのが確実です。
うちの敷地、この3つのどれに当てはまるのか自分では判断がつきません。
配置図を持って、所轄消防に一度確認してもらうのが確実です。
よくある質問
まとめ
これで渡り廊下の建物も迷わず数えられそうです!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第19条(屋外消火栓設備に関する基準)
- 消防法施行令第27条(消防用水に関する基準)
- 消防法施行令第32条(消防長又は消防署長の個別判断による基準の特例)
- 消防庁「消防用設備等の設置単位について」(昭和55年11月12日消防予第244号)
- 「消防用設備等の設置について」(昭和50年3月消防安第26号)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





