映画やドラマの撮影では、屋外や建物の前で煙や炎を出す場面があります。
消防庁は令和2年8月27日、ロケ撮影のガイドラインの周知を各消防本部へ通知しました(消防予第251号)。
演出で火災と紛らわしい煙や火炎を出す行為には、火災予防条例に基づく届出等を求めているとされています。
この記事では、通知の趣旨と届出の対象、場所ごとの火気の制限、撮影に場所を貸す建物側の確認点を解説します。
うちの店の前で、ドラマの撮影をしたいと言われました。
消防への届出は要るのでしょうか。
演出で火災と紛らわしい煙や火炎を出すなら、火災予防条例に基づく届出が求められます。
撮影で使う小道具の火は、どこでも使ってよいのでしょうか。
場所によっては、裸火の使用が制限されます。
通知とガイドラインの内容を、順に確認していきましょう。
- 消防予第251号は、令和2年8月27日に消防庁予防課長が各都道府県消防防災主管部長らへ出した通知で、ロケ撮影のガイドラインの周知と円滑化への配慮を求めています。
- ガイドラインは令和2年8月25日に公表され、ロケ撮影を「撮影用のスタジオ以外の町中や建物内で撮ること」と定義しています。
- 演出等のため火災と紛らわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為を行う場合、火災予防条例に基づく届出を求めているとされています。
- 劇場・百貨店・文化財などでは、消防長(消防署長)が指定する場所で喫煙や裸火の使用が制限されます(条例(例)第23条)。
- 届出の様式や窓口は市町村ごとに違うため、撮影場所を管轄する消防本部(消防署)に事前に確認します。
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目次
消防庁はなぜロケ撮影のガイドラインを消防本部へ周知したのか

まず、通知の冒頭部分を確認します。
内閣府において、我が国におけるロケーション撮影(以下「ロケ撮影」という。)の環境改善を図ることを目的に、「ロケ撮影の環境改善に関する官民連絡会議」が平成29年から開催され、関係省庁として消防庁も参画し、許認可手続等に関する情報共有が行われているところです。(略)今般、国内外の映像作品のロケ撮影やロケ誘致を円滑に進める上で、必要な情報、取り組むべき事項、留意すべき事項等について、主として、JFC/FC(以下「フィルムコミッション」という。)、許認可権者、制作者等に対して示す「ロケ撮影の円滑な実施のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)が別添のとおり公表されました。
「ロケ撮影」とは、「ロケーション撮影」の通称であり、映像作品(「映画・放送番組・CM・プロモーションビデオ・スチール写真等の作品」をいう。)を製作する上で、撮影用のスタジオ以外の町中や建物内で撮ることを指す。
通知は、ロケ撮影の誘致が、地域経済の活性化、映像産業の振興、観光客の増加を含めた様々な効果が見込まれる取組だと書いています。
ガイドラインは、ロケ撮影を撮影用のスタジオ以外の町中や建物内で撮ることと定義していますので、街の店や建物がロケ地になることを前提にしています。
ガイドラインは令和2年8月25日付で、内閣府、警察庁、消防庁、国土交通省、文化庁の連名で公表されました。
消防庁の通知は、それを各消防本部へ知らせるものです。
ロケ撮影のガイドラインは、消防の届出を緩めるものなのでしょうか。
通知は、火災予防条例に基づき届出等を求めているところだと述べたうえで、円滑化への配慮を求めています。
届出そのものをなくすとは書かれていません。
ロケ撮影で消防への届出が求められるのはどんな行為か

通知の該当部分と、ガイドラインの説明を確認します。
各消防本部におかれましては、ロケ撮影等に際し、関係者が演出等のため、火災と紛らわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為等を行う場合には、火災予防条例に基づき届出等を求めているところ(ガイドラインP.69参照)ですが、ガイドラインが策定された趣旨を踏まえ、ロケ撮影の円滑化のため、関係機関と密に連携するとともに、特にフィルムコミッションとの窓口の明確化、必要に応じた届出者等への助言及び情報提供の実施など、適切に対応して頂きますようご配慮願います。
屋外等でのロケ撮影にあたって、火災と紛らわしい煙や火炎を発生させるような場合、周辺住民から火災と誤認され、消防隊が出動することなどを防ぐために、事前に撮影場所を管轄している消防本部(消防署)にその内容を届け出る必要がある。
次の各号に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、その旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。
一 火災とまぎらわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為
火災を発見した者は、遅滞なくこれを消防署又は市町村長の指定した場所に通報しなければならない。
ガイドラインは、屋外等でのロケ撮影を例に、周辺住民から火災と誤認され消防隊が出動することを防ぐための届出だと説明しています。
条文は、行為をしようとする者があらかじめ、消防長(消防署長)に届け出ると定めています。
火災を発見した者には通報の義務がありますので(法第24条第1項)、火災に見える煙は通報につながる可能性があります。
ガイドラインは、同じ条の第3号まで掲載しており、第3号には劇場等以外の建築物その他の工作物における演劇、映画その他の催物の開催も含まれています。
煙が出る演出は、どれも届出が要るのでしょうか。
ガイドラインは、火災と紛らわしい煙や火炎を発生させる場合に届出が必要だとしています。
該当するかどうかは、管轄の消防署に確認します。
劇場や百貨店などをロケ地にすると裸火はどう制限されるのか

