大きな災害が起きたとき、応急対策の指揮をとるのは防災会議なのか災害対策本部なのかと迷う方は多いと思います。
実は平成24年の災害対策基本法の改正で、災害応急対策の実施は災害対策本部に一元化されました。
一方で防災会議には、知事や市町村長の諮問に応じて防災の重要事項を審議する役割が新たに加わっています。
両者の役割分担がどう変わったのかを、国の通知と条文で確かめます。
災害が起きたとき、防災会議と災害対策本部は何が違うのですか。
応急対策は災害対策本部が一元的に担うように整理されました。
では、防災会議は災害のときにもう何もしないのでしょうか。
そこに大事な留意点があります。
順番に見ていきましょう。
この記事の結論
- 通知は、災害発生時の応急対策の段階では、災害対策本部で情報収集などを一元的に行うほうが効果的と考え、防災会議と本部の所掌事務を見直したと説明しています。
- 都道府県防災会議は、知事の諮問に応じて防災の重要事項を審議する役割が加わり、非常災害時の緊急措置に関する計画の作成・実施推進は所掌から外れました(法第14条第2項)。
- 災害対策本部は、情報の収集、対策の方針の作成と実施、関係機関の連絡調整の3つの事務を行うと条文に明記されています(第23条第4項)。
- 都道府県災害対策本部長は、関係機関のほか「その他の関係者」にも資料や情報の提供などの協力を求められます(第23条第7項)。通知はボランティア団体や各種団体の代表者等を想定しています。
- 市町村防災会議の組織と所掌事務は条例で定めるため、市町村は条例の改正が必要と通知は述べています(第16条第6項)。
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災害応急対策は、なぜ防災会議から災害対策本部へ一元化されたのか
災害が起きたとき、だれがどの仕事を受け持つのかが曖昧だと、対応が遅れかねません。
まず、通知が示す改正前の所掌事務と見直しの考え方を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)改正前の災害対策基本法においては、地方防災会議(都道府県防災会議及び市町村防災会議をいう。以下同じ。)の所掌事務としては、地域防災計画(都道府県地域防災計画及び市町村地域防災計画をいう。以下同じ。)の作成及びその実施の推進等のほか、「災害が発生した場合に、防災に関する情報を収集すること」及び「非常災害に際し、緊急措置に関する計画を作成し、かつ、その実施を推進すること」が所掌事務とされていた。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)これに対して、災害発生時、特に災害応急対策の段階では、地方防災会議で災害に関する情報の収集等を行うよりも、都道府県又は市町村に設置される災害対策本部において一元的にそれらの事務を行うことが効果的であると考えられることから、地方防災会議と災害対策本部の所掌事務について、見直し・明確化を行ったものである。
改正前は、防災会議にも災害時の情報収集と、非常災害時の緊急措置に関する計画の作成・実施推進が任されていました。
通知は、災害発生時の応急対策の段階では、災害対策本部が一元的に事務を行うほうが効果的と考えたと説明しています。
そこで、地方防災会議と災害対策本部の所掌事務が見直し・明確化されました。
次は、防災会議のほうがどう変わったのかを見ていきます。
災害のときは、本部のほうが情報を集めるのに向いているのですね。
通知は、本部で一元的に行うことが効果的と説明しています。
防災会議の仕事は、改正でどこが増えてどこが減ったのか
見直しは、防災会議の仕事を減らしただけではありません。
増えた仕事と減った仕事を、通知と第14条第2項で確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)一方で、地方防災会議については、中央防災会議と異なり「防災に関する重要事項の審議」について所掌事務として規定されていなかったが、防災に関する諮問的機関としての機能を強化する観点から、所掌事務としてこれを追加し、併せて、多様な主体の参画を図るため、学識経験者等を地方防災会議の委員に選任できることとしたものである。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)都道府県地域防災計画には関係各機関が実施する災害応急対策が具体的に定められており、災害応急対策の実施は主に各都道府県に設置される都道府県災害対策本部において実施されている。それらを踏まえ、迅速な災害応急対策を行うため、非常災害に際して、都道府県防災会議が別途の計画を作成することとはせず、災害応急対策の実施を都道府県災害対策本部に一元化したものである。
(災害対策基本法第14条第2項)都道府県防災会議は、次に掲げる事務をつかさどる。一 都道府県地域防災計画を作成し、及びその実施を推進すること。二 都道府県知事の諮問に応じて当該都道府県の地域に係る防災に関する重要事項を審議すること。三 前号に規定する重要事項に関し、都道府県知事に意見を述べること。四 当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害に係る災害復旧に関し、当該都道府県並びに関係指定地方行政機関、関係市町村、関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関相互間の連絡調整を図ること。五 前各号に掲げるもののほか、法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する事務
