歴史的な木造の建物が並ぶ街並みでは、建築基準法の防火や道路の規定をそのまま当てはめにくい場合があります。
景観法に基づいて景観重要建造物に指定された建築物には、建築基準法の制限を条例で緩和できる仕組みが用意されています。
制限が緩和されるとき、防火の備えはどう考えればよいのでしょうか。
今回は建築基準法第85条の2が定める景観重要建造物への制限の緩和について、対象と手続と範囲を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。
街並みを守るために指定された古い木造の建物は、建築基準法の制限を受けなくてよいと聞きました。
本当でしょうか。
建築基準法第85条の2に、景観重要建造物について条例で制限を緩和できる仕組みがあります。
ただし対象や範囲が決まっているので、順番に見ていきましょう。
どんな建物が対象で、誰がどう決めるのでしょうか。
消防の決まりがどうなるのかも知りたいです。
条文を順に確認します。
防火管理の面で確かめたい点もお伝えします。
- 景観法で景観重要建造物に指定された建築物は、市町村が条例で建築基準法の制限を緩和できる場合があります。
- 緩和の対象は、良好な景観の保全のためその位置又は構造をその状態において保存すべきものに限られます。
- 市町村は、国土交通大臣の承認を得て、条例で定めます。
- 条例で適用しないか緩和できるのは、第85条の2に列挙された建築基準法の条文だけです。
- 列挙に含まれない規定は緩和の対象外で、消防法は建築基準法の条文ではありません。
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目次
景観重要建造物への制限の緩和は建築基準法にどう書かれているのか

緩和するのは市町村で、条例という形で定めます。
条文には、緩和する主体、緩和が認められる建築物、必要な手続、緩和できる規定の四つが順に書かれています。
主体は市町村で、手続は国土交通大臣の承認を得た条例です。
緩和できる規定は、条文の(略)の部分に列挙されていて、この記事の後半で確認します。
まず、どんな建築物が対象になるのかを次の節で確認します。
建築基準法の制限を、条例で緩められる場合があるんですね。
どんな建物でも対象になるんでしょうか。
いいえ、対象は景観重要建造物に指定された建築物に限られます。
次に、その指定と対象の絞り込みを見ましょう。
どんな建築物が緩和の対象になるのか

さらに、指定された建築物のすべてではなく、条文が示す条件を満たすものに絞られています。
(同条第三項)第一項の規定は、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定により国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建造物については、適用しない。
建築基準法第85条の2は、指定された建築物のうち、良好な景観の保全のためその位置又は構造をその状態において保存すべきものに絞って緩和を認めています。
指定を受けていても、緩和の内容は市町村の条例の定めによります。
また、国宝や重要文化財などに指定された建造物は、景観重要建造物の指定の対象になりません。
そうした建築物は、建築基準法第3条第1項第1号で、建築基準法の規定そのものが適用されないとされています。
指定されている建物でも、緩和されるとは限らないんですね。
どうやって確かめればよいでしょうか。
指定の有無は景観行政団体、緩和の内容は市町村の条例で確かめます。
次に、緩和を決める手続を見ましょう。
誰がどんな手続で制限を緩和するのか

この二つの条文は、景観重要建造物の現状変更の規制と管理義務を定めています。
(景観法第二十五条第一項)景観重要建造物の所有者及び管理者は、その良好な景観が損なわれないよう適切に管理しなければならない。
所有者や管理者には、良好な景観が損なわれないよう適切に管理する義務も課されています。
そのため、建築基準法の制限をそのまま当てはめると景観の保存と両立しない場合が出てきます。
そこで市町村は、必要と認める場合に、国土交通大臣の承認を得て条例で緩和を定めることができます。
緩和の内容は条例ごとに異なるので、建物のある市町村の条例を確認する必要があります。
景観を守る許可制と、建築基準法の緩和は、つながっているんですね。
手続は市町村だけで済むのでしょうか。
いいえ、条文は国土交通大臣の承認を得て条例で定めると書いています。
次に、緩和できる規定の範囲を見ましょう。
条例で緩和できる規定はどこまでで、消防法はどうなるのか

列挙されていない規定は、この仕組みでは緩和されません。
防火に関わるものでは、大規模の建築物の主要構造部等を定める第21条から、屋根の第22条、外壁の第23条、大規模の木造建築物等の外壁等の第25条までが入っています。
防火地域及び準防火地域内の建築物を定める第61条と、屋根を定める第62条も列挙されています。
一方で、避難や消火に関する技術的基準を定める第35条や、防火壁や防火区画を定める第36条は、列挙の中に見当たりません。
また、列挙されているのは建築基準法の条文だけで、消防法や消防法施行令の規定は含まれていません。
屋根や外壁の基準が緩和されるなら、火災への備えが心配です。
消防の設備の決まりも一緒に緩むのでしょうか。
条文が列挙しているのは、建築基準法の規定だけです。
消防用設備等の扱いは、所轄消防署に確認しましょう。
防火管理者は景観重要建造物を管理するときになにを確かめておくとよいのか

工事の許可については、景観法第22条第1項のただし書に例外が書かれています。
増築、改築、外観を変更することとなる修繕や模様替、色彩の変更には、景観行政団体の長の許可が必要です。
通常の管理行為や軽易な行為で政令が定めるもの、非常災害のため必要な応急措置として行う行為は、許可の対象から除かれています。
屋外に設備を付けるなど、外観が変わりそうな防火工事は、許可が要るかを事前に景観行政団体へ確かめます。
明日から次の点を確認してください。
- 建物が景観重要建造物に指定されているかを、景観行政団体に確認する。
- 市町村が第85条の2による条例を定めているか、緩和の内容と範囲を確認する。
- 外観や色彩を変える工事は、景観法第22条の許可が要るかを事前に確認する。
- 建築基準法の制限が緩和されている部分は、火気の管理や点検など消防法側の備えを見直す。
- 消防計画への反映は、所轄消防署へ相談する。
工事や使い方が変わるときは、それぞれの窓口へ同じ内容を伝えられるようにしておきましょう。
指定の有無や条例の内容は、誰が把握して記録すればよいでしょうか。
管理者としてどう備えればよいですか。
指定の有無と条例の内容を確認して、緩和されている部分を防火管理の記録に残しましょう。
工事の前には、景観と消防の両方の窓口に相談しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
景観重要建造物の制限の緩和は、範囲と手続が決まっているんですね。
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緩和の内容が分かれば、防火管理の備えも立てやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第三条・第八十五条の二(e-Gov法令検索)
- 景観法第十九条・第二十二条・第二十五条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