該当部分と、条文を確認します。
劇場、百貨店等の火災が発生した場合に人命に危険が生じるおそれのある一部の施設等においては、裸火の使用や、火災予防上危険な物品を持ち込む場合、事前に消防署の承認等を得る必要がある。
次に掲げる場所で、消防長(消防署長)が指定する場所においては、喫煙し、若しくは裸火を使用し、又は当該場所に火災予防上危険な物品を持ち込んではならない。ただし、特に必要な場合において消防長(消防署長)が火災予防上支障がないと認めたときは、この限りでない。
一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂若しくは集会場(以下「劇場等」という。)の舞台又は客席
二 百貨店、マーケツトその他の物品販売業を営む店舗又は展示場(以下「百貨店等」という。)の売場又は展示部分
三 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定によって重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡若しくは重要な文化財として指定され、又は旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)の規定によって重要美術品として認定された建造物の内部又は周囲
四 第一号及び第二号に掲げるもののほか、火災が発生した場合に人命に危険を生ずるおそれのある場所
条文は、消防長(消防署長)が指定する場所で、喫煙、裸火の使用、火災予防上危険な物品の持込みを禁じています。
指定の対象になるのは、劇場等の舞台や客席、百貨店等の売場や展示部分、指定を受けた文化財の内部や周囲などです。
ただし書きは、特に必要な場合に消防長(消防署長)が火災予防上支障がないと認めたときを例外としています。
撮影で必要だからといって自動的に認められるわけではなく、消防長(消防署長)の判断になります。
ろうそくを使う場面を売場で撮りたいのですが、使えるのでしょうか。
売場や展示部分が指定された場所なら、原則として裸火は使えません。
ただし書きで、消防長(消防署長)が支障がないと認めた場合の例外があります。
届出の窓口や様式はどこで確認すればよいのか

該当部分と、消防庁の見解を確認します。
これらの制度は各市町村の定める火災予防条例に基づき運用されているため、撮影場所を管轄している消防本部(消防署)に、届出様式や窓口を含め電話などにより詳細な手続を事前に確認することが望ましい。
公園など公の場所での火気使用に関しては、近隣住民に不安を生じさせる可能性があるため、消防署に事前相談してもらいたいが、火災予防上の措置が講じられていれば消防署で禁止することはない。【消防庁】
ガイドラインは、制度が各市町村の定める火災予防条例に基づき運用されているため、撮影場所を管轄する消防本部(消防署)に電話などで事前に確認することが望ましいとしています。
条文として引用されている火災予防条例(例)は、昭和36年11月22日付け自消甲予発第73号で示されたひな形で、実際の条番号や様式は市町村の条例で確かめます。
公園など公の場所での火気使用は、平成30年4月時点の整理として、火災予防上の措置が講じられていれば消防署で禁止することはないとされています。
通知は消防本部に対し、フィルムコミッションとの窓口の明確化や、届出者等への助言及び情報提供を求めています。
届出は、撮影の何日前までに出せばよいのでしょうか。
ガイドラインに、日数の定めは書かれていません。
条文はあらかじめと定めるだけですので、管轄の消防署に確認します。
撮影に場所を貸す前に建物側はなにを確認すればよいのか

防火管理者の業務を定めた条文と合わせて整理します。
防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
- 撮影で煙・火炎・裸火を使う予定があるかを、依頼の段階で聞く
- 届出の要否と様式を、管轄の消防署に電話などで確認する
- 撮影する場所が、条例で指定された場所に当たらないかを確認する
- 消防計画に基づき、火気の使用を防火管理者が監督する
- 避難経路や消防用設備の周りを、撮影機材でふさがないようにする
煙や炎、裸火を使わない撮影であれば、条文が挙げる届出や指定場所の制限の問題は、そもそも生じません。
使う予定があるときは、届出の要否を管轄の消防署に事前に相談します。
防火管理者の業務には、火気の使用又は取扱いに関する監督が含まれます(令第3条の2第2項)。
撮影当日も、避難経路や消防用設備の周りを機材でふさがないよう、日頃の防火管理と同じ目線で見ておきたいところです。
撮影の依頼は制作会社から来ます。
届出は制作側が出すのですか。
条文は、行為をしようとする者が届け出ると定めています。
場所を貸す側も、届出の有無を確認しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
撮影で火を使う予定があるか、事前に確認しておきます!
撮影での火気の相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ロケ撮影の円滑な実施のためのガイドライン(令和2年8月25日 内閣府・警察庁・消防庁・国土交通省・文化庁)
- 「ロケ撮影の円滑な実施のためのガイドライン」の周知等について(令和2年8月27日 消防予第251号 消防庁予防課長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第24条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日付け自消甲予発第73号)第23条・第45条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





