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加圧送水装置のポンプはなぜ揚程曲線で性能を判定するのか|吸込全揚程と締切運転の基準を解説

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屋内消火栓設備やスプリンクラー設備のポンプ方式の加圧送水装置は、設置すればそれで終わりではありません。
実際に水を送り出す性能そのものが、告示の定める数値に収まっているかどうかが問われます。
ポンプの銘板に書かれた定格吐出量定格全揚程は、単なる目安の数字ではないのです。
本記事ではポンプの放水性能の基準を、根拠となる告示から順に解説します。

点検業者さんから、ポンプの揚程曲線を見せてもらいました。

それがポンプの性能を判定する物差しです。
告示に細かい数値が定められています。

曲線がどうなっていれば合格なのか、正直わかりません。

実は許容範囲の数字まで決まっています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • ポンプの吐出量及び全揚程は、揚程曲線上で定格全揚程の100パーセント以上110パーセント以下に収まることが求められます
  • 定格吐出量の150パーセントの吐出量における全揚程は、定格全揚程の65パーセント以上であることが求められます
  • 締切全揚程は、定格吐出量における全揚程の140パーセント以下に制限されています
  • 地上設置のポンプの吸込全揚程は、吐出量の区分ごとに異なる数値が定められています
  • ポンプ性能試験装置は、流量調整弁と差圧式の流量計で実際の性能を確かめる仕組みです

ポンプの性能曲線と揚程基準を示す図解

なぜポンプの吐出量と全揚程に許容範囲があるのか

ポンプと揚程曲線を示すチャート板の図
ポンプの銘板に書かれた数字は、そのまま鵜呑みにしてよいものではありません。
実測値との整合性を、決められた曲線の上で確かめる仕組みになっています。
当該ポンプに表示されている吐出量(以下「定格吐出量」という。)における揚程曲線上の全揚程は、当該ポンプに表示されている全揚程(以下「定格全揚程」という。)の100パーセント以上110パーセント以下であること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第五 三 (一)イ)
全揚程は定格の100パーセント以上110パーセント以下に収まれば適合です。
告示は、当該ポンプの定格吐出量における揚程曲線上の全揚程が、そのポンプに表示された定格全揚程の100パーセント以上110パーセント以下であることを求めています。
銘板の数字をそのまま比べるのではなく、あらかじめ作成された揚程曲線という曲線全体とのバランスで判定する点がポイントです。
つまり多少のばらつきは最初から織り込み済みで、その幅の中に収まっているかどうかが合否の分かれ目になります。

銘板の数字ぴったりじゃなくてもいいんですね。

はい、曲線とのバランスで見ます。
次は流量を増やした場合を見ましょう。

150パーセントの水量でもなぜ性能を保証できるのか

開いた弁と圧力計を示す図
火災時には、想定より多くの水を求められる場面もあり得ます。
そこで告示は、流量を増やした状態での性能も別に定めています。
定格吐出量の150パーセントの吐出量における揚程曲線上の全揚程は、定格吐出量における揚程曲線上の全揚程の65パーセント以上であること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第五 三 (一)ロ)
150パーセントの流量でも、全揚程の65パーセント以上を保てなければなりません。
定格吐出量の150パーセントまで水量を増やして運転した場合でも、そのときの全揚程が定格吐出量における全揚程の65パーセント以上であることが求められます。
流量を増やすほど揚程が落ちるのはポンプの一般的な性質ですが、その落ち方に下限が設けられているということです。
つまり定格どおりの水量だけでなく、それ以上を求められた場合にどこまで粘れるかまで、あらかじめ試験で確かめられているわけです。

水を多く出しても、急に力尽きたりはしないんですね。

はい、65パーセント以上という下限があります。
次は反対に水を止めた場合です。

締切運転時の全揚程はなぜ上限が決められているのか

閉じた弁と温度計を示す図
吐出側の弁を閉じて水を止めた状態も、点検では必ず確認する運転状態です。
このときの全揚程にも、上限となる数値があります。
締切全揚程(吐出量を零とした場合における全揚程をいう。)は、定格吐出量における揚程曲線上の全揚程の140パーセント以下であること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第五 三 (一)ハ)
締切全揚程は、定格全揚程の140パーセント以下に制限されています。
吐出側の弁を閉じて吐出量を零にした状態の全揚程を締切全揚程と呼び、これが定格吐出量における全揚程の140パーセント以下であることが求められます。
締切運転を続けるとポンプ内部で水がかき混ぜられ続け、水温が上昇するおそれがあることも、告示が別途水温上昇防止用逃し配管を義務付けている理由です。
つまり上限が決められているのは、締切状態そのものが本来は長く続けてよい運転ではないことの裏返しだといえます。

