沿岸に並ぶ石油タンクは、地震だけでなく津波にも耐えなければなりません。
東日本大震災では、16都道県で21万を超える危険物施設のうち3,341施設が被害を受けました。
この経験から消防庁は、施設ごとに何を確かめておくべきかを通知でまとめています。
通知が示したのは津波が来る前に検証しておくべき5つの視点です。
うちのタンクは沿岸沿いにあるんですが、津波までは考えていませんでした。
東日本大震災のあと、まさにその点を消防庁が通知でまとめました。
被害の実態から検証すべき事項まで示されています。
具体的になにを確認すればいいんですか。
対象になる施設の範囲、検証すべき事項、そして屋外タンクだけに求められる対策を順に見ていきましょう。
- 東日本大震災では16都道県で3,341施設の危険物施設が被害を受けました
- 対象は津波が発生した場合に浸水するおそれのある地域に所在するすべての危険物施設です
- 避難経路や警報の伝達方法、緊急停止の手順を停電時も含めて検証する必要があります
- 予防規程が無い施設も保安マニュアル等に検証結果を規定する必要があります
- 屋外タンク貯蔵所には津波被害シミュレーションの実施が求められました
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目次
危険物施設はなぜ東日本大震災を機に地震と津波の対策を求められたのか

消防庁が行った調査で、その被害の広さが数字となって表れています。
数字だけ見れば少数派ですが、危険物施設の被害はタンクの損壊や配管の破断など、二次災害に直結する種類のものです。
消防庁はこの結果を受けて「東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震・津波対策のあり方に係る検討会」を開き、被害事例の分析と対策のとりまとめを行いました。
その結論として出されたのが、消防危第28号のこの通知です。
沿岸に施設を持つ事業者にとっては、自分の施設の話として読む通知だといえます。
うちは内陸やから、津波は関係ないと思ってました。
浸水するおそれがある地域かどうかが基準です。
川沿いなど、離れていても対象になる施設があります。
対策の対象になるのはどんな危険物施設なのか

これから起こりうる被害に備えて、対象を線引きしています。
被災地に限らず、津波が発生した場合に浸水するおそれのある地域にある全ての危険物施設が対象になります。
製造所、貯蔵所、取扱所という施設の種類は問いません。指定数量の倍数の大小でも絞り込まれていません。
まず確認すべきは、自分の施設が地方公共団体の作成する津波浸水想定区域図のどこに位置しているかです。
区域の境目に近い施設は、対象外だと決めつけず念のため確認しておく方が安全です。
浸水想定区域って、どこで確認すればいいんですか。
地方公共団体等が作成する津波浸水想定区域図です。
まずはそこで自分の施設の位置を確かめてください。
検証では具体的になにを確かめるのか

通知は5つの視点を挙げています。
浸水想定区域図で施設の位置を把握すること、避難経路と避難場所を確認して周知すること、津波警報の伝達方法を検証すること、そして緊急停止の手順を確認することです。
なかでも見落としやすいのが停電時の想定です。
地震の揺れで停電しても緊急停止ができる手順になっているか、あわせて確認するよう求められています。
最後の視点は実施体制です。夜間や休日は従業員が少なくなるため、その時間帯でも短時間で対応できる役割分担を決めておく必要があります。
夜中や休みの日に津波が来たらと考えると、正直不安です。
だからこそ通知は、少ない人数でも対応できる体制まで確認するよう求めています。
当番表を見直すきっかけにしてください。
予防規程が無い施設は対策をしなくてよいのか

通知は、検証結果を書き込む先まで指定しています。
指定数量の倍数が小さく予防規程を作る義務が無い施設でも、所有者等が作成する保安マニュアル等に検証結果を規定するよう求められています。
通知が出された当時、この項目は規則にまだ書き込まれていませんでしたが、その後危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第11号の2として実際に条文化されました。
つまり予防規程を作る施設では、地震・津波発生時の点検や応急措置に関する事項が、今では法令上の記載事項そのものになっています。
自分の施設が予防規程の対象かどうかにかかわらず、検証結果をどの文書に書くかを先に決めておく必要があります。
うちは小さい施設で予防規程は作っていないんですが、それでも対策は要りますか。
保安マニュアル等に検証結果を規定するよう求められています。
まずはその文書があるかどうかから確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか
検証と文書化がそろったら、最後は実行に移す番です。通知は周知と訓練、そして屋外タンクへの言及で締めくくられています。
検証の結果を従業員に周知するだけでなく、津波が発生するおそれのある状況を想定した訓練まで実施するよう求められました。
屋外タンク貯蔵所についてはさらに一歩進んだ対応があり、津波被害シミュレーションを実施して具体的な被害予測を行うことが求められています。
通知は最後に、立入検査等の機会を活用してこれらの対策が講じられているかを確認するよう消防機関にも求めています。
明日からできることは、浸水想定区域の確認、避難経路と緊急停止手順の確認、そして訓練の実施予定を決めることの3つです。
まずは浸水想定区域の確認からですね。
そのとおりです。
そこから避難経路の確認、そして訓練の実施へとつなげてください。
よくある質問
まとめ
浸水想定区域の確認から始めればいいと分かりました。
さっそく地図を確認します。
位置の確認、検証結果の文書化、そして訓練。
この3つを順に進めれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東日本大震災を踏まえた危険物施設の地震・津波対策の推進について(平成24年1月31日付け消防危第28号)
- 危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第11号の2
- 消防法第14条の2第1項
- 総務省消防庁「危険物施設の震災等対策ガイドライン」
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





