工業専用地域は、工場の操業を最優先し、人が住むことをそもそも想定していない地域です。
建築基準法別表第二(わ)項は、工業専用地域に建ててはならない建築物を号ごとに列挙しています。
その中には、住宅そのものも含まれています。
工業専用地域では、住宅は用途そのものとして原則建築できません
工業専用地域の土地に住宅を建てたいという相談を受けたのですが、用途地域の制限に引っかかりますか。
実は工業専用地域には、住宅を建てられないという建築基準法上のルールがあります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
工場ばかりの地域だから、人が住む建物は最初から想定されていないということですか。
はい、別表第二(わ)項第二号が、この規制を定めています。
順番に見ていきましょう。
- 工業専用地域では、建築基準法第48条第13項により別表第二(わ)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
- 同項第二号は、住宅そのものを名指しして建築を禁止しています。
- 第三号は共同住宅、寄宿舎又は下宿も、住宅と同じく禁止対象に加えています。
- 老人ホームや有料老人ホームなど高齢者向けの入居施設も、第四号により建築できません。
- 例外的に建てる道は、特定行政庁の許可に限られます。
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目次
工業専用地域で住宅が原則建てられないのはなぜか

建築基準法はこの趣旨に沿って、住宅を名指しで規制しています。
建築基準法別表第二(わ)項 工業専用地域内に建築してはならない建築物 二 住宅
工業地域を規制する第12項の(を)項には、実は住宅を禁止する号がありません。
つまり工業地域では住宅を建てられますが、より工業に特化した工業専用地域では建てられないという違いがあります。
第48条第13項は工業専用地域の全般規定で、住宅以外にも(わ)項が列挙する複数の用途を同じ条項でまとめて禁止しています。
次は、住宅以外にどんな居住形態が禁止されているのかを確認しましょう。
住宅と一緒に、アパートのような共同住宅も同じように禁止されますか。
はい、共同住宅や寄宿舎も別表第二(わ)項第三号で禁止されています。
次は、その中身を確認しましょう。
共同住宅や寄宿舎も同じように建てられないのか

条文の並びを確認します。
一戸建てをイメージしやすい「住宅」だけでなく、マンションのような共同住宅、社員寮のような寄宿舎、部屋を貸す下宿も、別表第二は号を分けて名指ししています。
つまり工業専用地域では、建物の形態を問わず、人が住むための用途そのものが建てられません。
次は、高齢者が入居する老人ホームがどのように扱われるかを確認しましょう。
住宅や共同住宅と、老人ホームは同じ「住まい」でも、条文の号は分かれていますか。
はい、老人ホームは第四号で別に定められています。
次は、その理由を確認しましょう。
老人ホームまで別の号で禁止されているのはなぜか

老人福祉法にさかのぼって、老人ホームの位置づけを確認します。
老人福祉法第五条の三 この法律において、「老人福祉施設」とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターをいう。
老人福祉法第二十九条第1項(要旨) 有料老人ホーム(老人を入居させ、介護等の供与をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設…でないものをいう。)を設置しようとする者は、あらかじめ、都道府県知事に届け出なければならない。
養護老人ホームや特別養護老人ホームは、老人福祉法第五条の三が定める「老人福祉施設」に含まれます。
一方で有料老人ホームは、同法第二十九条で「老人福祉施設…でないもの」とわざわざ別枠に定義されています。
別表第二(わ)項第四号は「老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの」という言い方をしており、この老人福祉法上の枠組みの違いにかかわらず、高齢者が入居する施設を広く禁止対象にしていると整理できます。
次は、この規制の落とし穴になりやすい既存の住宅の扱いを確認しましょう。
老人ホームの種類によって、規制のかかり方が変わったりしませんか。
いいえ、種類を問わず工業専用地域では建てられません。
次は、既存の住宅がある場合の扱いを確認しましょう。
すでに住宅が建っている土地はどうなるのか

指定より前から建っている住宅がどうなるのかを確認します。
建築基準法第3条第3項第三号 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
建築基準法第3条第2項が定める、いわゆる既存不適格の扱いです。
ただし工事の着手が用途地域の指定・変更より後になる増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替を行うと、この保護は及ばなくなる場合があります。
つまり指定後にそのまま住み続けることはできても、建て替えや増築を機に、あらためて別表第二の用途規制に向き合う必要が生じます。
次は、この落とし穴を踏まえて明日から確認すべき点を整理しましょう。
古くからある住宅を建て替えたいという相談を受けたら、まず何を確認すればよいですか。
まず用途地域の指定時期と、工事の内容を確認しましょう。
次は具体的な確認事項を整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべき点を整理します。
- 計画地が工業専用地域か、住宅を建てられる工業地域かを都市計画図で確認する
- 共同住宅・寄宿舎・下宿・老人ホームなど、居住形態を問わず用途規制の対象になることを確認する
- 建物が用途地域の指定より前から建っているか、既存不適格に当たるかを確認する
- 増築・改築・大規模修繕を計画している場合は、特定行政庁への事前相談も選択肢に入れる
都市計画図で工業地域か工業専用地域かを見極め、(を)項と(わ)項のどちらが適用されるかを判断します。
住宅・共同住宅・寄宿舎・下宿・老人ホームのいずれも、工業専用地域では等しく建築禁止の対象です。
すでに建っている住宅であれば、増築や建て替えの計画がないかもあわせて確認します。
相談を受けたら、まず用途地域と建物の建築時期の両方を切り分けて確認しましょう。
用途地域と建築時期、まずその2点を確認します。
はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
相談してくれた方には用途地域と建築時期を確認するよう伝えてみます!
特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第13項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(わ)項第一号・第二号・第三号・第四号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法第3条第2項・第3項第三号(e-Gov法令検索)
- 老人福祉法第五条の三・第二十九条第1項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