弁を閉じたままにすると、ポンプに負担がかかるんですね。

はい、140パーセント以下という上限です。
次は吸い込み側の基準を見ましょう。

吸込全揚程はなぜ吐出量ごとに数値が違うのか

水槽の上に設置されたポンプと高さの目盛りを示す図
ポンプが水を吸い上げる力にも、告示は数値の基準を設けています。
ただしこの数値、すべてのポンプで同じではありません。
定格吐出量の区分吸込全揚程
900リットル毎分未満6.0メートル
900リットル毎分以上2700リットル毎分以下5.5メートル
2700リットル毎分を超え5000リットル毎分以下4.5メートル
5000リットル毎分を超え8500リットル毎分以下4.0メートル
8500リットル毎分超使用目的に応じた設計吸込全揚程
地上に設置するポンプにあっては、次の表の上欄に掲げる定格吐出量の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる吸込全揚程(常温におけるポンプ羽根車の吸込口中心点を含む水平面に換算した吸込口連成計の値をいう。)以上において運転した場合、異常がないこと。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第五 三 (二)イ)
吸込全揚程は、定格吐出量が大きいポンプほど小さい数値になります。
地上に設置するポンプは、定格吐出量の区分に応じて上の表の吸込全揚程以上で運転しても異常が生じないことが求められます。
これは吸込口での圧力低下によって水中に気泡が発生する現象、いわゆるキャビテーションを避けるための基準だと考えられます。
水中に設置するポンプの場合は表によらず、最低運転水位において運転した場合に異常が生じないことが基準になります。

大きいポンプほど、数字が緩くなるのは意外でした。

はい、設置区分によって基準が違います。
最後は実際の試験方法です。

ポンプ性能試験装置は何を確かめるための仕組みか

バイパス配管の調整弁と流量計を示す図
ここまでの数値は、机上の計算だけで確かめるものではありません。
ポンプ本体には、これらを実測するための専用の装置が付いています。
配管は、ポンプの吐出側の逆止弁の一次側に接続され、ポンプの負荷を調整するための流量調整弁、流量計等を設けたものであること。流量計は、差圧式のものとし、定格吐出量を測定することができるものであること。(加圧送水装置の基準 平成9年6月30日消防庁告示第8号 第六 四 (一)(二))
ポンプ性能試験装置は、流量を調整しながら実測するための専用配管です。
ポンプ性能試験装置は、吐出側の逆止弁より手前から分岐した配管に流量調整弁と流量計を備えたもので、弁を絞って負荷を変えながら性能を測定します。
流量計は差圧式のものとされ、定格吐出量まで測定できることが条件になっています。
点検の場で見る揚程曲線の実測データは、まさにこの試験装置を使って得られた数値だということを押さえておくと、報告書の見方が変わります。

つまり、あの曲線はこの装置で実測した結果なんですね。

試験装置での実測値、そのとおりです。
ここまでの内容を整理しましょう。

よくある質問

Qポンプの吐出量や全揚程はどうやって確認すればよいですか?
A揚程曲線上で、定格吐出量における全揚程が定格全揚程の100パーセント以上110パーセント以下に収まっているかで確認します。
Q150パーセントの吐出量での全揚程が求められるのはなぜですか?
A流量が増えてもポンプが性能を維持できるかを確かめるためで、告示は定格吐出量における全揚程の65パーセント以上を求めています。
Q締切運転をしてはいけないのですか?
A禁止されているわけではありませんが、締切全揚程は定格吐出量における全揚程の140パーセント以下に制限されており、水温上昇の防止措置も別途求められます。
Q吸込全揚程はどこで確認すればよいですか?
A地上設置のポンプでは、告示が定めた定格吐出量の区分ごとの数値を設計図書やポンプ性能試験装置の実測記録で確認します。

まとめ

ポンプの吐出量・全揚程は揚程曲線上で判定すること
定格吐出量における全揚程は定格全揚程の100パーセント以上110パーセント以下であること
定格吐出量の150パーセントの吐出量では全揚程の65パーセント以上を保つこと
締切全揚程は定格吐出量における全揚程の140パーセント以下に制限されること
地上設置のポンプの吸込全揚程は定格吐出量の区分ごとに異なる数値であること
ポンプ性能試験装置は流量調整弁と差圧式の流量計で実測する仕組みであること
点検報告書の実測値は揚程曲線とのバランスで確認すること

点検票の数字の意味が、やっとつながりました!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第12条第1項第7号ニ(加圧送水装置の構造及び性能)
  • 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)第五 三 ポンプの放水性能/第六 四 ポンプ性能試験装置

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。設備の仕様や点検の実施方法は機種や建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または専門業者にご確認ください。

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