消防の検査に合格しても、それだけでは建物を自由に使い始められるとは限りません。
排煙設備や防火区画などの工事を含む建物は、検査済証が出るまで使用が制限されます。
ただしこの制限には、ごく小さな修繕までは含めないための例外が政令に定められています。
今回は避難施設等に関する工事に含まれない軽易な工事について解説します。
バルコニーの手すりを塗り替えるだけの小さな工事でも、使用制限の対象になるのですか。
実は軽易な工事にあたれば対象外になります。
小さな工事ならなんでも対象外になるということでしょうか。
いいえ、政令が定める範囲に限られます。
今日はその線引きを一緒に確認していきましょう。
- 避難施設等に関する工事は原則として検査済証が出るまで使用が制限されます
- 施行令第十三条の二はバルコニーの手すりの塗装・出入口のガラスの取替え・非常用照明のカバー交換の三つを軽易な工事として挙げています
- 機能の確保に支障を及ぼさないことが明らかな工事もこの軽易な工事に含まれます
- 軽易な工事に当たっても消防法上の届出義務まで免除されるわけではありません
- 判断に迷う工事は特定行政庁へ事前に相談しておくことが実務上の対策です
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目次
バルコニーの手すりを塗り替えただけで建物は使えなくなるのか

では手すりの塗り替えのような小さな修繕も、同じように扱われるのでしょうか。
つまり避難施設等にかかわる工事のすべてが使用制限の対象になるわけではありません。
どこまでが軽易な工事として除かれるのかは、建築基準法施行令第十三条の二が具体的に定めています。
次はその政令の中身を確認します。
手すりの塗り替えぐらいなら大丈夫だろうと、自己判断していました。
今回はその政令の範囲を条文で確認していきます。
政令が定める軽易な工事とは具体的に何を指すのか

まずはその三つの工事を確認します。
一つ目はバルコニーの手すりの塗装で、手すり自体を取り替える工事ではなく塗り替えに限られます。
二つ目は出入口や屋外への出口の戸に用いるガラスの取替えで、戸そのものの交換とは区別されます。
三つ目は非常用の照明装置に用いる照明カバーの取替えで、器具本体の交換ではなくカバー部分に限られます。
次は、この三つに当てはまらない工事をどう判断するかを確認します。
三つとも、部材の一部を取り替える程度の工事ですね。
そのとおりです。
次は例示に無い工事の判断基準を見ていきましょう。
例示に無い工事はどう判断すればよいのか

その条件を満たすかどうかで、例示に無い工事も軽易な工事にあたるか判断します。
「明らかである」という文言なので、判断に迷う工事まで軽易な工事に含めることはできません。
三つの例と同じように、部材や部品の一部を交換する程度にとどまり避難施設等の性能そのものを変えないことが目安になります。
自己判断で軽易な工事と決めつけず、迷う場合は次に説明する確認先へ相談することが大切です。
三つの例に無い工事は、どう扱えばよいか迷いそうです。
迷ったときの確認先も、この後にお話しします。
軽易な工事なら消防法の届出も要らないと思っていないか

ただしそれで工事にまつわる義務がすべて無くなるわけではありません。
たとえば非常用照明のカバー交換であっても、その工事が消防用設備等の設置・変更にあたる場合は、消防法側の届出や検査が別に必要になることがあります。
また出入口の戸に用いるガラスの取替えは軽易な工事でも、戸そのものを丸ごと交換する工事は例示の範囲を超え、原則どおり使用制限の対象になります。
軽易な工事だからと安心せず、建築側と消防側それぞれの義務を分けて確認してください。
軽易な工事だと分かれば、それで手続きは終わりだと思っていました。
そこが今回の落とし穴です。
建築側と消防側は別に確認します。
工事を発注する前に何を確認しておけばよいか

確認しておきたい点を整理します。
- 工事の内容が政令が名指しする三つの例のいずれかに当てはまるか
- 当てはまらない場合は避難施設等の機能に支障を及ぼさないことが明らかといえるかを確認する
- 判断に迷うときは特定行政庁に事前相談し、記録を残しておく
- 同じ工事が消防用設備等にかかわる場合は消防法側の届出も別に必要か確認する
該当しない工事は、機能に支障を及ぼさないと明らかに言えるかを確認します。
判断が難しいときは、着工前に特定行政庁へ相談しておくと後戻りが少なくなります。
消防用設備等にかかわる工事なら、消防法側の届出も忘れずに確認してください。
これらを整理しておけば、小さな工事のつもりが使用制限に触れてしまう事態を防げます。
発注前に確認する項目がよく分かりました。
次の工事から早速使います。
そうですね。
次は仕上げに全体を振り返ってみましょう。
よくある質問
まとめ
軽易な工事の範囲がよく分かりました。
次の手すり塗装の工事から確認して進めます。
小さな工事でも念のため確認しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第七条の六第一項
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条の二
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の三の二
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





