危険物を扱うタンクや貯蔵所は、増設や設備の入れ替えでたびたび変更工事が入ります。
工事中は配管を外したり溶接をしたりと、ふだんより火気に近い作業が増えます。
実はこの工事中こそ、危険物施設が最も火災を起こしやすい場面だと消防庁が注意を促しています。
ある屋外タンクの工事中の火災をきっかけに、工事現場に求められる安全対策が示されました。
うちの施設も来月からタンクの改修工事が入るんですが、工事中でも普段どおりの防火管理でいいんでしょうか。
工事中は実は特別な注意が必要なんです。
過去に工事中の火気管理が原因で大きな事故が起きています。
工事は業者にお任せしているので、うちが何かする必要があるとは思っていませんでした。
元請けや下請けを含めて、工事に関わる全員に注意が必要です。
消防庁の通知が具体的に求めていることを見てみましょう。
- 平成15年に名古屋市の屋外タンク工事中で死者6名を出す火災が起き、これを機に消防庁が安全対策を示しました
- 対象は変更許可・仮使用・仮貯蔵仮取扱いに関わる工事で、元請けと下請けの全員が対象です
- 通知は保安教育・日々の確認体制・消防機関による事前確認という3つの柱を求めています
- 特に複数の工事を同時に行うときの火気管理は見落としやすい落とし穴です
- 工事責任者は毎日の工事内容を事前に確認し、無断の手順変更を認めない体制を整える必要があります
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目次
危険物施設の工事中の火災はなぜ起きたのか

実際に工事中の火気管理が原因で、多数の死傷者を出す事故が起きました。
隣り合う2基のタンクのうち一方を変更許可工事で改修していたところ、火気を使う作業がきっかけとなって火が燃え広がったとされています。
この事故を受けて消防庁は全国の消防主管部長に対し、工事中の安全対策を徹底するよう通知を出しました。
つまり完成した施設の点検だけでなく、工事という一時的な期間こそ注意が必要だということです。
工事中に事故が起きるなんて、あまり考えたことがありませんでした。
施設が動いていない分、油断しがちな場面なんです。
だからこそ通知が出されました。
どんな工事のどんな施設が対象になるのか

どんな工事がこれに当たるのか、根拠となる条文から確認します。
タンクの増設・配管の入れ替え・設備の入れ替えなど、位置・構造・設備を変えるほとんどの工事が含まれます。
通知は元請けだけでなく下請け業者を含めた工事関係者全員を対象にしています。
仮使用の承認や仮貯蔵・仮取扱いの承認を受けて進める工事も同じ扱いです。
うちの工事は下請けさんにお願いしている部分も多いんですが、それも対象になるんですね。
はい、元請け・下請けの区別なく全員が対象です。
契約書だけでなく現場への周知が必要です。
通知は工事現場に何を求めているのか

どれも高額な設備投資ではなく、体制づくりが中心です。
まず工事に関わる全員へ、扱う危険物の性質と工事に伴う危険性を教育します。
次に工事責任者が毎日の作業内容を事前に確認し、実施結果も自ら確認する体制を作ります。
そして消防機関も、変更許可や仮使用の承認の段階で工事全体の安全対策を確認します。
教育も確認も、うちの担当者だけでできる話じゃなさそうですね。
そのとおりです。
工事責任者を決めて、業者側とも役割を共有しておくと進めやすくなります。
実務で見落としやすいのはどこか

とくに複数の工事が重なるときに注意が必要です。
別々の業者が同時に作業していると、片方の火気作業ともう片方の可燃物がすぐそばにあることに気づきにくいためです。
また現場の判断で手順を変えることも、通知では原則認められていません。
予定外の作業が必要になった場合でも、必ず工事責任者の承認を経る流れにしておく必要があります。
急いでいるときほど、現場判断で手順を変えたくなる気がします。
そこが一番の落とし穴です。
変更は必ず責任者の承認を経る流れにしてください。
明日からなにを確認すればよいのか

早めに動くほど、当日の混乱を防げます。
工事の全体計画・作業内容・安全対策をまとめておくと、消防機関の確認もスムーズに進みます。
社内では工事責任者を決め、元請け・下請けを含めた保安教育と毎日の確認体制を先に整えておきましょう。
複数の工事が重なる予定があるなら、火気と可燃物を離す工事日程の調整も忘れずに行ってください。
工事を頼む前に、まず消防署に相談すればいいんですね。
はい、早めの相談が一番の近道です。
まずは工事計画をまとめるところから始めましょう。
よくある質問
まとめ
工事のときは業者任せにせず、うちも一緒に確認していきます!
はい、その姿勢が一番の安全対策です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物施設の工事中の安全対策について」(平成16年2月10日 消防危第16号 消防庁危険物保安室長)
- 消防法第10条第1項ただし書(仮貯蔵・仮取扱いの承認)
- 消防法第11条第1項・第6項ただし書(変更の許可・仮使用の承認)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





