大きな災害が起きたとき、他の自治体や国の機関に応援に来てもらった費用は、だれが負担するのかと疑問に思う方は多いと思います。
実は災害対策基本法では、応援を受けた地方公共団体が、応援に要した費用を負担すると定められています。
あわせて、災害対策の費用の負担は、その実施の責めに任ずる者が負担することが原則とされています。
国の通知と条文で、その中身を確かめます。
応援に来てもらった費用は、来てもらった側が払うのですか。
まず、費用は実施の責めに任ずる者が負担するという原則があります。
広域一時滞在や物資の費用も、同じ考え方でしょうか。
そこに通知の具体的な説明があります。
順番に見ていきましょう。
この記事の結論
- 災害予防や災害応急対策などに要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担することが原則です(法第91条)。
- 応援を受けた側について、条文は応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体が、当該応援に要した費用を負担しなければならないと定めています(法第92条第1項)。
- 通知は、広域一時滞在の費用は被災地方公共団体が原則として負担するとし、災害救助法が適用される場合は都道府県の責任で救助と費用負担がなされると説明しています。
- 物資等の供給は必要な措置を講じられた側が、災害応急対策必要物資の運送は要請又は指示した側が、それぞれ費用を負担すると通知は述べています。
- 応援を受けた側が費用をすぐに支弁できないときは、国又は応援をする側の地方公共団体に一時繰替え支弁を求めることができると定められています(法第92条第2項)。
▼

災害対策にかかる費用は、原則としてだれが負担するのか
災害対策には、人手も車両も物資も費用がかかります。
まず、費用の負担についての大原則を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)法第91条において「法令に特別の定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、災害予防及び災害応急対策その他この法律の施行に要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担するものとする。」とされている。また、この原則を踏まえ、応援に要した費用については、法第92条の規定により、応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体が負担しなければならないこととされている。今般の改正法により新設される事務についても、以下の(1)~(3)のとおり、これらの費用負担の原則が適用されるものである。
(災害対策基本法第91条)法令に特別の定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、災害予防及び災害応急対策に要する費用その他この法律の施行に要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担するものとする。
費用は、その事務を実施する責めに任ずる者が負担するのが原則です。
通知は、この原則が今回の改正で新設された事務にも適用されると説明しています。
例外は、法令に特別の定めがある場合、または予算の範囲内で特別の措置を講じている場合です。
通知が引く文言と現在の第91条は言い回しが少し異なりますが、原則は同じです。
次は、応援を受けたときの費用を確認します。
費用の原則は、条文にもはっきり書かれているのですね。
通知は実施の責めに任ずる者が負担するという原則を示しています。
応援を受けた側は、なぜ応援に要した費用を負担するのか
他の自治体や国の機関に応援に来てもらったとき、その費用はどうなるのでしょうか。
通知の説明と第92条を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)拡大された応援対象業務(応急措置以外の災害応急対策)を実施するための応援に要した費用についても、応援を受けた地方公共団体の負担とする。また、内閣総理大臣による応援の要求等に基づき行われた応援に要した費用についても、応援を受けた地方公共団体の負担とする。
(災害対策基本法第92条第1項・第2項)第六十七条第一項、第六十八条、第七十四条第一項又は第七十四条の四第一項の規定により指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は他の地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員(以下この条において「地方公共団体の長等」という。)の応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体は、当該応援に要した費用を負担しなければならない。2 前項の場合において、当該応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体が当該費用を支弁するいとまがないときは、当該地方公共団体は、国又は当該応援をする他の地方公共団体の長等の属する地方公共団体に対し、当該費用の一時繰替え支弁を求めることができる。
応援に要した費用は、応援を受けた側の地方公共団体が負担します。
