危険物取扱者や消防設備士の免状は、試験に合格すれば一生使えるものだと思われがちです。
しかし免状を持つ本人が亡くなった場合、その効力がどうなるのかは、判例のなかで示されています。
家族が形見として持っていれば代わりに使える、というわけにはいきません。
免状は「本人だけの資格」であり、死亡すれば効力そのものが消えるという判例の考え方を確認します。
うちのスタッフに危険物取扱者の免状を持つ人がいますが、もしものことがあったら免状はどうなるんでしょうか。
実はその点、判例で考え方が示されています。
まず「交付」の意味から確認しましょう。
家族が形見として持っていれば、代わりに使えたりしませんか。
それができない理由も、同じ考え方から分かります。
順番に見ていきましょう。
- 免状の交付とは、試験に合格しただけでなく、本人が現実に受け取って初めて成立する行為とされています
- この「交付」の考え方は、危険物取扱者免状にも消防設備士免状にも共通して当てはまります
- 免状は特定の本人に対してのみ効力を持つ「対人的処分」と位置づけられています
- そのため免状の効力は、本人の死亡によって消滅し、相続人に当然には引き継がれません
- 免状を持つ人に何かあったときは、「本人一代限りの資格」であることを前提に対応する必要があります
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目次
免状の「交付」とはいつ成立するのか

しかし法律上の「交付」は、もう少し狭い意味で使われています。
試験に合格し、都道府県が免状を発行する準備を整えただけでは、まだ「交付」は終わっていません。
本人が現実に受け取るという手続を経て、初めて資格としての効力が生じます。
この考え方が、消防法上の免状にもそのまま当てはまることになります。
交付って、免状が発行された時点のことだと思っていました。
実際に手元に届くまでは、まだ交付が完了していない扱いです。
なぜこの判断は消防法上の免状にもあてはまるのか

条文の作りが共通しているからです。
運転免許証の交付をめぐる判断は、この構造が共通していることを理由に、危険物取扱者免状と消防設備士免状の両方に及ぶとされています。
つまり、試験の合格通知が届いただけでは足りず、免状そのものを本人が受け取ることで初めて資格が有効になります。
郵送や代理受領であっても、本人の手元に確実に渡ったといえる状態が必要になります。
危険物取扱者と消防設備士、どちらも同じ考え方なんですね。
条文の書き方が同じなので、判断もそのまま共通します。
免状を持つ本人が死亡したら効力はどうなるのか

この考え方は、本人が亡くなったときの扱いにもつながっています。
これは「対人的処分」と呼ばれる考え方で、財産のように相続の対象になるものとは性質が異なります。
危険物取扱者免状も消防設備士免状も、試験に合格した本人の知識・技能を確認して交付されるものなので、同じ理屈があてはまります。
本人が亡くなった時点で、免状としての効力は失われると考えるのが自然です。
免状も、本人が亡くなったらそこで終わりということですか。
はい、資格としての効力はそこで消えると考えられています。
なぜ相続人は効力を引き継げないと言われたのか

しかしこの考え方は、対人的処分の性質そのものから否定されます。 免状は本人の試験合格という個人の能力を根拠に与えられるものであり、財産のように移転できるものではありません。
相続人がどれだけ近い家族であっても、試験に合格したのは本人であって相続人ではないため、免状の裏づけになっている資格そのものを引き継ぐことはできません。
公衆浴場の許可をめぐる判断が「相続によって当然承継されることはない」と述べているのは、この理屈を示したものです。
免状という書面そのものを手元に残していても、それを使って危険物を取り扱ったり、消防設備の工事整備を行ったりすることはできません。
免状の紙が手元に残っていても、資格としては使えないんですね。
書面が手元にあることと、資格が有効であることは別の話です。
家族や職場は具体的になにをすればよいのか

実務として整理しておきます。 まず、免状の効力が本人一代限りであることを前提に、周囲の対応を考えることです。
家族は、免状を交付した都道府県の窓口に、以後の取り扱い(返納の要否や手続)を確認しておくと安心です。
職場は、危険物取扱者や消防設備士の資格を前提に回っていた業務が無いかを洗い出し、他の有資格者に引き継ぐ準備を進めます。
危険物の取扱いや立会い、消防用設備等の工事整備の着手は、有効な免状を持つ本人がいなければ進められない点に注意が必要です。
つまり免状は、その人がいてこその資格だと考えておく必要があるんですね。
業務が特定の人の免状に頼りきりにならないよう、日頃から備えておくと安心です。
よくある質問
まとめ
免状が本人一代限りだと分かって、少し身が引き締まりました。
特定の一人に頼りきりにならない体制づくりが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 昭和44年9月25日 東京高等裁判所判決
- 昭和53年1月30日 名古屋地方裁判所判決
- 消防法第13条の2第3項・第17条の7
※判決文の引用中の表記は、いずれも役割を示す表記(免状を持つ本人・相続人など)に置き換えています。本記事は確定した判決の内容を要約したものです。判決当時の法令に基づく判断であり、条文番号も当時のものです。その後の改正により現在の規定とは異なる場合があります。個別の事案についての法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。