増えた仕事は、知事の諮問に応じて防災の重要事項を審議することです。
通知は、地域ごとの特性に応じた防災に関する取組を、幅広く防災会議で議論することを明確にしたものと説明しています。
減った仕事は、非常災害に際しての緊急措置に関する計画の作成・実施推進で、応急対策の実施は本部に一元化されました。
現在の条文には、災害復旧に関する関係機関の連絡調整(第4号)も並んでいます。
次は、災害対策本部が行う事務を確認します。
防災会議は、災害のときにはもう何も決められないのですか。
通知は、必要があれば本部に加えて別に防災会議を開くことも妨げないと述べています。
災害対策本部は、災害時にどんな事務を行うのか
本部に一元化された事務は、条文にはっきり書かれています。
通知の説明と第23条第4項を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)法第23条第4項は、都道府県災害対策本部が行う事務の内容として、「災害に関する情報を収集すること」、「災害予防及び災害応急対策を的確かつ迅速に実施するための方針を作成し、並びに当該方針に沿って災害予防及び災害応急対策を実施すること」及び「災害予防及び災害応急対策に関し、・・・連絡調整を図ること」を明示的に規定したものである。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)なお、「災害予防及び災害応急対策を的確かつ迅速に実施するための方針」とは、災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合において、災害予防及び災害応急対策としてとるべき対策の優先順位、対策をとるべき実施地域及び人的・物的資源の配分などに係る基本的な考え方のことを意味している。
(災害対策基本法第23条第4項)都道府県災害対策本部は、都道府県地域防災計画の定めるところにより、次に掲げる事務を行う。一 当該都道府県の地域に係る災害に関する情報を収集すること。二 当該都道府県の地域に係る災害予防及び災害応急対策を的確かつ迅速に実施するための方針を作成し、並びに当該方針に沿つて災害予防及び災害応急対策を実施すること。三 当該都道府県の地域に係る災害予防及び災害応急対策に関し、当該都道府県並びに関係指定地方行政機関、関係地方公共団体、関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関相互間の連絡調整を図ること。
災害対策本部の事務は、情報の収集、対策の方針の作成と実施、関係機関相互の連絡調整の3つです。
通知は、これらは従来から本部で行われてきたと考えられるものの、防災会議との所掌の見直しの観点から新たに明示的に規定したと説明しています。
対策の方針とは、とるべき対策の優先順位、実施地域、人的・物的資源の配分などの基本的な考え方のことです。
次は、本部長が関係者に協力を求める規定を見ていきます。
本部の「方針」とは、具体的にはどんな内容なのですか。
通知は対策の優先順位や実施地域、資源の配分などの基本的な考え方だと説明しています。
本部長は、関係機関やボランティア団体にどんな協力を求められるのか
本部が連絡調整を担うためには、関係者に協力を求める根拠が必要です。
通知の説明と第23条第7項を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)法第23条第7項の都道府県災害対策本部長の必要な協力の求めは、これまでは、地域防災計画等に基づいて行われていたものと考えられるが、地方防災会議と災害対策本部との所掌事務の見直しにより、災害発生時における関係機関間の連絡調整の事務が、都道府県災害対策本部の事務として規定されたことに伴い、新たに「資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができる」として明文化したものである。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)協力を求めることができる相手方としては、都道府県の防災会議を構成している各種機関のほかに、多様な主体の防災対策への参画を推進する観点から、「その他の関係者」を加えている。「その他の関係者」としては、ボランティア団体や各種団体の代表者等を想定している。
(災害対策基本法第23条第7項)都道府県災害対策本部長は、当該都道府県の地域に係る災害予防又は災害応急対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、第三十三条の二第一項の規定により内閣総理大臣の登録を受けた同項に規定する被災者援護協力団体(以下「登録被災者援護協力団体」という。)並びにその他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができる。
本部長が求められる協力は、資料又は情報の提供、意見の表明、その他必要な協力です。
相手方には、防災会議を構成する各種機関のほか、「その他の関係者」が加えられています。
通知が想定するのは、ボランティア団体や各種団体の代表者等です。
現在の条文には、内閣総理大臣の登録を受けた被災者援護協力団体も並んでいます。
次は、市町村や関係者が備えておくことを整理します。
本部長から協力を求められたら、私たちの団体も応じるべきなのでしょうか。