通知は、拡大された応援対象業務のための応援も応援を受けた地方公共団体の負担としています。
内閣総理大臣による応援の要求等に基づく応援についても、通知は応援を受けた地方公共団体の負担と述べています。
現在の第92条第1項は、負担の根拠となる応援として第67条第1項、第68条、第74条第1項、第74条の4第1項を掲げています。
なお、応援を受けた側がすぐに費用を支弁できないときの一時繰替え支弁は、第2項にあります。
応援に来てもらうと、その費用は自分たちの負担になるのですね。
条文は応援を受けた側が費用を負担しなければならないと定めています。
広域一時滞在の費用は、災害救助法が適用されるとどう変わるのか
住民が市町村の区域を越えて避難する広域一時滞在では、費用の扱いが気になります。
通知の説明と災害救助法の条文を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)ただし、災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用になり、同法に基づいて都道府県知事が救助を行う場合等法令に特別の定めがある場合等は同法の規定が適用される。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)被災地方公共団体が原則として費用を負担する。ただし、広域一時滞在又は都道府県外広域一時滞在を実施する必要が生ずるのは大規模広域な災害の発生時であり、災害救助法が適用されることが想定される。この場合において、被災住民への公共施設等の提供は、災害救助法第23条第1項第1号に規定する「収容施設の供与」に該当することから、都道府県の責任で救助及び当該救助に伴う費用負担がなされる。また、都道府県外広域一時滞在が実施される場合は、災害救助法第35条の規定又は関係通達により、被災した都道府県が費用を負担するものとなり、受け入れた都道府県から被災した都道府県に対し救助に要した費用を求償することとなる。なお、法の手続によらない広域的な被災者の受入れについても、災害救助法の適用がなされる災害に関しては、同法に基づき費用負担がなされることとなる。
(災害救助法第4条第1項)第二条第一項の規定による救助の種類は、次のとおりとする。一 避難所及び応急仮設住宅の供与
(災害救助法第18条第1項)第四条の規定による救助に要する費用(救助の事務を行うのに必要な費用を含む。)は、救助を行った都道府県知事等の統括する都道府県等が、これを支弁する。
(災害救助法第20条第1項)都道府県等は、他の都道府県等の都道府県知事等により行われた救助につき行った応援のため支弁した費用について、当該他の都道府県等に対して、求償することができる。
広域一時滞在の費用は、原則として被災した側が負担します。
大規模な災害で災害救助法が適用されると、通知は避難した住民への公共施設等の提供を救助の「収容施設の供与」に当たるとし、都道府県の責任で救助と費用負担がなされると説明しています。
都道府県の区域を越える場合は、被災した都道府県が費用を負担し、受け入れた都道府県が求償する形になると通知は述べています。
通知が引く災害救助法の条番号は当時のものです。
現在の災害救助法では、避難所等の供与は第4条第1項第1号、救助に要する費用の支弁は第18条第1項、応援のため支弁した費用の求償は第20条第1項に置かれています。
災害救助法が適用されると、費用の扱いが変わるのですか。
通知は同法に基づき都道府県の責任で費用負担がなされると説明しています。
物資の供給と運送の費用は、それぞれどちらが負担するのか
物資を届けてもらうときと、物資を運んでもらうときの費用も、通知が整理しています。
通知の説明と第86条の16、第86条の18を確認します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)物資等の供給については、災害応急対策の実施に必要な物資等の供給について必要な措置を講じられた側が、災害応急対策必要物資の運送については、災害応急対策必要物資の運送を要請又は指示した側が、それぞれ費用を負担する。
(災害対策基本法第86条の16第1項)都道府県知事又は市町村長は、当該都道府県又は市町村の地域に係る災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、災害応急対策の実施に当たつて、その備蓄する物資又は資材が不足し、当該災害応急対策を的確かつ迅速に実施することが困難であると認めるときは、都道府県知事にあつては指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、市町村長にあつては都道府県知事に対し、それぞれ必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずるよう要請し、又は求めることができる。
(災害対策基本法第86条の18第1項)指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、災害応急対策の実施のため緊急の必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長にあつては運送事業者である指定公共機関に対し、都道府県知事にあつては運送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、運送すべき物資又は資材並びに運送すべき場所及び期日を示して、当該災害応急対策の実施に必要な物資又は資材(次項において「災害応急対策必要物資」という。)の運送を要請することができる。
物資の供給の費用と運送の費用は、負担する側が分かれます。
供給については、通知は必要な措置を講じられた側が費用を負担するとしています。
運送については、運送を要請又は指示した側が費用を負担するとしています。
第86条の16は、備蓄が不足する市町村長や都道府県知事が、上位の機関に必要な措置を要請し、または求められる規定です。
第86条の18は、緊急の必要があるときに運送事業者である指定公共機関などへ運送を要請できる規定で、条番号は通知の当時から移っているため現行の番号で引き直しました。
物資を運んでもらった費用も、頼んだ側の負担になるのですか。
通知は運送について要請又は指示した側が負担すると述べています。
費用の食い違いを避けるために、明日から何を確認しておけばよいのか
費用の負担は、災害が起きてから決めようとすると混乱しがちです。
通知が示す応援協定の位置づけを確認したうえで、平常時の確認事項を整理します。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)改正法の規定による応援は、従来、他の法律に基づき又は応援協定等に基づき行われてきた地方公共団体間の応援を補完するものであり、それら従来から行われてきた応援を妨げるものではないので、念のため申し添える。
(災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について 平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)(前略)既存の協定等がある場合には、当該協定等に基づいて、広域的な被災住民の受入れを行うことが可能である。なお、事前の備えが重要であり、あらかじめ管内の施設の受入れ能力を把握した上で協定等を締結しておくことが望ましい。
応援も費用も、災害が起きる前に取り決めておくことが実務の備えです。
通知は、改正法による応援が従来の応援協定等に基づく応援を補完するもので、妨げないと説明しています。
広域一時滞在でも、既存の協定等があれば協定等に基づいて受入れを行うことが可能で、通知は協定等を締結しておくことが望ましいとしています。
実務では、応援協定に費用の請求先と精算の手順をあらかじめ書いておくと安心です。
費用をすぐに支弁できないときの一時繰替え支弁の手順も、事前に確認しておくと役立ちます。
条文は改正で動くため、現在の法令で引き直して確認します。
自分の自治体の応援協定に、費用の扱いが書いてあるか確認してみます。
費用の請求先と精算の手順を決めておくことが第一歩です。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
Q応援に来てもらった費用は、だれが負担しますか?
A法第92条第1項は、応援を受けた地方公共団体が、当該応援に要した費用を負担しなければならないと定めています。
Q応援を受けた側がすぐに費用を払えないときは、どうなりますか?
A法第92条第2項が、国又は応援をする側の地方公共団体に、一時繰替え支弁を求めることができると定めています。
Q広域一時滞在の費用は、災害救助法が適用されるとどうなりますか?
A通知は、被災住民への公共施設等の提供が救助の「収容施設の供与」に当たり、都道府県の責任で救助と費用負担がなされると説明しています。都道府県の区域を越える場合は、被災した都道府県が費用を負担し、受け入れた都道府県が求償します。
Q物資の供給と運送の費用は、それぞれどちらが負担しますか?
A通知は、供給は必要な措置を講じられた側、運送は要請又は指示した側が負担すると説明しています。
まとめ
✔災害対策の費用は、原則としてその実施の責めに任ずる者が負担するものとされています(第91条)。
✔応援を受けた地方公共団体は、応援に要した費用を負担しなければならないと定められています(第92条第1項)。
✔応援を受けた側が費用をすぐに支弁できないときは、一時繰替え支弁を求めることができます(第92条第2項)。
✔広域一時滞在の費用は、被災地方公共団体が原則として負担します。
✔災害救助法が適用されると、通知は都道府県の責任で救助と費用負担がなされると説明しています。
✔物資の供給は措置を講じられた側、運送は要請又は指示した側が負担します。
✔平常時から費用の請求先と精算の手順を協定などで確認しておくことが実務の備えです。
費用の請求先と精算の手順、さっそく確認してみます!
それが一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
防火管理はプロにお任せ下さい
まずはWebで無料お見積りを!
お問い合わせ
この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 災害対策基本法の一部を改正する法律の運用について(平成24年6月27日 府政防第725号・消防災第235号)
- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第91条、第92条、第86条の16、第86条の18
- 災害救助法(昭和22年法律第118号)第4条、第18条、第20条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。