条文は協力を求めることができると定めています。
応じ方は平常時から確認しておくと安心です。
市町村や関係者は、明日から何を確認しておけばよいのか
見直しは、都道府県だけでなく市町村にも関わります。
通知が示す市町村防災会議と市町村災害対策本部の扱いを確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)都道府県防災会議の改正趣旨を踏まえ、市町村防災会議の設置目的に「市町村長の諮問に応じて当該市町村の地域に係る防災に関する重要事項を審議する」ことを加えた。そのほか、市町村防災会議の組織及び所掌事務については、都道府県防災会議の例に準じて各市町村の条例で定めることとされており、都道府県防災会議に係る改正の内容(上記(1)~(3)を参照)に準じて、必要な検討を行った上で、できる限り速やかに条例の改正等を行う必要がある。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)市町村災害対策本部においても、市町村が実施すべき災害予防及び応急対策について、関係指定地方行政機関等との連携を密にすることが重要であることは言うまでもない。このため、市町村災害対策本部の規定に、「必要に応じ、関係指定地方行政機関、関係地方公共団体、関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関との連携の確保に努めなければならない」と規定としたものであり、災害応急対策等に当たって国、都道府県、他の市町村を含む関係機関との連携の確保に積極的に努めることが期待される。
(災害対策基本法第16条第6項)市町村防災会議の組織及び所掌事務は、都道府県防災会議の組織及び所掌事務の例に準じて、当該市町村の条例(第二項の規定により設置された市町村防災会議にあつては、規約)で定める。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)災害が発生した際において、当該災害の規模・被害の態様等に照らして必要があると認められるときは、都道府県災害対策本部に加えて別に都道府県防災会議を開催することを妨げるものではないことに留意されたい。
市町村は、防災会議と災害対策本部の条例が今回の見直しに沿っているかを確認します。
市町村災害対策本部には、都道府県のような連絡調整の明記はなく、代わりに関係機関との連携の確保に努める規定が置かれています。
応援を頼む側や協力を求められうる側の事業者や団体は、自分たちが「その他の関係者」に当たりうるかを自治体に確認しておくと安心です。
通知は、規模や被害の態様に応じて本部に加えて防災会議を別に開くことも妨げないとしています。
条番号は改正で動くことがあるため、条文は現在の災害対策基本法で引き直して確認します。
自分の団体が本部から協力を求められる立場か、確認してみます。
「その他の関係者」に当たるかが第一歩です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
Q災害が起きたとき、応急対策を担うのは防災会議と災害対策本部のどちらですか?
A通知は、災害応急対策の段階では災害対策本部で一元的に事務を行うことが効果的と説明し、都道府県防災会議の所掌から緊急措置に関する計画の作成・実施推進を外しました。
Q防災会議は、改正で新たにどんな役割を持つようになりましたか?
A知事の諮問に応じて当該都道府県の地域に係る防災に関する重要事項を審議する役割です(法第14条第2項第2号)。市町村防災会議にも同じ趣旨が加えられました。
Q災害対策本部が行う事務には何がありますか?
A災害に関する情報の収集、対策の方針の作成と実施、関係機関の連絡調整の3つが条文に明記されています(法第23条第4項)。
Q災害対策本部長は、ボランティア団体にも協力を求められますか?
A条文は関係機関のほか「その他の関係者」に資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができると定めています(法第23条第7項)。通知はボランティア団体や各種団体の代表者等を想定しています。
まとめ
✔通知は、災害応急対策の段階では災害対策本部に事務を一元化するほうが効果的として、防災会議との所掌を見直しました。
✔都道府県防災会議は、知事の諮問に応じて防災の重要事項を審議する役割が加わり、緊急措置に関する計画の作成・実施推進は外れました(第14条第2項)。
✔災害対策本部の事務は、情報の収集、対策の方針の作成と実施、関係機関の連絡調整です(第23条第4項)。
✔対策の方針とは、優先順位、実施地域、人的・物的資源の配分などの基本的な考え方です。
✔本部長は、関係機関のほか「その他の関係者」にも資料や情報の提供などの協力を求められます(第23条第7項)。
✔市町村防災会議の組織と所掌事務は条例で定めるため、市町村は条例の改正等が必要です(第16条第6項)。
✔平常時から自分が「その他の関係者」に当たるかと、地域防災計画での位置づけを確認しておくことが実務の備えです。
「その他の関係者」に当たるか、さっそく確認してみます!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について(平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第14条、第16条、第23条、第23条の2
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。